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【クローズアップ現代】原発にドローン脅威「空の死角」対策と課題

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2025年7月、九州電力・玄海原発の上空で不審な光が確認され、ドローン侵入の疑いが浮上しました。原発の「空の死角」が露呈したこの事案は、私たちに何を問いかけているのでしょうか。11月18日放送のNHK「クローズアップ現代」では、元内閣府原子力委員会委員長代理の鈴木達治郎氏が出演し、日本と世界の原発が直面するドローンの脅威と今後の対策について解説しました。本記事では番組内容をもとに、原発の安全をどう守るべきか、その課題と求められる対策を詳しくお伝えします。


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玄海原発上空で確認された不審な光|ドローン侵入の疑いとは

2025年7月26日夜9時頃、佐賀県玄海町にある九州電力・玄海原子力発電所で、正門付近にいた警備員4人が敷地上空に3つの不審な光を目撃しました。玄海原発は最大で471万世帯分の電力を供給できる九州最大の原発であり、この事案は大きな注目を集めました。

九州電力はドローンの可能性がある事案として原子力規制委員会に「核物質防護情報」を通報。原発への飛来物侵入は極めて異例のことで、規制委は「情報収集事態」として初動対応の職員を参集させる事態となりました。

しかし問題だったのは、光が確認されてからおよそ2時間後に見失うまで、映像などに記録できなかったことです。元原子力規制庁幹部の山形浩史氏は「カメラも持っていなかったの?後から何だったか調べようがない」と警備体制の不備を指摘しています。

その後、9月になって佐賀県警の福田英之本部長は「航空機の光をドローンと勘違いした可能性が高い」との見解を示しました。当時周辺を飛行していた航空機のルートと矛盾しない点などが根拠とされています。ただし「ドローンであった可能性も完全に排除できない」としており、4ヶ月が経過した現在も光の正体は特定されていません。

周辺住民からは不安の声が上がっています。玄海町防災安全課の日高大助課長は「どういう目的で飛ばしてきたのかわからないというのが一番不安」と語り、近隣の水産業者は「空からの備えが全然無防備だったというのがショック」と衝撃を隠せない様子でした。


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原発へのドローン侵入で想定される2つのリスク

番組に出演した元内閣府原子力委員会委員長代理の鈴木達治郎氏は、ドローンが原発に侵入した場合のリスクとして大きく2つを挙げました。

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元内閣府原子力委員会委員長代理の鈴木達治郎氏                        (引用:「日本経済新聞」より)

1つ目は「偵察・情報収集」です。施設の状況や警備体制などの情報が外部に流出してしまう危険性があります。現代戦略研究会の部谷直亮代表は「原発の対応能力や探知能力を調べるためにやっている可能性がある」と指摘しています。

2つ目は「物理的な破壊工作」です。鈴木氏は「物理的な破壊工作を行うことで福島原発事故のような深刻な事故を起こしてしまう可能性。これが一番怖い」と警鐘を鳴らしました。

仮にドローンが侵入していたとしても、ただちに原子炉の安全に影響することはないとされています。しかし問題は、その事実を映像で確認できなかったこと、そして誰がどんな目的で侵入させたのか特定できないことにあります。

また見落としがちですが、日本には現在14基の原発が再稼働中で、停止中や廃止措置中を含めると全国に57基が存在します。停止していても使用済み核燃料が大量に保管されており、リスクがなくなるわけではありません。さらに再処理施設やウラン濃縮施設など、核物質を大量に含む施設も各地に存在することを忘れてはなりません。


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なぜ原発の「空の備え」は遅れたのか|対策の優先順位

実は九州電力では1年以上前から空への対策を進めるべきだとの指摘が出ていました。九州電力の原子力安全を評価する委員会の野口和彦委員長は、2024年7月の時点でドローン侵入への備えの必要性を指摘していたのです。

しかし九州電力が対応状況を示したのは10ヶ月後。ドローンの検知や対処装置の導入を「検討している」という段階でした。そのわずか2ヶ月後に今回の事案が発生してしまったのです。野口委員長は「間に合わなかったのか、見間違いだったかもしれないけど、ドローンだったらどうするのかという命題が残っている」と述べています。

なぜ空の備えが遅れてきたのでしょうか。鈴木氏は「やはり原子炉を守ることがまず重視される。従来のテロは海か陸から来るだろうということで、主に陸上と海の対策を取っておけば大丈夫だろうと考えられていた」と説明しています。

確かに原発の警備体制を見ると、海上は海上保安庁が担当し、陸上はフェンスの二重設置、監視カメラ、警察による警備が行われています。しかし空からの侵入、特にドローンという新しい技術への対策は優先順位が低くなっていたのが実情でした。

2015年4月には首相官邸の屋上で放射性物質を含む土砂を搭載したドローンが発見される事件も起きており、空からの脅威は以前から指摘されていました。2016年にはドローン規制法が成立し、原発周辺での飛行は原則禁止されていますが、それだけでは不十分だったということでしょう。


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世界で頻発するドローンの脅威|韓国・欧州の原発対策

ドローンの脅威は日本だけの問題ではありません。2025年夏以降、少なくとも12カ国のヨーロッパで不審なドローンの飛来が相次いでいます。軍事施設のほか空港周辺にも現れ、ドイツでは2日連続で空港が閉鎖されおよそ1万人に影響が出ました。

特に警戒されているのがロシアの存在です。ウクライナの戦場ではドローン兵器による攻撃が激化しており、国際条約で原則禁じられている原発への攻撃も繰り返されています。

韓国では10年以上前から不審ドローンへの対策に取り組んできました。北朝鮮からの小型無人機が度々飛来してきた経緯があり、国を挙げてドローン対策の技術開発を推進しています。高精細カメラや撃墜装置などの最新技術が開発され、危険なドローンに衝突させて撃ち落とすドローンまで登場しています。

しかし課題も浮き彫りになっています。韓国南部の古里原子力発電所では、直近5年間で700機以上が上空やその周辺に飛来しました。その半数近くが古里原発に集中しており、プサン市原子力安全課が対応にあたっています。

問題は、飛来したドローンの操縦者を特定できたのは4割未満という現実です。9月は28件、10月は10件の侵入事案が確認されていますが、警察が現場に急行した時にはすでに操縦者が立ち去っているケースがほとんど。特定できたものの多くは近隣の海水浴場の観光客でしたが、6割以上は誰がどんな目的で飛ばしたのかわからないままなのです。

プサン市原子力安全課のイ・ジャンヒチーム長は「ドローンによる放射線非常事態が発生する可能性もあるので、そのような部分まで悩みながら対応している」と危機感を示しています。


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鈴木達治郎氏が指摘する課題|責任分担とコスト負担の曖昧さ

鈴木氏が指摘する最大の課題は「責任分担の曖昧さ」です。ドローンが侵入しても、誰がどんな目的でやっているのかを瞬時に判断することは極めて困難です。一般の方のいたずらかもしれない、テロかもしれない、軍事行為かもしれない。それによって対応は大きく異なります。

電力会社が対応できる範囲を超えれば警察、軍事行為であれば自衛隊と、担当が変わっていきます。しかしこの責任分担が曖昧なままなのです。

鈴木氏は昨年、日米韓で行った図上演習の事例を紹介しました。韓国の原発にドローン攻撃があり放射性物質が日本に流れてきた場合を想定した演習でしたが、同時に軍事対立も発生。自衛隊をテロ対策に向けるのか、放射性物質からの避難対応に向けるのか、軍事対応に向けるのか、という複雑な判断を迫られる状況が生じたそうです。

もう一つの課題は「コスト負担の曖昧さ」です。ドローン対策には多大なコストがかかりますが、誰がどこまで負担するのか明確ではありません。鈴木氏は「この問題は結局全部国民の負担になる。原発の是非に関係なく施設がある以上対策が必要なので、国民全体の問題として透明性のある議論をしていただきたい」と訴えています。

機密情報が多い分野ではありますが、だからこそ可能な限り透明性を確保した議論が求められているのではないでしょうか。


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日本の原発に求められる対策と国際的役割

今回の事案を受け、国や電力会社も動き始めています。原子力規制庁はドローンの撮影や位置の特定、通信妨害ができる機材の整備などの検討を電力会社に求める通知を出しました。警察も電力会社と合同でドローンを飛行させて対応を確認する訓練を実施しています。

九州電力も動画を撮影できるよう運用を明確にするなど監視体制を強化しました。まずは「記録を残せる体制」を整えることが急務であることは間違いありません。

国際的には核セキュリティが大きなテーマとなっています。ドローンやAI、サイバーなど新技術への対応に加え、ロシアによるウクライナ侵攻でのチェルノブイリ原発攻撃、イスラエルとアメリカによるイランの核施設攻撃など、国際法で禁止されているにもかかわらず原発攻撃が現実に起きてしまっていることへの危機感が高まっています。

ジュネーブ諸条約では「住民の間に重大な損害をもたらすような攻撃」は禁止されており、原発やダム、堤防への攻撃も禁じられています。国際原子力機関も原発以外の核施設全てに対する攻撃禁止の決議をしています。

鈴木氏は紛争地域での二国間協定の事例を挙げました。インドとパキスタンでは紛争時でも原子力施設を攻撃しないという協定を結んでおり、アフリカの非核兵器地帯でも地域内の核施設を攻撃しない条約が存在します。こうした地域的な合意を広げていくことが一つの方策だと提案しています。

そして日本には独自の役割があります。福島第一原発事故を経験した日本は、放射性物質の拡散や除染、避難について多くのノウハウを持っています。この知見を世界に発信していくことが求められています。原発事故が核兵器攻撃と同様に深刻な核汚染を引き起こしうるという現実を、身をもって知っている国として果たすべき責任があるのではないでしょうか。


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まとめ

2025年7月の玄海原発での事案は、日本の原発における「空の死角」を露呈させました。光の正体がドローンだったのか航空機だったのか、4ヶ月経っても特定できていないこと自体が、対策の不備を物語っています。

世界ではドローンによる重要施設への侵入が頻発し、韓国の古里原発では5年間で700機以上が飛来、6割で操縦者を特定できないという深刻な状況です。責任分担やコスト負担の曖昧さ、国際法が破られている現実など、課題は山積しています。

急速に進化するドローン技術と緊迫する国際情勢の中で、原発の安全をどう守っていくのか。唯一の戦争被爆国であり、原発事故を経験した日本だからこそ担える役割があるはずです。私たち国民も、この問題を自分ごととして考えていく必要があるのではないでしょうか。

※ 本記事は、11月18日放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。

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