2026年4月5日放送の「がっちりマンデー!!」の木造特集で、最も驚きの声が上がったのが「木造の人工衛星」です。京都大学と住友林業が共同開発した世界初の木造人工衛星「LignoSat(リグノサット)」は、一辺わずか10cmの小さな木箱ですが、その中に宇宙の未来を変える可能性が詰まっています。この記事では、リグノサットの全容と、なぜ木で衛星を作るのかをお伝えします。
世界初の木造人工衛星「リグノサット(LignoSat)」とは
リグノサット(LignoSat)は、京都大学と住友林業が2020年4月にスタートした「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」の中で、約4年の歳月をかけて開発された世界初の木造人工衛星です。
その大きさは一辺わずか約10cm。「キューブサット」と呼ばれる超小型衛星で、中には制御基板やセンサーが搭載されています。名前の「Ligno」はラテン語で「木」を意味し、「Sat」は「Satellite(人工衛星)」から。まさに「木の衛星」です。
2024年11月5日、アメリカ・フロリダ州のケネディ宇宙センターからSpaceXのロケットで打ち上げられ、国際宇宙ステーション(ISS)に到着。そして2024年12月9日、ISSの日本実験棟「きぼう」から宇宙空間に放出されました。木造の人工衛星が宇宙に浮かぶ――SF映画のようですが、これは紛れもない現実なのです。
なぜ木造?金属の人工衛星が大気を汚染する問題とは
「なぜわざわざ木で人工衛星を作るの?」という疑問は当然あるでしょう。その答えは、金属製の人工衛星が抱える環境問題にあります。
人工衛星は役目を終えると大気圏に再突入させて燃え尽きさせるのが国際ルール。しかし、アルミニウムなどの金属でできた衛星は、燃焼時に「酸化アルミ(アルミナ粒子)」という微粒子を大気中に放出します。番組で京都大学の村田功二教授が説明されたように、これが大量になるとオゾン層の破壊や地球の気候への影響が懸念されているのです。
現在、地球の軌道上には何千もの人工衛星が飛んでおり、今後さらに増えていく見込みです。その全てが大気圏で燃え尽きるたびにアルミナ粒子を撒き散らすとしたら、環境への影響は無視できないレベルになるかもしれません。
木造の人工衛星なら、大気圏で完全に燃え尽き、有害な微粒子を出さない。「防災衛星なのに将来的に環境破壊しちゃったら意味ない」という番組内での指摘は、まさに本質を突いていると思います。
京都大学と住友林業が共同開発|元宇宙飛行士・土井隆雄さんの構想
このプロジェクトの「リーダー」と呼ばれているのが、京都大学の土井隆雄特定教授です。土井教授は、日本人として初めて宇宙空間での船外活動を行った元宇宙飛行士でもあります。
土井教授が描く未来のビジョンは壮大です。木造人工衛星を使った「防災衛星ネットワーク」の構築。低軌道を周回する木造衛星群が地球を監視し、災害の早期発見や被害の最小化に貢献する。しかもそれらの衛星は役目を終えれば大気圏で燃え尽き、環境を汚さない。
京都大学が学術的な研究を、住友林業が木材の知見とビジネスの視点を、それぞれ持ち寄る産学連携のプロジェクト。木材の研究者と、実際に木を扱ってきた企業が手を組むことで、他では生まれない発想が実現したのだと思います。
素材はホオノキ!宇宙で使える木材の選定理由
リグノサットに使われている木材は「ホオノキ」です。なぜホオノキが選ばれたのでしょうか。
プロジェクトでは2022年3月から約10ヶ月間、ISS船外でヤマザクラ、ホオノキ、ダケカンバの3種類の木材を宇宙空間に曝露する実験を実施。昼は約100℃、夜は約マイナス100℃という過酷な温度変化、そして強力な宇宙線が飛び交う環境の中で、3樹種ともに割れ、反り、剥がれなどの劣化はほとんど確認されませんでした。
驚くべき結果ですが、最終的にホオノキが選ばれた理由は「加工性の高さ」。衛星には精密な加工が求められるため、扱いやすいホオノキが最適と判断されたのです。ちなみに、リグノサットに使われたホオノキは、住友林業が保有する北海道紋別市の社有林で伐採されたものとのことです。
宇宙空間では酸素も水もないため、木材の腐食が進まないという利点もあります。地球上では弱点にもなりうる木の性質が、宇宙ではむしろ強みに変わるというのは何とも興味深い逆転の発想ですね。
接着剤なしで組む日本の伝統工法「留型隠し蟻組接ぎ」の技術
リグノサットのもう一つの注目ポイントが、「接着剤を一切使っていない」こと。宇宙空間では接着剤がガスを放出して不具合を起こす恐れがあるため、木箱の接合に使われたのは日本の伝統工法「留型隠し蟻組接ぎ(とめがたかくしありくみつぎ)」です。
これは凹凸を精密に刻んで組み合わせることで、接着剤やネジなしでしっかりと固定する技法。滋賀県の黒田工房の職人さんが、0.1ミリのズレも許されないという厳しい要求に応えて製作しました。
番組でリグノサットの実物を手にした加藤浩次さんが、組み合わせた木箱が外れないことに驚いていましたが、これこそ日本の職人技の真骨頂です。最先端の宇宙プロジェクトに日本の伝統工法が活かされるというのは、日本人として誇らしい話ではないでしょうか。
ちなみに、番組に持ち込まれたリグノサットは「一個しかない」という貴重なモデル。ガンガン触っていた出演者たちに、進藤アナが「大事に使ってください」と心配する一幕もありました。
木造人工衛星が目指す防災衛星ネットワークの未来
リグノサット1号機はあくまでも第一歩。開発チームはすでに2号機の開発に着手しており、2027年に打ち上げる計画です。3号機は2029年、そして実用的な低軌道通信衛星としての4号機は2031年の打ち上げが構想されています。
2号機は1号機の2倍の大きさで、木造構体の内部に通信用アンテナを内蔵する予定。木材は電磁波をほぼ100%通すため、アンテナを衛星内部に収納でき、飛行中の空気抵抗でアンテナが壊れる心配もなくなります。この「電磁波を通す」という木材の特性は、金属にはない大きな優位点です。
住友林業の苅谷健司さんが番組で語っていた「木材が新しい価値を、今の地球上の建築にも活かせるネタが今たくさん生まれてきている」という言葉が印象的でした。宇宙での実験データが地上の木材技術にフィードバックされることで、木造建築の可能性がさらに広がっていく。宇宙と地上が木を通じてつながるという、壮大で美しいストーリーがここにあります。
まとめ
2026年4月5日放送の「がっちりマンデー!!」で紹介された、京都大学と住友林業による世界初の木造人工衛星「リグノサット(LignoSat)」についてお伝えしました。
ホオノキで作られた一辺10cmの小さな木箱が、接着剤も使わず日本の伝統工法で組まれ、2024年12月にISSから宇宙へ放出されたこと。その背景には、金属衛星による大気汚染の問題があること。そして将来的には、木造の防災衛星ネットワークが構想されていること。
「木」という人類最古の素材が、宇宙という最先端のフィールドで新たな可能性を切り拓いている。がっちりマンデーの木造特集の中でも、このリグノサットの話は最もスケールが大きく、ワクワクする内容でした。今後の展開にぜひ注目していきましょう。
※ 本記事は、2026年4月5日放送(TBS系)の人気番組「がっちりマンデー!!」を参照しています。
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