2026年7月12日放送のがっちりマンデー「儲かる!酷暑テック」で紹介された、能美防災のシーリングミスト。水を撒くのに濡れないってどういうこと?本当に工場が涼しくなるの?という疑問に、番組で明かされた仕組みと環境省の実証データからお答えします。読み終える頃には、工場の暑さ対策の答えが見えているはずです。
がっちりマンデー「酷暑テック」能美防災シーリングミストはなぜ濡れないのか
工場の天井から水を噴射する。普通に考えれば、大事な製品も加工マシンも濡れて錆びてしまう——誰もがそう思うはずです。
ところが、能美防災のシーリングミストは濡れません。カギは数字にあります。
技術企画課の小門口彬さんによると、ミストが出るノズルの穴の直径はわずか0.1ミリ。この極小の穴から水が吹き出ると、0.016ミリという超微細な粒になります。
ここまで小さくなると、水は空気中ですぐに蒸発してしまうのです。だから、地面や機械にたどり着く前に消えている。これが「濡れないミスト」=ドライミストの正体です。
そして、この蒸発こそが冷却の本体でもあります。
「ミスト状の水、ちっちゃいんですけれども、それが蒸発する時に、実はすごい大気中の熱のエネルギーを奪うんですね。それが冷えるっていう形になります」(小門口さん)
打ち水が涼しいのと同じ、気化熱の原理です。ただし打ち水と決定的に違うのは、足元が濡れないこと。工場で水が使えなかった最大の理由を、粒の大きさひとつで解決してしまったわけです。
なお、能美防災はこのドライミストについて、開発当初から衛生面の対策も行っています。上水を使用し、水が一定期間以上滞留しないシステムを標準搭載することで、「濡れない・ボタ落ちしない」を実現しているとのこと。粒の細かさだけでなく、水そのものの管理まで作り込まれているわけです。
ちなみにこのドライミスト、番組では全国100箇所以上の屋外に設置されていると紹介されていましたが、能美防災の公表によれば2005年の愛知万博(愛・地球博)以来、21年間で全国約170システム以上の出荷実績があるそうです。2025年の大阪・関西万博や六本木ヒルズにも導入されています。夏のイベント会場で涼しい霧を浴びた経験がある方は、すでにこの技術に触れていたのかもしれません。
工場が15分で約4℃低下。環境省の実証事業でも効果が確認されていた
「でも、ファンとミストだけで広い工場全体が本当に涼しくなるの?」
もっともな疑問です。番組でもサーモグラフィーによる検証が行われました。舞台は千葉県浦安市の本間鋼業の工場です。
結果はこうでした。
- 稼働からわずか10分:工場内に冷たい空気を示す青色が拡散
- 15分後:天井から床まで、見事に涼しい状態に
- 温度は約4度低下(小門口さん談)
- そして床は全く濡れていない
ここで「テレビの数字はちょっと盛ってるんじゃないの?」と思った方もいるかもしれません。私も気になったので調べました。
結論から言うと、この効果は環境省の実証事業でも確認されています。
シーリングミストは環境省の令和6年度 環境技術実証事業(気候変動対策技術領域)において、第三者機関による客観的な実証評価を受けています。標準新有効温度(SET*)という体感の指標で測定した結果、対策なしと比べて——
- 試験室で3.4℃低下
- 工場で3.6℃低下
さらに注目すべきは、この数値が体感として何を意味するかです。SET*の指標では、未対策時の「非常に不快」から「どちらでもない」まで、3段階の改善にあたるとされています。被験者の体表面温度の上昇も抑えられ、生理的・心理的な暑熱負荷の軽減効果が確認されました。
測定方法も測定機関も違うのに、番組の「約4度」とほぼ同じ結論に着地しているわけです。別々の検証が同じ答えに辿り着いた——これが、この技術の信頼性を何より雄弁に語っていると思います。
冷却の決め手は「羽から5メートル」。ミストとファンの絶妙な位置関係
では、なぜファンとミストだけで広い屋内をここまで冷やせるのか。小門口さんが明かした答えは、意外なほどシンプルでした。
「シーリングファンとミストの微妙な位置関係が非常に重要になってまいります」
距離が近すぎると、ミストが羽にかかってしまい、濡れて水滴になってしまう。 離れすぎると、今度は風の影響を受けなくなり、ミストがそのまま下に落ちてしまって拡散しない。
そして、最も冷却効果が出るのが——羽からおよそ5メートルの位置。
さらに高さも重要で、上すぎるとやはりミストが羽にかかって濡れる恐れにつながる、とのことでした。
実はこの「気流」には、もう一つ重要な役割があります。空気が滞留していると、ミストが蒸発した際に湿度の高い空気がその場に留まってしまい、逆に蒸発が阻害されてしまうのです。シーリングファンが強力な気流で空気を動かすことで、この局所的な湿度上昇が解消され、冷えた空気が空間全体に広がっていく。ファンは単に風を送っているのではなく、ミストが働ける環境そのものを作っているわけです。
私はここに、この製品の本当の価値があると感じました。
部品自体は、実は特別なものではないんです。 ミストのノズルと、天井の扇風機。それだけです。すごいのは「どこに、どれだけ離して置くか」という配置の知恵の方。
実際、能美防災はこのシステムを「大空間降温装置」として特許を取得済みであることを公表しています。番組で河井ゆずるさんが「それこそ特許」とつぶやいていましたが、まさにその通りだったわけです。
技術とは、必ずしも新素材や新部品のことではない。既にあるものを、誰も見つけていない距離で組み合わせること。それも立派な発明なのだと教えられます。
飛行機の羽と同じ形状。西田技巧のシーリングファンが対流を生む仕組み
シーリングミストのもう一つの主役が、ミストを室内全体に送り届ける巨大なシーリングファンです。
これを開発したのは、日本唯一の国産シーリングファンメーカー・西田技巧。創業者の西田裕幸社長が、その秘密を明かしてくれました。
「これはね、この形状。もう飛行機の羽と同じで。これだとより下に風がたくさん行くようになります」
飛行機の翼は、あの形状によって機体を真上に持ち上げる力を生み出します。同じ原理を天井で使えば、ミストで冷えた空気を強く垂直に真下へ送り込める——というわけです。
これによって工場内に対流が起こり、風が隅々まで行き渡る。だから広い工場でもムラなく冷やせるのです。
補足しておくと、この製品は「THE FIRST FAN」という名前で、業界ではHVLSファン(High-Volume Low-Speed=大風量低速回転ファン)と呼ばれるジャンルに属します。もし導入を検討される方は、この名称で調べると詳しい情報にたどり着けます。
面白いのは、西田技巧はもともと板金加工や溶接を手がける会社だということ。ファンの専業メーカーではありません。それでも「私のところしかない、この作れる技術」と言い切れる製品を生み出した。現場の課題から出発したものづくりの強さを感じます。
現在、全国の工場や学校から問い合わせが殺到しているそうです。
1000万円は高い?工場の冷房と比べると「桁が1〜2桁違う」
気になるお値段です。
小門口さんによれば、ファンとミストを合わせて1000万円前後。スタジオからも「えー!」という声が上がりました。
確かに、個人の感覚では相当な金額です。しかし、導入した本間鋼業の本間超社長の証言を聞くと、印象が一変します。
「正直、冷房設備も考えたんですけど、投資額は何億円みたいな。桁が1桁2桁違うので、もう最高ですね」
工場に冷房を入れれば何億円。シーリングミストなら1000万円前後。 比較対象が分かった瞬間、1000万円は突然「破格」に見えてきます。
しかも、話はコストだけではありません。森永康平さんが鋭い指摘をしていました。
「実は工場って、機材の搬送、搬入があるじゃないですか。だから実は、クーラーに高い金を払ってつけても、ずっと閉めっぱなしで工場の作業って普通ないんです」
これは本質を突いています。工場の扉は開きます。トラックが来て、荷物が出入りする。冷たい空気は、その都度すべて逃げていく。
つまり工場においては、「クーラーは高い」のではなく、そもそも「クーラーは効かない」のです。何億円払っても効かないものと、1000万円前後で確実に4℃下がるもの。どちらを選ぶかは、もはや比較にすらならないのかもしれません。
背景にあるのは、職場の熱中症対策が義務化されたという法改正です。工場や倉庫を管理される方は、
[【クローズアップ現代】職場の熱中症対策「暑いけど休めない」夏価格とは]もあわせてご確認ください。
防災メーカーが酷暑に参入する意味──「災害級の暑さ」への必然
最後に、この会社の話をさせてください。
能美防災は、年商約1400億円の巨大な防災設備メーカーです(2026年3月期の連結売上高は1,396億円)。火災報知設備や消火設備を手がける、防災のプロフェッショナル集団。
その会社が、なぜミストを作るのか。
番組のナレーションも「防災グッズ? そりゃ確かに災害レベルの暑さかもしれませんけど」と少し戸惑い気味でした。でも私は、これほど自然な流れはないと思っています。
防災という仕事の本質は、設備を売ることではありません。命を守ることです。火災から人を守ってきた会社が、今度は熱から人を守る。守る対象が「炎」から「暑さ」に広がっただけで、やっていることは何ひとつ変わっていないのです。
実際、能美防災自身も「酷暑も防災事業の一環として酷暑テックの普及に努める」と公表しています。片手間の新規事業ではなく、防災という本業の延長線上にある、という宣言です。
そして日本の夏は、もはや「暑い」で済む水準を超えました。屋外の作業現場でも、扉の開いた工場でも、人が倒れる。それはもう災害です。
火災報知器のプロが本気で暑さに向き合ったら、こうなった——シーリングミストは、そういう製品なのだと思います。工場や学校から問い合わせが殺到しているのは、同じ危機感を持つ人がそれだけ多いということの証明でしょう。
同じ回では、着るタイプと差すタイプの酷暑テックも登場しました。個人でできる暑さ対策は[ワークマンのXシェルター]と[KONCIWAの日傘]をご覧ください。
まとめ
がっちりマンデー「儲かる!酷暑テック」で紹介された能美防災のシーリングミストについて、ポイントを整理します。
- 濡れない理由は粒の大きさ。ノズルの穴は0.1ミリ、水滴は0.016ミリになり、空気中で即蒸発。その気化熱で周囲が冷える
- 番組の検証では15分で天井から床まで約4℃低下。環境省の実証事業でも試験室3.4℃・工場3.6℃の低下が確認されています
- 冷却の決め手はファンとミストの位置関係。最適解は羽からおよそ5メートル。この組み合わせは特許取得済み
- ファンは西田技巧が開発。飛行機の羽と同じ形状で風を真下に送り、対流を生みます
- 価格は1000万円前後。工場の冷房設備なら何億円で、しかも扉が開くから効かない(森永康平さんの指摘)
そしてもう一つ、導入を検討される方に朗報があります。シーリングミストは新築だけでなく既存の建物への後施工も可能で、すでにシーリングファンが設置されている空間なら、ミスト設備を後から足すだけでシーリングミスト化できるとのこと。倉庫、工場、スポーツ施設など、全体冷房が難しい大規模〜中規模の屋内空間に適しています。
暑さが命を脅かす時代に、防災メーカーが動き出しました。工場や倉庫の暑さに悩んでいる方は、選択肢の一つとして検討してみる価値がありそうです。
※ 本記事は、2026年7月12日放送(TBS系)の人気番組「がっちりマンデー!!」を参照しています。
※ 能美防災株式会社の公式サイトはこちら
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