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テレビ番組・情報

【クローズアップ現代】動物行事刑事告発「伝統か虐待か」専門家解説と解決策

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2025年5月27日に放送されたNHK「クローズアップ現代」で取り上げられた動物を使った伝統行事への刑事告発問題。この深刻な対立は、私たちに「伝統文化の継承」と「動物愛護」という重要な価値観の衝突について考えさせてくれます。番組キャスターの桑子真帆さんが投げかけた「あなたは、どう考えますか?」という問いに、多くの視聴者が心を揺さぶられたのではないでしょうか。

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動物行事への刑事告発が相次ぐ深刻な現状

現在、日本全国で動物を扱う祭りや行事の主催者や参加者が次々と刑事告発される事態が起きています。この問題の深刻さは、単発的な事件ではなく、組織的かつ継続的に行われている点にあります。

沖縄県のアヒル取り競走では、2024年に海に放ったアヒルを捕まえる祭りの関係者が、その行為が暴力的だとして刑事告発され、書類送検されました。また、北海道のばんえい競馬でも、4年前に馬にそりを引かせる競技で馬の顔を蹴った騎手と厩務員が書類送検されています。

特に注目すべきは、東北各地で行われている馬の行事への刑事告発が相次いでいることです。これらのケースでは、いずれも書類送検された関係者はその後不起訴になっているものの、地域社会に大きな波紋を呼んでいます。

このような刑事告発が増加している背景には、動物愛護運動への関心の高まりと、SNSを通じた情報拡散力の強化があります。従来は地域内で完結していた行事が、インターネットを通じて全国的な注目を集める時代になったのです。

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遠野市馬力大会中止決定の背景と経緯

岩手県遠野市で70年以上続いてきた馬力大会は、この問題の象徴的な事例といえるでしょう。毎年県の内外から約5000人が訪れる自慢の祭りでしたが、2025年6月に予定されていた大会は中止が決定されました。

馬力大会の審判長を務めてきた菊池茂勝さんも刑事告発された一人です。「つわものどもが夢の跡だ」と語る菊池さんの言葉からは、長年愛され続けてきた行事を失う無念さが伝わってきます。告発の内容は、手綱で馬を叩くといった行為が動物愛護法などに違反するというものでした。

遠野市の多田一彦市長をはじめ、大会関係者10人以上が刑事告発されたこの事態について、菊池さんは「虐待で訴えられっつうのは、本末転倒もはなはだしい」と憤りを表現しています。さらに「最終的には荷物を引っ張らせるのも虐待だって。それじゃあ、話にも何にもならねえ」という発言からは、対話の困難さがうかがえます。

遠野市が大会中止を決めた理由は、刑事告発だけではありません。告発と相前後して市役所に全国から大会への抗議が殺到し、多いときは1日に100件を超える電話やメールが寄せられたといいます。多田市長は「職員仕事にならない。役所の電話もパンクする。それ精神的圧迫って言うんじゃないですか」と、行政機能への深刻な影響を語っています。

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動物愛護団体の主張と告発手法の実態

これらの刑事告発を行っているのは、長野県を拠点とする動物愛護団体LIAの代表、ヤブキレンさんです。普段は捨てられて殺処分されそうになった動物を引き取って育て、新たな飼い主を見つける活動を行っています。

ヤブキさんの活動の特徴は、SNSを活用した情報拡散戦略にあります。遠野市の馬力大会の動画をネットに投稿し、その表示回数は14万回に達しました。「まず世の中に知ってもらうことですね。こういう現場がある、馬力大会ってすごいローカルな祭りなんだって」と語るように、地域限定だった行事を全国的な問題として可視化することが彼らの戦略です。

ヤブキさんの主張は明確で一貫しています。「自分たちが楽しみたいがために馬を暴行して走らせてる、重い荷物を持たせて、何百キロっていう。それって何なんですかね」「馬は人間のために生きてるわけじゃないから」という発言からは、動物の権利を最優先に考える姿勢が読み取れます。

注目すべきは、宮城県涌谷町で行われた馬の大会でルール改善が行われた後でも、ヤブキさんは「評価は出来ないですけど変化してますね。だってやめてないから。これ自体が虐待なんで。告発します」と述べていることです。これは、段階的な改善では満足せず、行事そのものの廃止を求める絶対的な立場を示しています。

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伝統行事関係者の反論と地域文化への思い

一方、伝統行事に携わる関係者たちの思いは切実です。遠野市は日本有数の馬の産地として知られ、人と馬が一つ屋根の下で共に暮らす伝統がありました。農業や物資の運搬、特に馬を使って山から木を運ぶ馬搬が地元の産業を支えてきた歴史があります。

馬力大会の参加者は「小さいときから」馬と共に生活し、「人参大好き。馬大好き」と語るように、動物への愛情を持って接してきました。暮らしの中で育まれてきた馬との絆を確かめる年に一度の晴れ舞台が馬力大会だったのです。

さらに重要なのは、馬力大会が技術継承の場としての役割を果たしていたことです。参加者が「そのためにやってるから。地元は特に」と語るように、馬を操る技を次の世代に受け渡すという目的がありました。

しかし、刑事告発を受けた多田市長は、告発団体との対話について「告発してる相手がたと話しますか?それは対話じゃないっていうことの表れですから」と述べ、対話の余地がないことを明言しています。この発言からは、法的手段を取られたことによる深い不信感が読み取れます。

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佐伯潤教授が語る動物福祉の考え方と重要性

番組で専門的見解を述べた佐伯潤さん(帝京科学大学教授、獣医師)は、動物愛護に関する国の検討委員を務める専門家です。佐伯教授は、この対立について両方の立場を理解しつつ、建設的な解決策を提示しています。

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獣医師の佐伯潤氏                         (引用:「帝京科学大学」HPより)

告発する団体について、佐伯教授は「たくさんある動物愛護団体の中の、ごく一部」としながらも、「彼らの主張や信念、活動そのものは、理解できる部分もあります」と一定の理解を示しています。しかし同時に、「人類は長い時間をかけて、利用するために家畜という動物を生み出しています」「現代の私たちの生活自体が動物によって支えられている」という現実を指摘し、「動物を使うこと自体を一切やめるべきだという主張については、現実的ではない」と述べています。

一方、祭り主催者側についても改善の必要性を指摘しています。中央競馬の例を挙げ、「騎手が馬に鞭を使う時には厳しいルールが定められ、違反をすればペナルティがある」「獣医による馬体の検査があり、レースの時も馬場内の要所要所には獣医が配置されている」として、専門家の関与と安全配慮の重要性を強調しています。

佐伯教授が提唱する「動物福祉」の考え方は、この対立の解決策として注目されます。これは「動物を人が利用していくことは認めた上で、人間が動物を使う場合には、動物の苦痛やストレスを出来るだけ最小限にしていこうという考え方」です。

さらに佐伯教授は、現代社会における人と動物の関係性の変化が批判の背景にあると分析しています。「ペットブームと言われていても、犬の飼育頭数は減少傾向」「学校でもうさぎなどの動物が飼われなくなっていて、子供たちが動物と接する機会が大きく減っている」ことを指摘し、「動物を少し離れた距離から愛でている、見守っているという感じになっている」と現状を分析しています。

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海外成功事例:メキシコ闘牛改革「暴力のない伝統」

この問題は日本だけでなく、世界各地で起きています。特に注目すべきは、メキシコシティで2025年3月に可決された闘牛改革です。約500年の伝統を持ち、年間300万人を超える観客が訪れるメキシコの闘牛に対し、「暴力のない闘牛」という画期的な改革が実現しました。

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闘牛(引用:「日本経済新聞」より)

メキシコでは闘牛に反対する人が72%に上っていましたが、単純な廃止ではなく改革の道を選びました。新ルールでは、牛の殺傷や刃物の使用を禁止し、その代わり牛の角も人を傷つけないように保護することにしました。また、牛の負担を減らすため出場時間は最大15分としました。

この改革を主導したダニエラ・アルバレス議員は、「賛成派と反対派が直接対話するのは非常に困難」としながらも、行政が仲裁役となって解決策を模索しました。重要なのは、公聴会を開催し、双方の声に直接耳を傾け、その様子をインターネットで市民にも公開したことです。

獣医師や動物愛護団体、畜産業者など34人が参加し、賛成派と反対派は別の日に分けて率直な意見を言えるよう工夫しました。さらに注目すべきは、経済的影響も考慮したことです。2024年のメキシコシティでの闘牛の経済効果は約26億円に上ることが明らかになり、単純な廃止では多くの人の生活に影響することが考慮されました。

アルバレス議員は「多くの人にとって闘牛がどれほど重要か知りませんでした。闘牛で収入を得て生活している人がいて、(闘牛を廃止した場合の)公的な支援はなにもありません」と述べ、現実的な解決策の必要性を語っています。

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国内改善事例:三重県上げ馬神事の変革への取り組み

日本国内でも、対話による解決事例があります。毎年5月に三重県の神社で行われる上げ馬神事は、700年近い伝統を持つ行事です。馬に乗って坂を駆け上がり、高さ約2メートルの土壁を超えられれば豊作になると言われてきました。

しかし、馬の負担が大きいことや足を骨折した馬が殺処分となったケースなどに批判が集まりました。そこで2024年から土壁を撤去し、坂を緩やかにする、馬の扱いに関する講習会を関係者に実施するなどの変更を行いました。

重要なのは、この変更がどのように行われたかです。祭りの主催者である神社が行政に相談し、馬の専門家や獣医師、地元住民、それから愛護団体の代表らも加わった検討会で改善策を話し合いました。現在もその検討が続けられており、継続的な改善の姿勢を示しています。

この事例が示すのは、第三者(行政)の仲裁専門家の関与、そして段階的な改善による解決の可能性です。一方的な告発や絶対的な廃止要求ではなく、建設的な対話によって妥協点を見つける道筋を示しています。

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動物行事の未来を拓く対話と専門家関与の重要性

佐伯教授は、この問題の解決について重要な指摘をしています。「伝統だからというだけでそのままの形を続けていくものではない」としながらも、「動物がかわいそうだという感情から人と動物を隔離していくようなことは慎重に考えるべき」と警鐘を鳴らしています。

なぜなら、「動物と接して、身近に触れることによって、動物に対する思いとか愛情というものが育まれていく。それが動物愛護の心になっていく」からです。これは動物愛護管理法の理念である「人と動物の共生」にもつながる考え方です。

メキシコの事例が示すように、「合意の形成とは絶対的な考えを押し付けることなく、互いが歩み寄れる部分を見つけ全員が幸せになる道を探すこと」です。妥協は負けではなく、ともに前進することなのです。

専門家の関与についても、佐伯教授は「対象となる動物の生態や行動等に関する知識や、その個体個体の特性に対する理解という事もとても大切」として、感情論を超えた科学的根拠に基づいた判断の重要性を強調しています。

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まとめ

2025年5月27日放送の「クローズアップ現代」が提起した動物行事への刑事告発問題は、私たちの社会が直面する価値観の対立を象徴的に表しています。遠野市の馬力大会中止という深刻な事態は、単なる地域の問題を超えて、伝統文化の継承と動物福祉の両立という普遍的な課題を投げかけています。

佐伯潤教授が提唱する「動物福祉」の考え方と、メキシコの闘牛改革や三重県上げ馬神事の事例が示すように、対立を乗り越える道筋は存在します。重要なのは、刑事告発という法的手段に頼るのではなく、専門家を交えた建設的な対話による段階的な改善です。

番組が問いかけた「あなたは、どう考えますか?」という問いに対する答えは、感情論を超えた冷静な議論と、相手を理解しようとする姿勢にあるのではないでしょうか。伝統文化と動物愛護は対立するものではなく、共存できるものとして捉え直すことが、この問題解決の鍵となるでしょう。

※ 本記事は、2025年5月27日に放送されたNHK「クローズアップ現代」を参照しています。
※ 自然保護NGO団体「Life Investigation Agency」通称LIA(エルアイエー)のHPはこちら

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