2025年6月22日に放送されたTBS系「がっちりマンデー!!」では、ロングセラー商品でありながら過去最高の売上を記録した企業の秘密に迫りました。その中でも特に注目を集めたのが、江崎グリコの「セブンティーンアイス」です。1980年代から続く定番のアイスクリーム自販機が、なぜ今になって過去最高の売上を達成したのでしょうか。その背景には、設置場所を根本的に見直した「日常に入り込もう大作戦」という革新的な戦略がありました。
セブンティーンアイスの「日常に入り込もう大作戦」とは?江崎グリコの戦略転換
江崎グリコ乳業事業部の井上朋美さんが番組で明かした「日常に入り込もう大作戦」は、セブンティーンアイスの歴史を変える大きな転換点となりました。この戦略は、2021年の新型コロナウイルスの影響で売上が大幅に落ち込んだことがきっかけで生まれています。
セブンティーンアイスは1983年の誕生以来、17歳前後の若者をターゲットとした自販機専用のアイスクリームとして親しまれてきました。当時、アイスクリームは子供向けのイメージが強かった中で、より大人の若者層にアプローチする革新的な商品として登場したのです。
従来の設置場所は、主にボーリング場やゲームセンターなど、若者が遊びに行く「非日常」の場所が中心でした。しかし、コロナ禍によってこうした娯楽施設への客足が減る中で、井上さんは「やばいなと思いました。大分危機感はありました」と当時の状況を振り返っています。
そこで2023年から始まったのが「日常に入り込もう大作戦」です。この戦略の核心は、セブンティーンアイスの自販機を「たまに行く非日常の場所」から「毎日通る日常の場所」へと設置場所を大胆に転換することでした。この発想の転換が、まさに過去最高売上への道筋となったのです。
がっちりマンデーで紹介された設置場所大転換の背景と井上朋美さんの決断
番組では、江崎グリコの井上朋美さんが直接出演し、セブンティーンアイスの戦略転換について詳しく説明しました。井上さんによると、2023年以前のセブンティーンアイス自販機は、17歳前後の若者が訪れそうなボーリング場やゲームセンター、スイミングスクールなどがメインの設置場所でした。
これらの場所は確かにターゲット層が集まる場所でしたが、同時に「アイスをたまに食べる非日常の場所」という位置づけでもありました。新型コロナウイルスの影響で、人々がこうした娯楽施設にわざわざ足を運ぶ機会が激減したことで、セブンティーンアイスの売上も大きく影響を受けることになったのです。
井上さんの決断力が光ったのは、この危機的状況を単なる一時的な困難として捉えるのではなく、ビジネスモデル自体を見直す機会として活用したことです。「非日常から日常へ」という発想の転換は、40年以上続くセブンティーンアイスの歴史の中でも画期的な変化でした。
この戦略転換は、単に設置場所を変えるだけでなく、消費者との接点そのものを根本的に見直すことを意味していました。アイスクリームを「特別な時に食べるもの」から「日常的に楽しめるもの」へとポジションを変更することで、より多くの消費機会を創出しようという狙いがあったのです。
駅での17アイス自販機設置が大成功した理由と売店跡地活用術
「日常に入り込もう大作戦」の最も象徴的な成功例が、駅構内への自販機設置です。井上さんは当初、「駅でわざわざアイスを買う人なんていないだろうと思った」と正直に語っていますが、実際に設置してみると予想を大きく上回る売上を記録しました。
駅での成功要因の一つは、時代の変化に合わせた絶妙なタイミングでした。多くの鉄道駅では、時代とともに無人化が進み、従来の売店が撤退していました。また、公衆電話の利用者減少により、公衆電話ボックスも次々と撤去されていました。これらの跡地は、電源設備がすでに整っており、セブンティーンアイスの自販機設置には理想的な条件が揃っていたのです。
大阪メトロの事例は特に印象的で、2年前まではわずか1台しかなかった設置数が、現在では19台まで急激に拡大しています。この約19倍という驚異的な増加は、駅利用者からの高い需要を物語っています。
京王電鉄の鉄道営業部の加川翔太さんは、鉄道会社側のメリットについて「人件費もかからず電源が1つ有れば販売が出来る商品では御座いますので、構内営業料の中の収益率も重要な売上の1つとなっております」とコメントしています。駅側にとっても、少ない維持コストで安定した収益を得られる魅力的なビジネスモデルとなっているのです。
駅での17アイス販売が成功した背景には、通勤や通学で毎日利用する人々のライフスタイルの変化もあります。移動時間中や待ち時間に気軽に楽しめるアイスクリームへのニーズが、想像以上に高かったことが明らかになりました。
高校への自販機設置拡大で売上2倍を実現した時代の変化
セブンティーンアイスの「日常作戦」のもう一つの柱が、高校への積極的な設置拡大です。番組では、青稜高等学校での事例が紹介され、生徒たちがセブンティーンアイスを日常的に楽しんでいる様子が映し出されました。
高校生へのインタビューでは、「今日体育祭の予行で、ほんとに暑くて、今日外がアイスぴったりです」「学校で友達と食べた方がやっぱ美味しいので食べる時は学校で食べます」といった声が聞かれ、セブンティーンアイスが学校生活に完全に溶け込んでいることが分かります。
実際の数字を見ると、高校への設置数は2018年頃と比べて2倍に拡大しており、この成長が全体の売上押し上げに大きく貢献しています。しかし、この取り組みは決して簡単な道のりではありませんでした。
番組司会の加藤浩次さんが指摘したように、「ひと昔前だったら学校でアイス食べるなんてそんな不謹慎なみたいな事言われていた時代」がありました。井上さんも「やはり難易度はかなり最初は高かった」「学校にアイスは必要ないっていう声もあった」と振り返っています。
しかし、時代の変化とともに学校側の意識も変わりました。井上さんによると、「学校様側があの生徒さんが喜ぶようにとか楽しい学校生活を送れるようにって言う風に意識も変わられた」とのことです。現在では、生徒が直接学校に対して「置いて欲しい」と直談判するケースも増えているそうです。
この変化の背景には、アイスクリームそのものに対する社会的な認識の変化もあります。エコノミストのエミン・ユルマズさんが番組で指摘したように、「今だったらみんないつでも食べてます」「アイスと言うのがもうやっぱりもっと皆さんの生活に入り込んだ」という時代の流れが、学校での設置を後押ししています。
セブンティーンアイス過去最高売上を支えた「非日常から日常へ」の発想転換
2023年から始まった「日常に入り込もう大作戦」の成果は、数字として明確に現れています。セブンティーンアイスは2023年と2024年の2年連続で過去最高の売上を記録し、40年以上の歴史を持つロングセラー商品としては異例の快挙を達成しました。
この成功の核心にあるのは、消費者との接点に対する根本的な発想転換です。従来の「特別な場所で特別な時に食べるアイス」から「日常的にいつでも気軽に楽しめるアイス」へとポジションを変更することで、消費頻度と消費機会を大幅に拡大することに成功したのです。
現在、セブンティーンアイスの自販機は全国に2万台設置されており、駅や学校での新規設置が売上向上の主要な要因となっています。この戦略は、単なる設置場所の変更を超えて、ブランドの価値提案そのものを時代に合わせて進化させた事例として注目されています。
江崎グリコの井上朋美さんは、この成功について「生活者が大人になるまでに、ブランドとの接点をいかにつくり続けるかが重要だ」とコメントしており、長期的なブランド戦略の観点からも重要な取り組みであることが分かります。
なかやまきんに君やエミン・ユルマズさんといった番組ゲストも、この戦略転換の巧妙さを高く評価していました。特に「入り込み方を変えるだけで売り上げが最高になる」という加藤浩次さんの指摘は、マーケティング戦略の本質を的確に表現していると言えるでしょう。
まとめ
2025年6月22日の「がっちりマンデー!!」で紹介されたセブンティーンアイスの成功事例は、ロングセラー商品が時代の変化に対応して進化を遂げた素晴らしい例です。江崎グリコの「日常に入り込もう大作戦」は、新型コロナウイルスという危機を機会に変え、40年以上続くブランドに新たな活力を与えました。
駅構内での設置拡大(大阪メトロでは1台から19台へ)、高校での設置数2倍達成、そして2年連続の過去最高売上記録という具体的な成果は、戦略転換の効果を明確に示しています。井上朋美さんが主導したこの取り組みは、「非日常から日常へ」という発想転換の力を証明する事例として、多くの企業にとって参考になる貴重な教訓を提供しています。
セブンティーンアイスの成功は、時代の変化を敏感に察知し、柔軟に対応することの重要性を教えてくれます。消費者のライフスタイルの変化に合わせて設置場所を見直し、新たな消費機会を創出することで、長年愛され続けてきた商品がさらなる成長を遂げることができるのです。
※ 本記事は、2025年6月22日放送(TBS系)の人気番組「がっちりマンデー!!」を参照しています。
※ 江崎グリコ17アイスのHPはこちら
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