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社会・暮らしの問題

【クローズアップ現代】物価高に負けない賃上げへ「2026春闘」の焦点

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2026年3月17日放送の「クローズアップ現代」では、物価高を超える賃上げは実現できるのかという2026春闘の核心に迫りました。名目賃金は上がっても実質賃金はマイナスという”賃上げ負け”が続いてきた日本。番組では大手スーパーの交渉現場への密着や、株主偏重の分配構造の問題、中小企業の価格転嫁の実例が紹介されました。この記事では、番組内容を整理しながら、2026春闘の行方と私たちの暮らしへの影響を詳しく解説します。


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2026春闘の賃上げはどうなる?物価高を超える攻防の全容

2026年の春闘が、いよいよ大きな山場を迎えています。3月18日の集中回答日には、トヨタ自動車や日立製作所、NEC、三菱重工業など大手企業で満額回答が相次ぎ、金属労協(JCM)が発表した午後0時半時点の回答平均は月額1万5450円(5.1%)という高水準でした。連合が掲げる「全体5%以上、中小企業6%以上」の目標に向けて、3年連続の5%台という歴史的な賃上げの流れは続いています。

しかし、番組で繰り返し強調されていたのは、「額面が上がっても生活実感が伴わない」という根深い問題です。実際、2025年のベアは3.18%でしたが、物価上昇率も3.1%で、せっかくの賃上げがほぼ相殺されてしまいました。名目賃金と実質賃金のギャップ――これこそが、私たちが感じる「生活が楽にならない」の正体です。

2026年1月にようやく実質賃金が13ヶ月ぶりにプラスに転じたものの、その矢先に起きたのがアメリカとイスラエルによるイラン攻撃です。原油価格が急騰し、物価上昇がさらに加速する懸念が広がっています。BNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎氏は、番組の中で2つのリスクを指摘しました。1つは、過去30年間、日本企業が資源高局面で人件費を抑制してきた歴史があり、中小企業が同じ行動をとりかねないこと。もう1つは、デフレ時代とは異なり企業が値上げしやすくなった今、賃上げの原資を値上げに頼ると「賃金を上げても物価上昇に追いつかないインフレスパイラル」に陥るリスクです。

個人的には、この「インフレスパイラル」の指摘は極めて重要だと感じます。企業が安易に値上げで賃上げコストを転嫁すれば、労働者は賃上げの恩恵を実感できず、消費も伸びない。結局、「好循環」ではなく「空回り」に終わる恐れがあるわけです。


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大手スーパーの賃金交渉に密着|ベア8000円回答の舞台裏

番組が密着取材したのは、およそ5万3000人の従業員を抱える大手スーパーです。2026年2月下旬に始まった賃金交渉では、労働組合が「総額1万9000円相当」の賃上げを要求しました。内訳は、勤続年数に応じた定期昇給分など月額9000円に加え、賃金を底上げするベースアップ(ベア)分1万円です。これは2026年1月時点の来年度物価上昇予想を1%程度上回る水準とのことでした。

組合の執行委員長・飯田康介氏は、「物価上昇を上回る賃金引き上げがなければ、組合員の生活の維持向上は難しい」と訴えました。実際、番組に登場した40代の正社員男性は、食費が前年比で月2万円増加し、光熱費も6000円上昇。妻の収入と合わせても家計はカバーできていない厳しい実態が映し出されていました。

一方、経営側にとっても組合の要求は想定を上回るものでした。物流コストや賃借料の上昇が大きな壁となっていたのです。しかし、この企業が切り札としていたのが「生産性の向上」です。紙の値札を電子棚札に切り替えたり、手入力だった発注作業にAIを導入するなど、業務の効率化を進めてきました。こうした取り組みで浮いたリソースを売上アップにつながる業務に振り向け、賃上げの原資を確保する戦略でした。

最終的に、3月4日に経営側が提示した回答はベア8000円。満額の1万円には届きませんでしたが、来年度の物価上昇率の見込みを上回る水準で、定期昇給分と合わせて月額1万5000円相当の賃上げとなりました。イラン情勢で先行きが不透明な中、経営側は1億円を追加で捻出する決断をしたのです。

岩崎高治社長の「人への投資を最終的にバッファー(調整弁)にしてはいけない。一時的に厳しくても歯を食いしばって頑張る」という言葉は、今の経済界全体に投げかけられたメッセージのように感じます。人件費を真っ先にカットしてきた過去の日本企業の体質を変えられるかどうか、ここが分岐点なのかもしれません。


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株主に9倍・従業員に1.1倍|経済界が見直す分配のあり方

番組が最も鋭く切り込んだのが、企業が生み出した付加価値の「分配の偏り」です。河野龍太郎氏の分析によると、過去25年間で従業員への分配は1.1倍にとどまる一方、株主への配当は9倍にも膨れ上がっています。日本の時間あたりの生産性は海外と同程度に伸びているにもかかわらず、実質賃金だけが伸びていない。つまり、企業の「稼ぐ力」が足りないのではなく、稼いだお金の「配り方」に問題があるのです。

この構造がなぜ生まれたのか。関西経済連合会会長で住友電気工業会長の松本正義氏は、1970年代にアメリカで広まったフリードマン流の「株主資本主義」を日本が無批判に受け入れた結果だと指摘しました。「経営者は株主の代理人である」という考えが蔓延し、利益が株主に偏重する仕組みが定着してしまったのです。

河野氏も補足として、バブル崩壊後の2000年代頃までは雇用を守るために賃上げを我慢してもらう必要があったものの、2010年代に企業が安定的に利益を上げられるようになっても分配構造が改善されなかったと解説しています。その原因は、まさに「株主利益の最大化こそが経営者の役割だ」という考え方が企業経営者の間に浸透していたからだと分析しました。

こうした問題意識は、ついに経済界のトップにまで共有されるようになっています。経団連の筒井義信会長は、番組の中で「株主への配分に傾斜してきたことの一方で、賃金引き上げやベースアップによる配分には慎重であった。反省を込めて認識している」と、これまでにない強い表現で語りました。今年の春闘における経営側の指針にも「適切な分配」が明記されています。

松本正義氏が提唱する「公益資本主義」は、従業員・株主・取引先・顧客・地域社会といった全てのステークホルダーに公平に価値を配分するという考え方です。これは日本の「三方よし」の精神にも通じるもので、一つのステークホルダーへの偏重は社会を歪にし、貧富の差を広げるという問題意識が根底にあります。

率直に言って、この分配構造の是正は「言うは易く行うは難し」でしょう。しかし、経団連トップが「反省」という言葉を使い、関経連会長が公益資本主義を推進の柱に据えている事実は、日本の経済界が明らかに転換点にあることを示しています。これが一時的なポーズで終わるか、本気の構造改革につながるか。今後数年の動きで問われることになるはずです。

また、番組ではパイプの製造・販売を行う大手企業(従業員約2500人)が、従業員への分配見直しに動き出した事例も紹介されました。この企業は4年前に過去最高益を記録して以降、賃上げを続けてきましたが、株主への分配が上昇を続ける一方、従業員への分配はほぼ横ばいでした。石松伸一常務は「従業員への分配がやや置いてきぼりになっている。これには違和感を覚えた」と率直に語っています。

この企業が導入したのが、自社株式を従業員に付与する制度です。一昨年、約600人の従業員に1人あたり900万円分の自社株を付与。年間約30万円の配当が得られ、定年後には自由に売却も可能です。従業員の一人は「そんなのもらっていいんですか」と驚きつつも、会社への貢献意欲が高まったと話していました。

ただし河野氏は、「良い取り組みだが株式付与だけでは非正規雇用の人にメリットがない」とも指摘しています。雇用の4割は非正規であり、大企業がまず正社員の基本給をしっかり上げることが波及効果の出発点だという点は押さえておくべきでしょう。


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中小企業の賃上げを左右する「価格転嫁」の成功事例と壁

働く人の7割が中小企業に勤めている日本では、大企業だけの賃上げでは不十分です。そして中小企業の賃上げを左右するのが、大企業に対するコスト上昇分の「価格転嫁」です。

番組で注目されたのは、半導体や自動車部品を製造する樹脂加工メーカー・株式会社コージンの取り組みです。この会社は3年連続で約5%の高水準の賃上げを実現しています。その武器が、独自に作成した「バブルチャート」でした。

これは、約100種類の部品それぞれについて、受注量(円の大きさ)と、かかった時間・人員に対する収益性を「見える化」したグラフです。中央の線より下にある部品は採算が取りにくいことが一目でわかります。小柴雅信社長は、「このグラフを見せるとお客さんはびっくりされる。言わないとわからないし、ずっとやっているから何とかなっていると思われていた」と明かしました。

さらに細かく分析すると、機械メンテナンスの人件費など一部コストが計上されておらず、部品によっては10%程度の上乗せができていないことも判明。この客観的データを基に交渉した結果、取引先の大企業からも「材料費や人件費の高騰が理解でき、交渉に応じやすい」という反応が得られたといいます。

このメーカーは地元企業を訪ねて勉強会も開催しており、多くの企業がこの手法を採用すれば中小企業全体の底上げにつながるとの考えで活動を広げています。

しかし現実には、価格転嫁は容易ではありません。番組で紹介されたアンケート(2026年1月~2月実施、全国の中小企業対象)では、賃上げを実施しない企業の最大の理由が「コストの増加分を十分に価格転嫁できていない」でした。「値上げしたら仕入れを他社に回された」「値上げは認められたが配送回数や台数を減らされた」といった深刻な声も紹介されています。

松本正義氏は、中小企業側にも自助努力とともに取引先との日頃のコミュニケーションが大切だとしつつ、政府の取り組みにも触れました。経済産業省の「パートナーシップ構築宣言」や、公正取引委員会による優越的地位の乱用に対する取り締まりが進んでいることを挙げ、「官民一緒にこの問題を解決しようとしている」と語っています。

個人的には、コージンのバブルチャートの手法には大きな可能性を感じます。中小企業の「お願い交渉」から「データに基づく対等な交渉」への転換は、価格転嫁だけでなく、企業間関係そのものを健全にする効果があるのではないでしょうか。


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松本正義氏と河野龍太郎氏が語る賃上げの鍵と日本経済の分岐点

番組に出演した松本正義氏(関西経済連合会会長・住友電気工業会長)と河野龍太郎氏(BNPパリバ証券チーフエコノミスト)の見解を整理すると、2026春闘以降の日本経済の道筋が浮かび上がってきます。

河野氏が最も力を込めていたのは、「賃上げの原資をどこから持ってくるか」という論点です。企業が値上げしやすくなった今の環境では、付加価値の創出ではなく値上げで賃上げの原資を賄おうとする企業も増えているといいます。しかしこれでは賃上げ→値上げ→物価高→実質賃金停滞という悪循環に陥り、いつまでも暮らしは楽になりません。あくまで生み出された付加価値から賃上げの原資を確保する発想を定着させるべきだ、というのが河野氏の主張でした。

松本正義氏は、株主・従業員・取引先・顧客・地域社会を公平に見る公益資本主義の思想を、関西経済連合会の推進の柱に据えていると繰り返し強調しました。これは単なる理念論ではなく、中小企業の価格転嫁問題とも直結しています。取引先というステークホルダーに対しても「公平公正に対応する」という思想は、下請けいじめの是正にもつながる考え方です。

さらに河野氏は、危機の局面では弱い立場にある中小企業や非正規雇用に負担が集中しがちだと警鐘を鳴らし、「皆でリスクを分担する仕組み」の必要性を訴えました。

正直に言えば、これらの議論はここ数年ずっと繰り返されてきたテーマでもあります。しかし、経団連トップが「反省」を口にし、大手企業がイラン情勢の不透明さの中でも追加原資を捻出して賃上げに踏み切っている現状は、過去の春闘とは明らかに質が異なります。問題は、この「本気度」が中小企業や非正規雇用にまで波及するかどうか。ここが2026春闘の本当の勝負どころだと感じます。


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まとめ

2026年3月17日放送のクローズアップ現代は、物価高を超える賃上げの実現に向けた日本経済の攻防を多角的に描き出しました。

大企業の集中回答日では5%台の高い賃上げ率が続いていますが、それだけでは私たちの生活実感は変わりません。番組が浮き彫りにしたのは、25年間で株主配当が9倍に膨らむ一方、従業員への分配が1.1倍にとどまるという歪んだ構造です。この構造を変えない限り、物価高に負けない賃上げは実現しないでしょう。

経団連の筒井義信会長が「反省を込めて認識している」と語り、松本正義氏が公益資本主義の実践を訴え、中小企業では客観的データを武器にした価格転嫁の新しい動きも始まっています。河野龍太郎氏が指摘するように、賃上げの原資は値上げではなく付加価値から――この原則を守れるかどうかが、インフレスパイラルか好循環かの分かれ道です。

2026春闘は、日本経済が「賃金が上がらない国」から本当に脱却できるのかを問う、重要な分岐点と言えるでしょう。

※ 本記事は、2026年3月17日放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。

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