子育ては喜びでありながら、誰もが気をつけなければならない”教育虐待”の危険があります。この記事では、過剰な期待や一方的な押し付けが子どもに与える深刻なダメージと、武田信子氏が提唱する対話の大切さをお伝えします。親が気づき、子どもの人格を尊重することで、教育虐待から子どもを守り、健全な親子関係を築くことができるはずです。子育ての新たな道しるべとしてご活用ください。
教育虐待とは?親の過剰な期待が子どもに与える深刻なダメージ
教育虐待とは、親が子どもに過剰な期待を押し付け、子どもの意思を無視して一方的に教育を強要することです。体罰や暴言に至らずとも、「お前なんか」と子どもの人格を否定したり、将来の夢を否定したりするなど、子どもの心に深い傷を残す行為もあります。
一般社団法人ジェイス代表理事 武田信子氏
2024年3月13日に放送されたNHKクローズアップ現代では、佐賀県の母子殺害事件の背景に教育虐待があったことが分析されています。一般社団法人ジェイス代表理事の武田信子氏は「教育虐待を受けた人が1割いる」と指摘。決して特別な例ではなく、身近に潜む問題だと言えます。
佐賀県鳥栖で起きた母子殺害事件の背景に”教育虐待”があった
佐賀県鳥栖市での2023年3月の母子殺害事件では、当時大学1年生の長男が両親を殺害しました。長男は「父親から受けた仕打ちへの報復」と動機を明かしています。
臨床心理が専門 山梨県立大学特任教授 西澤哲氏
心理鑑定を行った西澤哲(にしざわさとる)・臨床心理学者は「子供の自由を完全に奪っていた典型的な教育虐待」と指摘しています。父親自身”学歴コンプレックス”を抱き、長男に大学進学を押し付けた。間違えると正座をさせ、将来の夢は全て否定されていました。
西澤哲さんが分析する”教育虐待に陥る親”の特徴と心理
西澤哲さんによると、父親は自身の人生に”劣等感””無能感”を持ち、長男の学歴に執着していました。「自分を引き立てるためのツール」と見なし、子どもの人格など考えていなかったと分析しています。
一方で親族は「見栄っ張り」と指摘しています。一家を治める父親の力が強く、長男は自身の意志を持つことができずにいました。親が子を所有物のように扱う典型的な教育虐待だったと言えるでしょう。
教育虐待が増えている背景は?競争社会が生む”親の不全感”
教育虐待が起こる背景の一つに、親の”不全感”があります。武田氏は「子供の成功が親の責任と見なされがち」と指摘します。また、日本と韓国だけが国連から「競争的な教育制度・社会」と指摘を受けています。
社会が過度に競争的になれば、親も自身の”不全感”から子どもに過剰な期待を押し付けがちになります。子育ても勝ち負けと捉え、子どもの人格を尊重できなくなってしまうのです。
親から子への一方的な押し付けが”虐待”と見なされる線引き
武田氏は「教育熱心な親と虐待をする親の違いは、子どもの気持ちに共感できるかどうか」と分析します。熱心な親は子どもの表情や考えを大切にし、無理なら別の道を模索します。
一方で虐待をする親は、子どもの気持ちを考えることなく自分の正しさを押し付けます。「私がいいことは全部分かっている」と子どもを自分の所有物のように見なし、一方的な関係になってしまうのです。
子ども時代の虐待が長く尾を引く理由と深刻な影響
教育虐待の影響は大人になっても長く尾を引くことが珍しくありません。ある調査では65%が治療を受けているという深刻な実態がありました。
武田氏は「身体的虐待よりも、親から日々の暴言や人格否定を受けることの方が深い心の傷になる」と指摘します。子どもは親から愛されたいが故に、親の意見を受け入れ、自分を責めがちになるのです。一方、社会全体が競争を推し進めるので、虐待から逃れる場所もありません。八方塞がりの中で、自尊心を持てなくなってしまうのが教育虐待の怖さなのです。
受けた影響は様々で、複雑性PTSDや人間関係のトラブルなど深刻な症状に発展する例もあります。
教育虐待を防ぐには?武田信子さんが提案する”対話”の大切さ
教育虐待を防ぐためには、武田信子氏は「子どもを尊重すること」が何より大切であると説きます。
具体的には、今子どもがどんな表情をしているか、何を考えているのかをよく観察し、子どもの気持ちに共感することです。親が正しいからと決めつけるのではなく、子どもの言動から気持ちを推し量り、対話を重ねていきましょう。
例えば「どう思ってるの?」「嫌なことがあったら別の方法があるよ」など、子どもの気持ちを尊重した言葉がけが大切になります。無理強いはせずに、信頼関係を作ることで自然と子育ても成り立っていくのです。
まとめ:子どもの人格を尊重し、共に歩む関係作りが重要
教育虐待は身近にあり得る深刻な問題です。親の不全感や、競争社会が背景にはありますが、根本は「子どもの人格を尊重できなくなっていること」が原因です。
武田氏は「親が気づけば今から学び直し、対話を重ねることで子どもとの関係は改善できる」と提言しています。虐待は決して手遅れではありません。
子どもとの対話を重ね、その気持ちに共感し寄り添うことで、教育ではなく共に歩む関係を築けるはずです。今一度、子どもの人格を大切にし、対等な存在として向き合うことが、教育虐待を防ぐ第一歩となるでしょう。
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