「自分の体臭、大丈夫かな…」と気になったことはありませんか?実は体臭の原因は汗だけではなく、皮膚から出る目に見えない「皮膚ガス」にあります。2026年4月8日放送のBSテレ東「いまからサイエンス」では、東海大学の関根嘉香教授が皮膚ガスの種類や出方、防ぐための食べ物、さらにはガン診断への応用まで徹底解説しました。この記事を読めば、体臭の仕組みから対策まで丸ごと理解でき、日々のにおいケアに自信が持てるようになりますよ。
皮膚ガスとは?体臭の原因となる3つの出方(経路)を解説
「体臭=汗のにおい」と思い込んでいる方は、かなり多いのではないでしょうか。しかし番組で関根嘉香教授が明かしたのは、体臭の正体は皮膚から出るごく微量のガス=皮膚ガスであるという事実でした。
皮膚ガスとは、私たちの体の表面から常に放出されている目に見えない化学物質のことです。皮膚呼吸とは異なり、体が不要な物質を排出するプロセスの一つとして、皮膚が使われているのだそうです。
関根教授によると、皮膚ガスの出方(経路)は主に3種類あります。
①表面反応由来 汗そのものは本来ほとんどにおいがありません。ところが、汗が皮膚の表面に出て放置されると、皮膚に住んでいる常在菌がそれを分解し、におい物質に変えてしまいます。これが「表面反応由来」の皮膚ガスです。
②皮膚腺由来 血液の中を流れていた物質が汗に移り、発汗とともに皮膚の表面に出た際にガス化するタイプです。酢のようにツーンとした酢酸臭などがこれにあたります。
③血液由来 食べたものなどから生じて血液中を巡っている化学物質が、そのまま皮膚から放出されるタイプです。ニンニクを食べた後、口臭は比較的早く消えるのに、体からのにおいがしばらく続くのは、この血液由来の皮膚ガスがじわじわと出続けているからなのです。
個人的に驚いたのは、焼肉屋でニンニクをたっぷり食べて帰宅した後も、呼気のにおいは減っているのに皮膚からはニンニク臭が出続けているという話です。「焼肉の思い出をまとって帰る」という番組内の表現が、まさに言い得て妙でした。
つまり体臭とは、この3つの経路から出る皮膚ガスが人それぞれ異なる「配合」でブレンドされたものということになります。同じにおいでも好き嫌いが分かれるのは、この配合バランスが一人ひとり違うからなんですね。
皮膚ガスの種類一覧|加齢臭・疲労臭・眠気臭・ダイエット臭の違い
番組では、関根教授が独自に開発した器具で皮膚ガスを収集・分析し、さまざまな種類の体臭を発見してきたことが紹介されました。ここでは代表的なものを整理してみます。
加齢臭(表面反応由来) 皮脂の酸化によって発生します。男性では35歳頃から出始めるとのこと。意外と早いですよね。皮脂の分泌量自体は年齢とともに減るのですが、皮脂の成分が変化し、加齢臭の原料となるパルミトレイン酸の割合が増えること、さらに体内の活性酸素が増加して酸化が進むことで、年齢とともににおいが強くなるのだそうです。また、皮脂の分泌は男性ホルモンと関連しているため、女性よりも男性の方が加齢臭は強い傾向にあります。
ミドル脂臭(表面反応由来) 30代〜40代の男性に多く見られる体臭で、化粧品会社との共同研究で明らかになりました。成分はジアセチルで、ブルーチーズのような独特のにおいがするとのこと。加齢臭とは異なる成分なので、30代でも油断できません。
酢酸臭(皮膚腺由来) 汗と一緒に出てくる皮膚ガスで、酢のようにツーンとしたにおいです。年齢や性別に関係なく誰にでも出るといいます。
疲労臭(血液由来) 成分はアンモニアです。通常アンモニアは約98%が尿から排出されますが、残りの約2%は皮膚表面から出ています。筋肉の疲労や心の疲労(ストレス)がかかると、この皮膚からのアンモニア量が増加します。番組では出演者の腕に測定器具をつけて疲労臭を可視化していましたが、関根教授自身が一番緊張していたという結果は、なんとも微笑ましかったです。
ちなみに筋トレ中の疲労臭はやめればすぐに引くそうですが、メンタルのストレスによる疲労臭はなかなか減衰せず、じわじわ出続けるとのこと。ここは非常に重要なポイントだと感じました。
眠気臭(血液由来) 関根教授が最近発見したにおいで、成分はプロピオン酸。眠気を感じている人から多く出る物質で、物が腐ったようなにおいがするそうです。面白いのは、実際に眠って睡眠をとると、このにおいが改善するという点。ただしそのメカニズムはまだ解明されていません。
ダイエット臭(血液由来) 糖質制限などで脂肪が燃焼すると、アセトンという物質が皮膚から出てきます。においはマニキュアの除光液に似ていますが、薄いと甘いリンゴのような香りだとか。「体重がなかなか減らなくても、皮膚ガスを調べれば脂肪が燃えているか分かるかもしれない」という関根教授の話は、ダイエット中の方にとって希望の光になりそうです。
加齢臭はなぜ年齢とともに強くなる?皮脂と活性酸素の仕組み
体臭の中でも特に多くの方が気にしている加齢臭について、もう少し掘り下げてみましょう。
加藤浩次さんも番組内で鋭い質問をしていましたが、「年を取ると皮脂が減るのに、なぜにおいは強くなるのか?」という疑問は多くの人が抱くはずです。
関根教授の説明によれば、ポイントは皮脂の「量」ではなく「中身」が変わるということです。年齢を重ねると皮脂の中のパルミトレイン酸が割合的に増加し、これが加齢臭の原料になります。さらに体内では老化とともに活性酸素が増加し、この酸化力の強い酸素がパルミトレイン酸を酸化させることで、加齢臭の元となるノネナールなどのにおい物質が生成されるのです。
つまり加齢臭は「量が増えるから臭くなる」のではなく、「成分が変わり酸化が進むから臭くなる」というメカニズムなんですね。これを知っているだけでも、対策の方向性が見えてくるのではないでしょうか。
皮膚ガスによる体臭を防ぐには?食べ物と腸内環境がカギ
体臭対策について、関根教授は「過剰にゼロにしようとしなくていい。皮膚ガスが出ることは自然の摂理」と前置きしつつも、具体的な方法をいくつか紹介してくれました。
加齢臭対策:カシスと梅のポリフェノール
関根教授の実験では、カシス(粉末で5〜10グラム程度を摂取)や梅(エキスを濃縮したジュースを1週間飲み続ける)ことで、加齢臭が低減したそうです。共通するのはポリフェノールの抗酸化作用。体内の活性酸素の働きを弱め、皮脂の酸化を抑制してくれるのです。
教授自身が梅干し1個、さらに3個を食べても効果がなかったという話はリアリティがありました。短期間で少量では難しく、ある程度の濃度と継続が必要ということですね。
疲労臭対策:腸内環境の改善
腸内のビフィズス菌を増やすと、疲労臭(アンモニア)が下がるという研究結果も紹介されました。さらに驚くべきことに、腸内環境を改善すると桃(ピーチ)の香りの成分が皮膚から増えてくるのだとか。ヨーグルトなどで善玉菌を増やす食生活を続けることが、においケアにも直結するわけです。
汗臭対策:濡れたもので拭く
汗をかいたらこまめに拭くことが基本ですが、重要なのは乾いたタオルではなく濡れたもので拭くということ。汗は体を冷やすためにかいているので、乾いたもので拭き取ると再び汗が出てしまいます。おしぼりや汗拭きシートで拭くだけで、かなりの違いがあるそうです。
足のにおいの意外な正体
足のにおいには汗臭だけでなく疲労臭(アンモニア)も含まれています。立っているだけで足裏の筋肉に負荷がかかり、疲労臭が出るのです。しかもアンモニアは血液由来なので、洗っても落ちません。お風呂で足を洗っても、まだツーンとにおう場合は疲労やストレスのサインかもしれません。足のにおいがストレスのバロメーターになるというのは、意外ですが覚えておきたい知識です。
皮膚ガスでガン診断?関根嘉香教授が挑む膵臓ガンの早期発見
関根教授の研究の最終的なターゲットは、皮膚ガスによる病気の診断です。
番組では、大腸ガン・胃ガン・舌ガン・膵臓ガンなどのガン患者と健常者を皮膚ガスで比較すると、明らかにパターンが異なることが示されました。全部で75種類もの皮膚ガスを測定し、そのパターンの違いから判別を行っているそうです。
中でも現在フォーカスしているのが膵臓ガンです。膵臓ガンは自覚症状がほとんどなく、発見時にはステージ3〜4になっていることが多い、極めて厄介なガンです。
膵臓ガン患者のデータでは、アセトアルデヒド(炭水化物の分解物)が健常者より高く出ることが確認されています。膵臓の機能が低下すると、代謝がうまくいかなくなることが原因と考えられています。
ただし現状の大きな課題は、ステージ1の早期患者のデータがほとんど集まらないということです。初期段階で膵臓ガンが見つかること自体が稀なため、早期発見に直結するデータの蓄積が急務となっています。研究では、こうした皮膚ガスのパターンをAIに学習させて判別する手法の開発も進められています。
将来的に在宅で手軽に皮膚ガスを測定し、ガンの早期発見につなげられれば、医療のあり方が大きく変わる可能性を秘めていますね。
感情やストレスも皮膚ガスで分かる!10秒測定センサーの可能性
関根教授は大手自動車部品メーカーと共同で、ストレス測定器を開発しています。機器に手を置くだけで、ストレス時に体から出る5つの皮膚ガス成分を分析し、約10秒で結果が分かるという画期的なセンサーです。
企業での活用が想定されており、毎日の測定データを蓄積すれば、常にストレス状態にある人を早期に把握し、うつ病などメンタルヘルスの問題を未然に防ぐことに役立てられるといいます。自分では「大丈夫」と思っていても、実際の皮膚ガスデータとのズレに気づくことが大切だと教授は強調していました。
さらに興味深いのが、感情(喜怒哀楽)による皮膚ガスの変化です。関根教授の実験では、怖い映画を見ると臭い成分が増え、楽しいコメディ映画を見ると果実臭のようないい香りが増えるという結果が出ているそうです。
番組内で加藤浩次さんが「デートではジェットコースターよりコメディ映画の方がいいじゃないですか」と言っていましたが、科学的に見ても理にかなった話だったわけです。
教授が近々の目標として挙げていたのは、こうした感情のセンシング技術を寝たきりの方や、まだ言葉をうまく話せない小さなお子さんの意思疎通に活かすこと。皮膚ガスは自分の意思で止められないからこそ、客観的な感情の指標になりうるのです。この研究が実用化されれば、介護や育児の現場に大きな変革をもたらすのではないでしょうか。
関根嘉香教授が皮膚ガス研究に進んだきっかけとは
関根教授が研究者を志したきっかけは、高校時代に地球環境問題に関心を持ったことでした。当時(1980年頃)、環境問題がクローズアップされる中で、家で飼っていたイヌやネコが将来ちゃんと暮らせるのかと心配になったのだそうです。環境を守るには化学が大事だと考え、大学で化学を専攻しました。
最初はPM2.5が東アジアで国境を越えて移動することを示す研究に取り組み、これはおそらく世界初の報告となったとのこと。その後、シックハウス症候群の研究として室内の化学物質を調べていた際、空気清浄機などで対策したにもかかわらず、室内にまだガスが残っている。その出どころを調べたところ、自分たちの体から出ていたということに気づきます。
環境測定に使っていた器具を自分の体にあてたら、ガスが検出された——この偶然の発見が、皮膚ガス研究の出発点でした。当時、この分野を研究している人は世界的にもほとんどいなかったそうで、「じゃあここをやってみよう」と始めてから約20年が経っています。
番組の最後に関根教授は、「サイエンスとは手段である」という金言を残しました。科学は万能ではないが、問題を発見し解決するための手段としては非常に重要な役割を果たす——環境や健康の問題解決にサイエンスを使い続けるという、ブレない信念が感じられました。
まとめ
2026年4月8日放送の「いまからサイエンス」では、東海大学の関根嘉香教授が皮膚ガス研究の最前線を紹介してくれました。
記事のポイントを振り返ると、以下の通りです。
- 皮膚ガスには3つの出方(経路)がある:表面反応由来・皮膚腺由来・血液由来
- 体臭の種類は多岐にわたる:加齢臭、ミドル脂臭、疲労臭、眠気臭、ダイエット臭など
- 加齢臭は皮脂の成分変化と活性酸素の増加が原因で、35歳頃から始まる
- 体臭対策にはカシスや梅(ポリフェノール)、ビフィズス菌による腸内環境改善が有効
- 膵臓ガンの早期発見を目指し、AIを活用した皮膚ガスパターン解析が進行中
- ストレスや感情も皮膚ガスに反映され、10秒で測れるセンサーが開発されている
体臭というと、どうしてもネガティブなイメージを持ちがちですが、関根教授の言葉通り、体臭は「私たちの体や心の状態を反映する情報」です。皮膚ガスを正しく理解し、日々のケアに活かしつつ、将来的には病気の早期発見にまで繋がる——そんな未来がすぐそこまで来ていると感じさせてくれる放送回でした。
※ 本記事は、2026年4月8日放送(BSテレ東)の人気番組「いまからサイエンス」を参照しています。





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