2023年12月10日のがっちりマンデーで紹介された、パナソニックの電動シェーバー「ラムダッシュパームイン」は、持ち手をなくした独自の形状が大きな特徴です。この斬新なデザインがユーザーの操作性を向上させ、予想超えるベストセラーとなりました。しかし裏側では、限られたスペースに機能を格納するために開発者が悪戦苦闘を強いられていた事実があるのです。本記事では、「ラムダッシュパームイン」開発秘話に迫ります。
「ラムダッシュパームイン」はなぜヒットしたのか
パナソニックが9月に発売を開始した新製品の電動シェーバー「ラムダッシュパームイン」は、発売から2か月で約1万5千台を販売しました。これは当初の計画比10倍以上という驚くべき売上実績です。
この「ラムダッシュパームイン」の大きな特徴は、一般的な電動シェーバーにある持ち手をなくし、手のひらサイズのコンパクトなボディのみの形状にしたところです。しかしこの小さなボディの中に、通常の電動シェーバーと同等の剃り性能を実現しています。
持ち手を引き算した理由
パナソニックビューティパーソナルケア事業部の西田泰章さんは、持ち手がある従来の電動シェーバーでは、刃の角度を変えるにはある程度大きく動かさなければならず、顔や顎の曲面にフィットしづらい面があったと指摘しています。
一方「ラムダッシュパームイン」は持ち手がない分、ボディ自体を小さく動かせば容易に刃の角度が変わるため、あごのラインや顎の下など、フィットしづらい箇所の剃りムラを防ぐことができます。
つまり持ち手を引き算することで、操作性と剃り心地が格段に向上したのです。
サイズ決定の裏側で起きた驚きの事実
「ラムダッシュパームイン」を生み出したプロジェクトチームには、製品デザイナーの別所さんと、エンジニアの村木さんがいました。
通常家電製品の設計では、必要な機能と部品を決定し、それに合わせてデザインとサイズ感が決まっていきます。ところが「ラムダッシュパームイン」ではこれとは逆に、別所さんが最初にコンパクトサイズを理想としてサイズを決定してしまいました。
その結果、限られたスペースに必要な機能をすべて詰め込むという難題が村木さんに課せられることに。村木さんは知恵を絞り部品配置を見直し、なんとか条件をクリアすることができました。
設計者の悲喜こもごも
村木さんによる部品再配置でようやく形状がまとまったかに思われたとき、今度は別所さんから新たなピンチが訪れます。実際のサイズが、当初の設計値から2ミリずれていることが判明したのです。
これではボディの手に馴染む感触が全く違うとして、別所さんは到底納得できるものではありませんでした。一時はプロジェクトチーム内でも厳しい空気が流れることもあったとか。
2ミリの差で危機一髪
このピンチを乗り越えるべく、村木さんは内部基板上のパーツ配置を一つひとつ見直し、わずかな隙間にこだわりながら部品をひとつひとつずらしていきます。
そうして何とか2ミリ分のスペースを確保し、ついに完璧に別所さんの理想とするコンパクトサイズを再現。こうして「ラムダッシュパームイン」は遂に完成を見たのです。
まとめ
パナソニックの電動シェーバー「ラムダッシュパームイン」が大ヒットしている理由は、持ち手を引き算することで操作性と剃り心地が格段に向上した点にあります。
その反面、限られたスペースに十分な機能を詰め込むという困難な課題が設計者に課せられました。試行錯誤の末になんとか難題をクリアした設計者の悲喜こもごもが、完成品の手に馴染む使い心地に活きているのです。
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