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【クローズアップ現代】病院閉鎖・休止「なぜ都市部で」病院の経営リスクとその背景

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2025年6月2日にNHK「クローズアップ現代」で放送された特集は、多くの視聴者に衝撃を与えました。「大きな病院がたくさんある都会なら、医療は安心」という常識が、今まさに崩れ始めているのです。なぜ患者の多い都市部で病院の閉鎖・休止が相次いでいるのか、その深刻な実態と病院の経営リスクとその背景について詳しく解説いたします。

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クローズアップ現代が明かした都市部病院閉鎖・休止の衝撃的実態

番組が取り上げた最も衝撃的な事実は、東京都内の病院の67%が赤字経営に陥っているという現実でした。これは単なる統計数字ではありません。私たちの身近な医療環境が、想像以上に深刻な危機に直面していることを示しています。

桑子真帆キャスターが現地取材した東京・吉祥寺では、地域住民の多くが「まさか突然病院がなくなるなんて考えたことがなかった」と驚きの声を上げていました。これまで当たり前に利用できていた医療機関が、ある日突然利用できなくなる──そんな現実が都市部でも起こり始めているのです。

番組では「必要な医療に力を入れるほど経営が傾いてしまう」という医師の切実な声も紹介されました。救急医療の現場で働く医師が語った「何でも(患者を)取ると赤字になる」という言葉は、現在の医療制度が抱える根本的な矛盾を如実に表しています。

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この深刻な状況は、単に病院経営の問題だけではありません。地域住民の生活、特に高齢者の日常生活に直接的な影響を与えており、外出を控える人が増加するなど、社会全体に波紋を広げています。

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病院閉鎖・休止が相次ぐ都市部の深刻な現状

吉祥寺南病院の事例は、都市部の病院が直面している複合的な課題を象徴的に示しています。この病院は年間2000台以上の救急車を受け入れる地域の重要な医療機関でしたが、2024年10月から突然診療を休止しました。

元院長の藤井正道氏が番組で明かしたのは、築50年を超える建物の老朽化と、建替え費用の異常な高騰でした。建替え費用が約60億円まで跳ね上がったのです。これは当初予定の2倍近い金額であり、病院経営では到底負担できない規模になってしまいました。

さらに深刻なのは河北総合病院の事例です。年間約8000台の救急車を受け入れるこの病院では、2023年に運営法人の赤字が過去最大規模の9億円に達しました。救急患者の受け入れこそが赤字の主要因となっているという皮肉な状況が浮き彫りになりました。

特に問題となっているのは軽症患者の増加です。番組で紹介された事例では、自宅で転倒し頭を打った男性患者の場合、検査の結果、手術や入院の必要がなく、病院が得られる診療報酬は2万円未満でした。しかし、関わった医師や看護師の人件費を考慮すると、完全に採算が合わない状況となっています。

また、高齢者の入院長期化も経営を圧迫する大きな要因となっています。90代男性の事例では、治療が終わり病状が安定していても、認知症や介護施設の空きがないため退院の目処が立たず、入院が1ヶ月以上続きました。診療報酬制度では入院日数が一定期間を過ぎると報酬が4割程度減少するため、長期入院は病院経営にとって大きな負担となっています。

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病院の経営リスクとその背景にある構造的問題

都市部の病院経営が悪化している根本的な原因は、診療報酬と実際のコストの深刻な乖離にあります。国が定める医療サービスの価格である診療報酬が、都市部の実際の医療提供コストに見合わなくなっているのです。

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太田圭洋氏(日本医療法人協会副会長)が番組で指摘したように、都市部では地方と比較して医療従事者の給与水準が大幅に高くなっています。看護師の給与だけでも、東京と地方部では月4~5万円もの差が生じており、この人件費の高騰が経営を直撃しています。

建築費の高騰も深刻な問題です。番組で紹介された東京都内の病院のうち、築40年以上の病院が29.7%、つまり約3つに1つの病院が老朽化に直面している現実があります。しかし、現在の建築費高騰により、建替えは事実上困難な状況となっています。

物価高騰も病院経営に追い打ちをかけています。医療機器や医薬品、日用品に至るまで、あらゆるコストが上昇している一方で、診療報酬の改定頻度や改定幅では、このコスト増加に追いつけない状況が続いています。

さらに深刻なのは、都市部特有の患者構成の変化です。軽症患者の救急搬送が増加し、特に高齢者の軽症患者が多くを占めています。これらの患者への対応は医療の社会的使命として重要ですが、現在の診療報酬制度では採算性を確保することが極めて困難となっています。

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太田圭洋氏と吉村健佑氏が提言する解決への道筋

番組に出演した専門家たちは、この危機的状況に対する具体的な解決策を提示しました。

太田圭洋氏は「必要な医療に必要な報酬を」という明確なメッセージを発信しました。現在の診療報酬制度が都市部の実情に合わなくなっている状況を改善し、地域で求められる医療機能を担う病院が適切に採算を確保できる制度設計が必要だと強調しています。

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日本医療法人協会副会長の太田圭洋氏                          (引用:「名古屋記念財団」HPより)

特に重要なのは、役割分担や集約化を進めた後の病院が、担当する機能に応じて適切な診療報酬を得られる仕組みの整備です。これにより、医療機関の機能分化・再編が促進され、効率的で持続可能な医療体制の構築が可能になります。

一方、吉村健佑氏(千葉大学病院次世代医療構想センター長・特任教授)は「戦略的な縮小と痛み分け」という概念を提示しました。限られた医療資源の中で、何を残し何を統合するかを、データに基づいて戦略的に決定する必要があると指摘しています。

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千葉大学医学部附属病院 次世代医療構想センター長の吉村健佑氏                         (引用:「千葉大学医学部附属病院 次世代医療構想センター」HPより)

吉村氏が特に重視しているのは、医療提供側、患者側、行政側が一体となって取り組む必要性です。これまでより一歩踏み込んだ協力体制を構築しなければ、次世代がすべての痛みを引き受けることになってしまうと警鐘を鳴らしています。

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医療機関の役割分担・集約化による持続可能な医療体制

解決策の具体例として、番組では千葉県市原市の先進的な取り組みが紹介されました。同市では帝京大学千葉総合医療センターの移転発表を受け、データ分析に基づく新たな医療体制の構築に取り組んでいます。

吉村健佑氏の分析によると、移転する大学病院より小規模な病院でも、病床数を半分以下にして回復期医療に特化すれば、地域の医療ニーズに応えながら経営を維持できると試算されています。これは人口減少により地域の入院患者が2035年以降減少すると推計されることを踏まえた戦略的判断です。

さらに注目すべきは、データ分析による役割分担の「見える化」です。表面的には同等の機能を持つ2つの病院でも、詳細なデータ分析により、一方は脳外科の高難度手術を得意とし、もう一方は消化器がんの診療を得意とするという違いが明らかになります。このような分析に基づいて機能を集約することで、より効率的で質の高い医療提供が可能になります。

大阪府では実際に成功事例が生まれています。2024年12月に開院した泉大津急性期メディカルセンターは、経営状況が悪化していた泉大津市立病院と老朽化に直面していた府中病院の急性期機能を統合した新しい病院です。一方で、泉大津市立病院は小児・周産期に特化した泉大津市立周産期小児医療センターとして生まれ変わり、府中病院は回復期・リハビリテーションに特化しました。

この統合により、新病院の建設費などの事業費を両者で折半することで、それぞれの負担を大幅に抑制することができました。総事業費約154億円のうち、2分の1を指定管理者である社会医療法人生長会が負担する官民連携モデルとなっています。

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まとめ

クローズアップ現代で明らかになった都市部の病院閉鎖・休止問題は、単なる経営問題を超えた社会全体の課題です。病院の経営リスクとその背景には、診療報酬制度の限界、都市部特有のコスト構造、人口動態の変化など、複合的な要因が絡み合っています。

解決に向けては、太田圭洋氏が提言する診療報酬制度の改革と、吉村健佑氏が提唱する戦略的な医療機関の役割分担・集約化が不可欠です。大阪府の成功事例が示すように、データ分析に基づく合理的な判断と、関係者間の協力により、持続可能な医療体制の構築は可能です。

重要なのは、私たち市民も受け身でいるのではなく、医療の持続可能性に積極的に協力する姿勢を持つことです。番組で紹介された市原市の市民代表の「市民として何ができるのか」という前向きな声が、全国に広がることが期待されます。

「当たり前に医療を受けられる」という前提が揺らぎつつある今、私たち一人ひとりが医療の未来について真剣に考え、行動することが求められています。クローズアップ現代が投げかけた問題提起を受け止め、持続可能な医療体制の構築に向けて、社会全体で取り組んでいく必要があります。

※ 本記事は、2025年6月2日放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。

 

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