大火災に見舞われた静岡県河津町の老舗温泉旅館「天城荘」。2度目の再建に挑む経営者・福原良佐さんが、がんとの闘いをしつつ、若手支配人の活躍を期待しながら逆境から這い上がろうとしている。「ガイアの夜明け」(2024年4月5日放送-テレビ東京系)で特集された天城荘の復活劇に迫ります。わずか1年で新生「天城荘」がオープンするまでの道のりとは?
火災から立ち上がる天城荘 – 福原良佐会長の挑戦
2023年元旦、静岡県河津町の老舗温泉旅館「天城荘」が大火災に見舞われた。宿泊客や従業員は全員無事に避難できたものの、広大な敷地の約2,000㎡が焼失する大惨事となった。天城荘を経営するリバティー会長の福原良佐さん(68歳)は、この火災が自身にとって2度目の再生への挑戦となることを知らされた。
福原さんは7年前にも天城荘の経営危機に立ち向かった経験がある。バブル期には10億円近い売上があった天城荘だったが、ネット対応の遅れなどから徐々に低迷し、経営が破綻していた。そこで福原さんが天城荘を買収し、民宿などの小規模宿泊施設向けの集客支援ノウハウを活かして再建に取り組んだ。短期間で黒字化を実現するなど、見事な復活劇を遂げていたのだ。
ところが、コロナ禍を何とか乗り越えた直後に、今度は大火災に見舞われてしまった。福原さんは2度目の再生への道のりに立たされることになったのである。
「ここが(火災で)ダメになったから、また前と同じようなことをやっていくのではなく、ガラッと変えていかないと。今までの天城荘と同じことをやっていこうと思ったら、また潰れてしまうと思います」
天城荘の再建に向けて、福原さんは懸命に取り組み始めた。一方で、福原さんにはもう1つの大きな課題が待っていた。
「このがんの数値が全然下がってきそうにないんですよね。手術をするというのも選択肢ありますけども、とりあえず飲み薬で様子を見たいと」
おととしの暮れ、前立腺がんの疑いが見つかっていたのだ。医師からは仕事を続けることが命取りになると指摘されていた。にもかかわらず、福原さんは天城荘の再建に全力で取り組むしかないと決意していた。「もう命は度外視です」。文字どおり、健康を削りながら天城荘の再生に挑むことになったのである。
そんな福原さんを支えたのが、天城荘の従業員たちだった。特に、火災当時の支配人だった28歳の木村優希さんの存在が大きかった。木村さんは火災後、一スタッフとしての地位に甘んじていたが、福原さんは再び木村さんを支配人に抜擢し、天城荘再興の中心人物として期待をかけていた。
「実力のある真の支配人という形で、木村が蘇れば」と福原さんは語っていた。そして、2024年になった今、木村さんは新しい天城荘の姿を描き始めていた。
「桜祭りの顔」を取り戻すには
天城荘の大火災から約1年が経過した2024年2月、河津町の桜祭りが開幕した。この桜祭りに合わせ、天城荘の再オープンを目指していた福原さんだったが、残念ながら工事の遅れから間に合わなかった。
通常、桜祭りの期間中は天城荘も連日満室となるが、火災の影響で今年は休館を余儀なくされている。河津町にとって、天城荘は桜祭りの「顔」とも呼べる存在なだけに、その不在は大きな痛手となっていた。
「ここが河津町の”顔”なんですよね。これは絶対に無くしちゃいけないと思っている」と福原さんは語る。
桜祭りの開幕に間に合わなかった天城荘だが、福原さんは別の手を打った。YouTuberのギヨーム・ジャマルさんを招き、河津町の魅力を改めて発信してもらうことにしたのだ。
ギヨームさんは12年前から日本各地の魅力を発信し続けており、チャンネル登録者数は約34万人。6年前にも天城荘を訪れた縁があり、今回の火災の情報も気にかけていた。福原さんは、ギヨームさんに河津町の四季折々の魅力を撮影してもらい、新しい天城荘の PR に活用しようと考えたのである。
ギヨームさんは2日間にわたって河津町を歩き、大滝や温泉、地元料理など、様々な魅力をカメラに収めた。「河津町もとても素敵なところ。今、桜の時期じゃなくてもキレイ。誰もいないし、本当に素敵なところだから頑張ってください」と語っていた。
福原さんは、この映像を活用し、桜祭り以外の時期にも河津町への誘客を図ろうとしている。コロナ禍以前は河津町の年間観光客数の8割が桜祭り期間に集中していたが、今後は外国人旅行者などを呼び込むため、滝や温泉などの魅力を発信していきたいと考えている。
「新しい天城荘」への挑戦 – 支配人の木村優希の躍進
天城荘の再建に向けて、福原さんが大きな期待をかけているのが、かつての支配人・木村優希さん(28歳)だ。木村さんは火災直後、一スタッフとなっていたが、福原さんはもう一度、木村さんを支配人に抜擢した。
「実力のある真の支配人という形で、木村が蘇れば」と福原さんは期待を寄せていた。
木村さんは、火災直後は「最初は悔しかった」と話す。しかし、2024年初頭、新しい天城荘の姿を描き始めていた。
「今までは形がある中で変えていかなければならなかったけど、今回はゼロベースなので、今まではここにこうだったらよかったのにというのを実現できるのはありがたいですね」
客室については、これまでの純和風に加えて、木村さんの提案で北欧風やバリ風といった新しい装飾も取り入れることにした。
「前にあった案を一部屋入れてほしいんですけど。たぶん若い女性はそういうのが好きだと思う」と木村さんは話す。
若手の支配人として、木村さんは新しい発想で天城荘の魅力向上に挑戦している。福原さんは、木村さんの活躍に大きな期待を寄せている。
「まあやるしかないですよね。もう」と木村さんは力強く語る。再建への道のりは決して平坦ではないが、木村さんの挑戦は着々と進んでいるようだ。
まとめ
2023年元旦の大火災から1年。静岡県河津町の老舗温泉旅館「天城荘」は、なんとか再建への道を歩み始めている。
経営者の福原良佐さんは、2度目となる天城荘の再生に取り組むも、自身の健康面での課題にも直面していた。しかし、「生きる限り登り続ける」という強い意志で、天城荘の再興に全力で取り組んでいる。
そして、福原さんが大きな期待を寄せているのが、若手支配人の木村優希さんだ。木村さんは新しいアイデアで天城荘の魅力向上に挑戦し、2024年の夏季にはいよいよ新生「天城荘」としてオープンする運びとなった。
天変地異に見舞われながらも、天城荘の関係者たちは決して諦めることなく前に進んでいった。まさに、逆境からの復活劇が展開されているのである。
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