「地震で家が傾いたらどうしよう…」そんな不安を抱えていませんか?2025年12月15日放送のNHKクローズアップ現代では、建物の「基礎リスク」が特集されました。番組では自宅の危険度チェックリストや具体的な対策が紹介されています。この記事を読めば、あなたの家のリスクを把握し、今すぐできる備えが分かります。大切な家族と住まいを守るために、ぜひ最後までご覧ください。
基礎リスクとは?能登半島地震で見えた「家が傾く」危険性
2024年1月に発生した能登半島地震をきっかけに、建物の「基礎」が地震で破壊されるリスクが大きな注目を集めています。
基礎とは、建物の足元を支える構造部分のこと。普段は地面の下に隠れていて目に見えませんが、この基礎が壊れると建物全体が傾いたり、最悪の場合は倒壊したりする危険があるのです。
能登半島地震では、石川県輪島市で約4分の1のビルが傾き、2人の方が亡くなりました。また、石川県内灘町では戸建て住宅1,161棟のうち約35%で基礎からの傾きが発生しています。
特に衝撃的だったのは、杭基礎の破壊によってビルが倒壊した事例が初めて確認されたことです。従来、建物が倒れるのは柱や梁が壊れることが原因と考えられてきました。しかし能登半島地震では、地下5メートルほどの深さで杭が折れ、7階建ての鉄筋コンクリートビルが横倒しになったのです。
東京科学大学の田村修次教授は番組内で「杭が壊れても建物が転倒することはないと思っていた。その常識が間違っていたことが今回はっきりした」と語っています。
私個人としても、「基礎は頑丈だから大丈夫」という思い込みがいかに危険か、改めて考えさせられました。目に見えない部分だからこそ、意識的にリスクを把握しておく必要があるのではないでしょうか。
危険度チェックリストの使い方|液状化リスクと建築年がカギ
番組では、田村修次教授ら専門家の監修のもと、自宅が傾くリスクを診断できるチェックリストが紹介されました。
このチェックリストで確認すべきポイントは主に3つです。
1つ目は「基礎の形式」です。 一軒家の場合、家を建てた時の仕様書を確認してください。「布基礎」や「ベタ基礎」と書いてあれば直接基礎です。マンションの場合は管理組合が保管している設計図書に基礎形式や杭の長さが記載されています。
2つ目は「液状化リスク」です。 各自治体が公表している「液状化危険度マップ」で、自分の住んでいる地域のリスクを確認できます。液状化が起きやすい地域では、基礎へのダメージが大きくなる傾向があります。
3つ目は「建築年」です。 これが最も重要な判断材料になります。建築基準法の改正により、基礎の耐震性能は年代によって大きく異なるからです。
番組で示されたリスクのパーセンテージは、能登半島地震(最大震度7)で建物が被害を受けた割合をもとに算出されたものです。あくまで基礎が原因で住めなくなるほど傾くリスクを示す目安ですが、自分の家の状況を把握する第一歩として非常に有用だと感じました。
詳しいチェックリストのについてはこちらへ
直接基礎と杭基礎の違い|耐震基準はいつ変わった?
建物の基礎には大きく分けて「直接基礎」と「杭基礎」の2種類があります。それぞれの特徴と耐震基準の変遷を見ていきましょう。
【直接基礎】 一軒家に多く採用されている形式で、杭などを使わず地盤の表面近くで建物を支えます。日本大学の酒句教明教授は「極端な言い方をすると置いてあるだけ」と表現しています。そのため液状化など地盤の変状に影響を受けやすいのが特徴です。
直接基礎の耐震基準は以下のように変遷してきました。
- 1981年まで:コンクリート基礎(鉄筋なし)
- 1981年以降:鉄筋入りコンクリート基礎
- 2000年以降:鉄筋コンクリート構造の基礎が義務化
【杭基礎】 主に軟弱な地盤にマンションやビルを建てる際に使われます。強度の高いコンクリートなどで作られた杭を、硬い地盤まで打ち込んで建物を支える構造です。
杭基礎の耐震基準の変遷は以下の通りです。
- 1984年まで:明確な耐震基準なし(建物の自重に対してのみ設計)
- 1984年:震度5強の中地震に対する耐震設計が「推奨」
- 2001年:中地震に対する耐震設計が「義務化」
注目すべきは、現在でも震度7の大地震に対する杭基礎の耐震設計は義務ではないという点です。つまり、法律を満たしていても大地震には対応できない可能性があるのです。
ビルが倒壊する3つの条件|田村修次教授が解説
2025年12月、国の専門家委員会は、倒れる恐れがあるビルの具体的な特徴を初めて公表しました。番組では田村修次教授の解説のもと、以下の3つの条件が紹介されています。
①細長い建物・柱の配置に偏りがある 輪島市で倒壊したビルは、横幅を1とした時に高さが2.5という細長い形状でした。さらに1階の柱の間隔が均等でなく、地震のダメージが一方向に偏りやすい構造だったのです。
②古い基準の杭基礎を使用している 1984年以前に建てられたビルは、杭基礎の耐震設計がされていない可能性があります。能登半島地震で倒壊したビルも、この年代のものでした。
③軟弱な地盤に建っている 表層が軟弱な地盤では、杭が破壊された際にビルの沈下を支えきれず、倒壊に至るリスクが高まります。
田村教授によると「この一つ一つの条件は決して珍しいものではなく、日本全国に一定数ある」とのこと。番組では渋谷駅周辺500メートルの調査も行われ、1984年以前に建築されたリスクのあるビルが複数確認されています。
名古屋、大阪、福岡など日本の大都市の多くは軟弱地盤の上にあるため、これは東京だけの問題ではありません。私たちが普段歩いている街にも、こうしたリスクが潜んでいる可能性があることを認識しておくべきでしょう。
傾いた家の修復方法と費用|土台揚げから鋼管圧入まで
もし地震で家が傾いてしまった場合、どのような修復方法があるのでしょうか。番組では曳家職人の岡本直也さんの作業が紹介されました。
【土台揚げ】 建物を基礎から切り離してジャッキで持ち上げる工法です。岡本さんは70台ものジャッキを使い、人力で少しずつ上げることで建物を傷めずに修復します。作業期間は約3週間、費用は約400万円。一定の条件を満たせば行政からの補助対象にもなります。比較的安価ですが、再び沈下する可能性はあります。
【その他の工法】
- 薬液注入:地盤に薬液を注入して固める方法
- 耐圧版:地下に耐圧版を入れて基礎ごと持ち上げる方法
- 鋼管圧入:鋼管を地下に打ち込んで基礎を支える方法。再沈下防止効果は高いですが、費用も高額になります
岡本さんは「あと10年、15年住めればいいという方には土台揚げが合う。あと何年使いたいかバランスを考えて、信頼できる建築士に相談してほしい」とアドバイスしています。
なお、マンションでもジャッキアップによる復旧は可能ですが、コストが極めて高く、復旧には1〜2年という長い時間がかかるそうです。
基礎リスクへの対策|地震保険と耐震補強の選択肢
では、基礎リスクに対して私たちは何ができるのでしょうか。
【事前の対策】
1. 地震保険への加入 田村教授は「個人レベルでの液状化対策は難しい。事前の策としては地震保険に加入するのも一つの方法」と述べています。傾きの修復には数百万円から1,000万円近くかかることもあるため、経済的な備えは重要です。
2. 新技術による耐震補強 番組では、国からの資金援助を受けて開発された杭基礎の補強技術も紹介されました。地中にノズルを伸ばし、高圧力でコンクリートを放出して杭の周りを固める方法です。千葉大学の中井正一名誉教授は「杭の破損が防げる可能性がかなり高まり、建物の継続使用も可能になる」と評価しています。ただし工事には数千万円以上かかることもあり、コストが課題です。
【これから家を建てる・購入する方へ】
田村教授は「リスクの低い土地を選ぶのが一番」としつつも、「建築基準法でOKではなく、もっと耐震性能の良い杭を使う選択もある」と提言しています。
「縁の下の力持ち」という言葉がありますが、基礎構造はまさにそれ。「このマンション、いい杭使ってるね」と褒める人はいません。だからこそ、建築基準法を満たすだけの安い杭が使われがちなのが現状です。
私としては、目に見えない部分にこそお金をかける価値があると考えます。将来の安心を買うという意味で、基礎の耐震性能にも注目してほしいと思います。
まとめ
2025年12月15日放送のNHKクローズアップ現代では、能登半島地震で明らかになった「基礎リスク」について詳しく解説されました。
この記事のポイントをまとめると以下の通りです。
- 基礎リスクとは、地震で建物の基礎が破壊され、傾いたり倒壊したりする危険性のこと
- 危険度チェックリストでは「基礎の形式」「液状化リスク」「建築年」を確認する
- 直接基礎は2000年以降、杭基礎は2001年以降に耐震設計が義務化された
- ビル倒壊の3条件は「細長い形状」「古い杭基礎」「軟弱地盤」
- 傾いた家の修復には土台揚げ(約400万円)などの方法がある
- 事前対策として地震保険への加入が有効
基礎は普段目に見えないからこそ、意識的にリスクを把握しておくことが大切です。まずは自治体の液状化マップを確認し、自宅の建築年と基礎形式を調べることから始めてみてはいかがでしょうか。
※ 本記事は、2025年12月15日放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。


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