食品業界に革新的な変化をもたらす「超時短技術」が誕生しました。日本ハイドロパウテックの熊澤正純社長が開発した独自の加水分解技術により、2年かかる熟成チーズをわずか2時間で製造可能に。化学薬品を使用せず、食材本来の味と栄養を活かしながら製造時間を大幅に短縮する画期的な技術が、今、食の未来を大きく変えようとしています。この記事では、食品製造の常識を覆すブレイクスルーの全貌と、その可能性についてご紹介します。
日本ハイドロパウテックが実現した加水分解による画期的な食品製造技術とは
食品業界に新たな革新をもたらす技術が誕生しました。新潟県長岡市に本社を置く日本ハイドロパウテックの熊澤正純社長が開発した独自の加水分解技術です。この技術は、化学薬品を一切使用せずに、食品の発酵や熟成時間を大幅に短縮することを可能にしました。
従来の加水分解技術は薬品を使用して化学的に分解する方法が一般的でしたが、同社の技術は特殊な機械を使用して物理的に分解するという画期的な方法を採用しています。この革新的なアプローチにより、食品本来の味や栄養を損なうことなく、製造時間を劇的に短縮することに成功しています。
熊澤正純が独自開発した超時短技術の全容と仕組み
同社の技術の核となるのは、特殊な形状を持つ「押出機」と呼ばれる装置です。この装置には2本の特殊なスクリューが搭載されており、20〜30種類の異なる形状のスクリューを食材に応じて使い分けることで、最適な加水分解を実現しています。
さらに特筆すべきは、最大400℃までの温度制御と組み合わせることで、食材の分子鎖を理想的な状態まで分解できる点です。この温度制御と特殊スクリューの組み合わせにより、食材の持つ本来の可能性を最大限に引き出すことが可能になりました。
2年熟成のチーズが2時間で完成!加水分解がもたらす驚きの効果
この技術の驚くべき効果を端的に示す例が、パルメザンチーズの製造です。通常2年もの熟成期間が必要なパルメザンチーズを、わずか2時間で製造することに成功しました。この製法では、粉ミルクを分子レベルで加水分解し、45℃で温めるだけという画期的なプロセスを実現しています。
さらに注目すべきは、塩分を添加することなく、牛乳本来の成分から塩味を引き出せる点です。これは食材が本来持っている成分を最大限に活用できる同社の技術力を示す好例といえます。この技術は減塩食や介護食への応用も期待されています。
日本ハイドロパウテックとロッテが実現する食品ロス削減への挑戦
2022年に同社はロッテと資本業務提携を結び、食品ロス削減に向けた革新的な取り組みを進めています。その代表例が、チョコレート製造時に廃棄されていたカカオハスクの有効活用です。カカオ豆の約20%を占めるカカオハスクを、同社の加水分解技術によって食用化することに成功しました。
ロッテ中央研究所の芦谷浩明所長によると、2025年春には、このカカオハスクを活用した新商品の発売を予定しているとのことです。これにより、カカオ豆の利用効率を約1.2倍に高めることが可能となり、食品ロス削減に大きく貢献することが期待されています。
石油化学から食品業界へ – 熊澤正純が辿った異業種からの革新
熊澤社長は、もともと石油化学メーカーで営業担当として世界を飛び回っていました。妻の実家が経営する米粉会社「たかい食品」に関わったことをきっかけに、プラスチック製造で使用される押出機を食品加工に応用するというユニークな発想に至りました。
当初は「アルファ化米」の製造を目指していましたが、実験の失敗から逆に加水分解の可能性を発見。この「失敗」が、食品業界に革新をもたらす大きな転機となりました。異業種での経験があったからこそ、従来の食品業界では思いつかなかった革新的な技術開発が可能になったのです。
加水分解技術が切り開く未来の食品産業とグローバル展開
2024年現在、同社の技術はコンビニエンスストアのおにぎりや食パンなど、私たちの身近な食品にも活用されています。さらに、アレルゲンフリーのチョコレートをシンガポールで展開するなど、海外での事業展開も積極的に進めています。
2024年11月には4億円の資金調達に成功し、さらなる海外展開を目指しています。世界的な食料危機が懸念される中、食材の有効活用を可能にする同社の技術は、今後さらに重要性を増していくことが予想されます。
まとめ
日本ハイドロパウテックの加水分解技術は、食品業界に革新的な変革をもたらしています。熊澤社長の言葉「扉の隙間から見える何かを覗いてみたいという好奇心」が、従来の常識を覆す画期的な技術を生み出しました。食品ロス削減や食料危機への対応など、この技術は社会課題の解決にも大きく貢献することが期待されています。
※本記事は、2024.12.14放送(テレビ東京系)の番組「ブレイクスルー」を参照しています。
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