街路樹の突然の倒木による事故が全国で相次いでいます。2024年12月2日放送のNHK「クローズアップ現代」では、千葉大学園芸学研究科准教授の竹内智子氏を招き、増加する倒木リスクと街づくりの課題について特集しました。
倒木リスクの実態と竹内智子准教授が指摘する危険性
都市部における倒木事故が深刻な社会問題となっています。竹内智子准教授は、「一度樹木の事故が起きると甚大な被害につながりかねない」と警告します。都市の樹木は様々なストレス要因にさらされており、特に近年の気候変動による高温化や台風の進路変更などが、新たな負荷となっていることを指摘しています。
相次ぐ倒木事故の実例と街づくりへの影響
2024年9月、東京都日野市で発生した痛ましい事故では、高さ8メートルのイチョウの枝が落下し、帰宅途中の36歳男性が亡くなりました。落下した枝は総重量約1トンに及びました。また、京都の清水寺付近では観光客が被害に遭う事故も発生。さらに、佐賀県唐津市では、車での移動中に11歳の少年が倒木事故で亡くなるという痛ましい事例もありました。
専門家が警告する4つの危険な兆候と安全確保のポイント
樹木の危険を示す主な兆候として、以下の4点が挙げられます。
- 幹の傾きや揺れ(根の張り具合に問題がある可能性)
- 枯れ枝の存在(樹木の衰弱や落下の危険性)
- キノコの発生(内部腐朽の可能性)
- 空洞の形成(強度低下の危険性)
自治体の街路樹管理における課題と限界
東京23区の調査では、街路樹管理における三つの深刻な課題が明らかになりました。
・台帳がない(21.7%)
・マニュアルがない(56.5%)
・予算が足りない(54.5%)
全国には約630万本の街路樹があり、この30年余りで1.7倍に増加。多くが高度経済成長期に植えられ、一斉に高齢化が進んでいます。
竹内智子准教授が提言する街づくりのための解決策
竹内准教授は、以下の点を重視した解決策を提案しています。
・定期的な樹木の健康診断の実施
・技術の継承とマニュアル整備
・市民との協働による管理体制の構築
・環境保全と安全確保の両立
安全を確保しながら緑を守る先進的な取り組み事例
仙台市では、4万8千本の街路樹全てにIDを付与し、データベース化を実施。定期的な点検と早期対応を可能にしています。また、町田市では街路樹の「量から質への転換」を図り、1万6千本を約2/3に削減しながら、残す樹木の管理を強化する新しい取り組みを始めています。
まとめ:倒木リスク対策と持続可能な街づくりの展望
増加する倒木リスクに対し、以下の対策が重要です。
・データに基づく計画的な管理
・専門家と市民の協働
・景観と安全性の両立
・予算と人材の確保
竹内准教授は「すべての樹木が危険なわけではない」としながらも、状況を正しく理解し、適切に対応することの重要性を強調しています。街の緑を守りながら、安全な街づくりを実現するためには、行政・専門家・市民が一体となった取り組みが不可欠です。
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