「斜陽産業では儲からない」という常識を覆す企業が、2025年10月26日放送の「がっちりマンデー!!」で紹介されました。徳島県の株式会社四国の右下木の会社が、炭業界にデジタル技術を導入し、創業5年目で年商1億円を達成。この記事では、吉田基晴社長が実践する革新的なビジネスモデルと、斜陽産業でも成功できる秘訣を徹底解説します。
四国の右下木の会社とは?炭業界で年商1億円を実現した吉田基晴社長の挑戦
株式会社四国の右下木の会社は、徳島県美波町に本社を構える炭焼き企業です。社長の吉田基晴さんは、「時代が来た。これからもがっちり」と力強く語り、創業5年目で年商1億円を達成する見込みという驚異的な成長を遂げています。
炭業界は典型的な斜陽産業です。江戸時代には暮らしに欠かせない燃料として日本中で炭焼きが行われていましたが、石油やガスの普及により需要が激減。さらに炭作りには約3週間という長い時間と高度な職人技が必要なため、多くの炭焼き業者が廃業に追い込まれてきました。
しかし、吉田社長はこの厳しい環境をチャンスと捉えました。番組に出演した経済アナリストの森永康平さんが指摘したように、「斜陽産業だからこそ、放っておけば競合が減り、頑張れば市場を独占できる可能性がある」のです。
注目すべきは、吉田社長がもともとIT企業で働いていたという経歴です。伝統的な炭焼き業界に、IT業界で培ったデジタル思考を持ち込んだことが、この会社の成功の鍵となっています。従来の業界の常識に縛られない外部の視点が、革新的なビジネスモデルを生み出したのです。
現在、四国の右下木の会社は全国80店舗以上に高級備長炭を販売しており、斜陽産業と呼ばれる炭業界において確固たる地位を築いています。
デジタル革命が炭焼きを変える!スマート炭焼きシステムの全貌
四国の右下木の会社が炭業界で成功した最大の理由は、「スマート炭焼き窯」という革新的なシステムの開発にあります。
椎名洋光氏が開発「携帯でどこにいても温度確認できる」革新技術
炭作り10年のベテランである取締役の椎名洋光さんが、この画期的なシステムを開発しました。従来の炭焼きでは、窯に木を入れてしまうと中の様子が見えなくなるため、煙突から出る煙の匂いだけで窯の中の状態を判断しなければなりませんでした。
この微妙な温度変化を見極めるには、ほぼ毎日窯につきっきりになる必要があり、椎名さん自身も「帰れない時は2、3日泊まり込み」という超ハードな日々を過ごしていたそうです。
そこで椎名さんが考案したのが、煙突にデジタル温度計を設置し、スマートフォンで遠隔監視できるシステムです。「携帯でどこにいても温度確認できる」この仕組みにより、職人が窯につきっきりにならなくても、自宅にいながら正確な温度管理が可能になりました。異常な温度変化があればすぐにアラートが届き、必要な時だけ窯に駆けつければ良いのです。
このデジタル技術の導入は、炭焼き業界における真のイノベーションと言えるでしょう。伝統産業にテクノロジーを融合させることで、労働環境の改善と生産性の向上を同時に実現したのです。
名人級の技術を短期間で習得可能に
スマート炭焼き窯のもう一つの大きなメリットは、技術伝承のハードルを大幅に下げたことです。椎名さんは「ITを活用することで、短期間で名人級の技術を習得することができるようになった」と語っています。
従来は何年も修行を積まなければ一人前になれなかった炭焼き職人が、デジタル技術のサポートにより、データに基づいた正確な温度管理を短期間でマスターできるようになったのです。これは人材育成の観点から見ても極めて重要な進化です。
職人技をデジタル化することで、属人的だった技術を標準化し、誰でも高品質な備長炭を作れる体制を構築した点は、他の伝統産業にとっても大いに参考になる事例でしょう。
高級備長炭が一般炭の20倍以上!価格差の理由と品質の秘密
四国の右下木の会社が扱う備長炭は、一般的なバーベキュー用の炭とは別格の高級品です。吉田社長によれば、通常の炭が1キログラムあたり100円から150円程度なのに対し、同社の備長炭は1キログラムあたり2000円近く、実に20倍以上の価格で取引されています。
この圧倒的な価格差を生み出しているのが、備長炭特有の品質です。番組内で実際に備長炭同士をぶつけると、金属音のような澄んだ音が響きました。この音こそが高級品の証なのです。
備長炭は硬度が非常に高く、長時間安定した火力を保てるのが特徴です。高級焼き鳥店や鰻店など、プロの料理人に愛用されるのはこのためです。また、消臭効果や調湿効果にも優れており、燃料以外の用途でも需要があります。
スマート炭焼き窯の導入により、この高品質な備長炭を効率的に、かつ安定的に大量生産できるようになったことが、ビジネスとして成立する鍵となっています。高付加価値商品を効率よく作れる体制こそが、斜陽産業で勝ち残る戦略なのです。
循環型ビジネスモデルの核心:ウバメガシの切り方と宝の山戦略
四国の右下木の会社のビジネスモデルで特筆すべきは、持続可能性を追求した循環型の仕組みです。
ウバメガシを活かす独自の伐採技術
備長炭の原料となるのは、西日本に多く自生するウバメガシという木です。吉田社長は「僕らからするとこれは宝の山」と表現するほど、ウバメガシの森を重要な資源と位置付けています。
ウバメガシの大きな特徴は、伐採しても切り株から新しい芽が出て再生する点です。しかし、ただ切るだけでは不十分。吉田社長は独自の切り方を実践しています。
まず、なるべく地面に近い根元から切ることで、新しい芽にしっかりと栄養が届くようにします。さらに、切り口を斜めにすることで、雨水が溜まらず切り株が腐るのを防ぎます。この工夫により、切り株から健全に新芽が育ち、次の世代の木へと確実につながっていくのです。
10~20年で再生可能な持続可能経営
ウバメガシは成長が早く、10年から20年で再び炭が作れる大きさにまで育ちます。吉田社長が目指すのは、「木を切って備長炭を作って売る。また木が成長したら切って備長炭を作って売る」という循環型の儲かりビジネスです。
この発想は、単なる環境保護ではなく、経営の持続可能性そのものです。資源を使い尽くすのではなく、再生させながら活用することで、長期的に安定した事業運営が可能になります。番組MCの加藤浩次さんも「循環してるっていうのは環境に本当にいい」と感心していましたが、まさに経済と環境の両立を実現したモデルと言えるでしょう。
日本の国土の約7割が森林という事実を考えれば、このビジネスモデルの可能性は計り知れません。森林資源を有効活用しながら、地域経済の活性化にもつながる理想的な循環型経済の実例です。
今後の展開:ノウハウとシステムを全国の自治体へ提供する構想
吉田社長の野心はさらに大きく広がっています。番組の中で「今後どうしていくつもりですか」と問われた吉田社長は、驚くべき構想を明かしました。
「今、国全体、それから地方自治体も、森の活用方法がなくてお困りです。私たちは全国の自治体さんに、このセットごと提供していきたい」
つまり、四国の右下木の会社が開発したスマート炭焼き窯のシステムと、循環型ビジネスのノウハウを、全国の自治体に販売・提供していくというのです。これは炭を売るビジネスから、ビジネスモデルそのものを売るビジネスへの転換を意味します。
加藤浩次さんが「システムを売るってことですか?」と確認すると、吉田社長は「そうです、ノウハウとシステム」と明言しました。これは極めて戦略的な経営判断です。
多くの地方自治体が森林の活用に悩んでいる現状を考えれば、実績のあるビジネスモデルをパッケージとして提供するこの構想は、大きな市場を開拓する可能性を秘めています。「すごい壮大なビジネスになりますね」という加藤さんのコメント通り、これが実現すれば、四国の右下木の会社は日本全国の森林資源活用のプラットフォーム企業になる可能性すらあります。
まとめ:斜陽産業から学ぶイノベーションの本質
株式会社四国の右下木の会社の成功事例は、斜陽産業においてもイノベーションによって大きなビジネスチャンスがあることを示しています。
その成功の要因をまとめると、以下の3点に集約されます。
第一に、伝統産業へのデジタル技術の導入です。IT業界出身の吉田社長が、炭焼きという伝統的な職人技にデジタル温度管理システムを導入したことで、生産性と品質の両立を実現しました。
第二に、高付加価値商品への特化です。一般炭の20倍以上の価格で売れる高級備長炭に焦点を当てることで、斜陽産業でも十分な収益を確保できることを証明しました。
第三に、持続可能な循環型モデルの構築です。ウバメガシの再生力を活かした循環型ビジネスは、長期的な事業継続を可能にします。
番組に出演した森永康平さんが指摘したように、「斜陽産業は放っておけば競合がいなくなり、頑張れば市場を独占できる」のです。むしろ、参入障壁が高く競合が少ない斜陽産業こそ、革新的なアイデアを持つ企業にとっては大きなチャンスなのかもしれません。
創業5年目で年商1億円を達成し、今後は全国の自治体にノウハウとシステムを提供していく四国の右下木の会社。この事例は、どんな業界でもイノベーション次第で成長できることを教えてくれています。
※ 本記事は、2025年10月26日放送(TBS系)の人気番組「がっちりマンデー!!」を参照しています。
※ 株式会社四国の右下木の会社の公式サイトはこちら







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