観光船事故で地域経済が打撃を受けた知床斜里町。絶望の淵に追いやられた町に、青年丹羽慎氏が Uターンしてきました。丹羽氏は、ホテル「HOTEL BOTH」を開業し、地域住民を巻き込んだイベントの企画など、様々な取り組みで知床斜里町の再興に挑んでいます。その背景にある丹羽氏の覚悟と、町の人々とともに歩む”絶望から希望への物語”が明らかになります。(「ガイアの夜明け」(2024年4月5日放送)-テレビ東京系)
知床半島沖の観光船事故が引き起こした地域の危機
2022年4月23日、知床半島沖で観光船「KAZU1」が沈没する事故が発生しました。この事故により、26人もの尊い命が失われ、知床斜里町は大きな打撃を受けることになります。
当時、知床半島は年間120万人以上の観光客が訪れる人気の観光地でした。しかし、この事故の影響により、2022年夏の観光客数は以前の4割程度まで激減。地域経済は深刻な打撃を受けることになったのです。
事故後、運航会社は損害賠償問題で立ち往生し、遺族への対応も進んでいない状況でした。知床斜里町観光協会の新村事務局長は、「事故を起こす前になんとかできなかったのか」と、大きな責任を感じていたといいます。
このように、予期せぬ事故が知床斜里町に引き起こした危機的な状況。地域の人々は絶望の淵に追い込まれていったのです。
故郷に戻った青年・丹羽慎のホテル「HOTEL BOTH」開業への決意
そんな中、事故後1年経った2023年4月、故郷の知床斜里町に青年の姿が現れました。横浜に住み、アパレルの仕事をしていた丹羽慎(27歳)さんです。
丹羽さんは事故のニュースを聞いて心配になり、Uターンを決意しました。かつて世界自然遺産登録を祝福し、皆で喜び合った町の姿が、彼の心に強く刻まれていたのです。
「学校行っても小学生が世界自然遺産の話するなんてなかなかないと思うんですけど、その時はやっぱすごいみんな喜んでたイメージが僕の中にはありますね。
なんかもう一度こうみんな盛り上がってくれるようななんか出来事が巻を越せられたらなあっていう風に思いますね。」
丹羽さんは、故郷の知床斜里町を再び元気にしたいという強い思いを抱いていました。そして、2023年2月、彼は町の中心部に「HOTEL BOTH」をオープンさせるのです。
事故の影響で厳しい状況下にある中、なぜ新たな投資に踏み切ったのか。丹羽さんは「もう完全に逆張りで、まあこういう状況だからこそやろうっていうようなチャレンジだったので」と語ります。
借金を背負いながらの事業立ち上げでしたが、丹羽さんは”安さ”にこだわり、相部屋料金3,500円から提供するなど、若者を中心に人気を集めています。
地域住民を巻き込んだイベントの企画で地域活性化を目指す
このように、故郷の再興に乗り出した丹羽さん。しかし、地域の活性化にはまだ道のりが遠い状況でした。そこで、丹羽さんは新たな取り組みに着手します。
2023年の冬、知床の観光シーズンが閑散期を迎える時期に合わせ、「小さなイベントの企画」を行ったのです。
丹羽さんの呼びかけに応えて、知床斜里町の町長や近隣の市町村からおよそ250人もの人々が集まりました。会場には、地元の食材を使った料理のブースが並び、参加者は楽しそうに会話を弾ませていました。
特に子供たちは大喜びで、丹羽さんは地元の高校生たちにも声をかけました。「自分のやりたい夢を叶えたりしたら、その何十年後かには斜里に戻ってきて暮らしたいな」と、彼らの未来への期待を感じさせられたそうです。
丹羽さんは「まあ、この施設のみならず、斜里町を巻き込んだ大きいお祭り、大きい催し物にして、それが知床に来る機会にしたいな、というふうに考えていて、まあそれがなんか道東、知床最大イベントにならないかな」と意気込みます。
小さなイベントの企画ではありましたが、地域の絆を深め、未来への希望を感じさせるきっかけになったのです。
流氷ツアーなど、新たな観光メニューの開発で観光客の回復を図る
一方で、知床斜里町では、観光客を呼び戻すための新しい取り組みも進められています。
3月になると、知床の目の前の海にオホーツクの冬の風物詩、流氷が広がります。この流氷の上を歩くツアーが人気を集めているのです。
ガイドが付き添い、安全を確保しながら、他では味わえない体験ができるこのツアー。失われた信頼を取り戻す一助となっているとのことです。
「今になって帰ってきて、その知床の重みじゃないけど凄さ凄みっていうのを今、肌で感じて、もう本当最高の場所だって心の底から知床の人間として言えるかな」と、丹羽は郷土への愛着を語ります。
観光船事故から2年、知床斜里町は徐々に観光客の回復の兆しを見せつつあります。しかし、一過性の盛り上がりではなく、持続可能な地域づくりが課題となっています。
まとめ:地域全体で取り組む「絶望から希望への復活」の物語
2022年4月の観光船事故は、知床斜里町に大きな打撃を与えました。観光客が激減し、地域経済は深刻な状況に陥りました。
しかし、そんな中、故郷の再興に懸ける青年・丹羽慎さんの姿が現れました。彼は借金を背負いながらも、ホテル「HOTEL BOTH」をオープン。地域住民を巻き込んだイベントの企画や、流氷ツアーの開発など、様々な取り組みを行っています。
「絶望の淵から希望の光を見つけ出す」。丹羽の挑戦は、地域全体の”復活の物語”となりつつあります。
今なお道のりは遠いかもしれません。しかし、丹羽さん一人だけでなく、地域の人々全員で力を合わせ、未来に向けて歩んでいこうとしています。
この物語は、私たちに”絶望から希望への道”を示唆しているのかもしれません。そして、知床斜里町が、再び”輝く観光地”として蘇っていくその日を、私たちは待ち望んでいるのです。
コメント