2025年3月15日、テレビ東京系で放送された「ブレイクスルー」では、電気ケーブルをなくし、ワイヤレスで電気を長距離伝送する世界初の技術が紹介されました。この革新的な技術を開発しているのが、エイターリンクのCEO岩佐凌氏(34歳)です。今回は、エアコン電気代を30%も削減できるという画期的なワイヤレス給電技術について詳しく解説します。
エイターリンクCEO岩佐凌が開発する世界初の長距離ワイヤレス給電技術とは
エイターリンクが開発しているのは、最大17mも離れた場所までワイヤレスで電力を伝送できる「長距離ワイヤレス給電」技術です。岩佐氏はこの技術を「パソコンの通信がイーサネットケーブルからWi-Fiに変わったように、電気もワイヤレスが当たり前になる時代を作りたい」と語っています。
従来のワイヤレス給電技術は、スマートフォンの置き型充電器のように近距離でしか使えず、角度によっては充電できないという不安定さがありました。しかし、エイターリンクの技術は、どのような角度でも安定して給電できるという画期的な特徴を持っています。
岩佐氏は商社勤務時代にアメリカのシリコンバレーで自動車開発技術を探していた際に、この技術の可能性に気づきました。「商社は付加価値をつけると言っているけれど、結局ものを右から左に移しているだけ」と感じていた岩佐氏は、「人類全体の生産量が上がるタイミングには必ずテクノロジーが絡んでいる」と考え、産業界のパラダイムシフトに関わりたいという思いから起業を決意しました。
ブレイクスルー番組で紹介されたワイヤレス給電のしくみと特徴
「ブレイクスルー」の番組内では、ワイヤレス給電の仕組みが詳しく紹介されていました。天井に取り付けた送信機から、電気のエネルギーを電磁波の一種であるマイクロ波に変えて飛ばします。それを離れた場所にある受信機が受け取り、再び電気に変えて給電するという仕組みです。
一般的なオフィスでの実装例も紹介されており、番組内で岩佐氏は実際にワイヤレス給電化されたフロアを案内していました。天井に設置された送信機から、温度・湿度・位置情報・人の存在を検知するセンサーに電力が供給されています。
この技術の特筆すべき点は、送信機1つで最大100台もの機器に電気を送ることができることです。これにより、設置場所が電源の位置に捉われることなく、より効率的なセンサー配置が可能になります。
エアコン電気代30%削減を実現するワイヤレス給電センサーの活用法
エイターリンクの技術が最も効果を発揮しているのが、オフィスの空調管理です。従来のオフィスビルでは、天井裏に設置された温度センサーと、実際に人がいる場所の温度には最大5度もの差があることがあります。
岩佐氏は「空調機は設定温度と実測温度の差を埋めるのが仕事なのに、天井裏の温度と実際に人がいる場所の温度には大きな差がある」と指摘します。ワイヤレス給電技術を活用することで、人の近くに電源不要のセンサーを設置でき、より正確な温度管理が可能になります。
その結果、快適なオフィス環境を維持しながらも、電気代を約30%削減することに成功しています。岩佐氏によれば、この技術を導入したほぼ全ての物件で電気代が30%ほど下がっているとのことです。
すでに三菱地所や竹中工務店など、多くの日本の大手デベロッパーがこの技術を採用しており、最近では商業施設への導入も進んでいます。
工場の生産性向上とCO2削減に貢献するエイターリンクの技術革新
オフィス以外にも、エイターリンクの技術は工場の生産ラインでも活用されています。工場の自動化が進む中、様々なセンサーの設置が急増していますが、これらをワイヤレス給電化することで多くのメリットが生まれます。
工場内では1mあたり100個から150個ものセンサーが設置されていることもあり、膨大な量のケーブルが必要とされています。しかし、ケーブルは断線のリスクがあり、特に大規模な自動車工場などでは断線によってラインが30分から60分も停止してしまうことがあります。これは生産性に大きな影響を与え、損失は億単位になることもあるそうです。
エイターリンクの技術を活用すれば、断線による生産ラインの停止リスクを大幅に減らすことができます。さらに、ケーブルの製造工程で排出されるCO2も削減できるというメリットもあります。岩佐氏によると、ワイヤレス給電技術の導入により、地球3周半分にも相当するケーブルを削減できるとのことです。
2025年3月からは、部品大手SMCと共同開発した工場向けワイヤレス給電センサーの量産・販売も始まる予定となっています。
岩佐凌が描く未来構想 – 宇宙からのワイヤレス給電と2031年の実証実験
エイターリンクの岩佐氏が描く未来像はさらに壮大です。「最終的には宇宙からワイヤレス給電をやりたい」と語る岩佐氏は、低軌道衛星から地球に電力を供給する構想を持っています。
地球全体をカバーするには1000〜1200機ほどの衛星が必要とされますが、それらが太陽光でエネルギーを集め、地球に電波を放射するという計画です。宇宙空間では大量のエネルギーを出していても、地球の地表では現在のワイヤレス給電技術とほぼ同じレベルになるため、環境への影響は最小限に抑えられるとのことです。
驚くべきことに、この宇宙からのワイヤレス給電の実証実験は2031年から開始予定で、2035年からの本格運用を目指しているそうです。「あと6年しかない」という指摘に対しても、岩佐氏は自信を持って計画を進めています。
さらに、岩佐氏はスマートコンタクトレンズの開発も視野に入れています。将来的には携帯電話の画像がコンタクトレンズ上で見えるような世界を実現したいと考えており、まずは遠近両用のような医療的・機能的なものから始めて、徐々にエンターテイメント要素を加えていく計画だそうです。岩佐氏はこの市場が将来的には数百兆円規模になると予測しています。
エイターリンクの国際展開戦略と世界規格への挑戦
ワイヤレス給電技術をグローバルに展開する上での最大の課題は、国際的な規格の統一です。技術が確立したばかりのため、各国で評価基準や規制が異なっています。
この課題に取り組むため、岩佐氏は2023年に国際的な無線通信規則を決める会合に民間企業の日本代表として参加し、60〜70か国の政府との直接交渉を行いました。最初は相手にされなかったものの、粘り強く論理的に交渉を続けた結果、ワイヤレス給電の国際規格化を進めることができたそうです。
岩佐氏は単独で戦うのではなく、アメリカやドイツなど各国の協力企業を通じて現地政府に働きかけるという戦略的なアプローチを取っています。「エイターリンクや日本がやりたいというよりは、米国や欧州の政府が現地企業の要望に応じる形で自然とまとまるように」と、黒幕的な立場で国際的なルール作りを進めているようです。
日本では既に法律が変わり、ワイヤレス給電技術が使えるようになっていますが、グローバル展開に向けては同様のルール作りが不可欠です。岩佐氏は「ルール作りは本質的な価値ではなく、あくまでもフィールドができただけ。そこからどうビジネスを作っていくかがスタート地点」と冷静に分析しています。
7. まとめ:テクノロジーの力で社会を変えるエイターリンクのワイヤレス給電
エイターリンクCEO岩佐凌氏が開発する長距離ワイヤレス給電技術は、私たちの生活やビジネスを大きく変える可能性を秘めています。オフィスのエアコン電気代を30%削減できるだけでなく、工場の生産性向上、CO2削減など多方面で革新をもたらす技術です。
現在、日本の大手デベロッパーや商業施設での導入が進み、2025年3月からは工場向けセンサーの量産も始まります。さらに2031年には宇宙からのワイヤレス給電実証実験も予定されており、その先にはスマートコンタクトレンズなど、SF映画のような未来も視野に入れています。
「テクノロジーで世の中を良くできると信じている」と語る岩佐氏。「お客さんが本当に欲しいと思うものにテクノロジーをアジャストして作り替えられるかが大事」という姿勢で、常に利用者視点に立った開発を続けています。
電気ケーブルのない世界の実現に向けて挑戦を続けるエイターリンクと岩佐凌氏の今後の展開から目が離せません。
※本記事は、2025年3月15日放送(テレビ東京系)の人気番組「ブレイクスルー」を参照しています。
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