2026年9月6日放送の「がっちりマンデー!!」で紹介された、クレーンゲームスーパー。100円で洗剤や野菜が手に入ると聞くと、お店のほうは損をしていないのかと気になりませんか。この記事では、エブリデイ多摩ノ国がどうやって確率を設計し、お客さんの笑顔と黒字を両立させているのかを整理してご紹介します。読み終える頃には、あの店内の景色が少し違って見えるはずです。
クレーンゲームスーパーとは?エブリデイ多摩ノ国で始まった100円の新業態
舞台は、東京都多摩市のショッピングセンター内にある「エブリデイ多摩ノ国」です。番組によれば、テニスコート13面分という広さの店内に、クレーンゲーム機がなんと450台以上並んでいます。
ただ、ここはただのクレーンゲーム専門店ではありません。取れるのは、おもちゃやぬいぐるみではなく、食べ物と生活用品なのです。運営する東洋エブリデイHDの中村秀夫社長は、生活雑貨を100円で、確率で取れるかもしれないというチャレンジを楽しんでほしい、と説明していました。
もともとは普通のクレーンゲーム専門店だったところを、昨年12月から店舗の半分をこの「クレーンゲームスーパー」に切り替えたそうです。なお、運営会社の株式会社東洋は正式なコーナー名を「エブリデイスーパー」として発表しており、2025年12月のスタート以来、多くの来場者から支持を集めているとしています。番組内の呼称と公式名称が少し違うので、検索するときは両方を覚えておくと迷わずに済みます。
100円で洗剤にじゃがいも6個 実際に取れたものが示すお得度
番組でおもしろかったのは、お客さんが実際に手にしていたものの生々しさです。玉ねぎ、洗剤、焼肉のタレ、卵のワンパック。100円で洗剤が取れたと聞いて、スタッフも思わず聞き返していました。
さらに、じゃがいもが一度に6個。缶ジュースが10缶。冷凍庫の扉がパカッと開いて冷凍酢豚が出てくる台まであります。1000円ほど使って大量の景品を抱えたお客さんが「お母さんは助かります」と話していたのが印象的でした。
ここで見落としたくないのは、これが「安く買えた」体験ではなく「取れた」体験だという点です。同じ100円でも、スーパーのレジで払う100円には歓声が起きません。生活必需品という誰にとっても価値のわかるものを、獲得の高揚感つきで渡している。値引き競争とはまったく別の土俵に立っているのが、この業態の巧みなところだと感じました。
アームからフックへ わざわざ機械を改造した理由
とはいえ、野菜や洗剤をクレーンゲームの景品にするのは簡単ではありません。番組によれば、一般的なクレーンゲームはアームで掴むタイプが多く、これでは重たい野菜などを持ち上げられないのだそうです。
そこでエブリデイが選んだのが、フックで引っ掛けて吊り上げるタイプへの改造でした。じゃがいもが6個まとめて取れるのも、缶ジュースが10缶まとめて上がってくるのも、この方式だからこそ実現できる光景です。
景品を変えるだけでなく、機械の仕組みそのものを作り替えている。ここに、この会社がクレーンゲームをアミューズメントではなく小売業として捉えていることが表れているように思います。景品に合わせて売り場をつくるのは、まさに小売の発想です。
取れる確率は10%と約50% フックの大きさが確率を決めるカラクリ
さて、本題の確率です。よく見ると、フック型のクレーンゲーム機は台によってフックの大きさが違います。この大きさ次第で、取れる確率がガラッと変わるのだそうです。
同社の五十嵐さんによれば、リングが小さい台は10%ほど、大きくて幅が広い台は約50%ほど。同じ100円でも、台によって当たりやすさが5倍近く違う計算になります。
ここで感心したのは、お店側がこの数字を隠していないことでした。確率を非公開にしたまま射幸心だけをあおるやり方とは、明確に一線を画しています。取れる確率が事前にわかれば、遊ぶ側は自分の腕と予算に合わせて台を選べます。透明性がそのまま信頼につながり、結果として来店頻度を支えている。地味ですが、この業態を長く続けるための要になっている部分ではないでしょうか。
本社の「秘密の部屋」 確率をデータベース化して黒字を守る
では、その確率はどうやって決めているのでしょうか。番組が向かったのは、本社にある「秘密の部屋」でした。
ここでは、店内の全マシンについて、何回チャレンジされて何回景品がゲットされたかが、すべて記録されているのだそうです。その記録をもとに、取れる確率をデータベース化しています。
中村社長は、取れすぎて赤字にならないように確率を調整していると率直に語っていました。加藤浩次さんから一般のスーパーより利益率は高いのかと聞かれた際には「秘密です」と返し、スタジオを笑わせる場面もありました。
言い換えれば、この会社が売っているのは野菜でも洗剤でもなく、「ちょうどいい確率」そのものです。取れなさすぎればお客さんは離れ、取れすぎれば赤字になる。その細い一本道を、勘ではなく実測データで探り当てている。確率ビジネスという今回のテーマに、これほどぴったりの事例もそうありません。
AIが野菜の仕入れ量を予測 生鮮品ならではの確率設計
もう一つ、この業態ならではの難題があります。野菜や果物は生ものなので、ずっと置いておくと傷んでしまうのです。その前にお客さんに取り切ってもらうのがベスト、というわけです。
そこで登場するのが、AIによる仕入れ予測でした。同社の大見さんによれば、天気予報や過去の来客数などのデータから、1週間先までのお客さんの数をAIが予測します。そこに、どの野菜や果物がどれだけ取られたかという店舗ごとの獲得確率を掛け合わせて、仕入れ量を判断しているとのことでした。
来客数の予測だけなら、多くの小売業がすでにやっていることです。この会社が特殊なのは、そこに「取られる確率」という第二の変数が加わる点にあります。普通のスーパーなら並べた商品は売れるか売れ残るかの二択ですが、ここでは客が来ても取れなければ在庫が減りません。仕入れ精度と確率設定が連動していなければ回らない仕組みで、確率のデータベースがここでも効いてくるわけです。
来客数1.5倍を生んだ発想と、エブリデイ多摩ノ国のこれから
番組によれば、クレーンゲームをスーパー形式にした結果、来客数は1.5倍にも増えたそうです。
そのきっかけを、中村社長はこう振り返っていました。お母さんたちから「そんなぬいぐるみ取ってどうすんのよ」という声をよく聞いていた。ところが食べ物や果物、野菜を景品にしたとたん、お母さんの目の色が変わり、「取りなさい!」という応援に変わるのだ、と。
止める側だった人を、応援する側に回してもらう。ターゲットを増やしたのではなく、同じ人の立場を反転させたところに、この発想の切れ味があります。
ちなみに、中村社長は日本クレーンゲーム協会の代表理事も務めており、同社のエブリデイ行田店は2012年3月に1店舗あたりのクレーンゲーム設置台数でギネス世界記録に認定されています。長年この一本で積み上げてきた会社ならではの転換だったと言えそうです。
なお、放送を見て行ってみたいと思われた方には、一つお伝えしておきたいことがあります。エブリデイ多摩ノ国は、入居するクロスガーデン多摩の営業終了に伴い、2026年10月31日を最終営業日として閉店することが発表されています。すでに店頭では閉店セールも始まっています。今後の展開については追って伝えるとのことなので、訪問を考えている方は営業時間や在庫状況とあわせて、最新の告知を確認してからお出かけください。
まとめ
クレーンゲームスーパーは、100円で野菜や洗剤が取れるかもしれないという、遊びと買い物の中間にある新しい業態でした。フックの大きさで10%と約50%に分かれる確率、本社で積み上げられた獲得データ、そして取られる確率まで織り込んだAIの仕入れ予測。派手に見える売り場の裏側には、地道な数字の管理がありました。
お客さんが喜ぶ確率と、お店が黒字になる確率。その両方が重なる一点を探し続けることが、この商売の本質なのだと思います。エブリデイ多摩ノ国そのものは10月末で一区切りとなりますが、ここで培われた確率の設計図は、きっと次の場所へ受け継がれていくはずです。
※ 本記事は、2026年9月6日放送(TBS系)の人気番組「がっちりマンデー!!」を参照しています。
※ 東洋エブリデイHDの公式サイトはこちら




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