2025年6月8日放送のTBS系「がっちりマンデー!!」で、九州の通販王国の秘密が明かされました。中でも注目を集めたのが、福岡のキューサイが編み出した独自のCM手法「ビフォーアフターアフター」です。この革新的な手法により、電話での問い合わせ件数が約3倍にまで増加したという驚きの結果を記録しています。
キューサイの「ビフォーアフターアフター」とは?29分番組CMの革新的手法
キューサイが展開する「ビフォーアフターアフター」手法は、従来の通販CMの常識を覆す画期的なアプローチです。一般的な通販CMでは、商品使用前の「ビフォー」と使用後の「アフター」を見せて終わりとなりますが、キューサイはその先の「アフターアフター」まで描くことで、視聴者の心をより深くつかむことに成功しています。
この手法では、商品を使って美しくなった後の「さらにその先の夢の実現」まで描写します。例えば、化粧品を使って肌が美しくなった女性が、孫から「おばあちゃん可愛い」と言われるシーンまで演出することで、単なる商品効果の紹介を超えた感動的なストーリーを作り上げています。
がっちりマンデーで紹介されたキューサイの長いCM制作現場
番組では、福岡市中央区に本社を構えるキューサイの29分番組制作現場に密着取材を行いました。キューサイは青汁や化粧品を主力商品とする通販企業で、2024年12月期の売上高は255億円という規模を誇る大企業です。
29分という超長時間のCM番組は、業界では「インフォマーシャル」と呼ばれ、情報(インフォメーション)と広告(コマーシャル)を組み合わせた造語です。通販企業が実店舗を持たない分、この29分番組自体が「バーチャル店舗」の役割を果たしているのです。
宮崎晴香氏が語るCM制作へのこだわり
キューサイのマーシャル部で化粧品CMの制作を担当する宮崎晴香さんは、「めちゃくちゃこだわってます」と語るほど、CM制作に対する並々ならぬ情熱を持っています。同社のCMは基本的に29分のテレビ番組形式で制作され、一つの商品の魅力を余すところなく伝える構成となっています。
宮崎さんによると、キューサイの売上のほとんどはテレビCMを見て電話をかけてきたお客様からのものだといいます。このため、CMの品質が直接売上に直結する重要な要素となっているのです。
なかやまきんに君起用で話題の青汁CM戦略
キューサイの青汁CMには、現在なかやまきんに君が出演しています。「ケールはそもそもまずい。本物はまずいんですぅ!」というセリフで、かつての「まずい、もう1杯」のCMをオマージュした新しいアプローチを展開しています。
これは40~50代の男性層に向けて、当時の印象を喚起させる戦略の一環です。キューサイの青汁は現在、総売上高の約1割を占める重要な商品であり、60~70代を中心とした長期愛用者に支えられています。
通販業界を変えた「アフターアフター」手法の効果とは
キューサイが編み出した「アフターアフター」手法は、通販業界全体に大きな影響を与えています。この手法の核心は、商品の効果だけでなく、その先にある人生の充実感や幸福感まで描くことにあります。
電話件数3倍増加を実現した夢実現ブロック
「アフターアフター」手法を導入した結果、キューサイでは電話での問い合わせ件数が約3倍に増加したという驚異的な結果を記録しました。これは単なる商品紹介を超えて、視聴者の感情に訴えかけることができたからこその成果です。
例えば、化粧品の場合、肌が美しくなった女性(アフター)が、その後孫と再会し「おばあちゃん可愛い」「プニプニで可愛い」と言われるシーン(アフターアフター)まで演出します。この「夢実現ブロック」と呼ばれる手法により、視聴者は自分の理想的な未来を具体的にイメージできるようになるのです。
近藤裕次郎監督の自然なインタビュー技術
キューサイのCMで重要な役割を果たしているのが、CM監督を務める近藤裕次郎さんです。体験者から自然なコメントを引き出すプロフェッショナルとして、その技術は業界でも高く評価されています。
番組内で実演された街頭インタビューでは、近藤さんは「年齢とお肌の悩みを引き出す」という難しいお題に挑戦しました。趣味の話から始めて、美容の話、そして自然に年齢の話題へと誘導する巧みな技術は、多くの視聴者を驚かせました。この自然な会話の流れこそが、キューサイのCMに説得力を与える重要な要素となっています。
キューサイが属する九州通販王国の秘密
キューサイが拠点を置く九州は、「通販王国」と呼ばれるほど多くの通販企業が集積している地域です。ドモホルンリンクルの再春館製薬所(熊本県)、日田天領水(大分県)、ジャパネットたかた(長崎県)など、全国的に知名度の高い企業が軒を連ねています。
売上255億円を支える福岡発の通販ビジネス
キューサイの2024年12月期の売上高255億円は、同社の革新的なマーケティング手法と高品質な商品開発の賜物です。現在の事業構成は、ヘルスケア商品が51.4%、スキンケア商品が45.6%、その他が3.1%となっており、青汁のイメージが強い同社ですが、実際にはコラーゲンを活用した商品が主力となっています。
キューサイは13年連続でケール青汁売上第1位、コラーゲン健康食品通販でも13年連続売上第1位を獲得するなど、通販業界でのリーディングカンパニーとしての地位を確立しています。
ふくやから始まった九州通販文化の歴史
九州が通販王国となった背景には、明太子の「ふくや」がコールセンターでの受注システムを開始したことが大きく関係しています。このノウハウが他の企業にも共有され、九州全体に通販文化が根付いていったのです。
九州では古くから実演販売や宣伝講習販売が盛んであり、この土壌が通販ビジネスの発展を後押ししました。現在では九州の通販企業の総売上は推定2,000億円規模に達し、全国市場に大きな影響力を持っています。
長いCMが成功する理由と通販業界への影響
29分という長時間のCMが成功する理由は、通販企業特有のビジネスモデルにあります。実店舗を持たない通販企業にとって、CMは単なる宣伝ではなく、商品を直接販売する「バーチャル店舗」としての機能を果たしているのです。
黒岩あゆ美氏が明かす顧客心理に基づく演出選択
キューサイのマーケティング本部に所属する黒岩あゆ美さんは、顧客の声を基にした演出選択の重要性について語っています。例えば、「綺麗になったら主人に見せたい」というケースは演出で使わないという方針があります。
これは長年の夫婦生活を送る顧客からの「もういいよ、旦那はもういいよ」という声を反映したものです。このように、実際の顧客の心理を深く理解し、それに基づいた演出選択を行うことで、より多くの視聴者の共感を得ることができるのです。
29分番組形式が生み出すブランド信頼性
29分という長時間をかけて一つの商品を紹介することで、企業の信頼性向上にも寄与しています。短い時間では伝えきれない商品の詳細情報、開発背景、使用方法、お客様の声など、あらゆる情報を丁寧に伝えることで、視聴者との信頼関係を構築できるのです。
また、同じ内容を繰り返し放送することで、番組の途中から視聴した人にも重要な情報が確実に伝わるよう配慮されています。これは実店舗での接客と同様に、お客様がいつ来ても必要な情報を得られるという「おもてなし」の精神の表れでもあります。
まとめ
キューサイの「ビフォーアフターアフター」手法は、単なるCM技法を超えて、通販業界全体の常識を変える革新的なアプローチです。商品の効果だけでなく、その先にある人生の充実感まで描くことで、視聴者の心に深く響くメッセージを伝えることに成功しています。
29分という長時間のCM番組は、通販企業にとって重要な「バーチャル店舗」としての役割を果たし、顧客との信頼関係構築に大きく貢献しています。九州という通販王国から生まれたこの手法は、今後も通販業界の発展を牽引していくことでしょう。
キューサイの成功事例は、「がっちりマンデー!!」で紹介されたように、革新的なマーケティング手法と顧客心理の深い理解が組み合わさることで、驚異的な成果を生み出すことができることを証明しています。
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