日本の地方に新たな観光の潮流が生まれています。それが「ガストロノミーツーリズム」です。2024年10月22日放送のNHK「クローズアップ現代」では、この新しい観光スタイルが地方創生の切り札として注目を集めている実態が明らかになりました。「ガストロノミーツーリズム」という新しい観光スタイルは、今、世界の富裕層から注目を集めています。世界市場規模100兆円とも言われるこの観光形態は、地域固有の食文化を通じて、農家や職人の収入を大きく増やし、持続可能な地域発展をもたらします。本記事では、日本各地の成功事例と共に、自治体が今すぐ取り組むべき具体的な施策をご紹介します。
ガストロノミーツーリズムとは?世界100兆円市場の全貌
ガストロノミーツーリズムとは、食を通じてその土地の文化や歴史に触れる新しい観光の形です。世界では約1.5億人がこの観光スタイルを楽しんでおり、市場規模は100兆円に達する可能性があると試算されています。
特徴的なのは、単なるグルメ旅行ではないという点です。その土地ならではの食材、調理法、食文化を通じて、地域の歴史や文化、生活様式までも深く理解しようとする体験型の観光スタイルなのです。
なぜ今、日本の地方が世界の富裕層から注目されているのか
日本ガストロノミー協会会長の柏原光太郎氏によると、日本が注目される理由は以下の3点にあります:
・南北に長い国土がもたらす多様な食材と食文化 ・各地域固有の独自の食文化 ・コンパクトな国土による効率的な周遊の実現
例えば、富山から金沢、福井、京都、静岡、東京と1週間で周遊でき、その過程で300万円程度を費やすことも珍しくないといいます。
食を通じた地方創生の成功事例
富山県の過疎地域では、人口わずか400人余りの村にフランス料理店がオープン。シェフの谷口英司氏(48)は、地元の熊肉や山菜、契約農家から仕入れる90日齢の雛鳥などを使用し、年間約1000人の海外からの来店客を集めています。
静岡県焼津市では、地元の鮮魚店・前田尚毅氏の卓越した「神経締め」の技術が、中国の富裕層の間で話題となり、周辺のレストランに新たな観光客の流れを生み出しています。
ガストロノミーツーリズムがもたらす地域への波及効果
地域経済への波及効果は想像以上です。例えば、
・契約農家の売上が10年で4倍に増加 ・地域の絹織物会社が新規事業を開拓 ・陶芸家の取引件数が9年で30倍に ・食用花農家の取引件数が20倍に増加し、新規雇用も創出
専門家が語る地方発展のポイント〜柏原光太郎×村山慶輔から
観光アドバイザーの村山慶輔氏は、地域の連携の重要性を指摘します。例えば、新潟県南魚沼市では、地元の方々と郷土料理を楽しむ体験が外国人観光客に人気を集めています。
一方、柏原氏は高額なイベントよりも、実践的な二次交通の整備を提案。具体的には、英語対応可能な運転手付きのワンボックスカー50台の導入などを推奨しています。
地方自治体が今すぐ取り組むべき施策とは
成功の鍵は以下の3点です。
・地域固有の価値を再発見し、適切な価格設定を行う ・生産者や職人との連携体制を構築する ・持続可能な観光インフラを整備する
例えば、新潟県と群馬県による「雪国A級グルメ」認証制度は、21の飲食店が連携し、雪国の食文化を発信する成功例として注目されています。
まとめ:ガストロノミーツーリズムが切り開く日本の未来
ガストロノミーツーリズムは、単なる観光振興策ではありません。地域の誇りを再発見し、持続可能な地域づくりを実現する新しい可能性を秘めています。世界中の美食家たちから「聖地」と呼ばれる日本の食文化。その価値を活かした地方創生の取り組みは、まさに始まったばかりなのです。
[2024年10月22日放送の「クローズアップ現代」を参照]
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