2026年2月28日放送のテレビ東京系「ブレイクスルー」で、レアアースを一切使わない次世代モーターが紹介されました。開発したのはネクストコアテクノロジーズCTOの金清裕和氏。新素材「HLMET(ヘルメット)」がもたらす驚異の省エネ性能と脱レアアースの仕組み、EV・ドローンへの応用から日本の経済安全保障への影響まで、番組内容をもとに詳しくお伝えします。
金清裕和が開発した脱レアアースの次世代モーターとは
番組で紹介されたのは、ネクストコアテクノロジーズCTOの金清裕和氏が開発した、レアアースを一切使わない次世代モーターです。
ネクストコアテクノロジーズは京都府宇治市に本社を構えるスタートアップで、2022年9月に設立されました。アルミ切削加工のHILLTOP、磁性材料開発のBIZYME、精密プレス部品の小松精機工作所という中小製造業3社の技術を結集した合弁会社です。金清氏はBIZYMEの代表取締役でもあり、長年にわたって磁性材料の研究開発に携わってきた素材のスペシャリストです。
この次世代モーターの核が、金清氏が開発した新素材「HLMET(ヘルメット)」。シリコン、鉄、ホウ素の3元素だけで構成され、従来のモーターに欠かせなかったネオジムやジスプロシウムといったレアアースを一切含みません。番組の中で金清氏は「ここにはレアアース入ってないんです」と明言し、作家の相場英雄氏も「モーターって、レアアース抜きには語れないじゃないですか」と驚きを隠せませんでした。
注目すべきは金清氏のアプローチです。多くの研究者が「レアアースを使わない強力な磁石」を目指したのに対し、金清氏は「モーターが熱くならなければレアアースは要らない」という逆転の発想に立ちました。問題の本質に立ち返ることで常識を覆した、まさに番組タイトル通りのブレイクスルーです。
新素材HLMET(ヘルメット)の仕組みと驚異の省エネ性能
ヘルメットは厚さわずか30ミクロンほどの薄さで、番組では「アルミホイルのよう」と表現されました。鉄基結晶前駆体からなる超微細金属組織を持つ軟磁性材料で、高い磁束密度を維持しながらエネルギー損失を大幅に低減できるのが特徴です。
番組では室温23度の環境で比較実験が行われました。同じサイズのモーターを1時間稼働させた結果、従来モーターは44度(21度上昇)に対し、ヘルメット搭載モーターは32度(わずか9度上昇)。サーモビューアーでも一目瞭然の差です。
金清氏によれば、モーターが発する熱はすべてエネルギーのロスです。従来モーターは投入電力の80〜90%しか回転エネルギーに変換できませんが、ヘルメットモーターは97〜99%を変換でき、ロスはわずか1%程度。モーター効率で5〜10%の向上が見込めるといいます。
「わずか5〜10%」と思われるかもしれませんが、この業界では1%上げるだけでもしのぎを削る世界。しかも金清氏によれば、全世界のモーター効率が1%上がるだけで原発12基分の電力削減に相当するとのこと。そのインパクトは計り知れません。
なぜレアアース不要?従来モーターとの決定的な違い
従来の高性能モーターには、レアアースを使った希土類磁石が内蔵されています。モーターは電気を流して磁力を発生させ回転する仕組みですが、その際にエネルギーの一部が熱に変わります。磁石は高温になると磁力が下がる特性があるため、高温でも磁力を維持できるレアアースが不可欠でした。
金清氏のヘルメットは、この「熱の発生」そのものを大幅に抑えます。熱が出なければ磁石の磁力低下も起きないので、レアアースによる「熱対策」が不要になる。これが脱レアアースの仕組みです。
実はシリコン・鉄・ホウ素の組み合わせ自体は1980年代から知られていましたが、「厚くすると性能が落ちる」のが業界の常識でした。金清氏はこの常識に挑み、組成を改良。素材の配合から元素レベルの配列まですべてを見直し、研究開始からわずか1年でヘルメットの開発に成功し、特許を取得しました。
鈴木洋平×小松精機工作所の精密加工が実用化の鍵に
しかしヘルメットには「硬すぎて割れやすく、加工が難しい」という壁がありました。そこで金清氏が頼ったのが、長野県諏訪市の小松精機工作所で精密加工を担当する鈴木洋平氏です。
小松精機工作所は時計やエンジン部品のミクロン単位の加工技術を持つ企業。解決策は「薄いまま加工して積み重ねる」でした。番組で見せたモーター部品も、金属の塊に見えて実は何枚ものヘルメットが一枚一枚積層された構造です。
鈴木氏が打ち抜き加工に成功した時、金清氏は「嘘だと思った。雪の降ってた日に急いで車を飛ばして見に行ったら、本当に抜けてた」と振り返りました。素材を生み出す「発明力」と、それを製品にする「精密加工技術」の両輪がそろって初めて実用化が実現したのです。大手ではなく中小企業の連携でこれを成し遂げた点に、日本のモノづくりの底力を感じます。
EV・ドローンから戦略物資へ──日本の経済安全保障を変える可能性
番組のデモでは、ヘルメットモーターが従来型より低い電力で1キロの重りを浮上させました。ドローンならより遠くまで飛べ、EVなら航続距離が伸びることを意味します。金清氏は「EVはあらゆるモーターの集積場」と述べ、動力だけでなくワイパーやパワーウィンドウなど全てのモーターに応用できる可能性を示しました。
実用化のロードマップとしては、まず損失の大きい掃除機などの小型高速モーター、次にエアコンや冷蔵庫など常時稼働する家電を想定。すでに大手企業との共同研究が始まっており、佐賀県伊万里市の七ツ島工業団地に量産工場を建設中で、2027年の本格実用化を目指しています。
この技術が持つもう一つの巨大な意義が、日本の経済安全保障です。レアアースの精製工程の約9割は中国が握っており、2025年以降は輸出規制も強化されています。2026年1月にはデュアルユース品の対日輸出規制が発動され、供給リスクがいっそう現実味を帯びました。
金清氏は「できるだけレアアースそのものを使わないようにする世界を作らないといけない」と語り、相場氏の「戦略物資になりますよね」との問いにも「戦略物資的な側面は失わないようにしたい」と応じました。ただし「普及の妨げになってはダメ」とも述べ、量産化のための国の支援の必要性も訴えています。
レアアースという「外交カード」に左右されない産業基盤を持つことは、かつての半導体に匹敵する戦略的価値があるでしょう。スタートアップの技術力と官民の支援体制が噛み合えば、日本の産業の未来が大きく変わる可能性を秘めています。
まとめ
2026年2月28日放送の「ブレイクスルー」で紹介されたネクストコアテクノロジーズCTO・金清裕和氏の次世代モーターは、新素材ヘルメットによってエネルギー変換効率97〜99%の省エネ性能を実現し、レアアースを一切使わない「脱レアアース」を達成しています。小松精機工作所の鈴木洋平氏との精密加工技術の協業で実用化にこぎつけ、佐賀県伊万里市での量産工場建設も進行中です。
EV、ドローン、家電、産業機器と応用範囲は広く、中国のレアアース輸出規制リスクが高まる中、日本にとっての「戦略物資」となる可能性を秘めています。金清氏が語った「ブレイクスルーとは、常識を否定すること」。この言葉どおり、今後の展開から目が離せません。
※ 本記事は、2026年2月28日放送(テレビ東京系)の人気番組「ブレイクスルー」を参照しています。
※ ネクストコアテクノロジーズ株式会社(Next Core Technologies Inc.)の公式サイトはこちら。




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