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【カンブリア宮殿】石川樹脂工業ARAS「割れない」理由と親子リレー

【カンブリア宮殿】石川樹脂工業ARAS「割れない」理由と親子リレー
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2026年7月30日放送のカンブリア宮殿で、石川樹脂工業の食器ブランド「ARAS(エイラス)」が特集されました。1000回落としても割れない理由は何なのか、そして赤字の下請け工場がなぜ大逆転できたのか。この記事では、番組で語られた素材の秘密と、石川章会長・石川勤専務の親子リレーが生んだ経営の転換点を、順を追って整理します。読み終える頃には、この器が単なる話題商品ではない理由がはっきり見えてくるはずです。

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カンブリア宮殿で話題のARAS(エイラス)が「1000回落としても割れない」理由

まず一番気になるところからお答えします。ARASが割れない理由は、樹脂とガラス繊維を混ぜ合わせた独自の新素材にあります。

原料は米粒のような形をした小さな粒で、その一粒一粒に樹脂とガラスが練り込まれています。これを熱で溶かして金型に注入し、およそ3分で固めると、あの器の形になって出てくるのだそうです。ベースになっているのは「トライタン」と呼ばれる飽和ポリエステル系の樹脂で、石川勤専務によれば、哺乳瓶にも使えるほどの安全性と、割れない耐久性を兼ね備えた素材とのこと。そこにガラスファイバーを混ぜる配合は同社独自のものです。

樹脂だから割れにくく、ガラスを加えたことで独特の風合いと重みのある質感が生まれる。この二つを同時に成立させたのが、ARASの正体というわけです。

番組では実際の落下検証映像も流れました。一般的なキッチンと同じ高さ90センチから、数えながら1000回落とすという地道な作業です。ヒャダインさんが「1000回スクワットみたいなもの」と表現していましたが、結果は割れずじまい。謳い文句に偽りなしでした。

さらに驚いたのは、ガラスの配合を商品ごとに細かく変えているという話です。同じシリーズでも、ウェーブとスクープでは配合が違う。程よい重さや質感がその商品固有のものになるよう調整しているそうで、ここまで作り込む姿勢が価格に見合う説得力を生んでいるのだと感じました。

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深皿スクープが大ヒット|ARASは「機能がそのままデザイン」になっている

新素材の皿ARAS

新素材の皿ARAS(引用:「カンブリア宮殿」より)

ARASで最も売れているのが「深皿スクープ」です。番組で紹介された価格は3300円。発売から6年でシリーズ累計300万枚に達したと番組では伝えられていました。

この器、よく見ると縁の一方向だけ傾斜が急になっています。ご飯やスープを最後のひと口まで綺麗にすくえるようにするための形状です。ワンプレートに使う大皿には、表面に波のような凹凸が施されていて、ドレッシングやソースが他の料理へ流れ込むのを防ぎます。茶碗は底に指が入ってフィットする形。裏側は、洗ったあとに水が溜まらないよう工夫されています。

ARAS 深皿スクープと大皿ウェーブ

ARAS 深皿スクープと大皿ウェーブ                                                 (引用:「カンブリア宮殿」より)

つまり機能を突き詰めた結果が、そのままデザインになっているわけです。装飾を足して見栄えを作るのではなく、使いやすさを設計した副産物として佇まいが生まれている。ここがARASの一番の面白さだと思います。

指かかりの形状については、握力が落ちた年配の方にも使いやすいと評判で、実際にご高齢の方から人気が高いそうです。狙って作った機能が、想定外の層に届いている好例と言えます。

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ブランド名ARASの由来と、星野リゾートOMOや一流シェフが選ぶわけ

「ARAS」という名前には仕掛けがあります。アルファベットを逆から読むと「SARA(さら)」。ロゴマークも漢字の「皿」を反転させたデザインです。

石川専務がこの名前に込めたのは、プラスチックにつきまとう「偽物」「使い捨て」というイメージそのものをひっくり返したいという思いでした。長年、安さと大量消費のイメージを背負わされてきた素材への、静かな反論とも読み取れます。

ARASは家庭だけでなく、業務用でも広がっています。番組ではパリの二つ星レストランで修行したシェフが去年開いた人気店が登場し、名物のエゾシカ肉をARASに盛り付けていました。シェフが挙げた理由は、料理を華やかに見せてくれるデザイン性。加えて、ピーク時に戦場のようになる洗い場で、陶器と違って破損の心配がぐっと減る点も大きいそうです。

星野リゾートが運営するホテル「OMO」でも、朝食のワンプレート皿として採用されています。破損コストと写真映えを同時に解決する器は、宿泊施設にとって想像以上に合理的な選択なのでしょう。

なお石川専務は、地震で被災した方から「割れるのが怖くて紙皿を使っている」と聞いた経験も語っていました。器が好きなのに諦めるしかなかった人に選択肢を渡せた。作り手本人も後から気づいた使われ方だといいます。

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赤字の下請けだった石川樹脂工業|値上げ交渉で取引先の約半分を失った日

ここからが、この回の本題です。

石川樹脂工業の創業は1947年。石川県加賀市宇谷町の山あいにある会社で、社屋はプレハブ。おしゃれな食器のイメージとはかけ離れた佇まいです。現在の売上高は30億円、従業員は90人ほどの規模となっています。

仕事のほとんどは受注生産で、飲食店のグラスから水道用の蓋まで、樹脂で作れるものは何でも作ってきました。大手飲食チェーン向けのグラスも手がけており、箸は今も月に15万膳ほど作っているそうです。

技術は確かにあった。それなのに会社は赤字体質でした。石川専務が入社した当時は、どこで赤字が出ているのか誰も把握していない状態だったといいます。

原因は下請け構造そのものでした。技術を安く買い叩かれ、借金は膨らむばかり。入社した勤さんは取引先を回り、頭を下げて値上げをお願いします。しかし30〜40%の交渉を持ちかけたところ、供給責任を感じないのかと怒鳴られ、詰められた。本人が「一番悔しかった」と振り返る場面です。

そしてこの交渉によって、およそ半分の取引先を失いました

普通なら致命傷です。ただ私は、ここが分岐点だったと思います。値上げが通らない仕事を抱え続ける限り、赤字は永久に埋まらない。半分を失ったからこそ、自社ブランドを作る以外に道はないと腹が決まった。痛みを伴う切り離しが、結果的に会社を生き延びさせたわけです。

老舗が伝統を守りながら新しい商品に挑んだ例としては、山本山の玉露の話も同じカンブリア宮殿で取り上げられています

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東大からP&Gへ進んだ石川勤専務が家業に戻るまでの親子リレー前史

石川章会長

石川樹脂工業の石川章会長                           (引用:「カンブリア宮殿」より)

石川勤専務は2007年に東京大学工学部システム創成学科を卒業し、同年グローバル企業のP&Gに入社したエリートです。約10年にわたり経営戦略や財務の分野で経験を積みましたが、30歳を過ぎた頃、父が会社を畳むかもしれないと聞き、2016年に自分が継ぐと決意しました。

石川勤専務

石川樹脂工業の石川勤専務                             (引用:「カンブリア宮殿」より)

動機は経営の立て直しというより、「親父と元気なうちに仕事がしたい」という思いだったといいます。給料は半分以下。家族からは1年ほど反対され、他の転職先も探したそうですが、それでも思いは消えなかった。

一方の会長・石川章さんは1951年生まれ。1971年に石川工業高等専門学校の電気科を卒業して入社し、1992年に代表取締役社長へ就任した二代目です。半世紀以上にわたって現場を支えてきた、根っからの職人気質でもあります。難しい注文ほど嬉しくなる性分で、頼まれれば採算度外視でも「すぐできます」と答えてしまう。機械も金型も自社で作り、要望に応じて設備を増やし続けた結果が、設備過剰と借金でした。本人も「よく銀行が貸してくれたと思うぐらいの借金だった」と語っています。

技術に忠実すぎて利益が残らない父と、利益構造から入る息子。この正反対の二人が組んだことこそが、逆転の条件だったのだと思います。

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seccaとの2年|ハヤシライスから生まれたARAS第1号

自社ブランドづくりのパートナーとなったのが、金沢を拠点とするクリエイティブ集団「secca(セッカ)」でした。雪吊りをモチーフにした皿や国産杉のギターなど、発想の際立つデザインを次々に生み出していた集団です。

ところが開発が始まった当初、seccaのデザイナー・上町達也さんは樹脂という素材に偏見を持っていたと明かします。使い捨て、短命、安っぽい。作り手側ですら、そう見ていたわけです。

そこから勤さんは世界中の樹脂素材を取り寄せ、seccaと一緒にひたすら触って確かめていきます。食器に使える樹脂はほぼ一通り試したという徹底ぶり。探し続けること2年で、ようやく辿り着いたのが樹脂とガラスを混ぜたあの新素材でした。

素材が決まると、次はデザインです。seccaが掲げたコンセプトは「料理を美しく食べられる皿」。そして具体的な発想の出発点は、意外にもハヤシライスでした。ハヤシライスを一番美しく美味しく食べるにはどんな器がいいか——仲間と考え抜いた末に生まれたのが、あの深皿スクープだったのです。

そして、その繊細な形を高品質で成形できたのは、会長が長い年月をかけて築いた金型と成形の技術があったから。勤さん自身が「スタートアップでは無理だった」と語っています。

ちなみに会長は第1号を見たとき「こんなん不良品やんけ」と思ったそうです。プラスチックの艶が命だと信じてきた人からすれば当然の反応でしょう。それでも「息子が決めたことには反対しない」と口を出さなかった。この距離感が、結果を生んだのだと思います。

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石川樹脂工業が利益を出せるようになったカラクリ|ロボットとフォロワー1644人の起用

ARAS生産にあたり、勤さんが改革したことが二つあります。

一つ目がロボットの導入です。原料の注入から完成まで人の手を介さず進められるようにしました。特に効果が大きかったのが「スプルー」の処理。金型に溶けた樹脂を流し込む際にどうしても必要な通り道の部分で、以前は手作業でカットし、残った突起を滑らかになるまで削っていました。この工程が自動化され、現場の負担が激減したといいます。番組によれば、ロボットは現在27台まで増え、生産効率が10倍になったラインもあるとのことです。

二つ目が宣伝方法です。SNSでインフルエンサーを起用していますが、その人選が独特でした。番組に登場した兵庫県在住の女性は、フォロワー数がおよそ1644人。本人も「インフルエンサーと言ったらダメなぐらい」と笑うほどの規模です。

ではなぜ依頼するのか。狙いは撮影された写真をARAS公式アカウントでも使わせてもらう契約にあります。フォロワー数ではなく、ARASの世界観を表現できる腕と、本気で好きでいてくれる熱量で選ぶ。集まった写真が公式の資産になっていくわけです。この作戦が当たり、番組によれば公式アカウントのフォロワーは35万人規模まで伸び、食器ブランドではトップクラスになったといいます。

広告費を積んで一瞬の露出を買うのではなく、使いたくなる写真を積み上げる。地味ですが、これが一番再現性のある勝ち方だと思います。

そして番組終盤、全社報告会で重大発表がありました。2026年10月付で石川勤さんが代表取締役社長に就任し、会長は代表取締役会長のまま非常勤に退くというものです。長年会社を守ってきた章さんは「年寄りが若い人の邪魔をしてはいけない」と、笑顔で一線を退く決断を語りました。

独自素材や独自技術でブランドを立ち上げた事例は他にもあります

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まとめ

今回のカンブリア宮殿を通して見えてきたのは、次のポイントでした。

*ARASが割れない理由は、樹脂トライタンとガラスファイバーを混ぜた独自素材にある
*深皿スクープは機能を突き詰めた結果がそのままデザインになっている
*石川樹脂工業は値上げ交渉で取引先の約半分を失い、自社ブランドに賭けた
*seccaとの2年に及ぶ素材探しと、会長が築いた金型技術がARASを可能にした
*ロボット活用とマイクロインフルエンサー起用が、利益の出る体質を支えている

赤字の下請けが自社ブランドで逆転した、と一行でまとめれば単純な成功譚に見えます。けれど中身は、取引先の半分を失う覚悟と、2年間ひたすら素材を触り続けた地道さと、半世紀分の技術を引き継いだ幸運が重なった結果でした。

そして何より印象に残ったのは、任せる父と、もっと一緒にやりたかったと漏らす息子の関係です。2026年10月からは新体制が始まります。この親子リレーがどこまで走るのか、引き続き注目したいところです。

※ 本記事は、2026年7月30日放送(テレビ東京系)の人気番組「カンブリア宮殿」を参照しています。
※ 石川樹脂工業の公式サイトはこちら

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