今、私たちの身の回りで静かに、しかし確実に広がっている新しい価格設定の仕組み。同じ商品やサービスでも、場所や時間によって価格が変わる「地域別価格」と「ダイナミックプライシング」について、最新の事例とともに詳しく解説していきます。
地域別価格とダイナミックプライシングとは?基本を解説
近年、企業が採用している新しい価格戦略として注目を集めているのが「地域別価格」と「ダイナミックプライシング」です。地域別価格は、店舗の立地条件や運営コストに応じて価格を変える仕組み。一方、ダイナミックプライシングは需要や時間帯、天候などの要因によってリアルタイムに価格を変動させる仕組みです。これらの戦略は、企業の収益改善だけでなく、消費者にとってもメリットのある選択肢を提供しています。
マクドナルドに見る地域別価格の実態|徒歩圏内で最大50円の差
マクドナルドでは2023年から本格的に地域別価格を導入しています。具体的な例として、JR五反田駅周辺2キロ圏内の店舗を見てみましょう。アトレ五反田店のビッグマックは530円、そこから徒歩15分の目黒不動前店では500円、さらに徒歩20分の戸越銀座店では480円と、最大50円の価格差があります。
この価格差は、店舗の立地による賃料や人件費などの運営コストを反映したものです。マクドナルドでは、通常店、準都心店(通常価格+最大30円)、都心店(通常価格+最大90円)という3つの価格帯を設定しています。同様の取り組みは他のチェーン店にも広がっており、例えばスシローでは、マグロの赤身が郊外店で120円、都市型店では150円というように、最大30円の価格差を設けています。
ダイナミックプライシングで進化するコインランドリー|wash-plusの事例
千葉県浦安市のコインランドリーwash-plusでは、5年前からダイナミックプライシングを導入し、注目を集めています。同店では、AIが過去のデータを分析し、混雑状況や天候を考慮して価格を決定しています。
例えば、2023年10月のある週では、雨天が予想された10月9日(水)の料金を1,300円に設定。前後の晴れの日は1,100円と、天候による需要予測に応じて価格を変動させています。価格は深夜、早朝、日中、夜の4つの時間帯で700円から1,300円の範囲で変動し、スマートフォンのアプリで確認できます。
この取り組みの結果、一日あたりの平均稼働率が10.6%から12.5%へと上昇。首都圏の49店舗中6店舗で導入されており、売上も順調に伸びているとのことです。
AIが決める野球場のチケット価格|みずほPayPayドーム福岡の革新的な取り組み
福岡ソフトバンクホークスのホームスタジアム、みずほPayPayドーム福岡では、より細かな価格設定を実現しています。4万席の各座席について、1円単位で価格を設定し、さらに1日96回(15分ごと)価格が変動する仕組みを導入しています。
興味深いのは、同じ通路側の座席でも、ホームベース側と外野側で価格が異なること。これは、ビールの売り子さんなどが通る際の視界の遮られやすさを考慮したもので、外野よりの通路側座席の方が251円高く設定されています。このシステムは、プロ野球6チームで導入され、収益が平均20%以上増加したとされています。
広がる価格変動の波|ロードプライシングからテーマパークまで
価格変動の仕組みは、交通インフラにも導入されています。東京湾アクアラインでは2023年7月から「ロードプライシング」を試験的に導入。混雑する上り線の土日祝日13時から20時は普通車料金を1,200円(通常800円)に値上げし、20時から24時は600円に値下げすることで、10キロを超える渋滞発生日が26%減少しました。
また、2024年7月からは九州新幹線でもダイナミックプライシングが導入され、乗車日や時間に応じて価格が変動する仕組みが始まっています。
まとめ|賢い消費者になるために知っておくべきこと
地域別価格とダイナミックプライシングは、私たちの日常生活にますます浸透していくことが予想されます。これらの価格システムを理解し、うまく活用することで、同じサービスでもより賢く、お得に利用することができます。特にスマートフォンアプリなどで価格をチェックする習慣をつけることで、大きな節約につながる可能性があります。
今後は、さらに多くの業界でこれらの価格戦略が導入されることが予想されます。消費者としては、これらの仕組みを理解し、賢く活用していくことが重要になってきているといえるでしょう。
※本記事は、2024.12.24放送-テレビ東京系 「LIFE IS MONEY~世の中お金で見てみよう~」を参照しています。
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