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社会・暮らしの問題

【クローズアップ現代】単身者の賃貸「借りられない」壁と居住支援法人

マンションと手元に掲げられた鍵(単身者の賃貸住宅問題をイメージした画像)
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「働いて収入もあるのに、一人暮らしというだけで部屋を借りられない」。2026年9月16日放送のNHK『クローズアップ現代』は、そんな単身者の賃貸住宅問題を特集しました。この記事では、大家が入居をためらう孤立死のリスクと、その隙間を埋める居住支援法人の取り組みと課題を、番組内容をもとにわかりやすく整理します。自分や家族の将来の住まいを考えるヒントにしてください。

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クローズアップ現代が伝えた「収入があっても賃貸を借りられない」単身者の現実

番組の冒頭に登場したのは、65歳で独身の山本さんです。今住んでいるマンションにはエレベーターがなく、階段の上り下りで膝を痛めてしまいました。さらに部屋にエアコンがなく、夏の暑さで体調を崩したことから、引っ越しを決意します。

ところが、不動産会社を訪ねても「オーナーが、緊急連絡先は身内でないと駄目だと言っている」と断られてしまいます。頼れる身寄りのいない山本さんは、申し込みすらできませんでした。インターネットで問い合わせた物件でも、最初から「年齢的に難しい」と返され、話が先に進まなかったそうです。

山本さんはIT企業でフルタイムの契約社員として働いており、家賃を払えるだけの収入があります。それでも借りられない現実に、「このまま一生ここに住み続けるしかないのか」とこぼしていました。

私がこの場面で強く感じたのは、「お金があれば部屋は借りられる」という常識が、もはや通用しなくなっているという点です。審査で問われているのは支払い能力だけではなく、「何かあったときに対応してくれる家族がいるかどうか」なのです。一人暮らしが当たり前になった今、これは誰にとっても他人事ではありません。

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大家が単身者の入居をためらう理由|孤立死で損害150万円以上

誰もいない空室の賃貸部屋と、それを真剣な表情で見つめる大家・管理会社の人物
では、なぜ貸す側は単身者に慎重になるのでしょうか。番組は、賃貸マンションの大家・小山さんを取材しました。

小山さんが管理するマンションでは昨年7月、70歳の女性が亡くなっているのが見つかりました。消防点検で部屋に入るまで誰も気づかず、死後1か月以上がたっていたといいます。

番組によれば、この件でかかった費用は次のとおりです。

  • 遺品整理:24万8,000円
  • 特殊清掃:25万円
  • 空室期間中の家賃の損失:43万2,000円
  • 床の張り替えなどの原状回復工事:100万円以上

合計の損害額は、保証会社への請求分を除いても150万円以上にのぼりました。女性には身寄りがなかったため、この損害はすべて小山さんが負担することになったのです。

小山さんは「貸したい気持ちはあるが、審査を厳しくしたり条件を付けたりせざるをえない」と話していました。入居を断られる側から見ると理不尽に思えますが、1件で150万円を超える負担を個人の大家が背負う構造では、慎重になるのも無理はありません。大家を責めるだけでは、この問題は解決しないと感じました。

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孤立死は高齢者だけの問題ではない|見守りサービスを必須にした管理会社

番組がさらに注目したのが、「孤立死は高齢者だけの問題ではない」という事実です。

首都圏を中心に8,000戸のアパートを管理する不動産会社は、2年前から入居者の死亡事例を分析しています。番組によれば、過去およそ3年間に亡くなった入居者135名を調べたところ、4人に1人が50代以下の現役世代でした。担当の高坂さんは「年齢に関係なく孤立死は起こりうる、という前提で考えるべき」と話しています。

実際、この会社の物件では今年、50代の男性が亡くなり、勤務先からの通報で3日後に見つかりました。会社は生前、電気の使用量の変化から異変を知らせる安否確認サービスを男性に勧めていましたが、任意だったため利用されていなかったそうです。

この経験から、会社は現在、新規入居者には年齢を問わず見守りサービスの契約を必須にしています。

「自分はまだ大丈夫」と思うのは自然なことです。ただ、一人暮らしで働き盛りの人ほど、周囲が異変に気づきにくいのも事実です。見守りを「高齢者向けのもの」と考えず、単身者全員の備えとして捉え直す時期に来ているのではないでしょうか。

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葛西リサ教授が指摘する「住宅すごろく」と単身者の住まいのズレ

スタジオでは、住宅と福祉の問題を長年研究している追手門学院大学の葛西リサ教授が解説しました。葛西教授は、単身高齢者の住まいをテーマにした著書も出しています。

追手門学院大学 葛西リサ

追手門学院大学の葛西リサ教授                               (引用:「ゼロリノベ」より)

葛西教授が挙げたキーワードが「住宅すごろく」です。結婚前は賃貸住宅に住み、結婚後に子どもが生まれたら持ち家を買い、老後はその家で子どもに支えられながら暮らす、という人生のモデルを指します。日本の住宅政策は、長くこのモデルを前提にしてきました。

しかし今は、単身のまま賃貸で高齢期を迎える人が増えています。葛西教授は、この「住宅政策と世帯構造のズレ」こそが問題の根にあると指摘しました。

教授はさらに、法律面の難しさにも触れています。

  • 入居者が亡くなっても、賃貸借契約は自動的には終わりません。
  • 部屋に残された家財道具は法定相続人に引き継がれるため、大家が勝手に処分することはできません。

大家が単身者を避けるのは、金銭的な負担だけでなく、こうした手続きの面倒さを避けたいという理由もあるのです。「家族がいること」を前提にした仕組みが、時代に合わなくなっていることがよく分かる解説でした。

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見守りサービスだけでは足りない?居住支援法人による対面の見守り

明るい部屋で単身者に温かく寄り添い、生活や住まいの相談に乗る居住支援スタッフ
孤立死のリスクを減らす手段として、番組はICT機器を使ったサービスを紹介しました。室内に置く人感センサーが入居者の動きや呼吸の様子を捉え、異変があれば第三者に知らせる仕組みです。ヤマト運輸のように、全国の営業所からスタッフが様子を見に行くサービスもあり、番組によれば利用者は全国で1万件を超えています。

葛西教授は、こうしたサービスは「不動産を守る」うえで効果的だと評価しました。そのうえで、亡くなる前に異変に気づき、生きているうちに人による支えをつなぐことも必要だと述べています。

その役割を担うのが「居住支援法人」です。住宅セーフティネット法に基づいて都道府県が指定する法人で、これまで家族が担ってきた住まい探しの付き添いや見守りを代わりに行います。

番組が取材したNPO法人は、単身者120人以上を支援しています。対面での見守りを入居の条件にし、通院予定や病歴まで把握して、体調の変化に気を配っています。80歳の女性が足を悪くした際には、担当者がすぐに地域包括支援センターへ連絡しました。介護保険のサービスで手すりが付き、女性は一人暮らしを続けられています。

さらに、乳酸菌飲料の配達員にも週1回の見守りを頼んでおり、配達員の知らせで倒れていた人を早く見つけられたケースもあったそうです。番組によれば、この団体では5年以上、入居者の孤立死はゼロで、これまでに400人以上が住まいを確保しています。機械と人を組み合わせた見守りの力を実感させる成果です。

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居住支援法人の6割以上が赤字|サブリースと家賃上昇の壁

一方で、番組は居住支援法人が抱える厳しい現実にも迫りました。

東京・町田市で居住支援を行う社会福祉法人には、番組によれば、部屋を借りられない人からの相談が昨年度だけで300件以上寄せられ、この3年で2倍に増えています。

この法人は、主に「サブリース」という方法で運営費を賄っています。大家から部屋を借り上げて入居者に又貸しし、その家賃の差額を見守りの人件費などに充てる仕組みで、国も推奨しています。ただ、入居者には生活に余裕のない人が多く、差額を大きくすることはできません。

追い打ちをかけているのが家賃の上昇です。運営責任者の鯨井さんが不動産会社で家賃3万円台の物件を探したところ、該当する物件はゼロでした。番組によれば、このエリアの家賃相場はここ数年で1割以上も上がっていたのです。

番組が都内の居住支援法人に行ったアンケートでは、収支が「赤字」または「やや赤字」と答えた団体が6割以上にのぼりました。葛西教授は、「真摯に支援するところほど、やればやるほど赤字になる」という矛盾を指摘しています。

善意と熱意だけに頼る仕組みは、長くは続きません。支援の担い手が疲れ果てて撤退してしまえば、困るのは住まいを必要とする人たちです。人件費をきちんと支える財源の確保が急務だと強く感じました。

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立川市の居住支援協議会と改正住宅セーフティネット法の役割

最後に番組が紹介したのが、自治体が中心になって進める東京都立川市の取り組みです。

立川市は、市が音頭をとって協議会を設立しました。住宅課や福祉課、居住支援団体、不動産会社の団体などが参加しています。住まいの困りごとはすべて市役所内のワンストップ窓口が受け付け、行政サービスへの橋渡しや物件探しを各団体と連携して行います。番組によれば、昨年度は70人以上が住宅を見つけることができました。参加している不動産関係者からも「貸しやすくなった」という声が上がっていました。

葛西教授は、地域によって住宅事情は大きく違うため、市場全体を見渡せる自治体こそが支援のハブになるべきだと話しています。

国の動きとしては、住宅セーフティネット法が改正され、2025年10月から施行されています。住まいとケアを一体的に提供する方向へ舵を切ったものの、葛西教授は「予算が十分に割かれていない」と指摘しました。そのうえで、今も安い公的賃貸住宅の供給を続ける韓国を参考例に挙げ、持ち家政策に偏った予算を賃貸住宅政策へ振り分けるべきだと提言しています。

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まとめ

今回の『クローズアップ現代』は、単身者が賃貸住宅を借りられない問題を、借りる側と貸す側の両方から描いた回でした。

  • 収入があっても、身寄りがないだけで入居を断られる現実があります。
  • 背景には、孤立死が起きたときに大家が抱える150万円以上の損害や、法的な手続きの負担があります。
  • 解決の鍵を握る居住支援法人は、孤立死ゼロという成果を上げる一方で、6割以上が赤字という厳しい状況にあります。

私が特に印象に残ったのは、「家族がいること」を前提にした社会の仕組みが限界を迎えているという点です。単身世帯が当たり前になった今、見守りや死後の手続きを誰が担うのかは、国や自治体、不動産業界、そして私たち一人ひとりが考えるべき課題です。

今は元気な人も、将来の住まいについて早めに情報を集めておくことをおすすめします。お住まいの自治体に居住支援協議会や相談窓口があるかどうか、一度調べてみてはいかがでしょうか。

※ 本記事は、2026年9月16日放送のNHK『クローズアップ現代』を参照しています。

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