外食界の生き残りをかけた熾烈な争いが過熱する中、回転ずし業界では”グルメ化”や”地魚地食“など、新たな付加価値の追求が急がれています。本記事では、「カンブリア宮殿」(2024年3月28日放送-テレビ東京系)で特集された、デフレ時代からコロナ禍に至る約10年間で起きたの回転ずし業界の動向や、外食の第一人者・横川竟氏の示す業界再生の指針を紐解きます。潰れない店づくりに欠かせない経営者の心構えとは何か、ご一読いただければ垣間見えてくるはずです。
回転ずし業界の熾烈な競争と変遷
回転ずし業界は長年、「スシロー」、「はま寿司」、「くら寿司」の大手3社による競争が続いてきました。中でも「スシロー」は、最新技術を活用した徹底的な効率化に注力し、寿司の最短ルート流れと注文席への自動振り分けシステムなどを独自開発。さらに、寿司作りのロボット化にも力を入れてきました。
一方で、この10年間で新興勢力の台頭が相次ぎ、業界は一層熾烈な競争を繰り広げることになります。
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「スシロー」と「くら寿司」の全国展開と革新的取り組み
「スシロー」は原価の高騰にも関わらずお値打ち価格を実現するため、AI技術を取り入れた工場生産や、人件費削減のための無人化など、徹底したコスト削減に取り組んできました。
その一方で、「くら寿司」は従来の回転ずし店とは一線を画す、グローバル旗艦店の出店を進めてきました。海外からの旅行客をターゲットに、カラフルな提灯など和のテイストで演出された店内で、オリジナルのクレープなど新感覚のメニューを提供。国内に5店舗、さらに台湾にも出店し、回転寿司文化の世界発信を目指しています。
「銚子丸」や「がってん寿司」といった新興グルメ回転寿司の台頭
この10年間で台頭してきた勢力が、”グルメ回転寿司”です。「銚子丸」はいけすに泳ぐ真鯛と格闘し、その場で調理した鮮度抜群の寿司をリーズナブルな価格で提供。一方の「がってん寿司」は、朝の大市場で売れ残った高級魚を格安で仕入れ、絶品のネタを驚きの価格で楽しめるお店として人気を博しています。
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地方の味を全国へ「根室花まる」と「金沢まいもん寿司」の挑戦
地方発の回転寿司チェーンも続々と全国展開を果たしています。「根室花まる」は北海道の根室など、オホーツク海の淡水と太平洋の親潮が行き交う特殊な海域で獲れた魚を使った、まったく新鮮な味わいを提供。一方の「金沢まいもん寿司」は、一番安い皿で165円、高いのは1,540円と、北陸の珍しい高級魚を気軽に楽しめるのが人気です。
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大手「鳥貴族」の大胆な値上げ戦略の成功
外食業界では原価高騰に伴う値上げが大きな課題となっていますが、「鳥貴族」はかつての280円均一から360円に大幅値上げしながらも、客離れが起きていません。それどころか、コロナ禍が明けた現在、業界トップクラスの好調さを維持しています。この値上げが受け入れられた理由は、国産鶏や手作業の串打ち、手焼きなど、品質の高さが評価されたためです。
外食経営者の思想と価値観が店の命運を決める
回転寿司業界の中で起こった様々な変化は、経営者の思想や価値観が色濃く反映されています。「お客さんが喜ぶ店を作りたい」という気概を持つ経営者と、「売上第一主義」で価格と商品のバランスを失う経営者では、店の品質や成長性に大きな違いが生まれます。単に値下げに走るだけでなく、お客様のニーズに合わせて適切に値上げを行う勇気も、これからの経営者に求められます。
原価高騰への対応が経営者の値上げ力を試す
原材料の高騰は外食業界全体の大きな課題となっています。昨年のマクドナルドは8割の商品で値上げに踏み切りましたが、安さが命綱のサイゼリヤでは頭を抱えています。外食経営者は今まで30年間値下げに注力してきただけに、値上げのノウハウを持っていないのが実情です。商品に付加価値をつけ、お客様に納得いただく値上げの「テクニック」が問われる時代がやってきました。
猿田彦珈琲や焼肉キングの若手外食経営者の挑戦
一方で、若手の外食経営者による新しい取り組みも目覚ましいものがあります。猿田彦珈琲は、夜間の時間帯にバーに業態を変え、コーヒーを使ったカクテルを提供するユニークな発想を実践。焼肉キングは創業から長い歴史があるチェーンですが、37歳と若手経営者の加藤央之社長が後発ながらテーブルのタッチパネル注文による食べ放題業態で急成長し、焼肉チェーンのトップに踊り出ました。こうした発想の転換が、お客様の期待値の変化に応えていくための重要な鍵となっています。
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外食レジェンド横川竟が見た回転ずし業界の今後
86歳の外食業界レジェンド、横川竟氏は回転寿司の進化を「商品の質と価格のバランス」が勝敗を分ける分岐点になると指摘しています。生きる価値観を持つ経営者による商品開発力の有無、そして、お客様に納得いただける値上げテクニックが、今後の回転ずし業界を左右すると横川氏は説きます。
さらに、今後は世界の食材価格との連動を無視できなくなる可能性を指摘。日本の外食産業は、単に安く売るだけでなく、世界水準の価格とサービスを提供できる体制を整える必要があると警鐘を鳴らしています。
まとめ:潰れない店作りのための経営者の心構え
長年の変遷と激しい競争を勝ち抜いてきた回転ずし業界ですが、コロナ禍を経て、更なる進化を遂げつつあります。単に値下げに走るのではなく、お客様視点で付加価値ある商品とサービスを提供し続ける。そのためには、経営者自らが強い信念と価値観を持ち、世の中の変化に柔軟に対応できる資質が問われます。
潰れない店を作り上げるには、経営者はひたすらお客様の立場に立って物事を考え、時代に合わせて変化し続けることが何より大切だと、86歳の長く外食の第一線を走り続けてきた横川竟氏は指摘しています。
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