2025年5月22日にテレビ東京系「カンブリア宮殿」で放送された、飲食業界の革命児シコメルフードテック。創業者の川本傑社長が手掛ける「仕込み代行」サービスは、慢性的な人手不足と原材料費の高騰に苦しむ飲食業界に、まさに救いの手を差し伸べています。2024年の飲食店倒産が過去最多となる中、なぜシコメルフードテックは急成長を遂げているのでしょうか。番組で明かされた川本傑社長の経営哲学と、西原直良会長との感動的な創業ストーリーを詳しく解説します。
シコメルフードテックとは？川本傑が創業した仕込み代行サービスの仕組み
シコメルフードテックは、飲食店にとって最も時間と労力を要する「料理の仕込み」を代行する、これまでにない画期的なサービスを提供している企業です。川本傑社長が2019年12月に創業し、2020年のサービス開始から5年で約8,000店舗が登録するという驚異的な成長を遂げています。
シコメルフードテックの川本傑社長 （引用：「カンブリア宮殿」より）
同社のビジネスモデルは極めてシンプルです。飲食店からレシピを預かり、まず自社キッチンでその味を完全に再現します。その後、全国200以上の提携工場の中から最適な食品工場を選定し、「仕込み済み」の食材を店舗に送り届けるという仕組みです。店舗側は専用アプリで必要な量を注文すれば、翌日には配達されます。
特筆すべきは、単なる出来合いの商品ではなく、各店舗のオリジナルレシピを忠実に再現している点です。例えば、東京中野の韓国料理店では、10種類以上の調味料を独自配合した秘伝のヤンニョムチキンのタレを、シコメルが完璧に再現。本場の味を保ちながら、仕込み時間を大幅に短縮することに成功しています。
カンブリア宮殿で注目された「仕込み革命」の実態
番組では、シコメルフードテックの「仕込み革命」が詳細に紹介されました。川本傑社長は年間300日外食するほどの食通で、飲食業界の現場を熟知しています。この深い理解があるからこそ、飲食店が本当に必要としているサービスを提供できているのです。
仕込み代行により、飲食店は単に時間を短縮できるだけでなく、従業員の労働環境も大幅に改善されます。豚大門市場の松江芳栄さんは「開けてすぐ使える状況になったことで、スタッフの休憩時間を持つこともできるようになった。より お客様に向かうことができるようになったのは結構大きい」と語っています。
池袋のラーメン店「人類みな麺類とエスサワダ」では、自家製麺とチャーシューの仕込みにこだわる一方で、チャーハンはシコメルに発注。これにより、こだわりの部分に集中しながら、効率化も実現するという理想的な運営を可能にしています。
飲食店の課題を解決する画期的なビジネスモデル
シコメルフードテックが解決している飲食業界の課題は深刻です。慢性的な人手不足に加え、原材料費の高騰、そして2024年には飲食店の倒産が過去最多を記録するなど、業界全体が危機的状況にあります。
川本傑社長は「こんなにみんな一生懸命大変なことやっているのに、長く続けられないとか、やっぱりお給料が安いとか、みんな飲食店に行って喜んでもらえてる職業なのに、やっぱそこが追いついていないっていうのは、一番の僕は”負”だと思ってました」と語り、業界の構造的問題に真摯に向き合っています。
現在、同社の売上は23億円の見込みで、従業員40人という規模ながら右肩上がりの急成長を続けています。プラットフォーム利用料として月額1万円、アプリ利用料3,980円という手頃な価格設定により、1店舗からでもサービスを利用できる点が高く評価されています。
川本傑と西原直良の創業ストーリー「高校野球部からの絆」
シコメルフードテックの成功の背景には、川本傑社長と共同創業者・西原直良会長の深い絆があります。二人は大阪天王寺高校野球部の先輩・後輩という関係で、西原氏がファースト、川本氏がキャッチャーという異なるポジションを守っていました。
シコメルの西原直良会長 （引用：「創業手帳」HPより）
西原氏は高校3年生の時に1年生として入部した川本氏と出会い、その後の人生を大きく変える関係となります。西原氏は大学2年生の夏に中退し、資本金300万円で有限会社を設立。韓国食品の輸入卸の会社を起業しました。川本氏も大学に通いながら西原氏のパートナーとして働くようになり、早くから起業の現場を経験することになります。
大阪・難波の繁華街で二人はビジネスに奔走しましたが、当初は信用がなく現金でしか仕入れができない厳しい状況でした。韓国居酒屋やキムチ専門店など次々と飲食事業を立ち上げましたが、なかなか成功には至りませんでした。
リクルート出身川本傑の経営術と西原直良との再タッグ
大学卒業を迎えた川本氏は、より大きな組織で学ぶことを決意し、多くの起業家を輩出するリクルートに就職しました。入社してすぐに不動産サイト「SUUMO」の立ち上げに参加し、3年目には関西支社の営業成績で年間トップを獲得するなど、着実に実績を積み上げました。
一方、西原氏は韓国食品を製造しレストランに納入する工場を立ち上げ、ようやく軌道に乗せることに成功しました。別々の道を歩んだ二人でしたが、2018年に運命的な再会を果たします。
西原氏が川本氏に相談したのは「工場でやっている飲食店の仕込みの代行をもっと大規模にやる方法はないかな？」という内容でした。この時、川本氏にあるアイデアがひらめきます。「自分たちで工場を増やさなくても、全国の食品工場と飲食店を結びつける仕組みを作れば新しいビジネスになるかもしれない」。
川本氏は「食品工場のプラットフォームを作るっていうのは幅が広いし、掘れば深いって、人生かける価値あるなって思った」と振り返り、リクルートを辞めて2019年12月に西原氏と共にシコメルフードテックを立ち上げました。
シコメルフードテックの仕込み代行システム「200工場との提携網」
シコメルフードテックの競争優位性は、全国200以上の提携工場ネットワークと、蓄積された膨大なデータベースにあります。店舗から依頼された仕込みを実際に行うのは、これらの提携工場です。
同社では、これまでに作ってきたおよそ7,000品目のデータを基に、どの工場にオファーしたら最適な味・価格で製造できるかを判断しています。川本社長は「データベースがやっぱ命でして、過去どの工場でいくらぐらいで出来上がったかみたいなのが全部これ入ってるんですよね」と語り、このデータベースがビジネスの肝になっていることを明かしています。
例えば、神奈川の居酒屋「太陽ホエール」から依頼されたピーマンの肉味噌については、福島県郡山のメーカー「商工給食」に依頼しました。シコメルは過去の実績から、炒め物を得意としているこの工場を選定。まず試作品を作り、70点の評価を受けた後、100点になるまで何度も改良を重ねる徹底した品質管理を行っています。
7000品目のデータベースが支える品質管理
シコメルフードテックの強みは、単に工場と飲食店をマッチングするだけでなく、レシピの「翻訳」を行っている点です。調理士免許を持つ開発メンバーが、飲食店のキッチンでの調理工程を工場のライン生産に適用できるよう工程を変更したり、火力の違いを考慮して水分量を調整したりするアドバイスを提供しています。
特に注目すべきは、ドイツで10年間シェフを務めていた高政克昌氏のような、豊富な経験を持つ開発メンバーの存在です。彼らの知見により、様々な国の料理にも対応できる体制を整えています。実際、大阪関西万博のチェコパビリオンでは、チェコの伝統料理「ダンプリング」の仕込み代行を担当。高政氏の経験から肉まんに近いと判断し、中華まんが得意な工場に依頼することで、本場の味を再現することに成功しました。
スマホアプリで翌日配達を実現する仕組み
シコメルフードテックは、ITを武器としたDX企業でもあります。飲食店は専用アプリから簡単に発注でき、翌日には商品が配達される仕組みを構築しています。この利便性が、忙しい飲食店経営者から高く評価されています。
シコメルスマホアプリが画面 （引用：「シコメルフードテック」HPより）
同社では会議もオンラインで行い、従業員一人一人の健康にも気を配るなど、現代的な経営手法を取り入れています。川本社長の「人が やるべきことと機械がやるべきことをちゃんと分けていく」という考え方が、サービス設計の根底にあります。
飲食業界が抱える人手不足問題と仕込み代行による解決策
日本の飲食業界が直面している課題は深刻です。慢性的な人手不足に加え、原材料費の高騰、そして長時間労働による離職率の高さなど、構造的な問題が山積しています。シコメルフードテックの仕込み代行サービスは、これらの課題に対する有効な解決策を提供しています。
飲食店では仕込み作業に多大な時間を要しており、例えば「酒場シナトラ」の鴨メンチは毎日2時間の仕込み時間が必要でした。小林総料理長は「長年の課題なんですよね。この料理人っていうか その飲食業界で仕込みの時間っていうのか長すぎる。仕込みの時間が1時間短縮できればその1時間分を教育の部分に回したい」と語っています。
中小飲食店の働き方改革を実現
シコメルフードテックのサービス導入により、飲食店では働き方改革が実現されています。仕込み時間の短縮により、従業員はより接客に集中できるようになり、新しいメニュー開発や教育にも時間を割けるようになりました。
また、川本社長が指摘する通り「大変で辞めていく方がいなくなるので採用コストもどんどん減っていく」という効果も生まれています。これは、人手不足に悩む飲食業界にとって非常に重要な改善点です。
高級店では客単価1万円を超える店舗でもベースのスープや肉の下処理を依頼し、大衆店では「レンジでチン」や「揚げるだけ」「湯煎するだけ」の状態まで仕込み代行を行うなど、店舗の業態に応じた柔軟なサービス提供を行っています。
大阪関西万博チェコパビリオンでの成功事例
シコメルフードテックの技術力と対応力を示す象徴的な事例が、大阪関西万博チェコパビリオンでの仕込み代行です。チェコ人の料理スタッフが集まらない中、急遽シコメルに仕込み代行を依頼したこのプロジェクトは、同社の国際的な対応力を証明しました。
年末年始という短期間で試作品を作成し、来日したシェフに試食してもらいOKを獲得。チェコから来た家族連れの客からも「日本の食品会社が作ったんだね。チェコの文化味もそのままで素晴らしいよ」という高評価を得ています。
この成功により、川本社長は海外展開への意欲を示しており、「世界各地に日本料理屋、日本居酒屋が評価されておりますので、できれば我々がそこのお手伝いをして、美味しい手頃なメニューを提供したい」と語っています。
シコメルフードテックの成長実績と今後の展望
シコメルフードテックは創業から5年という短期間で、飲食業界に革命をもたらす企業へと成長しました。約8,000店舗の登録、売上23億円という数字は、同社のサービスが市場に受け入れられている証拠です。
2025年には登録1万店舗を突破し（2025年1月時点）、さらなる成長を続けています。同社は単なる仕込み代行にとどまらず、有名シェフが監修した250種類以上の調理済み料理を販売する「シコメルストア」も展開。売上の2%がシェフに還元される仕組みにより、料理人にとっても新たな収益源を提供しています。
8000店舗登録・売上23億円の急成長
シコメルフードテックの成長の背景には、コロナ禍という特殊な状況があります。川本社長は「創業した時が2019年でサービス2020年で実はコロナ禍真っ只中だったんですね。その時は実は通販のお手伝いとかデリバリー用の食材を作ってくれみたいなことから始めて、その実績をだんだん作っていき、コロナが明けていくとともに、イートインのお店の中のものもどんどんお預かりできるようになってきた」と振り返っています。
この困難な時期を乗り越えたことで、同社は「めちゃくちゃもがき苦しみましたけど、結果的にはそれは非常に大きな力になった」と川本社長は語っています。逆境をチャンスに変える経営手腕が、現在の成功につながっています。
海外展開と外食業界の未来予測
シコメルフードテックの今後の展望として、海外展開が大きな柱となります。川本社長は「海外の料理屋さんもそうですし、あと最初にやりたいと思ってるのは、世界各地に日本料理屋、日本居酒屋が評価されておりますので、できれば我々がそこのお手伝いをして、美味しい手頃なメニューを提供したい」と語っています。
また、料理人がいなくても飲食店が経営できる画期的なサービスも開始しており、東京荒川区のスナック「街中スナック ARAKAWA LABO 本店」では、イタリアンの有名シェフが手掛けたピザを焼くだけで提供しています。これにより「料理未経験でオッケー。採用はすごく楽ですよ」という新しい飲食店経営の形を実現しています。
川本社長は外食業界の未来について「人が やるべきことと機械がやるべきことをちゃんと分けていく。変化し続けることかな」と語り、シコメルフードテックがその変化をリードしていく意志を示しています。
まとめ
カンブリア宮殿で紹介されたシコメルフードテックは、川本傑社長と西原直良会長の高校時代からの絆と、飲食業界への深い愛情から生まれた革新的な企業です。「料理の仕込み代行」という新しいビジネスモデルにより、慢性的な人手不足と原材料費高騰に苦しむ飲食業界に光明をもたらしています。
全国200以上の提携工場と7,000品目のデータベースを武器に、1店舗からでもセントラルキッチンが持てる仕組みを構築。約8,000店舗が登録し、売上23億円という急成長を遂げている背景には、徹底した品質管理と飲食店の現場ニーズに対する深い理解があります。
大阪関西万博チェコパビリオンでの成功事例や、海外展開への意欲からも分かるように、シコメルフードテックの挑戦はまだ始まったばかり。飲食業界の「救世主」として、今後も業界の構造改革をリードしていくことが期待されます。川本傑社長の「変化し続けること」という経営哲学と、西原直良会長との強固なパートナーシップが、日本の外食業界の未来を明るく照らしています。
※ 本記事は、2025年5月22日にテレビ東京系で放送された人気番組「カンブリア宮殿」を参照しています。
※ シコメルフードテックのHPはこちら
コメント