おせち料理に欠かせないタコ。しかし近年、その価格が急激に高騰し、スーパーではマグロよりも高価な食材になっています。今回は、タコが食べられなくなる可能性や漁獲量減少の実態、そして国産タコの新たな展開まで、詳しく解説していきます。
タコが食べられなくなる深刻な理由と最新状況
2024年、タコの価格高騰が深刻な問題となっています。東京・品川の魚河岸中輿商店武蔵小山店では、マダコの本体価格が100g当たり699円にまで上昇。これは5~6年前と比べると2倍以上の価格です。
さらに驚くべきことに、高級食材の代名詞であるマグロと比較しても、タコの方が高価になっています。同店の冷凍メバチマグロの中トロが100g当たり600円、旬の生メバチマグロでも680円という状況です。
タコの漁獲量減少と価格高騰の実態
大東文化大学経済学部の山下東子教授の調査によると、国内のタコ漁獲量は2019年までは年間約3万5千トンを維持していました。しかし、ここ2年間で2万2千トンにまで減少。1万トン以上も生産量が落ち込んでいます。
この影響は、タコ焼き店にも及んでいます。タコの仕入れ価格が開店当初の2倍になったため、販売価格を6個400円から550円に値上げせざるを得ない状況に。タコのサイズを小さくすることも、他の食材に替えることもできず、苦境に立たされています。
モーリタニア産タコが日本に来なくなった理由
日本のタコ輸入量は、2013年をピークに右肩下がりが続いています。この10年間でおよそ3万トンも減少しました。特に最大の輸入先であるモーリタニアからの輸入が激減している理由は、「買い負け」にあります。
実は、モーリタニアのタコ漁は、「タコの神様」と呼ばれる中村正明さんが1978年に青年海外協力隊員として現地で指導を始めたことがきっかけでした。当時わずか200人だったタコ漁師は、2023年には5000隻の船に2万人もの漁師が従事するまでに成長。しかし、その恩恵を受けているのは、もはや日本だけではありません。
ヨーロッパ勢が全体の3分の2を買い占め、さらにアメリカ市場への輸出も増加。日本は品質にこだわるため、形の悪いものは買いませんが、ヨーロッパは見た目を気にせず大量購入するため、価格競争で優位に立っています。
国産タコの漁獲量が増加傾向に
一方で、明るい話題もあります。宮城県南三陸町の志津川湾では、タコの漁獲量が著しく増加しています。「西の明石、東の志津川」と呼ばれる良質なタコの漁場で、過去10年間で水揚げ量が8倍、売上は17倍にまで急増しました。
志津川産のタコの特徴は、ウニやアワビをエサにして成長することです。そのため、肉厚で濃厚な味わいが特徴とされています。宮城県漁業協同組合志津川支所の高橋義明課長によると、漁師の収入も大幅に増加し、水揚げの翌日には入金されるため、安定した収入源となっているそうです。
タコの養殖は実現可能なのか?
輸入タコの確保が難しくなる中、養殖への期待が高まっています。しかし、商業ベースでの養殖には複数の課題があります。
まず、タコはアワビなどの生きた餌を好むため、餌代が高額になります。また、群れを作らない習性があり、同じ生け簀で飼育すると共食いの問題が発生。さらに、賢い生き物であるため、養殖場から脱走してしまうケースも。これらの問題を解決し、コストを抑えながら大量生産する技術は、まだ確立されていません。
まとめ
タコの価格高騰と漁獲量減少は、グローバル化による需要の変化が大きな要因となっています。しかし、志津川湾のような国内産地の躍進は、新たな可能性を示しています。当面は輸入タコの価格高騰が続く可能性が高いものの、国産タコの活用や養殖技術の発展に、期待が寄せられています。
※本記事は、2024.12.17放送のテレビ東京系番組「LIFE IS MONEY~世の中お金で見てみよう~」を参照しています。
・この道30年、タコ一筋と番組紹介された津久浦裕之社長の会社「株式会社津久勝」のHPはこちら
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