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【クローズアップ現代】イップスの原因と治療・対策「仕事を奪う病」完全ガイド

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2025年10月15日放送のNHK「クローズアップ現代」で特集されたイップス。「思うように字が書けない」「包丁が握れない」といった症状に悩む方が増えています。この記事では、番組で明らかになったイップスの原因と治療法、そして具体的な対策まで詳しく解説します。正しい知識を得ることで、症状に悩む方も、周囲でサポートする方も、適切な対応ができるようになります。


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イップスとは?「特定動作ができない」症状の正体と2つの原因

イップスとは、医学的な病名ではなく、特定の動作がうまくできなくなる症状を表す言葉です。番組では、かつてスポーツ選手特有の症状と考えられていたイップスが、実は私たちの身近な職業にも広がっている実態が明らかになりました。

具体的な症状としては、理容師が客の前でハサミを使えなくなる、料理人が包丁を握ると手がこわばる、ウェディングプランナーが思うように話せなくなる、といった深刻なケースが紹介されています。いずれも「その道のプロ」として長年経験を積んできた方々が、突然仕事の核となる動作ができなくなってしまうのです。

重要なのは、イップスには2つの異なる原因があるという点です。1つ目は精神的な要因によるもの。緊張やストレスが引き金となり、特定の場面で体が思うように動かなくなります。2つ目はジストニアという脳の疾患によるもの。これは神経回路の異常が原因で、状況に関わらず症状が現れます。

この2つの原因の違いを理解することが、適切な治療への第一歩となります。


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イップスの原因①精神的要因|宮里藍さんが語る「恐怖心」の実態

番組では、女子ゴルフで世界ランキング1位にもなった宮里藍さん(40歳)が、現役時代のイップス経験を赤裸々に語りました。

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元女子プロゴルファーの宮里藍さん                             (引用:「ライブドアニュース」より)

きっかけはプロ4年目の試合でのミスショット。2回連続で大きく右へボールが飛び、正確性が武器だった宮里さんにとって初めての経験でした。「生まれて初めて視界からボールが消える」という衝撃的な体験が、心に深い恐怖心を植え付けたのです。

失敗への恐怖心は、次第に体の制御を奪っていきました。宮里さんは「通常であれば待って降りてきて、貯めて、先にヘッドが来るイメージなんですけど、もうここが待てない。とにかく早く、もう怖いから早く打ちたいという感じで体が反射的に開いてしまう」と当時の状況を説明しています。

さらにパターの場面でも症状が現れ、最終的に32歳の若さで現役を引退することになりました。宮里さん自身も「私の場合は繊細で、基本的には心が先だった」と振り返っています。

精神的要因によるイップスの特徴は、緊張した場面で症状が出やすく、リラックスしている時には出ないという点です。この特徴が、次に解説するジストニアとの大きな違いになります。


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イップスの原因②ジストニア|脳の疾患が引き起こす深刻な症状

番組で大きく取り上げられたのが、ジストニアという脳の疾患です。湘南藤沢徳洲会病院の山本一徹医師は「イップスと言うと、もうあがり症だったり、緊張しいとか、メンタルの問題と思われがちですが、これが実際にはただ脳の疾患であることが非常に多い」と指摘しています。

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湘南藤沢徳洲会病院の山本一徹医師                  (引用:「徳洲会グループ医師リクルートサイト」より)

ジストニアのメカニズムはこうです。正常な脳では、視床などを含む神経回路で運動調整を行っています。しかし、特定の動作を何度も繰り返すと、その神経回路に異常をきたし、調節ができなくなってしまうのです。結果として、自分の意思とは関係なく筋肉がこわばってしまいます。

番組では、理容院を営む65歳の男性のケースが紹介されました。カットの時に櫛を持つ左手が揺れてしまう症状に悩み、整形外科、はり、気功など様々な治療を試しましたが改善せず、最終的に脳を専門とする診療科でジストニアと診断されました。

さらに深刻なのは、15年間ウェディングプランナーとして活躍していた恵さんのケース。発声の繰り返しが原因でジストニアと診断され、「喋ろうと思うと、首が緊張して固くなったりなかなか言葉が出ない」状態に。新郎新婦から担当を代えてほしいと言われ、症状が出てから8ヶ月後に休職を余儀なくされました。

山本医師は「患者さんにとっては、その症状が死活問題になりうる。お仕事で必要な動作が行えないということになるので、”人生をむしばむ疾患”だと考えています」と語っています。この言葉の重みが、ジストニアの深刻さを物語っています。


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ジストニアになりやすい人の特徴|職業・性格・繰り返し動作の関係

番組に出演した平孝臣医師(日本定位・機能神経外科学会元理事長)は、2000人以上のジストニア患者の治療に携わってきた専門家です。平医師によると、ジストニアになりやすい人には明確な特徴があります。

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日本定位・機能神経外科学会元理事長の平孝臣医師               (引用:「メディカルノート」より)

職業的特徴としては、「同じ動作を繰り返し行う、しかもそれが非常に細かい、熟練を要する動作を続けているとなりやすい」とのこと。具体例として理容師、美容師、ピアニスト、料理人などが挙げられます。

興味深いのは、近年の傾向です。平医師は「最近は新しいタイプ、キーボード、スマホ、様々な手を使う道具が出てきていますから、それに伴うジストニアというものが新たに見られるようになっています」と指摘しています。つまり、新しい技術が出てくるとそれに伴って新しいジストニアの症状も出てくるということです。デスクワークでのパソコン作業、スマートフォンの長時間使用など、現代人なら誰もが該当する可能性があります。

性格的特徴については、「非常に熱心で真面目な方が多い」という傾向が見られます。ただし平医師も「熱心で真面目だから繰り返しやるのか、どうかはちょっとよく分かっていない」と述べており、因果関係は完全には解明されていません。

一方で、性別や年齢に関しては特に傾向がないことも分かっています。つまり、男女問わず、若い世代から高齢者まで、誰もがジストニアになる可能性があるということです。

患者数については、統計的に「10万人に20人から数百人」と幅があり、実数はよく分かっていないものの、「決して少ない数じゃない」と平医師は強調しています。


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イップスの症状チェック|精神的とジストニアの見分け方

イップスの原因が精神的なものなのか、ジストニアなのかを見分けることは、適切な治療を受ける上で非常に重要です。番組では平医師が明確な違いを解説しました。

精神的要因の特徴

  • 緊張した場面で症状が出る
  • リラックスしていると症状が出ない
  • 特定の状況下(人前、本番など)でのみ現れる

ジストニアの特徴

  • 状況に関わらずいつでも同じ症状が出る
  • 緊張していてもしていなくても出てくる
  • 一人で練習している時でも症状が現れる

この違いを理解することで、自分や周囲の人がどちらのタイプなのかをある程度判断できます。ただし、最終的な診断は必ず医療機関で受けることが重要です。

平医師によると、少しでも異変を感じた場合、まずは脳神経内科を受診することが推奨されています。脳神経内科では、ジストニアかどうかの診断や、飲み薬による治療を担当します。もし脳神経内科でジストニアではないと判断された場合は、精神的なものの可能性を考慮して心療内科や精神科を受診するという流れになります。

重要なのは、「メンタルの問題」と決めつけず、まずは脳の疾患の可能性を疑うという順序です。これまで多くの患者が「気の持ちよう」「あがり症」として片付けられ、適切な治療を受けられなかったという現実があります。番組でも、理容師の男性が整形外科、はり、気功など様々な場所を訪ねても改善せず、脳を専門とする診療科でようやく原因が判明したケースが紹介されていました。


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イップス治療の流れ|脳神経内科受診から投薬・手術まで平孝臣医師が解説

イップスの治療法は、原因によって大きく異なります。番組では、それぞれの治療アプローチが詳しく解説されました。

精神的要因の場合の治療日本心療内科学会の河合啓介理事長によると、主な要因を自律神経失調症などストレス関連疾患と考え、カウンセリングや投薬などで改善を目指します。

ジストニアの場合の治療: 一般的に投薬治療から始め、症状の緩和を目指します。しかし、それでも症状の悪化が見られる場合は外科手術という選択肢もあります。

番組では、プロのオーボエ奏者・篠原拓也さん(35歳)の外科手術の様子が詳しく紹介されました。篠原さんは10年間、特定の指遣いをする時に右手の薬指と小指がこわばる症状に悩んでいました。「本当に100点で吹けたって思えることは、症状が出てからは1回もない」と語る篠原さんが選んだのが、脳の外科手術でした。

手術の内容は、ジストニアで神経回路に異常をきたした脳の視床などの一部に電極を挿入し、熱で凝固させるというもの。山本一徹医師の執刀で行われた手術では、麻酔で眠った状態から途中で篠原さんを目覚めさせ、効果が現れているかオーボエの指の動きを確認しながら進めるという慎重な方法が取られました。

手術の翌日、篠原さんがオーボエを吹いてみると「全然良くなりました。すごいです」と効果を実感。番組によると、篠原さんは手術の1週間後には本番のステージで演奏できるまでに回復したとのことです。

ただし、手術についてはいくつかの重要な注意点があります:

  • 手術自体の難易度が高い
  • 再発や後遺症の可能性がある
  • 脳出血などがあった場合、後遺症が残るリスクも伴う
  • 適切な手術を行える医師が国内に限られている
  • 中には数年待ちの場合もある

平医師も、手術はあくまで最終的な選択肢の一つであり、まずは投薬治療や後述する対策法を試すことが重要だと強調しています。


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イップス対策の実践法|感覚トリックと周囲のサポート体制

治療以外にも、日常的にできる対策があります。番組で平医師が実演した「感覚トリック」は、すぐに試せる実践的な方法です。

感覚トリックとは、手から脳へ行く信号を変化させることで、異常な動きを抑える方法です。平医師は具体例として以下を紹介しました。

  • 字がうまく書けない場合:普通に持つのではなく、チョキの形を作ってその間にペンを挟んで書く
  • キーボードを叩く時にこわばる場合:サポーターをつける、重いブレスレットをつける

重要なのは、「人によって何が効果的かは違う」という点です。様々な工夫を試してみて、自分に合った方法を見つけることが大切です。

予防策も番組で詳しく解説されました。平医師によると、ジストニアの症状が出てきた時に最も重要なのは「同じ動作を過度に繰り返さない」ことです。具体的には、

  • 別の使い方をする作業を間に挟む
  • 休みをとる
  • 連続でずっと同じ動作を続けない

多くのプロフェッショナルは、できない動作があると「とにかく練習しよう」と考えがちですが、それが実は症状を悪化させる原因になっているのです。

周囲のサポート体制も極めて重要です。番組では、テニスコーチの山本英智さん(39歳)の事例が紹介されました。中学生の時に日本代表に選ばれ、選手として大学までプレーを続けた山本さんは、コーチになって数年後、利き手の右手がこわばるようになりました。

山本さんの勤務先である荏原湘南スポーツセンター高橋隆社長は「他の我々のようなものが持っていない経験であったりスキルを持っているところで、それをぜひ活かしてほしい」と判断。山本さんの代わりに実際にプレーして教えるサポートコーチを配置することで、山本さんが指導を続けられる体制を整えました。

山本さんは「こうやって働けてるってことが、自分を成長させてくれてることにも繋がってる。やっぱりありがたい」と語っています。

平医師は、社会としてできることとして以下を挙げています。

  • ジストニアという病気があることを広く知ってもらう
  • ボイスレコーダーや音声入力などDX技術を活用する
  • 職場での配慮と工夫
  • 産業医がジストニアの可能性を疑う視点を持つ
  • 労災適用の検討

特に産業医に対しては「こういうものを見たらメンタルだと言わずにジストニアかどうかということをちょっと疑っていただければ」と呼びかけています。


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イップスでも仕事を続ける|オーボエ奏者・テニスコーチの事例に学ぶ

症状があっても工夫次第で仕事を続けられる――番組では、そんな希望を感じさせる事例が複数紹介されました。

篠原拓也さん(35歳・オーボエ奏者)のケース: 10年間ジストニアに悩み、「何も気にせず、例えばコンクールとかオーディションに挑戦して、あとはヨーロッパ留学とかにちょっと挑戦してとかっていうのは、こうしてみたかったなっていうのはやっぱありますね」と語っていた篠原さん。外科手術という大きな決断をし、見事に症状が改善。手術1週間後には本番のステージで演奏できるまでに回復しました。

山本英智さん(39歳・テニスコーチ)のケース: 右手がこわばり、これまで通りに教えることはできなくなった山本さん。「コーチができないっていう体になったら、クビにされてもおかしくないんじゃないか」と不安を抱えていましたが、会社はサポートコーチを配置することで山本さんの経験とスキルを活かす道を選びました。

山本さんの指導を受ける子供たちは「いろんな面白い練習やから楽しい」「ボールの早いところに行ってしっかり打つとか、しっかりバーンって打っても入るようになりました」と高く評価しています。高橋社長も「子供たちからも山本コーチが言うならということで、絶大な信頼を得ていますので、今の形で続けていただいたことは当時の判断は間違っていなかった」と振り返っています。

これらの事例から学べるのは、イップスやジストニアは確かに深刻な症状ですが、適切な治療、工夫、そして周囲の理解とサポートがあれば、プロフェッショナルとしてのキャリアを続けられる可能性があるということです。

平医師が番組の最後に語った「周りの配慮次第ではその道が絶たれるってことが防げるかもしれない」という言葉が、この問題の本質を突いています。個人の努力だけでなく、社会全体の理解と支援の仕組みが求められているのです。


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まとめ

2025年10月15日放送のNHK「クローズアップ現代」で特集されたイップスは、スポーツ界だけでなく、様々な職業に広がる深刻な症状です。

この記事の重要ポイント

  1. イップスには2つの原因がある:精神的要因とジストニア(脳の疾患)。両者は症状の現れ方が異なるため、適切な診断が不可欠です。
  2. ジストニアは誰もがなりうる:熟練を要する繰り返し動作を行う職業の人、キーボードやスマホを長時間使用する現代人すべてにリスクがあります。
  3. 早期の正しい診断が重要:まずは脳神経内科を受診し、ジストニアかどうかの診断を受けましょう。「メンタルの問題」と決めつけないことが大切です。
  4. 治療法は複数ある:投薬治療、外科手術、感覚トリック、そして周囲のサポート体制など、様々なアプローチがあります。
  5. 予防の鍵は「繰り返しすぎない」こと:同じ動作を過度に繰り返さず、適度な休息を取ることが予防につながります。

平孝臣医師が語った「人生をむしばむ疾患」という言葉が示すように、イップスやジストニアは本人だけでなく、家族や職場にも大きな影響を与えます。しかし、正しい知識と理解、そして適切な対応があれば、症状と向き合いながら仕事を続けることも可能です。

もし自分や周囲の人に気になる症状がある場合は、「気のせい」「メンタルの問題」と片付けずに、まずは専門医に相談することをお勧めします。早期発見・早期治療が、その後の人生を大きく左右するのです。

※ 本記事は、2025年10月15日放送(NHK)の、人気番組「クローズアップ現代」を参照しています。

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