「LIFE~夢のカタチ~」で紹介されたクロワッサンサーカス。団長・清水恒男(ひさお)さんが率いる、わずか10人の小さなサーカス団が、設立10周年の節目に念願のテント興行を実現させました。命綱なしの綱渡りや生演奏との融合など、唯一無二の世界観の魅力を、エピソードとともに深掘りしていきます。読み終えたとき、きっとあなたも次の公演に足を運びたくなるはずです。
クロワッサンサーカスとは?清水恒男が率いる10人の夢のサーカス団
クロワッサンサーカスは、団長・清水恒男さんが2016年に立ち上げたオリジナルサーカス団です。フランス語で「三日月」を意味する「クロワッサン」を名前に冠し、奈良県葛城市を拠点に活動しています。最大の特徴は、パフォーマー5人、楽団員5人の計10人という極めて少人数な編成。それでいて、超絶技巧の身体表現と生演奏が一体となった圧倒的なステージを生み出している点に、このサーカス団の凄みがあります。
声がかかればトラック1台でどこへでも向かうフットワークの軽さも魅力で、新潟のフジロックフェスティバルから小学校、地域のお祭り、被災地まで、あらゆる場所が彼らの舞台になります。「大規模であること」「常設会場を持つこと」を最大の価値とする従来のサーカス観に対し、彼らは「機動力」と「人と人との距離の近さ」で勝負している――そう感じさせる存在です。スケールではなく密度で観客を魅了する、新しい時代のサーカスの形だと言えるでしょう。
清水恒男の経歴|世界40カ国を渡り歩いた綱渡りパフォーマーの原点
団長の清水恒男さんは1970年広島生まれ、現在55歳。19歳のときに銀座で目にした海外パフォーマーに心を奪われたのが、すべての始まりだったと語っています。当時のご本人いわく「ただ突っ立って、止まるだけ」のパントマイムからのスタートだったそうですが、その後独学で芸を磨き、ロンドンへと旅立ちます。
そこから清水さんの世界40カ国以上を渡り歩く長い武者修行が始まりました。言葉が通じない異国の街角で、頼れるのは自分の身体だけ。路上でパフォーマンスを披露して日銭を稼ぎながら、各地で出会うパフォーマーたちから芸を吸収していったのです。ロンドンを皮切りに約1年半、世界中をパフォーマンスで旅したと振り返っておられます。
筆者が特に注目したいのは、清水さんが「サーカスという空間そのものに無限の可能性がある」と語っている点です。技を見せる場という以上に、想像力を解き放つ装置としてサーカスを捉えている。この哲学があるからこそ、クロワッサンサーカスの舞台には独特の「ドリーミーな世界観」が宿っているのだと思います。
命綱なしの綱渡り|清水恒男が独学で極めた超絶技巧
清水恒男さんの代名詞といえば、命綱なしの綱渡り。わずか数センチの幅のロープの上で、観客を息を呑ませる芸を披露します。驚くべきことに、この綱渡りは経験者に電話でコツを聞き、あとは独学で習得したというのですから恐れ入ります。
練習場所も常識破りです。「綱渡りの練習をするには山暮らししかない」と考えた清水さんは、高野山の山奥に民家を借り、家族で移住して鍛錬に励みました。番組内で紹介された「秘密の稽古場」では、100メートル級のワイヤー綱渡りの練習も日常的に行っているそうです。
その実績も世界トップクラスで、韓国では長さ1キロメートル・高さ25メートルの綱渡りで横断を成功。中国で開催された綱渡りの世界大会では高さ100メートルという命がけの挑戦にも出場し、見事に渡り切りました。海外大会で結果を残せる日本人綱渡りパフォーマーは決して多くなく、清水さんがいかに稀有な存在かが分かります。さらにマジックやパントマイム、演出やプロデュースまで一人で手がけているのですから、まさに総合芸術家と呼ぶべき方でしょう。
クロワッサンサーカスの魅力|生演奏と超絶技巧が融合する唯一無二の世界観
クロワッサンサーカスを語るうえで欠かせないのが、**パフォーマーと楽団の「阿吽の呼吸」**です。録音された音楽を流すのではなく、演者の動きに合わせて楽器の音が鳴り響く――この贅沢さこそが最大の魅力。エアリアルパフォーマーのとっつさん、アクロバットダンサーの花火さん、よろず曲芸師のトムさんたちが繰り出す技と、楽団が奏でるジャズやスウィングが溶け合い、その瞬間にしか存在しない一回性のステージが生まれます。
兵庫県尼崎市での公演では、メンバーの1人がけがで急きょ参加できなくなり、エチオピアから来日していたパフォーマーのブルさんを助っ人として迎える事態に。言葉の壁を抱えながらも、清水さんがアムハラ語で必死にコミュニケーションをとり、楽団は初対面のブルさんの動きを見ながら即興で音楽を合わせていくという離れ業を披露しました。「新鮮さが大事」という清水団長の言葉通り、毎回違う化学反応が起こるのが彼らのライブ感です。
衣装や小道具へのこだわりも見逃せません。衣装にはヴィヴィアン・ウエストウッド(定価約10万円クラス)を惜しみなく使用し、シャボン玉を吹き出す「シャボンハット」など多くの小道具は団長自身が手作り。ドラム担当のすだっちさんが本職パン屋さんという異色の経歴を持つように、メンバー全員がそれぞれの個性を持ち寄り、童話のような世界観を支えているのです。
クロワッサンサーカス設立10周年|念願のサーカステント興行が奈良・葛城市で実現
そして2026年、クロワッサンサーカスは設立10周年という大きな節目を迎えました。清水団長が5年ほど前からコツコツと準備を重ねてきた本格的なサーカステント興行が、ついに実現したのです。
舞台はホームグラウンドである奈良県葛城市。メキシコで作られた青と黄色のボーダー柄のサーカステントが街中に登場し、約300人を収容できる円形ステージが完成しました。期間は6日間で全11公演。場所の使用申請から設営、チケット販売まで、すべてを自分たちの手で作り上げたといいます。客席を360度ぐるりと囲む円形構造は、「観客の盛り上がりも背景の一部になる」という清水団長の演出哲学が反映されたもので、この形式での公演は団員たちにとっても初めての経験でした。
注目すべきは、清水団長自身が「残り9公演で奇跡が起こらない限り黒字にはならない」と冷静に語っていたこと。それでもなお「お金を払ってでも欲しい経験」と笑顔で言い切る姿勢に、サーカスへの純粋な愛情を感じざるを得ません。実際、初日の客席からは「アナログで懐かしい」「レトロな感じが新鮮」といった声が上がり、興行としての手応えも確かなものだったようです。
LIFE~夢のカタチ~が映した清水恒男の「夢のカタチ」と次の挑戦
ABCテレビ「LIFE~夢のカタチ~」(ナレーション・佐々木蔵之介さん)が映し出したのは、ただ夢を語るだけでなく、10年という時間をかけて一歩ずつ実現してきた清水恒男さんの姿でした。「8年前にはできなかった、1年前にもできなかった。でも今ならできる」――この言葉が示すように、夢は一気に叶うものではなく、知識と人との出会い、環境の積み重ねの先にあるのだと、改めて教えられた気がします。
奈良公演を終えたクロワッサンサーカスは、現在青森へと舞台を移しています。弘前さくらまつり会場でのテント興行は、青森初登場であり、さくらまつりにサーカス団が出演するのは20数年ぶりの出来事だそうです。清水団長はかつて25年ほど前に弘前さくらまつりで綱渡りを披露した経験があり、「いつか再び弘前で公演をしたい」という願いがついに叶った形となりました。
これからもクロワッサンサーカスのテントは、日本各地を巡っていきます。次にあなたの街にやって来るのは、いつでしょうか。彼らのテントの中では、誰もが童心に返れる魔法のような時間が待っているはずです。
まとめ
「LIFE~夢のカタチ~」で紹介されたクロワッサンサーカスと団長清水恒男さんの物語は、地道な10年の積み重ねが本物の夢を形にするのだと教えてくれました。設立10周年を機に実現したテント興行は、決してゴールではなく、新たな旅立ちの始まりです。世界40カ国以上を渡り歩いた綱渡り師が率いる10人の小さなサーカス団は、これからも全国各地で観客を魅了し続けていくことでしょう。機会があればぜひ、その唯一無二の世界観を生で体感してみてください。
※ 本記事は、2026年4月25日放送(ABC朝日放送テレビ)の「LIFE~夢のカタチ~」を参照しています。
※ クロワッサンサーカスの公式サイトはこちら






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