2025年11月18日放送の「ライフイズマネー」で紹介された石和設備工業の小澤大悟社長。父から継いだ倒産寸前の水道工事会社を、トイレプロデュース事業で年商4倍・約1億2000万円に成長させました。この記事では、トイレに特化した差別化戦略、3000万円の公衆トイレ建設、中小企業の採用難を解決した手法まで徹底解説します。
石和設備工業とは？小澤社長が父から継いだ所沢の水道工事会社
埼玉県所沢市にある石和設備工業は、1969年に創業した水道設備工事の会社です。現在の従業員は6人。一見すると地方の小さな工事会社ですが、その外観はおしゃれで、入り口前には便器をモチーフにしたポストが設置されているユニークな会社です。
小澤大悟社長のプロフィールと事業継承
この会社を14年前に父から受け継いだのが、40代の代表・小澤大悟社長です。しかし事業継承当時、会社は厳しい経営状況に直面していました。
石和設備工業の小澤大悟社長 （引用：「ライフイズマネー」より）
小澤社長が語る最大の課題は「採用と認知不足」でした。水道工事という仕事の特性上、配管は土の中や壁の中に隠れてしまい、いくら丁寧な仕事をしても評価されにくいのです。
「きれいに配管したからって、50万円の仕事が70万円になるわけじゃない」と客から言われることもあったそうです。さらに、下請けとして大工や工務店から支給された設備を取り付けるだけでは、作業工賃しか得られず、利益を上げることも困難でした。
倒産寸前からの脱却を目指して
小澤社長は「やった分だけ評価されるような仕事を作っていく必要がある」と考えました。水道工事の領域で目に見えるものといえば、蛇口かトイレ。その中で小澤社長が選んだのが「トイレ」だったのです。
この決断が、石和設備工業を倒産寸前から年商4倍へと成長させる転機となりました。
ライフイズマネーで注目！石和設備工業のトイレプロデュース事業
小澤社長が6年前に始めたのが、トイレのプロデュース事業です。
なぜトイレに特化したのか？
小澤社長の戦略は明確でした。水道工事の中でも、トイレは大工や工務店が「水道屋さんが持っていいよ」と言ってくれる数少ない分野だったのです。つまり、器具で利益を上げることが許される領域だったのです。
キッチンや洗面台、お風呂などは工務店から支給されることが多く、作業工賃しかもらえません。しかしトイレなら、デザインや装飾を加えることで付加価値を生み出し、利益を確保できると考えました。
独学で始めたデザイントイレへの挑戦
デザインは独学で学びました。始めた当初は、とにかく奇抜に装飾し話題性を狙う戦略でした。便器の蓋に派手な装飾を施したり、壁や床のデザインにこだわったり。この戦略が功を奏し、トイレの装飾依頼は徐々に扉や壁紙、建具のデザインにまで拡大していきました。
石和設備工業は奇抜なトイレ蓋もデザイン！ （引用：「ライフイズマネー」より）
一般的な便器交換との収益の違い
通常、便器の交換で得られる工賃は18万円から35万円ほどです。しかし、トイレをおしゃれに装飾し、内装全般を請け負うことで、売上は約100万円にまで跳ね上がると小澤社長は語ります。
これが石和設備工業の差別化戦略であり、収益性を大きく改善したポイントです。
小澤社長の実績｜所沢・坂好横丁の居酒屋トイレを次々リフォーム
所沢市の盃横丁（さかずきよこちょう）は、24軒が連なる昭和レトロな飲み屋街です。この地域で、石和設備工業は「トイレの会社」として有名になっています。
具体的な施工事例
番組で紹介されたのは、居酒屋「ホーミー」のトイレです。便器の蓋が派手に装飾され、おしゃれな空間に変身していました。店主のババイエローさんは、石和設備工業の仕事ぶりに大満足の様子でした。
「ホーミー」さんのトイレ （引用：「ライフイズマネー」より）
隣の隣にある「ひょっとこ」という店も、同様に石和設備工業がリフォームを手掛けています。便器の蓋にかわいらしいデザインが施され、女性客にも好評だそうです。
「ひょっとこ」さんのトイレ （引用：「ライフイズマネー」より）
店主の峯岸恵美子さんは「この辺では有名な石和設備工業さん。この辺で聞いたらみんな石和さんですよ」と語っていました。
口コミで広がる信頼
坂好横丁には他にも石和設備工業が手掛けたおしゃれトイレの店が複数あります。一軒の仕事が評判を呼び、次の依頼につながる好循環が生まれているのです。
小さな飲み屋街での実績が、地域における石和設備工業のブランド価値を高め、より大きな仕事へとつながっていきました。
石和設備工業の売上戦略｜トイレから1000万円リフォームへ展開
トイレのリフォームで信頼を獲得した石和設備工業は、さらに大きな仕事へと発展させる戦略を持っています。
トイレから始まり家全体へ
番組では、石和設備工業が手掛けた個人宅の全面リフォーム事例が紹介されました。
最初のきっかけは「トイレが詰まった」という小さな依頼でした。家主さんは最初、トイレと洗面所だけを変える予定でしたが、石和設備工業の仕事ぶりがあまりにも良かったため、次はお風呂もリフォーム。そして最終的には、廊下、ドア、キッチン、リビング、寝室に至るまで、家全体のリフォームを依頼したのです。
2階のトイレの特徴
2階のトイレは青を基調とした空間で、便器は鏡のように銀色に輝くデザイン。非常に洗練された印象です。
1階のトイレの特徴
1階のトイレはピンクに塗られた壁に花柄の便器。蓋にはかわいらしい犬の装飾が施されています。まるで王様の部屋のような豪華な雰囲気です。
総額1000万円以上のリフォーム受注
この住宅の全面リフォームの売上は、総額1000万円以上に達しました。普段は下請けだった水道工事会社が、元請けとして家全体のリフォームを請け負う。これは業界の枠を超えた大きな転換です。
トイレという入口から信頼を獲得し、顧客の満足度を高めることで、次々と仕事が広がっていく。この戦略が、石和設備工業の収益を大きく押し上げているのです。
3000万円の公衆トイレ！小澤社長の地域貢献とブランディング
小澤社長のトイレへの情熱は、さらに驚くべきプロジェクトへと発展しました。
会社敷地内に建設した公衆トイレ
石和設備工業の敷地内には、夜になるときれいにライトアップされる白い建物があります。実はこれ、公衆トイレなのです。
ライトアップされた公衆便所 （引用：「ライフイズマネー」より）
3年前に約3000万円をかけて制作したこの公衆トイレは、誰でも自由に使える施設として町に開放されています。内部は自動ドアで、オムツ交換台やベビーシートなども完備。設備が充実した清潔で明るい空間です。
小澤社長は「うちは『ド派手なトイレ』が有名ですけど、ここは本当にシンプルにしました」と語ります。これは石和設備工業の技術力と、公共性を両立させたショールーム的な役割も果たしているのです。
マルシェや防災教室でコミュニティ形成
小澤社長は、この公衆トイレを起点としたイベントを定期的に実施しています。マルシェの運営や防災教室を行うことで、地域のコミュニティ作りに尽力しているのです。
「零細企業が大企業や自治体とフラットな場所で話し合いができるようになるのが、イベントの良いところ」と小澤社長は語ります。
県施設からの受注獲得
こうした地道な活動が実を結び、航空記念公園という県の施設から、管理事務所の多目的トイレの取り替えと扉のデザイン依頼を受けることに成功しました。
イベントでの人脈作りやブランディングが、公共事業の受注につながった好事例です。
石和設備工業の現在｜年商1億2000万円・若手採用も成功
小澤社長のトイレ戦略は、経営数字にも明確な成果を生み出しています。
14年前の4倍、年商約1億2000万円達成
小澤社長が父から会社を継いだ14年前と比べて、現在の年商は約4倍の1億2000万円に成長しました。倒産寸前だった会社が、トイレという差別化戦略によって見事に復活を遂げたのです。
採用難を解決した実績
中小企業にとって最大の課題の一つが人材確保です。特に水道工事のような業界は、若い人材が集まりにくいという問題を抱えています。
しかし石和設備工業には、2025年7月に小澤社長の姪っ子が新入社員として入社しました。さらに、若い男性社員も加わり、採用面でも成功を収めています。
番組に登場した日本経済新聞論説フェローの原田亮介さんは「社員の人たちがそのまま居続けてくれるかどうか、新卒で新たに入ってきてくれるかどうか。この2つが社長にとって非常に大きな問題」と指摘していましたが、石和設備工業はこの課題もクリアしているのです。
若い人材が集まる理由
なぜ若い人材が石和設備工業に集まるのか。それは、トイレプロデュースという独自の事業が、単なる水道工事会社とは異なる魅力を生み出しているからです。
クリエイティブな要素があり、SNSでも話題になりやすく、地域貢献もできる。こうした要素が、若い世代の共感を呼んでいるのでしょう。
まとめ｜ライフイズマネーから学ぶ中小企業再生の道しるべ
「ライフイズマネー」で紹介された小澤社長の経営手法は、中小企業が生き残るための重要な示唆に満ちています。
小澤社長の経営手法・5つのポイント
- 差別化戦略：水道工事という見えない仕事から、トイレという目に見える仕事へ転換
- 高付加価値化：便器交換18〜35万円を、デザイントイレ100万円に
- 信頼の連鎖：トイレから始めて家全体のリフォーム受注へ発展
- 地域ブランディング：3000万円の公衆トイレとイベントで認知度向上
- 人材確保成功：独自性ある事業で若い人材の採用実現
「目に見える仕事」への転換の重要性
番組MCの林修先生は「自分たちのできることをチェックして、基本は変えない。その中で変えられる部分と変えられない部分をよく比較して、ここなら変えられるというところに特化して、新たなチャレンジをされたのが一番良い」と評価しました。
小澤社長は水道工事という本業を捨てたわけではありません。その中で「評価されやすい領域」を見つけ、そこに集中したのです。これは多くの中小企業が参考にできる戦略でしょう。
地域密着とブランディングの両立
坂好横丁での実績作り、公衆トイレの建設、マルシェや防災教室の開催。これらは全て、地域における石和設備工業のブランド価値を高めるための活動です。
零細企業であっても、地域に根ざした活動を続けることで、大企業や自治体と対等に話ができる立場を築けることを、小澤社長は証明しています。
中小企業経営者へのメッセージ
小澤社長の成功事例は、「できることの中で差別化できる領域を見つける」「目に見える成果で評価される仕事にシフトする」「地域との関係性を大切にする」という、中小企業経営の王道を示しています。
2025年、人材不足や後継者問題に悩む中小企業は多いですが、石和設備工業の取り組みは、そうした課題を乗り越える具体的な道筋を示してくれるでしょう。
トイレという一点突破から年商4倍を実現した小澤社長の挑戦は、「不足の時代」を生き抜く中小企業の道しるべとなるはずです。
※ 本記事は、2025年11月18日放送（テレビ東京系）の人気番組「LIFE IS MONEY ～世の中お金で見てみよう～」を参照しています。
※ 有限会社 石和設備工業の公式サイトはこちら
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