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【クローズアップ現代】脱中東依存と電化の行方「牛の糞が燃料に」

【クローズアップ現代】脱中東依存と電化の行方「牛の糞が燃料に」 kurogen-datsuchuto-denka
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イラン情勢でエネルギー価格が揺れるたび、「うちの電気代はどうなるの?」と不安になりませんか。2026年7月13日放送のクローズアップ現代では、脱中東依存に向けて世界で加速する「電化」の最前線が紹介されました。この記事では、家計の防衛策から牛の糞を燃料に変えるインドの挑戦まで、番組で示された具体策を整理します。読み終える頃には、値上がりに振り回されない備え方が見えてくるはずです。


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クローズアップ現代が示した「脱中東依存」の現在地とは

まず押さえておきたいのは、日本がいま置かれている立ち位置です。原油の先物価格は下落傾向にありましたが、アメリカとイランの間で再び攻撃の応酬となり、イランの革命防衛隊は7月12日にホルムズ海峡の封鎖を表明しました。原油価格がこうした動きに左右される状況が続いています。

日本はこれまで、石油備蓄の放出、原油の調達先の多角化、ガソリン価格を抑える補助金といった手を打ってきました。ただ、これらはいずれも「今の供給を支える」ための緊急対応です。三菱総合研究所の主席研究員・野本哲也さんは、危機に強い安定供給を実現するにはエネルギーの構造転換が必要だと指摘しています。

野本哲也

三菱総合研究所 主席研究員の野本哲也氏                (引用:「三菱総合研究所」HPより)

つまり、脱中東依存とは「別の国から石油を買う」ことではありません。石油に頼る仕組みそのものを組み替えること。番組が世界各地を追いかけた理由も、まさにここにあります。そしてその共通のキーワードが「電化」でした。

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電気代への不安が動かす家計 太陽光・蓄電池への問い合わせが2割増

太陽光・蓄電池による家計防衛

太陽光・蓄電池による家計防衛

この危機を、家計はすでに肌で感じ取っています。住宅向けの省エネ設備を扱うTEPCOホームテックでは、イラン情勢を受けて問い合わせ件数が前年同期比で2割あまり増えました。青木貴洋社長は、エネルギーコストが上がる方向に向かっていると感じた人たちが、今のうちに再生可能エネルギーで電気を作れる状態にしておこうと考えている、と語ります。

神奈川県で暮らす小山さん一家は、4月に新築した自宅へ太陽光パネルと蓄電池を設置しました。電力会社から購入する電気の量は4割近く減り、電気代はおよそ4〜5000円安くなったといいます。政府は9月まで電気料金の補助を行うとしていますが、その後の値上がりが心配だと話していました。

ここで見逃せないのが、設置に伴い今後15年間、毎月およそ1万7000円の支払いが発生するという事実です。月4〜5000円の節約と比べれば、単純な収支はマイナスに見えます。それでも小山さんは「自分の電気は自分で作る」スタイルを、将来のリスクから家計を守る投資と捉えていました。この割り切り方こそ、今回の番組が投げかけた本質だと感じます。

企業も同じです。都内のデータセンターでは、NTTデータが使用電力の2割を専用の太陽光発電所から調達し、20年間同じ価格で購入する契約を結びました。通常より高くつく場合もありますが、統括部長の大久保康基さんは、不確実な情勢でも安定した価格帯で稼働できるメリットは大きいと話します。安さより「読めること」を買う——価値観の転換が起きています。

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牛の糞バイオガスが車を走らせる インドの「エネルギー地産地消」

インドの酪農場を舞台に、牛と酪農家、糞を原料にするバイオガス製造プラント(ドーム)、そしてそのガスで走るエコタクシーが並び、エネルギーの地産地消サイクルを描いたイラスト

インドにおける牛の糞バイオガスによるエネルギー地産地消の全体像

一方、アジアではもっと大胆な発想が動き出していました。今月行われた日印首脳会談で、モディ首相は日本の支援も受けながら、1000ヵ所のバイオガスと有機肥料のプラントを設置する計画を打ち出しました。主役は、インドにおよそ3億頭いるとされる牛です。

日本の自動車メーカーであるスズキは、酪農家から牛の糞を1キログラムあたり1ルピー(約1.7円)で買い取っています。バイオガス事業を担当する松本健次郎さんは、牛が大切にされている国だからこそ、その糞も大切に扱わなければならないと語っていました。集められた糞は、昨年12月に本格稼働した工場で水分と混ぜられ、発酵槽へ。およそ1か月発酵させると、バイオガスができあがります。

驚くのはその経済性です。国際情勢の影響を受けづらいうえ、現在のガソリン価格より4割ほど安い。取材に応じたタクシードライバーは、月に2万5000ルピー(約4万3000円)節約できていると話していました。松本さんによれば、3000万台分の燃料を作れるポテンシャルがあるといいます。

「牛の糞バイオガス」と聞くと、途上国の苦肉の策のように響くかもしれません。しかし実態は逆で、国内にある資源だけで完結する、極めて強靭なエネルギー供給網です。捨てられていたものが燃料になり、酪農家には現金収入が生まれ、輸入依存度が下がる。エネルギーの地産地消とは、こういうことなのだと腑に落ちました。

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フィリピンのEVミニバスと「電化」 400万円台・ナビなしという逆転の発想

原油の9割以上を中東に依存するフィリピンでは、一時、燃料価格が2倍以上に高騰しました。庶民の足だった乗り合いバス「ジプニー」は運行本数を減らし、社会は大きく混乱します。

そこで注目を集めているのが、日本のスタートアップ企業アセンブルポイントが手がけるEVミニバスです。宮下崇社長が案内する製造ラインは、わずか5工程。特徴は、走ることに特化したシンプルな設計です。AIも自動運転も積まず、スイッチはできるだけ機械式にし、ナビゲーションすらありません。

電気の使用量を減らしたことでバッテリーを小型化でき、充電ステーションではなく家庭用電源で充電できます。価格は400万円台で、一般的なEVバスの5分の1。2月以降、問い合わせは5倍以上に増え、生産が追いつかない状況が続いています。この日は運行会社から新たに14台の購入を打診されていました。

最先端の機能を積み増すのが正解、という思い込みを気持ちよく裏切ってくれる事例です。宮下社長は、ガソリンとエンジンではなく電気とモーターで動けば欲しいと言ってくれる人が確かにいる、と手応えを語っていました。電化の普及を阻んでいたのは技術ではなく「値段」だったのかもしれません。

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フランスの「電化促進計画」とイギリスの洋上風力 脱中東依存を国家戦略に

ヨーロッパでは、国家戦略として電化を推し進める動きが加速しています。フランスのマクロン大統領は5月の演説で、化石燃料への依存が地政学的リスクの前で自国を脆弱にしていると述べ、国内の電化を進めることは独立と主権を守ることだと訴えました。

これを受けて発表されたのが「電化促進計画」です。住宅や交通の電化を進め、エネルギー消費に占める化石燃料への依存度を30%未満に引き下げること、そして消費者や企業への補助金を年間100億ユーロへ倍増することを掲げました。計画に関わったフランス環境省エネルギー・気候総局のティモティー・アサンシオフレリー主席補佐官は、ホルムズ海峡封鎖を地政学的な好機として捉え、化石燃料からの脱却を加速させると語っています。危機を「言い訳」ではなく「追い風」に読み替えたわけです。

現場も動いています。フランス北部の運送会社では、パスカル・ピアン社長が、燃料がこれほど高騰したのは50年ぶりだと嘆きつつ、補助金を追い風にEVトラックをさらに2台購入する検討に入りました。

一方のイギリスは、洋上風力発電で世界2位の発電能力を誇ります。ただ、この分野のサプライチェーンの多くを占めるのは中国企業です。英王立防衛安全保障研究所のダン・マークスさんは、サイバーセキュリティやスパイ活動、海洋監視といったリスクを挙げ、特定国への依存度が高まるほど安全保障上のリスクは増大すると警告しました。

そこで存在感を高めているのが日本です。スコットランドの港では、日本の商社などが出資したMaraenが運営を担い、早川宜広CEOは方向性が一致している安心感があると話します。同じ港では住友電工が海底ケーブルの工場を建設中で、渡辺傑副社長は、高電圧の直流ケーブルを作れる企業は欧州でも数社しかないと語っていました。

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日本の脱中東依存に必要な3つの視点 省エネ・分散化・自給率

野本さんは、日本が進むべき構造転換のポイントを3つ挙げました。

1つ目はエネルギーの使用量を減らすこと。省エネ型製品への買い替えや、電化を進めることが挙げられます。2つ目は分散化です。調達先の多角化に加え、エネルギー源や利用方法そのものを多様化させ、どこかが止まっても他で補える構造にする。3つ目が自給率の向上。日本のエネルギー自給率は16.3%と低く、牛の排泄物をバイオガスにする事例のような地産地消の視点や、農業を続けながら発電する営農型太陽光といった土地の有効活用が重要になります。

国は2040年度までに発電に占める再生可能エネルギーの割合を4割から5割程度に、原子力を2割程度に増やす方針です。野本さんはこれを野心的な目標としつつ、原子力には安全性の確保・住民の理解・使用済み燃料への対策、再エネには立地や景観、送電網の整備という課題があると指摘します。さらに太陽光や蓄電池は設備・部材のサプライチェーンの多くを中国に依存しており、一国に集中すること自体が地政学リスクを高めるとも述べました。

ここは番組で最も重い指摘だったと思います。中東依存を減らそうとして中国依存に付け替えるだけなら、リスクの引っ越しにしかなりません。分散化という言葉が、単なるスローガンではなく死活的に重要である理由がここにあります。

そのうえで野本さんが強調したのが、アジア諸国との連携です。相手国の課題を共有し、共に解決策を見つけるパートナーにならなければ選ばれない——インドネシア駐在の経験から得た実感だといいます。相手国のエネルギーリスクを下げることは、ひいては日本のレジリエンスを高めることにつながる。スズキの牛糞バイオガスも、アセンブルポイントのEVバスも、その具体形だと考えると腹落ちします。

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「電化」は他人事ではない 私たちが今日からできること

では、一個人には何ができるのでしょうか。野本さんの答えはシンプルでした。これまでエネルギーは「なるべく安い電気料金」というコストの観点で語られてきたけれど、これからはコストとリスクの両面で捉える視点が重要になる、というものです。

小山さん一家の月1万7000円という支払いは、単月のコストだけ見れば損に見えます。しかし「世界情勢で電気代が2倍になっても揺らがない」という保険料だと考えれば、評価はまったく変わります。NTTデータが割高を承知で20年固定契約を選んだのも、同じ発想でした。

実際、私たちができることは、太陽光パネルの設置だけではありません。省エネ家電への買い替え、給湯や調理の電化、断熱の改善——どれも「使う量を減らす」という第一の柱に直結します。派手さはありませんが、補助金や制度に左右されない、最も確実な脱中東依存の一歩です。

そして忘れたくないのが、フィリピンのEVミニバスが教えてくれた教訓です。ナビもAIもない400万円台のバスが売れているのは、人々が本当に必要としているのは最先端ではなく「今日から使える現実解」だからでしょう。エネルギー転換もまた、遠い国家戦略の話に見えて、その入口は驚くほど身近なところにあるのだと思います。

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まとめ

2026年7月13日放送のクローズアップ現代「イラン情勢で揺れる“エネルギー” 脱中東依存の行方は?」を振り返りました。

  • ホルムズ海峡をめぐる緊張で、日本の緊急対応から構造転換へと課題が移っている
  • 家計や企業では、太陽光・蓄電池や長期固定契約など、価格変動リスクを買い取る動きが広がる
  • インドでは牛の糞から作るバイオガスがガソリンより4割安い燃料に、フィリピンでは400万円台のEVミニバスが普及
  • フランスは「電化促進計画」で補助金を年間100億ユーロに倍増、イギリスは洋上風力で日本企業と連携
  • 日本に必要なのは省エネ・分散化・自給率向上の3点。中国依存への付け替えにならない設計が鍵

エネルギーを「安さ」だけで選ぶ時代は終わりつつあります。コストとリスクの両方で考える——その視点を持てるかどうかが、これからの家計と日本の強さを分けていきそうです。

※ 本記事は、2026年7月13日放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。

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