2026年4月9日放送のカンブリア宮殿に、京王電鉄社長・都村智史氏が登場しました。「住みたい沿線」ランキングでは不人気なのに、住民の満足度は高い——そんな京王線を「行ってみたい沿線」に変えるための事業戦略とは? この記事では、都村社長の経歴や街づくり施策、小田急を34年ぶりに逆転した背景まで、番組の要点をわかりやすくまとめています。鉄道業界の生き残り策を知りたい方はぜひ最後までお読みください。
京王電鉄・都村智史社長が語る「不人気沿線からの逆襲」とは
2026年4月9日放送のカンブリア宮殿(テレビ東京系)では、京王電鉄の都村智史社長がゲストとして出演し、「不人気沿線からの逆襲」というテーマで自社の変革について語りました。
都村社長によれば、鉄道業界は「戦後最大の転換期」にあるといいます。人口減少に加え、リモートワークの普及、ネットショッピングの浸透など、かつてのように通勤客の増加だけで収益を伸ばせる時代は終わりました。京王電鉄に限った話ではありませんが、各私鉄が「鉄道以外の収益をどう伸ばすか」という共通の課題に直面しています。
そのなかで都村社長が掲げるのが、「ほどよいゆるさ」を武器にした独自の戦略です。きらびやかさよりも居心地の良さ。派手なブランドイメージよりもコミュニティの温かさ。こうした京王線らしい「ゆるさ」を強みに変えようとしているのです。
番組でMCの金原ひとみさんが「社員にとっては難しい挑戦では?」と問いかけると、都村社長は「失敗してもいいからヒットを増やすには、打席を増やそうと」と答えました。この「打席を増やす」という考え方こそが、京王電鉄の攻めの姿勢を象徴しています。
実際に、都村社長が就任してから京王電鉄の売上高はV字回復を果たし、2026年3月期の売上高は過去最高の5020億円を見込んでいます。「超楽観的」と自称する都村社長ですが、その楽観の裏には明確なビジョンと実行力があることが、番組を通じて伝わってきました。
京王電鉄の売上が過去最高!34年ぶりに小田急を逆転した理由
番組で大きなトピックとして取り上げられたのが、京王電鉄の売上高が長年のライバルである小田急電鉄を34年ぶりに上回ったという事実です。2026年3月期の売上高は過去最高の5020億円を超える見込みとのことで、これは京王電鉄の歴史のなかでも画期的な数字です。
では、なぜこれほどの躍進が可能だったのでしょうか。背景にあるのは、鉄道事業への依存から脱却し、多角的な事業展開を進めてきたことです。京王電鉄グループは運輸業にとどまらず、不動産、流通、ホテル、レジャーなど幅広い事業を手がけており、これらを有機的に結びつけることで収益力を高めてきました。
とはいえ、小田急電鉄も箱根や江の島といった観光資源を抱える強力なライバルです。京王電鉄がそれを上回ったのは、単純な規模拡大ではなく、沿線価値を高める地道な取り組みの積み重ねがあったからこそでしょう。高尾山の温泉施設「極楽湯」とケーブルカー、食事をセットにした「高尾山湯ったりきっぷ」(3480円)のようなお得感のある企画も、その一例です。利用客からは「大満足」「何回でも来られそう」と好評を得ている様子が番組でも紹介されていました。
筆者個人としては、この逆転劇は「派手なブランド」よりも「地に足のついた沿線経営」が評価された好例だと感じます。華やかさでは東急や小田急に分がありますが、生活に密着した価値を地道に積み上げていく京王のスタイルは、人口減少時代の鉄道会社の新しいモデルケースになり得るのではないでしょうか。
沿線の人気は低いのに満足度は高い?京王線の独自ポジション
番組で興味深かったのが、都村社長自身が行った「住みたい鉄道沿線」のアンケート調査の結果です。住みたいエリアを色分けした地図では、東急沿線やJR中央線沿線が濃い色で人気の高さを示す一方、京王線エリアは最も色が薄い——つまり「沿線住民以外からの人気は低い」という結果が出ていたのです。
ヒャダインさんが「やっぱりブランド力がそこまでない」と指摘した通り、二子玉川や田園調布のような全国に名前が轟くような駅は京王線には多くありません。街で聞いた声でも「踏切が多い」「小田急の方が有名」といった辛口の意見が。
しかし面白いのはここからです。住んでいる人の満足度調査では、京王線エリアがかなり高い数値を示していたのです。沿線住民からは「大好き」「いい意味で田舎味もあって、でも新宿まで来たら都会味もあって、ちょうどいい」「ジブリの映画に映ってるから誇り」といった温かい声が紹介されていました。
都村社長はこの結果について、「それほどきらびやかにシュッとはしてないけれど、ほどよいゆるさ。居心地の良さなのかなと」と分析しています。路線の総延長はわずか84キロ強で、大手私鉄のなかでもコンパクトな部類。新宿から高尾山まで1時間弱で行けるこの手軽さが、かえって愛着を生んでいるのかもしれません。
この「外からの評価は低いが、中の満足度は高い」という構図は、実は多くの企業や自治体が抱える共通のテーマでもあります。京王電鉄がここからどう「外への発信力」を高めていくのか——まさにこれが「不人気沿線からの逆襲」の核心部分です。
都村社長が進めるコミュニティ重視の街づくり――京王多摩川・ミカン下北の挑戦
都村社長が沿線活性化の柱として力を入れているのが、地域住民を巻き込んだ「コミュニティ重視の街づくり」です。番組では二つの象徴的な事例が紹介されました。
一つ目は、京王多摩川駅前の再開発です。かつて駅前には遊園地や植物園がありましたが、その跡地を使った新たな街づくりが進んでいます。相模原線との分岐点にあたる調布エリアは交通のハブでもあり、ポテンシャルの高いエリアです。マンションのほか保育園・福祉施設・スーパーなどが併設される予定ですが、都村社長が特にこだわっているのがコミュニティスペースの充実です。
高架下では地元の人気店が集まるマルシェが始まり、「以前は人がいなかった」という駅前に活気が生まれているそうです。さらに驚きだったのが、キッチンカーの貸し出し料金がなんと1日1円。出店者が「騙されるのかなと思った」と笑っていたのが印象的でした。都村社長は「誰でも気軽にチャレンジできる場を作りたい」とその意図を語っています。
二つ目は、2022年に下北沢駅の高架下にオープンした「ミカン下北」です。名前の由来は「未完成」の「ミカン」。おしゃれな古着店やベーカリー、多国籍な飲食店が並び、今では下北沢の新名所になっています。ちなみにヒャダインさんが「本当に失礼ながら小田急がやってると思ってた」と告白し、都村社長が「それをぜひ払拭したい」と苦笑する場面もありました。井の頭線は京王電鉄の路線なのですが、小田急線と思い込んでいる人も少なくないようです。
このミカン下北では「下北妄想会議」という住民参加型のアイデア出しの場も運営されています。「巨大知恵の輪を街中に置く」「コスプレスペースを作る」といった自由な発想が飛び交い、それが実際に街の変化に繋がっているというのですから、鉄道会社の街づくりとしてはかなりユニークです。
協力する企業からも「大きな企業なのにスタートアップより早く動いてくれる」と評価されており、京王のフットワークの軽さが伝わってきます。このあたりに、都村社長の「ゆるさ」と「攻め」のバランス感覚が表れているように思います。
ベンチャー協業で攻める「京王オープンイノベーションプログラム」とは
都村社長が就任直後に立ち上げたのが、「京王オープンイノベーションプログラム」です。これは社員がやりたい事業を企画し、ベンチャー企業とタッグを組んで経営陣にプレゼンする仕組みで、従来の鉄道会社にはなかった発想です。
番組で特に面白かったのが、ヤマメの養殖事業です。八王子の京王プラザホテルの使われなくなった浴槽を利用し、ベンチャー企業「アクポニ」と共同で東京のブランド魚「奥多摩ヤマメ」の養殖を行っています。魚の養殖で汚れた水を微生物が分解して野菜の栄養分に変え、水耕栽培に活用。栄養分がなくなった水は再び浴槽に戻すという循環型のシステムです。異常気象や生産者の高齢化で食材の供給に不安がある中、沿線の飲食店に食材を安定供給し、地産地消を目指すという取り組みです。
都村社長ご自身も、たまたま行きつけの店で「京王の人が持ってきたんだけど知ってますよね?」と言われて初めてヤマメの存在を知ったというエピソードが紹介され、社員が自主的に飛び込み営業をしていた行動力の高さがうかがえました。
もう一つの注目事例が、AI忘れ物検索サービス「落とし物クラウドFind」です。ベンチャー企業のfind社と共同開発したこのサービスは、LINEで落とし物の情報を送信するだけでAIが届いた忘れ物を自動照合してくれるもの。従来は約10%だった返還率が約30%にまで向上したそうです。このサービスはデジタルによる課題解決を推進する国の「Digi田甲子園」でも表彰を受けています。
さらに京王電鉄では、作家の岩井圭也さんと組んで京王線の各駅を舞台にした小説も制作。9万部を配布し、祥伝社から出版された文庫本が新宿の紀伊國屋書店でベストセラー10位にランクインするなど、大きな反響を呼びました。
都村社長は「我々だけが考えるストーリーが正解かどうか分からない。いろんな思いを持った人と複数のシナリオを同時に走らせた方がいい」と語っています。この柔軟な姿勢こそが、鉄道会社の枠を超えた新事業を次々と生み出す原動力になっているのでしょう。
新宿再開発3000億円プロジェクトの現在地と生き残り策
京王電鉄の事業戦略の中で最も規模が大きいのが、約60年ぶりとなる新宿の大規模再開発です。京王百貨店の建て替えやラグジュアリーホテルの建設を含む計画で、総事業費はおよそ3000億円という巨額のプロジェクトです。
しかし番組では、このプロジェクトが現在中断を余儀なくされていることも率直に語られました。理由は建設コストの高騰です。都村社長は「高騰した工事費に見合ったストーリーを作り直さなきゃいけない段階」と認めつつも、「プロジェクト自体はやり遂げる。これは変わっていない」と強い意志を示しました。
金原さんから「実現へのお金の手だてはあるんですか?」と率直に聞かれた都村社長は、「お金が高いっていうのをテレビでバンバン言うっていうのも一つ」とユーモアで返しつつ、「世界中からもっと人が集まってくるような魅力をつけられるエリア。かかったお金をしっかり意味あるものにできるポテンシャルはある」と自信をのぞかせました。
この新宿再開発は、京王電鉄単体の話ではなく、新宿エリア全体の60年ぶりの大きな街づくりの一部です。さらに橋本駅周辺のリニア中央新幹線開業に合わせた開発、京王多摩川駅前の約2.8ヘクタールの都市開発も同時に進んでおり、京王電鉄は創業以来かつてないほどの大規模投資フェーズに入っています。
人口減少時代の鉄道会社にとって、こうした大規模開発はリスクも大きい半面、長期的に沿線の価値を高めるための不可欠な「生き残り策」でもあります。コストの壁は確かに高いですが、ここを乗り越えた先にこそ、京王電鉄の次の50年が見えてくるのではないでしょうか。
都村智史の経歴――京王プラザホテル出向時代の挫折と成長
都村智史社長は1964年、神奈川県生まれ。1988年に上智大学文学部を卒業後、京王帝都電鉄(現・京王電鉄)に入社しています。2012年に沿線価値創造部長、2015年にはグループ会社のリビタ代表取締役社長を務め、2022年に京王電鉄の社長に就任しました。
番組で最も人間味があふれていたのが、30代での京王プラザホテル出向時代のエピソードです。1971年に新宿にオープンした京王プラザホテルは、当時国内で最も高いビル(地上170メートル)として世界中から注目を集めた京王の象徴的な施設です。
しかし都村社長にとって、そのホテルへの出向は大きな挫折の時期でした。「入社して10年弱ぐらいで生意気になっていた」と振り返る都村社長。電鉄本体では自分に妙な自信を持っていたものの、ホテルの世界では「何にも知らない」状態。「2年ぐらい自分が全く役に立ってない」という辛い日々が続き、「当時ビズリーチがあったら転職してました」と冗談交じりに語っていたのが印象的でした。
それでもホテルの現場に飛び込み、宴会スタッフなどと地道に信頼関係を築いていった結果、ホテルの人たちがどんな思いで仕事をしているかを学び、人間関係も深まっていったそうです。都村社長自身、「逃げなくてよかった」と振り返っています。
この挫折の経験が、今の「ゆるいけど芯がある」というリーダーシップスタイルを形作っているように感じます。社員からは「親しみやすい」「明るさに救われている」という声が多く、現場にもよく顔を出すとのこと。番組最後に「会社を経営する上で最も大事なことは?」と聞かれた都村社長は、「思いと、それを実現するストーリーを作る力」と答えました。知識や頭の回転の速さ以上に、思いが大事——この言葉には、ホテル時代の苦労を乗り越えた人ならではの重みがありました。
まとめ
2026年4月9日放送のカンブリア宮殿では、京王電鉄・都村智史社長の「ゆるさ」と「攻めの経営」の両立という、ユニークな事業戦略が紹介されました。
番組の要点をあらためて振り返ると、京王線は沿線住民以外からの知名度こそ低いものの、住んでいる人の満足度は非常に高い沿線です。その「ほどよいゆるさ」を生かしながら、コミュニティ重視の街づくり(京王多摩川やミカン下北)、ベンチャー企業との協業によるオープンイノベーション(ヤマメ養殖やAI忘れ物サービス)、そして新宿の3000億円規模の再開発と、攻めの施策を次々と打ち出しています。
売上高は過去最高の5020億円を見込み、34年ぶりに小田急を逆転。都村社長のホテル出向時代の挫折から生まれた「打席を増やす」経営哲学が、京王電鉄を新たなステージへと押し上げています。
MC・金原ひとみさんの編集後記にあった「余白を許さない時代に、そのゆるさを保ち続け、大らかに走り続けてほしい」という言葉が、京王電鉄の魅力をよく表していると思います。人口減少時代を生き抜く鉄道会社の新しいモデルとして、これからの京王電鉄の動きに注目していきたいですね。
※ 本記事は、2026年4月9日放送(テレビ東京系)の人気番組「カンブリア宮殿」を参照しています。
※ 京王電鉄の公式サイトはこちら




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