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社会・暮らしの問題

【クローズアップ現代】看護師不足で入院できない?「あなたの地域は」

【クローズアップ現代】看護師不足で入院できない?「あなたの地域は」 kurogen-kangoshi-busoku
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「病気やケガをしても入院できないかもしれない」——そんな不安を覚えた方もいるのではないでしょうか。2026年6月29日放送のクローズアップ現代は、深刻化する看護師不足の現実に迫りました。この記事では、番組が示した「看護師密度マップ」の地域差から、離職が止まらない理由、各地で始まった対策までをわかりやすく整理します。読み終えるころには、ご自身の地域の医療を守るヒントが見えてくるはずです。

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なぜ「入院できない」?クローズアップ現代が伝えた看護師不足の実態

「このままだと患者の受け入れが難しくなる」。番組の冒頭で語られたこの一言が、今の医療現場の切実さを物語っています。2026年6月29日に放送されたクローズアップ現代(キャスター・桑子真帆さん)が取り上げたのは、全国で27万人が不足しているとされる看護職員の問題でした。

看護師が足りないと、なぜ入院できなくなるのでしょうか。理由はシンプルです。病院は国が定めた配置基準に沿って看護師を置かなければならず、人手が確保できなければ病床そのものを閉じるしかありません。つまり「ベッドは空いているのに、看護師がいないから使えない」という事態が、全国各地で同時に起きているのです。

筆者が注目したのは、これが特定の地方だけの問題ではないという点です。後述するように、むしろ人口の多い都市部ほど厳しい。「地方の医療が危ない」という従来のイメージだけでこの問題を捉えていると、本質を見誤る——番組はそう警鐘を鳴らしているように感じました。

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「看護師密度・全国マップ」で見る地域差|大阪・愛知・首都圏が手薄に

番組の最大の見どころは、各地域で実際に働く看護職員の数を人口あたりの「密度」として可視化した独自マップでした。人口に対して看護職員が少ないほど濃い赤で示され、大阪や愛知、首都圏といった都市部が濃く浮かび上がったのです。

意外に思われるかもしれませんが、これは「西高東低」という構造で説明できます。日本看護協会会長の秋山智弥さんは、病床数が多い地域ほど看護師も多く配置されるため、西日本は比較的手厚い傾向にあると解説しました。一方で都市部は病床も多いものの、それ以上に人口が多いため、人口あたりで見ると手薄になってしまうというわけです。

ただし秋山さんは、濃い赤がそのまま「危険」を意味するわけではないとも釘を刺しています。都市部は若年人口も多く、地域の年齢構成によって医療ニーズは大きく変わるからです。この「色だけで足りる・足りないは判断できない」という冷静さは、データを扱ううえでとても大切な視点だと感じました。可視化は出発点であって、結論ではないのです。

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青梅総合医療センターが67床を制限した理由|病床削減の現場

象徴的な現場として紹介されたのが、東京・青梅市にある市立青梅総合医療センターです。この地域で唯一、救命救急センターを持ち、24時間365日患者を受け入れる中核病院ですが、3年前、看護師不足を理由に病床の使用を制限するという異例の決断をしました。

数字を見ると深刻さがよくわかります。501ある病床のうち、67床を制限。コロナ禍で離職が急増した後も、毎年35人ほどの退職が続いています。新卒採用に加え中途で毎年20人ほどを採用してなんとか現場を回してきましたが、消化器内科では43床のうち7床を制限せざるを得ませんでした。満床のため、本来受け入れるべき患者を別の病棟に回したり、入院を断ったりするケースも出ています。

さらに深刻なのが「数字に表れない人手不足」です。消化器内科の看護師30人のうち5人は出産などで休職中。病棟勤務16年目のベテランは、自分の受け持ち患者に加えて新人3人を指導し、実質9人分以上に目を配っていました。看護局長の若林留美さんが「もっと頑張れ、とはもう言えない」と語った言葉に、現場の限界がにじんでいます。病床を増やしたい思いと、看護師を疲弊させられない思いの板挟み——ここに問題の難しさが凝縮されています。

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看護師の離職が止まらない理由|「寝たきり賃金」と待遇への不満

なぜ離職は止まらないのでしょうか。番組では、今月発表されたデータで半数を超える医療機関が「退職者の数が採用者を上回った」ことが紹介されました。採用してもそれ以上に辞めていく。バケツの底に穴が空いた状態です。

大阪の急性期病院を去年辞め、今は民間企業で事務職をしている元看護師の女性は、「また看護師をやりますか」と問われ「もう、選ばない」と答えました。激務で患者と向き合う理想の看護ができず、やりがいを感じられなかったといいます。さらに重くのしかかったのが待遇への不満です。

番組が示した看護師の賃金グラフは、全産業平均と比べて30代以降が低い水準にとどまり、「寝たきり賃金」とも呼ばれていました。実際、日本看護協会の実態調査によれば、看護職員の基本給はこの12年ほどでわずか6,000円弱しか上がっておらず、賃金に満足している人はおよそ1割にとどまっています。彼女が漏らした「替えの利く駒に使われている」という一言は、命に向き合う専門職の誇りが報われていない現実を突いていて、強く印象に残りました。有効求人倍率が2倍を超える「売り手市場」だからこそ、辞めても次が見つかる。皮肉にも、その安心感が離職に拍車をかけている面もあるのです。

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人材紹介会社への手数料600億円|看護師確保が病院経営を圧迫

看護師不足は、病院の経営そのものをも圧迫しています。配置基準を満たせなければ診療報酬が得られないため、病院は急いで人を確保しなければなりません。そこで頼らざるを得ないのが、民間の人材紹介会社です。

番組が取材した首都圏の急性期病院では、この5年間で法人全体の採用が137人にのぼり、今いる看護師のおよそ3分の2が紹介会社経由でした。問題はそのコストです。1人採用するたびに紹介会社へおよそ100万円の手数料を支払い、法人全体では年間数千万円に達します。本来なら医療機器の購入に充てられたはずの資金が、人材確保に消えているのです。

桑子キャスターによれば、こうした紹介手数料はコロナ以降に膨らみ、最新のデータで全国およそ600億円にのぼるといいます。原資は私たちの医療費です。ここで多くの視聴者が抱くであろう疑問——「看護師の給料は上げないのに、紹介会社には100万円も払うのか」。この構造的なねじれこそ、今回の問題の核心だと筆者は考えます。秋山さんは、診療報酬で猶予期間が延びたことを踏まえ、ハローワークやナースセンターといった無料の公的サービスを活用していく重要性を指摘していました。

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看護師不足の解決策|現場改善・デジタル化・地域連携の最新事例

では、打つ手はないのでしょうか。番組では希望の持てる三つの取り組みが紹介されました。

一つ目は職場環境の改善です。約600人の看護師が働く大阪市の急性期病院(地域医療機能推進機構 大阪病院)では、若手が相談できる相手がいないという声を受け、ベテランのリーダー看護師の業務を見直しました。慣例で一律に行っていた清拭などの回数を患者の必要性に応じて調整し、相談に乗れる時間を1日40分ほど捻出。その結果、13%を超えていた離職率が7%台まで改善しました。看護部長の田﨑弘美さんが語るように、離職が減れば現場の余裕が生まれ、さらに離職が減るという好循環が回り始めます。

二つ目はデジタル化です。東京・品川区のNTT東日本関東病院では、血圧計や体温計に端末をタッチするだけでカルテ入力を自動化。約600床の稼働状況をほぼリアルタイムで把握し、余裕のある病棟へ患者をすぐ割り振れるようにしました。病棟によっては月の時間外労働がおよそ3時間短縮されたといいます。ただし品質保証室室長の村岡修子さんは導入・維持の費用が大きいことにも触れており、「どこまで機械に任せるか」の線引きが現実的な課題です。

三つ目は地域連携です。静岡県では看護協会が県内の偏りを調査し、特に不足が深刻な3地域へ、余裕のある地域から看護師を派遣する取り組みを始めました。浜松エリアでは浜松医科大学医学部附属病院などが核となります。看護部長の佐々木菜名代さんが語るように、確保だけでなく育成までを地域全体で担う発想への転換が進んでいます。

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日本看護協会・秋山智弥会長が語る診療報酬と地域完結型医療

スタジオで解説を務めた秋山智弥会長の言葉には、これからの医療を考えるヒントが詰まっていました。

賃金については、今回の診療報酬改定で大幅な引き上げがあり、賃上げが実施される見通しだといいます。ただし秋山さんは、それが本当に一人ひとりの手元に実感として届くかを調査で確認し、足りなければさらなる引き上げを求めていく必要があると強調しました。限られた総額の中で、能力や夜勤などの負担に応じてメリハリのある賃金体系をつくることも欠かせません。

そしてもう一つの鍵が、「病院完結型医療」から「地域完結型医療」への転換です。大学病院から地域の医療機関へ看護師を派遣することは、単なる数合わせではなく、異なる療養の場の看護師同士が互いの看護を知り合う機会にもなります。それが連携力を高め、患者が安心して療養の場を移れることにつながる——この指摘は、高齢化で「治す医療」から「治し、支える医療」へ重心が移る時代に、看護師の役割がいかに重要かを示しています。

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SNSの反応と考察|「賃金は上げず紹介会社に100万円?」視聴者の疑問

放送を受けて、視聴者の間ではいくつかの論点が関心を集めると見られます。筆者なりに考察してみます。

最も多いであろう反応は、紹介手数料をめぐる違和感です。「現場の看護師の給料はなかなか上がらないのに、紹介会社には1人100万円」という対比は、誰もが矛盾を感じる部分でしょう。もちろん病院も「地域を守るためにやむを得ない」と苦渋の選択をしているのですが、年間600億円という医療費がこの形で流れている事実は、制度設計の見直しを促す強いメッセージだと感じます。

次に挙げられるのが「潜在看護師」への注目です。資格を持ちながら働いていない看護師は全国に約80万人いるとされ、不足が27万人なら計算上は足りるはずだという声が出るのは自然なことです。しかし出産・育児や、夜勤を含む不規則な勤務がハードルとなって復職に至らないケースが多いのが実情です。今回の番組が示した「働きやすさの改善」や「無料の公的紹介の活用」は、この眠っている人材をどう呼び戻すかという問いへの答えでもあります。

そして「自分の地域は大丈夫なのか」という不安。これに対しては、密度マップの色だけで一喜一憂せず、年齢構成や医療ニーズと合わせて見るという秋山さんの姿勢が、最も誠実な向き合い方だと思います。

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まとめ

2026年6月29日放送のクローズアップ現代は、看護師不足が「入院できない」という形で私たちの暮らしに直結し始めている現実を、独自の看護師密度マップとともに描き出しました。青梅総合医療センターの病床制限、止まらない離職と「寝たきり賃金」、年間600億円にのぼる紹介手数料——どれも一つの病院の努力だけでは解決できない、構造的な課題です。

一方で、大阪病院の離職率改善、NTT東日本関東病院のデジタル化、静岡の地域連携といった希望の芽も確かに育っています。秋山智弥会長が説く「地域完結型医療」と正確なデータの収集は、その芽を育てる土台になるはずです。医療は、いざというときに誰もが頼る社会の安全網です。看護師という専門職が誇りを持って働き続けられる環境をどうつくるか——それは、私たち一人ひとりの「いつか入院する日」の安心に直結している、と改めて感じさせる内容でした。

※ 本記事は、2026年6月29日放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。

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