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テレビ番組・情報

【クローズアップ現代】ラストレターで自分の死と向き合う「書き手の人生を変える力」

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2025年6月30日に放送されたNHKクローズアップ現代では、生前に書いた手紙が死後に届く「ラストレター」について特集が組まれました。この番組を通じて、現代人が自分の死と向き合うことで書き手の人生がどのように変化するのか、その深い意味について考えてみましょう。

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ラストレターとは?自分の死と向き合う新しい形

ラストレターとは、生前に大切な人に向けて書いた手紙や動画メッセージを、自分の死後に相手に届けてもらうサービスです。従来の遺言書とは異なり、法的な効力よりも感情的なメッセージに重点を置いたもので、家族や友人への感謝の気持ちや愛情を自由に表現できます。

クローズアップ現代の番組内では、このラストレターサービスが静かに広がっている現状が紹介されました。デジタル技術の発達により、手紙だけでなく動画や音声でメッセージを残すことも可能になり、より身近なサービスとして注目を集めています。

現在では、Webサイトやアプリでメッセージを作成し、指定した相手に届ける仕組みが整備されており、LINEを使ったサービスを運営する直林実咲さんによると、若い世代にも利用が広がっているといいます。漠然とした不安を抱えている若い層が、終活をすることで今をより良く生きるためのきっかけとして活用している現状があります。

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書き手の人生を豊かにするラストレターの効果

ラストレターを書く過程では、自分にとって大切な人が誰なのか、そして何を伝えたいのかを深く考える必要があります。この内省的な作業が、書き手の人生に予想以上の変化をもたらすことが番組で明らかになりました。

安部伸征さんは40代の頃からラストレターを書き始め、現在では家族や友人宛など10通以上を準備しています。震災やコロナ禍を通して死について考えさせられたことがきっかけでした。「いつ死んでもおかしくないので、自分自身が悔いのないように」という思いから始めた取り組みですが、書くことで「自分の中でスッキリして次の時間を生きれる」と語っています。

書き手の人生を変える最も重要な要素は、自分と向き合う過程にあります。日頃感じた思いを文字にすることで、ありがとうという気持ちや楽しかった思い出が自然と湧き上がってくるのです。この作業は単なる準備作業ではなく、現在の人生をより豊かにする効果があることが分かります。

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田村淳が語る母からのラストレター体験談

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母・久仁子さんについて語るタレントの田村淳さん                 (引用:「クローズアップ現代」より)

タレントの田村淳さんは、5年前に癌で亡くなった母くに子さんからラストレターを受け取った経験を持ちます。看護師だった母は長年人の生死を間近に見てきた経験があり、「人は必ず死ぬのよ。いつか死ぬんだから生きてる間にやりたいことやりなさい」と田村さんに語っていました。

母が残したラストレターは意外なもので、30秒ほどのフラフープを回している動画でした。最初は困惑した田村さんでしたが、繰り返し見るうちに喪失感が和らいだといいます。「田村家が和を重んじて未来永劫回りますように」という意味として、最終的にポジティブに受け止めることができました。

この経験から田村さんは、生前に動画で思いを残せるサービスを始めました。「この世に自分が居なくなった後も見て欲しいという個人の願い」を気軽に残せて、残された家族が気軽に触れることができるサービスの必要性を実感したからです。

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疎遠だった姉との関係を変えた小寺梓さんの事例

小寺梓さん(33歳)の事例は、ラストレターが書き手の人生にどれほど大きな変化をもたらすかを示しています。7年前、小寺さんの母からLINEで「また今度ご飯行こうね」というメッセージが届いた際、スタンプひとつで返しただけでした。しかし10日後、母はくも膜下出血で倒れ、50代の若さで亡くなってしまいました。

「まさかそんな急に終わるって思ってなかった」という後悔から、小寺さんは唯一の肉親で長い間疎遠だった姉にラストレターを書くことにしました。書く過程で「誰に聞いて欲しいのか、誰に伝えたいのか」を考えることで、自分にとって今大事な人について気づきがあったといいます。

ラストレターを書いたことで姉との関係に変化が生まれ、以前は母の命日にしか顔を合わせませんでしたが、現在は月に数回会うようになりました。「エンディングまでにたくさん思い出をあなたと作りたい」という意識が芽生え、先を見据えた上で今を生きていく姿勢が生まれたのです。

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がん患者山口隆子さんが子どもたちに残した感謝の言葉

番組では、実際にラストレターを書く過程も紹介されました。癌の緩和ケアを受けている山口隆子さん(67歳)は、日に日に体の自由が利かなくなる中、せめて手紙を書きたいと證大寺住職の井上城治さんと対話を重ねてきました。

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證大寺の井上城治住職(引用:「證大寺」HPより)

「自分で言葉は苦手だなと思っても、手紙だったら何か絶対気持ちが伝わる」という思いから、5月末に病状が悪化する中、山口さんは筆を取ることを決めました。育て上げた4人の子(彰彦、沙也加、高志、篤志)への感謝の言葉を綴ったのです。

「書いてみたらすごい色んな感情が心の中に降ってくる感じ」と山口さんは語りました。自分の死を前にしても、愛する家族への想いを言葉にすることで、生きている今この瞬間により深い意味を見出すことができたのです。

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専門家が解説:現代人の死生観とラストレターの意義

東京大学死生学・応用倫理センター所長の堀江宗正さんが行った全国約1000人への調査によると、現代人の死生観に変化が見られています。1年以内に行った宗教的行為について、祈りをしたという割合もお墓や納骨堂の訪問をしたという割合も5年前と比べると減少しています。

一方で、自分の死について家族と話をすることに抵抗があると答えた割合は5年前よりも増加しているという結果が出ました。堀江さんは「コロナ禍と葬儀の縮小によって、身近な人の死や葬儀に立ち会う機会が少なくなったことが、死を遠ざける傾向につながっている」と分析しています。

このような死生観の変化の中で、ラストレターが広がっていることについて、堀江さんは「象徴的不死性」という概念で説明しています。「自分の生きた証みたいなものを託すという欲求」は人類普遍のものであり、お墓や仏壇も象徴的不死性の形のひとつです。しかし手紙という手段になると、より個人的な思いを伝えることができるのです。

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ノンフィクションライターの古田雄介氏                   (引用:「古田雄介」HPより)

 

ノンフィクションライターの古田雄介さんも、この欲求は古代から存在していたと指摘します。古代ローマでは名家が”デスマスク”を残すことが誉れとされ、日本を含む東洋では”辞世の句”が文化として浸透していました。これが現在の技術と融合することで、ラストレターという新たなアプローチが生まれているのです。

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井上城治住職が語るラストレターを書く意味

ラストレターを生前に預かり死後家族や友人に届ける寺(證大寺)で住職を務める井上城治さんは、これまでに800通を超える手紙を預かってきました。井上住職は書き手一人ひとりに寄り添い、ラストレターを書く意味について深く考えています。

「ラストレターは書けないんですよ。パッと考えて出てくる物って大したもんない。自分のなかにある大事な物っての探しに行くんですね。その過程が大事だと思うんです」と井上住職は語ります。

78歳の長谷川格さんの事例では、運輸業界で40年間務め、ニューヨークやロサンゼルスにも駐在した経験がありながら、仕事に打ち込むあまり育児にはほとんど関わりませんでした。15年前の退職後は家族と離れて一人で暮らしています。

長谷川さんがラストレターを書くことを決めてから3年の時が経っていました。「あんまり世話をしないからほったらかしで来たから、申し訳ないと思います」という気持ちを込めて、独立した2人の娘に「今の幸せを謳歌して仲良くやってください」「今のままでいいんだよ」という言葉を残しました。

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自分と向き合うラストレター作成のポイント

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2022年に亡くなった夫・渡辺徹さんを語る歌手の榊原郁恵さん                (引用:「クローズアップ現代」より)

ラストレターを書く際の重要なポイントは、自分と向き合う時間を大切にすることです。榊原郁恵さんは夫の渡辺さんを2022年に亡くした経験から、「自分と向き合ってたんですかね」と語っています。書き手がどんな気持ちで言葉を選んだのか、どんな時間を過ごしていたのかを想像することで、残された人の時間がとても豊かになるのです。

古田雄介さんは実際にラストレターを書いており、最初は仕事関係の連絡先を書くことから始めて、徐々に「ありがとう」という言葉を積み重ねていく方法を取っています。「仕事が一段落した時によしやろうという形でちょっとカジュアルに接する方が寧ろ更新ができる」というアプローチが効果的だといいます。

ラストレターの内容は完璧である必要はありません。大切なのは、残された人が「こんなことを思ってたんだ」と感じられるような、その人らしい言葉で気持ちを表現することです。榊原郁恵さんが言うように、「人は2度死ぬ」という言葉があります。みんなに忘れられてしまうと、その人の存在が本当に消えてしまうような感覚があるのです。

しかし、ラストレターがあることで、残された側が励みになるような思い出や言葉に触れることができます。それによって故人との繋がりを感じ続けることができるのです。

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まとめ

クローズアップ現代で紹介されたラストレターは、単なる死後のメッセージツールではありません。自分の死と向き合うことで書き手の人生そのものを豊かにし、人間関係を見つめ直すきっかけを提供する力があります。

田村淳さんの母からの動画、小寺梓さんの姉との関係修復、山口隆子さんの子どもたちへの感謝など、それぞれの事例が示すように、ラストレターを書く過程で人は自分にとって本当に大切なものが何かを発見します。そして、その発見が現在の生き方を変える原動力となるのです。

現代社会では死について語ることが少なくなっていますが、だからこそラストレターのようなツールが必要とされているのかもしれません。自分と向き合い、大切な人への想いを言葉にすることで、今という時間をより深く生きることができるのです。

デジタル技術の発達により、ラストレターはより身近なサービスとなりました。しかし、その本質は古代から人類が持ち続けてきた「生きた証を残したい」という普遍的な願いにあります。クローズアップ現代が伝えたメッセージは、現代を生きる私たち一人ひとりが自分の人生と真摯に向き合う大切さを教えてくれています。

※ 本記事は、2025年6月30日に放送されたNHK「クローズアップ現代」を参照しています。

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