「段ボールで日本を守る」と聞いて、驚かれた方も多いのではないでしょうか。2026年1月24日放送のテレビ東京系『ブレイクスルー』では、スタートアップ企業エアカムイの山口拓海CEOが登場し、常識を覆す段ボール製ドローンの全貌が明らかになりました。この記事では、番組で紹介された開発の背景から防衛産業への展望まで、詳しくお伝えします。日本の安全保障の新しい形が見えてきます。
エアカムイとは?山口拓海CEOが率いる段ボールドローン開発スタートアップ
エアカムイ(AirKamuy)は、2022年8月に創業した名古屋市に拠点を置くディフェンステック(防衛技術)スタートアップです。代表を務めるのは、番組出演時29歳の山口拓海CEOです。
社名の「カムイ」はアイヌ語で神や自然の力を意味する言葉で、日本発の技術で国を守るという志が込められています。同社は名古屋大学工学部機械航空工学科の卒業生を中心としたチームで構成されており、固定翼ドローンの開発を専門としています。
番組では、作家の相場英雄さんとテレビ東京の佐々木明子アナウンサーが、閑静な住宅街の一角にあるエアカムイの開発拠点を訪問しました。そこで目にしたのは、カッターで段ボールを切り出し、手作業で機体を組み立てている光景でした。一見すると小学校の工作のようですが、これが最先端の防衛技術なのです。
山口CEOは番組内で「人と同じことをしていたら同じ結果にしかならない」と語っています。この信念が、従来の防衛産業の常識を打ち破る段ボールドローンという発想につながったのでしょう。2025年4月にはプレシードラウンドで1億円の資金調達にも成功しており、投資家からの期待も高まっています。
段ボールドローンの驚きの性能!1機30万円・時速120キロの秘密
番組で最も注目を集めたのが、段ボール製ドローンの驚異的なスペックです。
まず価格ですが、なんと1機30万円です。通常、同タイプの固定翼ドローンは1,000万円以上することも珍しくありません。桁が一つ違うわけです。この圧倒的なコストパフォーマンスが、段ボールドローンの最大の強みといえます。
性能面も決して侮れません。最高時速は120キロ、飛行高度は3,000メートルにまで達し、飛行時間は1時間20分にも及びます。使用しているのは普通のJIS規格の段ボールで、特殊な強化処理は施していません。機体には撥水加工が施されているため、雨の中でも飛行可能です。
組み立ても非常に簡単で、わずか5分で完成します。使わないときはコンパクトに分解して収納できるため、大量輸送にも適しています。
番組では実際の飛行シーンも放送されました。スタッフが機体を空に向かって投げると、プロペラが回転し、あっという間に高く舞い上がりました。佐々木アナウンサーが「段ボールの不安感が全くない」と驚いたように、風に煽られても姿勢を崩すことなく安定した飛行を見せていました。
着陸方法もユニークで、なんと胴体着陸です。機体が多少破損しても、ガムテープで補修すれば再び飛べる可能性があるとのこと。そもそも「戻ってこないことも想定している」使い捨て前提の設計なので、高価な着陸装置は必要ないのです。
なぜ段ボール?自衛隊との対話から生まれた開発のきっかけ
なぜ山口CEOは段ボールでドローンを作ろうと考えたのでしょうか。番組ではその開発のきっかけが語られました。
実はエアカムイは当初、山岳救助などの民間用途を想定してドローン開発をスタートしています。しかし、自衛隊関係者との対話を重ねる中で、防衛の現場で求められているドローンの姿が見えてきたといいます。
それは「安くて、大量に作れて、長く飛べるドローン」でした。
この3つの要件を満たす素材として行き着いたのが段ボールだったのです。段ボールドローンの発想が生まれたのは2025年の夏頃とのことで、そこからわずか1年余りで飛行可能な機体を完成させたスピード感には驚かされます。
山口CEOは番組内で「重厚長大で時間をかけて装備品を開発するのが従来の防衛産業。我々はその逆を行く」と語っています。この機動力こそが、スタートアップならではの強みといえるでしょう。
小林翔吾CTOの技術力!飛行機型ドローンを支える鳥人間コンテスト出身者
段ボールドローンの設計・開発の中心を担っているのが、CTOの小林翔吾さんです。
小林CTOは学生時代から飛行機作りにのめり込み、あの有名な「鳥人間コンテスト」にも出場した経験の持ち主です。機体の設計から製作までを手掛けた経験が、今の段ボールドローン開発に生かされています。
番組内で小林CTOは、段ボールで飛行機を作る際の最大の難しさについて語りました。それは「曲面が作れない」という点です。
通常の航空機は、空気抵抗を減らし揚力を得るために曲面で設計されています。しかし段ボールは構造上、滑らかなカーブを作ることができません。そこで小林CTOは、折り曲げた角でも十分な性能が出るよう、独自の設計ノウハウを確立しました。
部品も特殊なものは使わず、ほとんどがインターネットで調達できるもので構成されています。あえて入手しやすい部品だけを使うことで、低コストと大量生産体制の両立を可能にしているのです。
防衛産業を変える「安いミサイル」抑止力としての攻撃用ドローン
番組で踏み込んだ話題となったのが、段ボールドローンの軍事利用についてです。
山口CEOは番組内で「言い方は難しいですけど、安いミサイルという考え方もできる」と発言しました。ドローンという言葉を使うと複雑に聞こえますが、本質的にはミサイルの延長線上にあるという認識です。
すでに海上自衛隊では、2025年10月に実施された洋上訓練で、エアカムイの段ボールドローンが使用されています。実戦を想定したドローン攻撃への対処訓練で、実弾射撃の標的として投入されたのです。
段ボールにはレーダーで発見しづらいステルス性もあるため、今後は攻撃用途での使用も検討されています。弾薬を搭載することで、抑止力としての役割を果たすことが期待されているのです。
山口CEOは「専守防衛のためには抑止力が重要。戦いにならないことが最も大切」と強調しています。何億円、何千億円もかけて抑止力を維持するのは、少子高齢化が進む日本では持続可能ではありません。コストを抑えながら実効性のある抑止力を構築する手段として、段ボールドローンは大きな可能性を秘めているのです。
100機編隊飛行も視野!防衛装備庁が注目するエアカムイの今後
エアカムイは現在、さらなる進化に向けた開発を進めています。
番組では、複数のドローンを同時に飛ばすためのソフトウェア開発の様子が紹介されました。シミュレーションでは2機の同時飛行が行われていましたが、将来的には10機、20機、そして100機という規模での編隊飛行を目指しているとのことです。各機体が風の状況を自ら推定しながら最適なルートを飛行するという、高度な自律制御技術の開発が進められています。
また、垂直離着陸が可能な新型ドローンも開発中です。翼に加えて垂直方向にもプロペラを搭載したこの機体は、手投げすら必要なく、空中でのホバリングも可能になります。価格は約50万円からを想定しているそうです。
防衛装備庁も注目しています。2024年に立ち上げた研究所では、スタートアップが持つ革新的な技術を防衛装備の開発に応用する「ブレークスルー研究」が始まっています。山口CEOも段ボールドローンを積極的にアピールしており、日本の新たな防衛装備品として採用される日も近いかもしれません。
海外市場も視野に入れています。アジアだけでなくヨーロッパ、アフリカ、南米からも関心が寄せられているとのことで、日本発の防衛技術が世界に羽ばたこうとしています。
まとめ~山口拓海の信念「人と違う挑戦を続けること」~
番組の最後、相場英雄さんは山口CEOに「あなたにとってブレイクスルーとは何か」と問いかけました。
山口CEOの答えは「人と違うことをやること」でした。人と同じことをしていては同じ結果にしかならない、替えが利かない存在として新しい結果を出していきたい、と語っています。
「頑固なへそ曲がり」と自らを評する山口CEOですが、その姿勢こそが段ボールという非常識な素材で防衛ドローンを作るという発想につながったのでしょう。「やれないと思っていることをやっていく、諦めずにやり遂げる」という言葉には、開拓者としての覚悟が感じられました。
東アジア情勢が揺れ動く今、日本の防衛はかつてない転換点に立たされています。従来の重厚長大な防衛産業に風穴を開けようとするエアカムイと山口拓海CEOの挑戦は、まさに「ブレイクスルー」の名にふさわしいものでした。今後の展開から目が離せません。
※ 本記事は、2026年1月24日放送(テレビ東京系)の人気番組『ブレイクスルー』を参照しています。
※ エアカムイ(AirKamuy)の公式サイトはこちら




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