TSMCの熊本進出で「半導体バブル」到来かと注目されているこの状況ですが、一体なぜ巨大グローバル企業が地方都市に進出する決断をしたのでしょうか。本記事では、TSMCが熊本を選んだ3つの理由と、すでに表面化している地元への波及効果、さらには日本半導体産業再興への期待と課題について詳しく解説いたします。半導体大国に返り咲く可能性を秘めた日本の行方がわかる有意義な内容となっております。ぜひ最後までご一読ください。
TSMCがなぜ熊本を選んだのか
世界最大の半導体受託生産会社である台湾積体電路製造(TSMC)が、なぜ熊本に大規模工場を建設することを選んだのか。その理由は主に3つあります。
第一に、熊本は「シリコンアイランド九州」と呼ばれる半導体産業の集積地です。すでに200社を超える半導体関連企業が立地しており、半導体産業に対する理解と協力体制が整っていることが大きな魅力となっています。
第二に、熊本は豊富な地下水を有しています。半導体生産には大量の超純水が必要不可欠であり、安定的な水の確保は進出の要件となります。この点でも熊本の有利さが評価されました。
そして第三に、高速道路や空港へのアクセスの良さです。半導体の国内外への輸送に関して熊本が最適な拠点であると判断されたことが選定の決め手となりました。
以上の理由から、TSMCは日本国内では熊本以外に選択肢がないと判断し、ここに第1・第2工場を建設することを決定したのです。
工場誘致で地価が高騰し人手不足に
TSMCの熊本進出決定後、菊陽町では地価が高騰し始めました。農地だった土地が1平方メートル当たり20万円前後まで上昇しています。地主にとっては頭金なしで売却するだけで数億円と一攫千金のチャンスですが、どんどん土地が売り切れていき、土地確保に苦慮する企業も出てきています。
求人も過熱しています。時給2000円を軽く突破する高額求人が増え、労働者側に有利な人手不足状態が続いています。タクシーや飲食店などのサービス業や建設業関係者の売上高が飛躍的に向上する一方、時給の引き上げや人件費高騰に対応できない中小零細企業も少なくありません。
人口5万人程度の菊陽町に、一気に外国人労働者を含む多数の人口流入が起きたことで、生活インフラや交通網のひっ迫も懸念される状況です。
半導体産業の復活に期待と不安
こうしたTSMCの日本進出に対し、日本の半導体産業再興への期待も高まっています。80年代に世界シェアの5割超を誇った「日の丸半導体」の復活を可能にする絶好の機会だと前向きな声が上がっています。
一方で、人材確保や研究開発力強化などの不安材料も残されたままです。早期に高度技術者を輩出できる教育機関の整備や、民間企業との連携強化が求められます。官民一体となった半導体産業振興の取り組みがこの先数年で実現しなければ、完全に世界の流れに乗り遅れてしまうことにもなりかねません。
半導体は国家経済の命運を握る最重要産業です。日本の半導体自給率を引き上げ、サプライチェーンの安定性も高めるこの機会を必ず生かしていかなければなりません。そう考える方が圧倒的多数派であることは間違いありません。
まとめ
TSMCが熊本進出を決めた理由は、半導体産業集積の環境、水資源の確保、物流アクセスの3点でした。工場建設の影響は地元経済は活性化しますが、土地や人材を巡る過度な競争も生じています。
半導体大国復活への期待とともに、官民一体となった産業育成が急務です。この黄金のチャンスを絶対に逃すまいとする動きが活発化しつつあります。半導体立国を目指す日本の行方が注目されています。
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