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【クローズアップ現代】賛育会病院の赤ちゃんポスト「内密出産の現実と課題」

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2025年6月11日放送のNHK「クローズアップ現代」では、今年3月末に東京・墨田区で開始された国内2例目の赤ちゃんポストについて、2ヶ月間の密着取材をもとに現場の実情が詳しく報道されました。賛育会病院での取り組みは、追い詰められた女性たちにとって命の最後の砦となっている一方で、様々な課題も浮き彫りになっています。

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賛育会病院が開始した国内2例目の赤ちゃんポスト(ベビーバスケット)とは

賛育会病院(東京都墨田区)は2025年3月31日午後1時から、親が育てられない子どもを匿名で受け入れる「赤ちゃんポスト」の運用を開始しました。病院では「ベビーバスケット」または「いのちのバスケット」という名称で呼んでおり、熊本市の慈恵病院に続く全国2例目の医療機関による取り組みとなります。

賀藤均院長は、この決断に至った背景として、同病院が扱う困難な妊娠ケースの多さを挙げています。2024年の分娩数743件のうち、約10%にあたる女性が貧困や虐待などの困難を抱え支援が必要な状況でした。さらに深刻なのは、2013年4月から2023年3月までの10年間で、殺害や遺棄などをされた赤ちゃんが117人に上っているという現実です。

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賛育会病院の賀藤均院長                                     (引用:「クローズアップ現代」より)

「産まれたばかりの赤ちゃんを育てることができなくって命を奪ってしまうっていうことが起きるので。命を奪うだったら預けてもらった方がいいだろう」と賀藤院長は語り、妊娠や出産で追い詰められた女性と赤ちゃんを守る最後のよりどころとして、この取り組みを開始した理由を説明しています。

ベビーバスケットは生後4週間以内の赤ちゃんを対象とし、24時間体制で対応しています。赤ちゃんが預けられると1分以内に医療スタッフが駆けつけ、健康状態をチェックした後、児童相談所と連携して里親や乳児院などにつなげる仕組みが整っています。

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内密出産の実際のケース~クローズアップ現代が密着した現場の声

クローズアップ現代の取材では、内密出産を希望した20代女性の緊迫した状況が克明に記録されています。大学に通うこの女性は、元交際相手との間に子どもを妊娠しましたが、相手の金遣いの粗さなどをめぐって別れており、妊娠後も連絡は途絶えたままでした。

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東京都墨田区の賛育会病院(引用:「NHK」より)

女性が内密出産を希望した理由は、遠方に住む両親に妊娠を知られたくないという強い思いからでした。過去に貧血で倒れ救急車で搬送された際、両親が大学の退学を求めるなど過干渉な一面があったため、「一人暮らししててこういうのあったら、もう大学やめさせられ連れ戻すみたいな話もあって。でも目標あって入った大学だったんで、大学やめるって話だけは嫌だなって」と女性は当時の心境を語っています。

電話で相談を受けた女性は、既に破水しており妊婦検診を一度も受けていない状態でした。診察の結果、合併症があることが判明し、自然分娩ではリスクがあるため緊急で帝王切開の手術が行われました。無事に3000gを超える健康な赤ちゃんが誕生し、女性は「可愛い」と我が子に対する愛情を示しました。

病院では、内密出産を選ぶことの重大性について十分な説明を行います。「内密出産を選べば子供との法的な関係が絶たれてしまうこと」など、様々なリスクを含めて女性に説明し、安易に内密出産に誘導することのないよう配慮しています。最終的に女性は、将来赤ちゃんが18歳になった時に自分の情報を伝えてもいいという書類に記入し、内密出産を選択しました。

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2ヶ月間の取材で明らかになった赤ちゃんポストの利用実態

運用開始から2ヶ月で、ベビーバスケットには複数の赤ちゃんが預けられており、首都圏だけでなく関西地方からも女性が訪れています。実際に5月1日には初めての預け入れがあったことが報道されており、追い詰められた女性たちの受け皿として機能していることが明らかになりました。

取材で印象的だったのは、自宅で出産した赤ちゃんを預けに来た女性のケースです。生まれてから20時間ほどの赤ちゃんは健康状態に問題がなく、女性は産後の貧血などがあったためそのまま入院することになりました。この女性は、関西地方から車でおよそ10時間かけて病院を訪れており、どれほど追い詰められた状況だったかが伺えます。

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さらに注目すべきは、一度は赤ちゃんを預け入れようとした女性が、病院スタッフとの関わりの中で気持ちに変化が生まれ、最終的に自分で育てることを決めたケースです。「入院してスタッフの方に元気な赤ちゃんね良かったよみたいなの言われると、産まれた子が元気で、これから生きようとしてるんやっていうのもすごく実感させられて、自分でもちゃんと腹を決めて責任って育てていこう」と語った女性の言葉は、適切な支援があれば女性の選択肢が広がることを示しています。

残されていた手紙には「お金がなく、子供を育てることができません。身勝手で申し訳ありませんが、この子にはどうか生きて欲しい」と書かれており、女性たちの切実な思いが込められています。対応した看護師は「産まれてまだ24時間も経ってない子が放っとかれたら本当に死んじゃうだろうけどそこにちゃんと連れてきてくれたっていうもう。本当にだからニーズってあるんだなって」と語り、この取り組みの必要性を実感していることが分かります。

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山縣文治教授が指摘する支援の課題と今後の展望

番組に出演した山縣文治大阪総合保育大学特任教授は、児童福祉学の専門家として賛育会病院の取り組みを3つの角度から評価しています。

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大阪総合保育大学の山縣文治特任教授                                    (引用:「NHK」より)

まず出産の安全性について、「病院で出産されるということですので母子ともに安全は保証されている」と評価し、「専門家が寄り添っていただいている」「孤立してない」という点を高く評価しています。

親子関係の面では、「内密出産を利用するかどうかについて、いろんなリスクも含めてお話をされている」として、安易に内密出産に誘導しているわけではないことを評価しています。

一方で課題として挙げているのが、情報管理の問題です。「個人の非常に重要な情報を一民間病院が預かって管理し続けていいのかどうかということについては検討の余地がある」と指摘し、民間病院だけでは解決できない構造的な問題があることを示唆しています。

山縣教授は、ドイツが2014年に法律を作って国や自治体が公的な形で関与していく仕組みを作ったことを例に挙げ、「これを参考にして日本でも考えていく必要があるんじゃないか」と提言しています。また、「国民的な議論をするタイミングに来ているのではないか」と、社会全体での取り組みの必要性を強調しています。

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賛育会病院の取り組みが社会に投げかける問題

賀藤院長が「悩むよねやっぱね、1病院の問題じゃないような」と語ったように、この問題は単独の医療機関だけでは解決できない社会的課題です。取材を通して見えてきたのは、女性を追い詰めているのが若年妊娠や貧困といった理由だけではないという現実です。

桑原記者は「家族の期待を裏切りたくない心配をかけたくないと話す女性がいました。家族に頼れない上、交際相手にも本音を話せない状況が女性を孤立させていると感じました」と報告しており、家族関係や社会の価値観が女性を追い詰める要因となっていることが明らかになりています。

山縣教授は、この問題に対して男性の責任についても言及しています。「本来は男性も関与すべきなんですけども、そこに男性がほとんど登場してこないという現実ですね。男性にも共同の、少なくとも共同責任があるんだということを自覚する社会。そういうものを作っていかなければならないのではないか」と指摘し、社会全体での意識改革の必要性を強調しています。

また、課題として浮上しているのが孤立出産による母子の健康リスクです。預け入れられたケースはいずれも医療者が立ち会わない中での自宅などでの出産であり、母体にも赤ちゃんにも危険が伴います。さらに、先行して取り組みが行われてきた熊本市の専門部会の報告書では、赤ちゃんを2回預けた事例が複数あったと指摘されており、安易な預け入れにつながるのではないかという懸念も示されています。

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6. まとめ

2025年3月末に始まった賛育会病院の赤ちゃんポストと内密出産は、追い詰められた女性たちにとって重要な選択肢となっています。クローズアップ現代の2ヶ月間の密着取材により、現場の切実な声と課題が浮き彫りになりました。

賀藤均院長の決断により実現したこの取り組みは、命を守る最後の砦として機能していますが、同時に民間病院だけでは解決できない構造的な問題も明らかになっています。山縣文治教授が指摘するように、ドイツの事例を参考にした法制化や、社会全体での支援体制の構築が急務です。

人知れず産まざるを得ない女性がいる現実、そして生まれてくる命がある現実を前に、私たちは今こそ国民的な議論を始める必要があります。1病院だけに任せるのではなく、社会全体で女性と子どもを支える仕組みづくりが求められているのです。

※ 本記事は、2025年6月11日放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。
※ 今回のNHKクローズアップ現代の2ヶ月に渡る取材記録と相談窓口についてまとめた記事はこちら
※ 賛育会病院のHPはこちら

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