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【カンブリア宮殿】スギノマシン杉野岳社長「水で世界と戦うグローカルニッチ戦略」

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2025年9月18日放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)で特集されたスギノマシンは、創業以来89年連続黒字という驚異的な記録を誇る産業機械メーカーです。富山県滑川市という人口3万人の小さな町から世界5000社以上と取引する同社の秘密とは何でしょうか。水の力を究める独自技術で世界と戦うスギノマシンの全貌に迫ります。

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スギノマシンとは?89年連続黒字を支えるウォータージェット技術の全貌

スギノマシンは1936年創業の産業機械メーカーで、グループ全体で約1,440名の従業員を抱える企業です。最も注目すべきは、創業以来89年間一度も赤字を出したことがないという驚異的な経営実績です。この安定経営を支えているのが、同社が日本で初めて開発したウォータージェットカッター技術です。

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スギノマシンのウォーターカッター                              (引用:「カンブリア宮殿」より)

ウォータージェットカッターは、水をマッハ2という音速の2倍のスピードで噴射し、直径0.1mmという極細の水流で物を切断する技術です。この技術の驚くべき点は、切断される物質が全く濡れないことです。バウムクーヘンやダンボールといった吸水性の高い素材でも、切断面は完全に乾燥した状態を保ちます。

杉野岳社長は番組内で「水と一緒に切断された部分が下に落ちていく。濡れた部分は抜け落ちていくイメージで、浸み込む時間がない」と説明しています。これは従来の刃物による切断とは全く異なる原理で、熱影響もなく、透明な素材や反射する素材でも問題なく加工できるという大きなメリットがあります。

同社のウォータージェット技術は食品加工から自動車部品、さらにはダイヤモンドの切断まで幅広い分野で活用されており、「切れないものはない」と言われるほどの汎用性を誇ります。この技術を核として、スギノマシンは国内ウォータージェットポンプ市場で45%という圧倒的なシェアを獲得しています。

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杉野岳社長が語る「グローカルニッチリーダー」戦略の秘密

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スギノマシンの杉野岳社長                                   (引用:「カンブリア宮殿」より)

現在のスギノマシンを率いるのは、2025年6月に社長に就任した杉野岳氏です。51歳の杉野氏は京都大学で経営学を学び、イギリスのロンドン大学・ウォーリック大学に留学後、トヨタグループの豊田工機(現ジェイテクト)で経験を積み、2001年にスギノマシンに入社しました。

杉野社長が掲げる戦略キーワードが「グローカルニッチリーダー」です。これは「ローカル(地方)で作ってグローバル(世界)で戦う」という意味で、富山県滑川市という地方都市に根ざしながら、世界のニッチ市場でトップを目指すという独自の経営哲学です。

「富山県滑川市という地方の地で、作っているもので世界で戦う。スギノマシンじゃなきゃできないという技術・商品を世界に提供して、そこでトップを取っていく」と杉野社長は番組で語っています。

この戦略の背景には、日本の地方が直面する人口減少という深刻な課題があります。富山県では今後15年で高校生が30%減ることが確定しており、杉野社長は「富山県が地盤沈下したら我々も生き延びていけない」という危機感を抱いています。だからこそ、地域に根ざしながらも世界で勝負できる技術力を磨き続けることが重要だと考えているのです。

この戦略が功を奏し、現在スギノマシンは世界9カ所に営業拠点を構え、社員の10%が外国人という国際的な企業へと発展しています。取引企業数は国内外合わせて5000社以上に達し、最大の輸出先であるアメリカでは年間400台もの機械を輸出しています。

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水の力を究める技術:ウォータージェットカッターはなぜ何でも切れるのか

ウォータージェット技術の核心は、水を極限まで高圧に圧縮する特殊なポンプ技術にあります。杉野社長は「水をものすごい圧力、高い圧力に圧縮させるポンプは、当社の本当に特殊技術、本当に世界屈指だ」と自信を示しています。

このポンプ技術により、水をマッハ2のスピードで噴射することが可能になります。音速の2倍という超高速で飛び出した水が物体に当たると、当たった部分だけを弾き飛ばして切断するという仕組みです。従来の刃物が物を「押し切る」のに対し、ウォータージェットは「弾き飛ばす」という全く異なるメカニズムを採用しています。

スギノマシンの水の力を究める技術は、切断だけにとどまりません。用途に応じて水圧やノズルの形状を調整することで、様々な応用が可能です。

例えば「ハイジェットクリーナー」は、一般的な高圧洗浄機の20倍の力を持ち、アスファルトやコンクリートの表面清掃に使用されています。石材を傷つけることなく表面の汚れだけを除去できるため、景観改善工事や危険なアスベスト除去作業でも活用されています。

さらに革新的なのが「ウォータービームマシン」です。これはレーザー技術と高圧水を組み合わせた装置で、ウォータージェットの水が光ファイバーのようにレーザーを包み込み、瞬時に冷却することで、従来のレーザー切断の欠点である熱変形を解決しています。これにより、ウォータージェットカッターの10分の1という直径0.01mmという超精密加工が可能になりました。

工業分野では「バリ取り」という金属加工後の突起除去作業にも威力を発揮しています。従来は人の手で2分かかっていた作業が、スギノマシンの自動バリ取り機なら30秒で完了し、品質の安定化も実現しています。

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5000社との取引を実現したスギノマシンの技術力と製品ラインナップ

スギノマシンが5000社以上という膨大な数の企業と取引関係を築けている理由は、その圧倒的な技術力と幅広い製品ラインナップにあります。同社の製品は1台3000万円から数億円という高価格帯にもかかわらず、世界中で採用され続けています。

主力製品であるウォータージェットカッターは、自動車産業での精密部品加工において特に高い評価を得ています。鉄より強度の高いチタンでも厚さ10cmまで切断可能で、切断面は驚くほど滑らかに仕上がります。この技術により、航空宇宙産業や医療機器業界といった高精度が要求される分野でも採用されています。

食品加工業界では、番組で紹介された忠犬ハチ公型バウムクーヘンのような複雑な形状の加工から、野菜の立体パズル、羊羹への文字入れまで、創造性豊かな用途が広がっています。刃物では不可能な複雑な曲線カットも水の力なら自在に実現でき、生産性を従来の2倍に向上させることができます。

建設・土木分野では、アスファルト表面の洗浄や景観改善工事に威力を発揮しています。石材を傷つけることなく表面の汚れだけを除去できるため、歴史的建造物の修復や美観向上プロジェクトでも重宝されています。

さらに注目すべきは、スギノマシンが製造工程の自動化サポートにも力を入れていることです。少量多品種生産で自動化が困難だった板金加工現場向けに、溶接箇所を入力するだけで自動溶接してくれるロボットシステムを開発し、わずか1週間の教育で現場職人でも操作できる使いやすさを実現しています。

この技術の多様性と応用範囲の広さが、BtoB機械メーカーでありながら「これほど顧客数と業界が多い会社はそうない」と杉野社長が自信を示す理由となっています。

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杉野太加良が築いたウォータージェット技術の歴史と発展

スギノマシンのウォータージェット技術の基礎を築いたのは、現社長の父である杉野太加良氏です。1936年、祖父の杉野林平が大阪で「杉野クリーナー製作所」として創業したのが同社の始まりで、当初は機関車の蒸気配管清掃用のチューブクリーナーを製造していました。

戦時中の1945年、林平は工場を富山県に疎開させました。戦後、太加良氏が開発した高圧ポンプが同社飛躍のきっかけとなります。1960年代、自動車産業で軽くて硬い樹脂素材が採用され始めましたが、従来の切断方法では熱で変形してしまうという問題がありました。

この課題解決のヒントとなったのが、意外にもドイツの戦闘機に関する論文でした。太加良氏は兄から「飛行機が雲の中を飛ぶと金属製の翼に水で傷がつく」という話を聞き、「うちの高圧ポンプを改良してものすごい速さの水を噴射すれば、熱を出さずに物を切ることができるのではないか」とひらめいたのです。

しかし、開発は困難を極めました。当時のポンプでは出力が不足し、高い水圧に耐える部品もありませんでした。太加良氏は課題を一つ一つクリアし、10年の歳月をかけて1975年、ついにウォータージェットカッターを完成させました。

この技術は輸出の花形となった自動車部品メーカーを中心に急速に普及し、その後アメリカやシンガポールにも拠点を構えるなど、スギノマシンの国際展開の基盤となりました。太加良氏は晩年、「自ら考案、考え、自ら作り、自らサービスしてお客様に貢献する。世の中にないものを考えたら、嬉しい」と語っており、この哲学は現在も同社のDNAとして受け継がれています。

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ナノファイバー事業への挑戦:機械メーカーから脱却した新戦略

現社長の杉野岳氏がスギノマシンに新たな成長軸をもたらしたのが、ナノファイバー事業への参入です。この挑戦の背景には、2008年のリーマンショックでの苦い経験がありました。

「リーマンショックの時はさすがにもうどの業種どのお客様も落ち込んだので、さすがに当社の業績も落ち込んだ。分散してるって言うけれど、結局機械しかやってないじゃないか。やっぱり機械以外もやらないといけない」と杉野社長は当時を振り返ります。

そこで注目したのが、植物繊維のセルロースなどから作られるナノファイバーでした。ナノファイバーはタイヤや紙おむつ、住宅建材など様々な用途が期待されていましたが、ムラができやすいという製造上の課題がありました。

杉野氏は2台のウォータージェットを使って原料をマッハ4で衝突させ、より均一で細かくする独自の製法を確立しました。この技術により誕生したのが、バイオマスナノファイバー「ビンフィス」です。

ビンフィスを使った製品は意外な分野でも活用されています。例えば、カニの殻が原料のキトサンナノファイバーを配合したヘアトリートメントは、ナノファイバー化することで補修成分が浸透しやすくなり、効果が長持ちするようになりました。紹介制の美容室で使用されるこのトリートメントは、客から「他とは違う」と高い評価を得ています。

この事業展開により、スギノマシンは単なる機械メーカーから、化粧品や健康食品といった消費者に身近な分野にも技術を提供する企業へと変貌を遂げました。杉野社長は「BtoB機械メーカーなのに、多分こんなにお客様の数と業界が多い会社ってのはそうない」と誇らしげに語っています。

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富山県滑川市から世界へ:地方企業が世界で戦う理由

スギノマシンの成功の背景には、地方に根ざしながらも世界を見据えた経営哲学があります。富山県滑川市は人口わずか3万人の小さな町ですが、ここから世界9カ所に営業拠点を展開し、年間400台もの機械を世界各国に輸出しています。

地方企業が世界で戦う理由について、杉野社長は明確なビジョンを持っています。「富山県では今後15年で30%高校生が減るっていうのはもう確定している。当社はグローカルニッチリーダー、ローカルで作り込んで世界で戦うというビジネスをやってる以上、富山県が地盤沈下したら我々やっぱり生き延びていけない」

この危機感から、スギノマシンは地域の人材育成にも積極的に取り組んでいます。富山県の高等専門学校では定期的に特別授業を開催し、最先端の知識を無償で教えています。学生たちは3ヶ月かけて自動荷物搬送装置を開発し、スギノマシンの技術者とリモートで意見交換を行うなど、実践的な学習機会を提供しています。

「1人1人のやっぱりこう質を上げるっていうことが必要だ。それのお手伝いをできるんであれば」という思いで、杉野社長は地域の教育支援に力を注いでいます。これは単なる社会貢献ではなく、将来の技術者確保という企業戦略でもあります。

また、トランプ関税などの貿易摩擦に対しても、技術力で対抗しています。「当社のような非常に高性能、高品質な商品を今すぐアメリカで同じものができるかと言うと、難しい。代替がきかない技術力を持っているため、関税分は顧客との折半で対応している」と杉野社長は説明します。

これは「他に替えが効かない技術力」があるからこそ可能な戦略であり、グローカルニッチリーダーとしての真価を示しています。地方の小さな町から、世界中の産業を支える技術を発信し続けるスギノマシンの挑戦は、日本の地方企業にとって大きな示唆を与えています。

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まとめ

「カンブリア宮殿」で特集されたスギノマシンは、89年連続黒字という驚異的な実績を持つ真のグローカルニッチリーダーです。杉野岳社長が掲げる「水で世界と戦う」戦略は、単なるスローガンではなく、具体的な技術力と明確なビジョンに裏打ちされた現実的な経営方針です。

ウォータージェット技術を核とした同社の成功要因は、他社では真似できない圧倒的な技術力、5000社という幅広い顧客基盤、そして地方に根ざしながらも世界を見据えた戦略的思考にあります。ナノファイバー事業への挑戦は、機械メーカーの枠を超えた新たな成長への布石となっています。

人口減少という日本全体の課題に直面する中で、スギノマシンの取り組みは地方企業の生き残り戦略として非常に示唆に富んでいます。技術力を武器に世界で戦いながら、地域の人材育成にも力を注ぐ同社の姿勢は、持続可能な地方創生のモデルケースと言えるでしょう。

2026年に創業90周年を迎えるスギノマシンが、次の100年に向けてどのような新たな挑戦を見せてくれるのか、今後の展開が大いに注目されます。

※ 本記事は、2025年9月18日放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)を参照しています。
※ 株式会社スギノマシンの公式サイトはこちら

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