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社会・暮らしの問題

【クロ現】浜岡原発データ不正「原子力土建部」中部電力・改ざんの動機

【クロ現】浜岡原発データ不正「原子力土建部」中部電力・改ざんの動機 kurogen-hamaoka-data-fusei
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浜岡原発のデータ不正は、なぜ起きてしまったのでしょうか。中部電力による改ざんの動機や、その舞台となった「原子力土建部」という部署の実態は、ニュースの短い報道だけではなかなか見えてきません。この記事では、2026年8月24日放送のNHK「クローズアップ現代」が独自取材で掘り下げた証言をもとに、焦りが生まれた構造と再発防止のヒントまでを整理します。読み終えるころには、これが一企業の不祥事では片づけられない問題だとわかるはずです。

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浜岡原発のデータ不正とは?中部電力が「基準地震動」で行った改ざんの中身

まず、今回何が起きたのかを整理しておきます。不正が行われたのは「基準地震動」に関するデータです。基準地震動とは、原発の周辺で起こりうる最大の揺れのことで、この値が大きくなるほど、建屋や機器にはより強固な耐震設計が求められます。つまり、原発の安全対策の出発点そのものです。

中部電力は、この値が一定より小さく収まるようデータを操作していました。手口の中心にあったのが「代表波の選定」です。同社は原子力規制委員会に対し、条件の異なる20通りの揺れのパターンから平均に近いものを代表波として採用すると説明していました。ところが実際には、先に採用したい波を決め、それが平均に見えるよう残りの波を選んでいたとされます。順番が完全に逆さまだったわけです。

深刻なのは、この基準地震動について規制委員会が2023年9月に「おおむね妥当」との評価を出していた点です。不正なデータに基づく数値が、いったんは審査を通過していたことになります。

きっかけは2025年2月の公益通報でした。原子力規制庁が同年5月から調査を始め、中部電力は2026年1月5日に不正の疑いを公表。同日、外部専門家のみで構成される第三者委員会の設置を決議しています。規制委員会の山中伸介委員長は、これを原子力規制に対する暴挙だと厳しく批判しました。規制委員会は2026年1月14日、浜岡原発3・4号機の適合性審査の中断を決定し、現在は原子力規制検査などを進めています。番組によれば、早ければ2026年9月にも、中部電力が設置した調査委員会の報告書が公表される予定だといいます。

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中部電力・改ざんの動機はどこに?元役員が語った「再稼働への焦り」

では、なぜここまでのことをしてしまったのか。番組は100人を超える関係者に取材し、その内側に迫りました。

匿名を条件に取材に応じた中部電力の元役員は、原子力部門の報告を知りうる立場にいながら、不正には気づけなかったと語っています。そのうえで、現場には早く稼働させて何とかすべきだという考えが強かったのかもしれない、と振り返りました。

別の関係者は、採算を取るために早く再稼働すべきだという方針が原子力部門の全員に繰り返し伝えられ、それが共通認識になっていたと証言しています。中部電力OBによれば、審査のスケジュールが度々先延ばしになる中で、経営層からは厳しい言葉が飛んでいたといいます。

ここで元役員が使った「忖度」という言葉が、私には非常に重く感じられました。できません、無理です、と言いにくくなる空気が生まれていた——。技術的な判断であるはずの領域に、いつのまにか組織内の力学が入り込んでいたことになります。不正の動機は、個人の悪意というより、追い込まれた組織が選んでしまった逃げ道に近いのかもしれません。

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「原子力土建部」とは?40人の部署で完結していた基準地震動のプロセス

原子力土建部
今回の不正を理解するうえで欠かせないのが、原子力土建部という部署の存在です。地震や津波に対する原発の安全対策を担う部署で、番組によれば40人ほどが所属し、その中に基準地震動の算出などを担当するグループがあるとされています。

問題は、この部署の閉じ方でした。番組取材にあたったNHK科学文化部の記者によると、基準地震動の策定プロセスのほとんどが原子力土建部の中で完結する仕組みになっており、外からのチェックが利きにくい状態だったといいます。しかも今回の不正は専門性が極めて高い部分で、実際に関わったのは部内でも数人だったとされています。

さらに気になるのは、部内の一部からは不正を問題視する指摘が出ていたにもかかわらず、対応が改められなかったという点です。声が上がらなかったのではなく、上がったのに止まらなかった。ここに、この問題の根深さがあると感じます。

なお、社内で経営層や他部署がどの程度把握していたのかは明らかになっておらず、規制委員会が詳しい状況を調べているとされています。

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転換点は2018年。「深さ5キロ」の指摘で担当チームのタガが外れた日

不正が始まった転換点として番組が挙げたのが、2018年の審査会合です。

焦点になっていたのは、敷地周辺で起こりうる地震の発生場所の深さでした。これは基準地震動の算出に大きく関わります。中部電力は当初、地盤のデータなどから地表から10キロの深さが妥当だと考え、その後の指摘を受けて8キロに変更しました。ところが規制側は、過去の地震の記録などをもとに、さらに浅い深さ5〜6キロで地震が起きた分布があることを見過ごせないとして、8キロという設定は認められないと突きつけたのです。

関係者によれば、担当者らはこの指摘に納得できていませんでした。余裕を持たせる保守性はわかるが、これほど過大なものまで見るのか——。2018年5月の審査会合以降、規制委員会に対する姿勢や言葉が対抗的になっていったといいます。ある関係者は、地震の発生場所を深さ5キロに見直すよう指摘されたことが全てで、担当チームのタガが外れてしまったと語りました。

一方の規制委員会は、データを総合的に踏まえればこうした地震が起こるリスクはゼロではなく、指摘は適切だったとしています。技術的な見解の対立が、議論ではなくデータ操作という形で決着させられてしまった。ここが最大の分岐点だったのだと思います。

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年1千億円規模の原子力発電費。浜岡原発が抱えた経営上のプレッシャー

現場の焦りの背後には、はっきりとした数字がありました。

浜岡原発は2011年の福島第一原発の事故後に運転を停止し、中部電力が保有する唯一の原発として、再稼働は経営上の重要課題になっていました。同社は2014年以降、再稼働に必要な審査を原子力規制委員会に申請しています。

元役員によれば、2011年からずっと止まったままの状態で、毎年1千億円規模の原子力発電費が発生し続けていたといいます。加えて、法律上は原発を運転できる年数に限りがあるため、時間の経過そのものが損失になっていきます。原子力部門の貢献度はほとんどゼロかマイナスで、肩身が狭いという思いが生じるだろう——。元役員のこの言葉は、社内での立場の弱さを端的に表しています。

数字が人を追い込む構図は、原発に限った話ではありません。ただ、扱っているものが地震と原子力である以上、その追い込まれ方が許容されてはならなかった。ここが一般の企業不祥事と決定的に違うところです。

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なぜ規制委員会は改ざんを見抜けなかったのか。審査に潜んでいた死角

もう一つ問われているのが、国の審査のあり方です。規制側は外部からの通報があるまで、この不正に気づけませんでした。

番組に出演した長岡技術科学大学教授の山形浩史さんは、元原子力規制庁の幹部として、その事情を説明しています。断層の審査であれば地層の写真や採取した土といった現物を確認できますが、基準地震動のような計算シミュレーションは、入力データと計算結果を示されただけでは本当のところは分かりません。計算過程まで見る必要があるものの、その量が膨大で、すべてを確認するのは現実的に難しいというのです。

審査の大前提は、データを用いて安全性を証明するのは電力会社の責務だという点にあります。それでも山形さんは、今回の不正を防止する制度は不十分であり、規制委員会にも反省すべき点があると述べました。

規制委員会は現在、申請に虚偽があった場合の罰則導入や、計算の途中のデータまで調べる仕組みを検討しています。また山形さんは、経営層が現場の実態を把握せずに目標を立てれば、無理な目標からのプレッシャーで現場が追い込まれかねないとし、やはり無理ですと声を上げられる「心理的安全性」があったかどうかの検証も重要だと指摘しました。

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アメリカの「シャック(SSHAC)」とは?不正を防ぐ透明なプロセスの正体

では、どうすれば防げるのか。番組がヒントとして紹介したのが、国内に94基の原発があるアメリカで導入されている「シャック(SSHAC)」という仕組みです。
シャック(SSHAC)

日本では、規制委員会が定めた基準に沿って電力会社が安全対策を示し、地震などのデータ算出は電力会社とその委託会社が担当します。つまり、算出する側が実質的に閉じています。これに対しシャックでは、あらかじめ外部から様々な分野の専門家を集めることが定められており、複数の専門家がデータの算出を行います。外部から多くの目が入ることで、不正やミスを未然に防げるという考え方です。

発案者の一人であるケビン・コッパースミス博士は、開かれた透明性の高いプロセスがあるため、誰かが意図的に数字を変えたり偏った意見を示したりしても気づくことができると語ります。専門家同士のやり取りはすべて細かく文書化され、後から議論の経緯を振り返ることも可能です。

この考え方の原点は、1979年に発生したスリーマイル島原発事故でした。1980年代後半に各社バラバラだった安全対策が統一され、複数の専門家が関与する現在の形が出来上がったとされています。

日本と無縁の話でもありません。番組によれば、シャックは世界の少なくとも10の国と地域で実施されており、日本でも2016年から2020年にかけて四国電力の伊方原発で初めて試行的に行われ、地震動や震源の専門家が延べ100人関わって議論されました。国内初のSSHACレベル3適用として、公開されている記録も残っています。

規制庁の関係者は、日本では電力会社から正しいデータが出される前提で審査が行われてきたとしつつ、今後の原因究明次第では、こうした仕組みを検討する可能性もあると番組に話しています。

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まとめ

浜岡原発のデータ不正について、中部電力の改ざんの動機と原子力土建部の実態を追ってきました。

  • 不正の対象は耐震設計の前提となる基準地震動で、代表波の選定手順が説明とは逆になっていた
  • 背景には再稼働への焦りと、年1千億円規模の負担という経営上のプレッシャーがあったとされる
  • 舞台となった原子力土建部は、策定プロセスがほぼ部内で完結し、外部チェックが利きにくい構造だった
  • 2018年の「深さ5キロ」をめぐる指摘が、技術的な対立から不正への転換点になったと関係者は語る
  • 規制側も計算過程まで検証できず、外部通報まで気づけなかった
  • 米国のシャック(SSHAC)のように、最初から複数の外部専門家を入れる仕組みが再発防止のヒントになりうる

福島第一原発の事故から15年が経ちました。国内ではこれまでに15基が再稼働し、番組によれば浜岡原発を含む6基が審査中とされています。エネルギー基本計画は、原子力について国民からの信頼確保に努め、安全性の確保を大前提とすると掲げています。今回の問題が中部電力固有のものとして片づけられるのか、それとも業界全体が自らを顧みる機会になるのか。その分かれ目に、私たちはいま立っているのだと思います。

※ 本記事は、2026年8月24放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。

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