2026年9月6日放送の「がっちりマンデー!!」で紹介された、出店売上予測AI「グリーシン」。この場所に店を出したら月にいくら売れるのかが、的中率95%でわかるといいます。にわかには信じがたい話ですが、番組では実際の店舗を使った検証まで行われました。この記事では、その数字の根拠と仕組みを整理してご紹介します。
グリーシンとは?出店前に月の売上がわかる出店売上予測AI
登場したのは、東京都港区にあるMD(エムディー)という会社です。事業戦略本部の本部長・田嶌健さんは、番組の取材に対して年間14億円の売上があると答えていました。
その柱となっているサービスが「グリーシン」です。田嶌さんの説明によれば、チェーン店が新店を出店する前に、月の売上げを高確率で予測するサービス。つまり、勝てる出店エリアが見つかり、儲かる確率がわかるというわけです。
サービス開始からおよそ2年で、すでに200社以上が導入しているそうです。番組では導入企業としてケンタッキー・フライドチキンとOWNDAYSの名前が挙がっていました。提供元のエムディーは、このほかにも福しんや三菱地所・サイモンといった導入実績を公表しています。飲食、小売、商業施設と業種を問わないのが特徴です。
的中率85〜95%の中身 田嶌さんが語った数字と公表値を照らし合わせる
気になるのは、やはり精度です。番組でどのくらいの確率でわかるのかと問われた田嶌さんは、大体85%から95%の確率でわかると答えていました。
ここで少し補足をしておきます。エムディーが自社メディアで示している売上予測の一致率は80〜90%とされています。番組での発言とは幅が少しずれますが、これはどちらかが間違いということではなく、対象となる業態や条件、算出時期の違いによるものと考えるのが自然でしょう。いずれにせよ8割から9割台という水準であることは共通しています。
こうした精度を支えているのが、技術面の蓄積です。グリーシンは東京大学大学院との共同研究による予測モデルと、20年以上にわたる立地のノウハウを掛け合わせた「人×AIハイブリッド」を掲げており、125mメッシュという高い解像度のGPS人流データを搭載していると説明されています。AIだけでも、人の経験だけでもない。この組み合わせが、数字の背骨になっているようです。
ちなみにエムディーは、もともとクリニックの開業・経営コンサルティングを手がけてきた会社です。医療分野で積み上げた立地分析のノウハウを、小売や飲食、サービス業へ広げてきたという経緯があります。20年以上という年月の中身が見えると、この精度への納得感も少し変わってきます。
ピンを立てて坪数を入れるだけ 佐賀駅で月商270万円が出るまで
番組がおもしろかったのは、実際の商談風景をそのまま見せたところでした。
出店候補地を尋ねられた顧客企業の社長が挙げたのは、佐賀県の佐賀駅。田嶌さんはまず佐賀駅にピンを立て、狙う坪数(20坪)とマシンの台数(3台)を打ち込みます。それだけで、その場所で狙える月商の予測値が表示されました。結果は270万円ほど。しかも1円単位まで数字が出てくるといいます。
かつて商圏調査といえば、専門のコンサルタントが数週間かけて報告書にまとめるものでした。それが数分で、しかも営業の商談中に出てくる。エムディーはマップにピンを落とすだけで立地データが5秒で算出されると説明していますが、この手軽さこそが、これまで大手チェーンにしか手の届かなかった立地判断を中堅企業に開いた最大の要因ではないでしょうか。
予測の正体は「方程式」 人流・世帯年収・交通量をAIが掛け合わせる
では、なぜそんなに簡単に数字が出るのでしょうか。
田嶌さんによれば、顧客企業の既存店舗の売上や会員数、坪数、マシン台数といったデータと、地図上に入っている人流データや駅の乗降客数などをすべて掛け合わせて、AIが売上を予測しているとのことでした。
地図に格納されているデータの細かさも印象的でした。番組で紹介されたのは、富裕層が多い世帯、シングルが多い世帯、ファミリー層が多い世帯といった世帯構成のほか、エリアに住む人の年齢層や性別ごとの人数、道路ごとの車の交通量、地域ごとの世帯年収まで。
そして重要なのは、ここに顧客企業の既存店の売上データを重ねる点です。どのデータ項目の数字が高いと売上がこれくらい上がるのか、という予測を引き出すための方程式をAIが考えてくれる、と番組は説明していました。つまりグリーシンは、汎用の正解を持っているのではありません。そのチェーンだけの方程式を、その場でつくっているのです。業態や商材が変われば方程式も予測値も変わる、という説明はここから来ています。
川崎店で検証 予測534万円に対し実際は552万8000円
とはいえ、本当に当たるのか。番組はそこを見逃しませんでした。
協力したのは、女性専用のピラティススタジオを国内101店舗展開するフランチャイズチェーン、ラピラティスです。101店舗のうちどこか実在の店舗の売上を当ててもらう、という検証が行われました。渋谷生夢社長が選んだのは川崎店。
グリーシンの予測はおよそ534万円。対して実際の売上は552万8000円でした。誤差はたったの3.4%。スタジオでも思わず「怖い」という声が漏れていました。
もっとも、これは1店舗の結果です。番組内で田嶌さんも、外れる店舗が結果として出てくることは確かにあると認めていました。その場合はAIに再学習をさせてもう一度結果を出すというチューンナップをずっとかけ続け、85〜95%の状態を常にキープできるようにしているとのことです。当てた実績より、外れを外れとして扱い続ける運用のほうに、このサービスの本体があるように思えました。
肌感覚から数字へ 101店舗のラピラティスが導入を決めた理由
導入側の言葉も、この記事で一番残った部分でした。
渋谷社長によれば、これまでは実際にその立地に行って、駅のどちら側がいいかなどを見て、肌感覚で出していたそうです。そのうえで、フランチャイズオーナーさんもお客様なので、数字を根拠にしない限り感覚で提供してはいけない、と100店舗になって気づいた、と語っていました。
ここには、フランチャイズという業態特有の重さがあります。直営店なら失敗は自社が引き受けますが、フランチャイズでは加盟したオーナーの人生がかかる。ラピラティスは2023年6月設立、同年10月に1号店をオープンし、直営11店舗とフランチャイズ89店舗にまで広がったと公表されています。3年で100店舗という速度で走ってきたからこそ、勘に頼り続ける危うさが見えたのでしょう。
初期費用165万円・月額22万円 外れても補填なしという設計をどう見るか
番組では料金も明かされました。初期費用が165万円からで、月額費用は22万円。これで自由に利用できるとのことです。
一方で加藤浩次さんが、予測と全然違って儲からなかったら補填はあるのかと尋ねた場面では、補填はしていないという回答でした。
この点、私はむしろ筋が通っていると感じました。もし補填を約束すれば、それは予測ツールではなく保険商品になります。保険であれば損失を引き受けるための保険料が必要で、月額22万円という価格では到底成立しません。予測はあくまで判断材料であって、出店を決めるのも責任を負うのも経営者側だという線引きが、この価格を可能にしているわけです。
裏を返せば、利用する側には数字を読む力が求められます。85〜95%という表現は、裏に5〜15%の外れが常にあるということでもあります。数字を鵜呑みにするのではなく、自社の現場感覚と突き合わせる材料として使う。渋谷社長が肌感覚を捨てるのではなく、数字と併せて判断しようとしていた姿勢が、そのまま正しい使い方を示していたように思います。
まとめ
グリーシンは、出店候補地にピンを立てるだけで月の売上を予測する出店売上予測AIでした。人流や世帯年収といった地図のデータと、そのチェーンの既存店データを掛け合わせて、企業ごとの方程式をAIがつくる。川崎店の検証では誤差3.4%という結果が出ました。
とはいえ、当たった一例より大切なのは、外れを再学習で潰し続ける運用と、補填なしという線引きの明快さだと思います。勘で決めていた出店判断に、共通の物差しが持ち込まれつつある。確率を扱うビジネスの、静かで確かな進み方を見た回でした。
※ 本記事は、2026年9月6日放送(TBS系)の人気番組「がっちりマンデー!!」を参照しています。
※ MD(エムディー)の公式サイトはこちら


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