2026年6月20日放送のテレビ東京「ブレイクスルー」では、捨てられたプラスチックを“新品同様”に何度でも蘇らせるJEPLANのケミカルリサイクルが登場しました。ナフサ不足が深刻化する今、なぜこの技術が注目されるのか。社長・髙尾正樹さんの歩みから世界への展望まで番組内容を深掘りし、その革新性をやさしく解説します。読み終えるころには「ゴミは資源」という言葉の本当の意味が見えてくるはずです。
JEPLANのケミカルリサイクルとは?プラごみを「新品同様」に再生する仕組み
今回の「ブレイクスルー」で開拓者として登場したのは、JEPLAN(神奈川県川崎市、2007年創業、旧・日本環境設計)の社長・髙尾正樹さんです。作家の相場英雄さんが現場を訪ね、佐々木明子アナウンサーとともにその技術に迫りました。
JEPLANが手がけるのは「ケミカルリサイクル」と呼ばれる手法です。使用済みのペットボトルに熱や圧力を加えて分子レベルまで分解し、不純物を完全に取り除いたうえで、もう一度結合させて石油由来と同等品質の樹脂に戻す。番組で髙尾さんは「世界的にも非常に珍しい」と語っていましたが、その言葉に誇張はないと感じます。
ここで個人的に強調したいのは、発想そのものの違いです。一般的なリサイクルが“劣化したコピーを作る”作業だとすれば、ケミカルリサイクルは“原本そのものを復元する”作業に近いのです。JEPLANはこの技術を「BRING Technology」と名付け、生み出した再生PET樹脂を「HELIX(ヘリックス=螺旋)」というブランドで展開しています。螺旋のように、何度でも循環できる――その名前自体が、この技術の本質を言い表しています。
なぜ今注目?ナフサ不足と中東情勢がケミカルリサイクルを後押し
番組が冒頭から強調していたのが、2026年の緊迫した世界情勢です。アメリカとイランの軍事衝突によって、原油を中東からの輸入に頼る日本は苦境に立たされています。とりわけ深刻なのが、原油を精製して作られるプラスチックの原料「ナフサ」の不足です。容器やインクの相次ぐ値上げに、国内メーカーは頭を悩ませています。いわば“令和のオイルショック”です。
こうした状況だからこそ、石油に頼らない循環技術の価値が一気に高まっています。私見ですが、ここには大きな意味の転換があります。これまで資源循環は「環境のために、少し高くても取り組むコスト」と見なされがちでした。ところが供給不安が現実になった今、それは「資源が手に入らなくなるリスクを避けるための備え」へと意味を変えつつあります。髙尾さん自身、「戦争の原因には必ず資源がある。石油をなるべく使わない社会をつくることで、戦争の原因を減らせるのではないか」と語っており、技術論を超えた視座の高さがうかがえました。
130億円の巨大プラントを公開—プラスチックを分子レベルに分解する全工程
番組では、普段は立ち入れないプラントの内部が紹介されました。グループ会社・ペットリファインテクノロジーの工場は、敷地面積が約4万8000平方メートル(東京ドーム1個分)、投資額は約130億円という巨大な装置産業です。
原料となるのは、破砕・洗浄されたペットボトルのフレークです。番組によると、全国の自治体から1日およそ60トン、実に約300万本分が運び込まれます。ただし、メーカーごとに色や材質はバラバラで、他のプラスチックが混じっていることもあります。そこでまず大量に混ぜ合わせて品質のムラをなくし、次に吸着塔やイオン交換塔で目に見えない不純物を取り除きます。
そして最後に待つのが「蒸留」の工程です。髙尾さんは、焼酎やウイスキーづくりと同じ原理だと説明していました。流れてきた液体を安定して蒸発させるのが非常に難しく、最適な温度や投入のタイミングは試行錯誤の末にたどり着いた独自技術だといいます。約2日をかけた精製の果てに、真っ白な再生樹脂が生まれます。最先端のように見えて、その核心が「蒸留」という枯れた技術の徹底的な作り込みにある――この地味さこそが、模倣されにくい強さなのだと思います。
従来との違いは?メカニカルとケミカルリサイクルを比較(何度でも循環)
日本はリサイクル率が高い国だと言われます。ですが番組が示した内訳(出所:プラスチック循環利用協会)を見ると、その実態が分かります。燃やした熱をエネルギーに変える「サーマルリサイクル」が全体の66%、溶かして資源に戻す「メカニカルリサイクル」が20%、未利用が11%。そして髙尾さんが取り組むケミカルリサイクルは、わずか2%にすぎません。
ここはあえて踏み込んで書きます。「サーマルリサイクル66%」を“リサイクル率の高さ”として語るのは、実態をやや美化した表現だと感じます。燃やしてしまえば、その資源はもう戻ってきません。メカニカルリサイクルも、溶かすたびに不純物が蓄積するため3回程度が限界で、最後は結局燃やすしかありませんでした。
対してケミカルリサイクルは、分子レベルで不純物を完全に除去するため、品質が劣化せず、髙尾さんいわく「基本的には半永久的に」循環できます。さらに、石油由来のバージンPET樹脂と比べてCO2排出量を約47%削減できることも、LCA(ライフサイクルアセスメント)による比較で示されています。たった2%という数字の裏にある可能性の大きさこそ、この番組が伝えたかった核心だと思います。
JEPLAN社長・髙尾正樹の経歴—デロリアンと繊維リサイクルが原点
髙尾正樹さんの経歴をたどると、この技術が一朝一夕で生まれたものではないことが分かります。1980年に大阪で生まれた髙尾さんは、自宅の家電を分解して遊ぶ好奇心旺盛な少年でした。東京工業大学工学部で化学工学を学んで2004年に卒業し、東京大学大学院へ進学。番組では、石油プラントの蒸留技術が現在の基盤になったと紹介されていました。
転機となったのが、共同創業者である現会長・岩元美智彦さんとの出会いです(番組テロップでは「岩本」と表記されていましたが、正しくは「岩元」さんです)。繊維商社出身の岩元さんからアパレルの廃棄問題を相談され、2007年に二人で日本環境設計(現JEPLAN)を立ち上げました。
当初挑んだのは、廃棄された繊維の綿(コットン)からバイオエタノールを精製する技術でした。約1年の研究の末にこれを実用化し、2015年には古着から作ったバイオエタノールで、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場するデロリアンを走らせるという大胆なPRを実施します。世界中のメディアが取材に訪れ、JEPLAN(当時の日本環境設計)の技術は一気に注目を集めました。さらにポリエステル繊維のリサイクルにも乗り出し、ファーストリテイリングや無印良品、アダストリアなど大手アパレルと回収ボックスを設置しました。
しかし、当時の製造コストは新品のおよそ10倍。メーカーは次々と撤退していきます。この挫折こそが重要だと私は思います。髙尾さんは技術を捨てるのではなく、「ビジネスとして成立する土俵」を探し、毎日大量に廃棄されて資源として潤沢なペットボトルへと軸足を移しました。失敗から逃げず、勝てる場所を選び直す。その戦略的な忍耐が、今日のJEPLANを支えています。
アサヒ飲料も採用—JEPLANのケミカルリサイクルの実績と価格の壁
JEPLANは番組によると、年間でペットボトル約10億本分の再生樹脂を製造し、国内の飲料・ボトルメーカーに販売しています。その代表例がアサヒ飲料で、2020年から再生PET樹脂を採用し、2030年までに100%再生ペットボトルなどへ切り替える目標を掲げています。
採用の広がりは飲料にとどまりません。再生樹脂「HELIX」は大容量・高耐圧のペットボトルに対応できる強みを持ち、公表されている採用例では、キリンビールのクラフトビールサーバー「タップマルシェ」のほか、資生堂やコーセー、花王、ファンケルといった化粧品ブランドの容器にも使われています。2025年末には、石油由来原料を一切使わず使用済みペットボトルだけを原料とする100%再生PETの技術革新を実現し、アサヒ飲料の「カルピスソーダ1.5L」でテスト販売も始まりました。商用化は2029年を目指すといいます。
一方で、課題もはっきりしています。アサヒ飲料の担当者が番組で語っていたように、高度な生産工程を要するため、現状の価格は従来の2倍以上です。ただし、ここで見落としてはいけないのは、その価格が“固定”ではないという点です。地政学リスクで石油系ナフサの供給が細れば、バージン材の価格は上がり続けます。回収したペットボトルを循環させる方が、将来はむしろ安くなる――そんな逆転が起こり得るのです。コストの損益分岐点は、技術だけでなく国際情勢が動かす。そう考えると、この技術の経済性はこれから評価が一変する可能性を秘めています。
JEPLANの展望—フランス連携で世界へ、リサイクル先進国・日本の可能性
髙尾さんが今見据えているのは、世界です。番組では、フランス政府が関わる研究機関やエンジニアリング大手アクセンス(Axens)と共同で、繊維リサイクル技術をさらに進化させていることが紹介されました。環境先進国であるヨーロッパでもJEPLANの技術は高く評価され、メーカーへ技術を提供するライセンス契約の普及を目指しています。
ここで印象的だったのが、「リサイクルで欧州に勝てるか」という相場さんの問いに対する髙尾さんの答えです。「すでに勝っているのではないか」。その理由は、資源循環の成否が「原料となるゴミをいかに綺麗な状態で扱えるか」に大きく左右されるからだといいます。
この指摘は、私がこの番組で最も唸らされた部分です。日本の弱点はしばしば「重い装置産業」だと語られます。けれど髙尾さんは、日本人の几帳面な分別習慣こそが、他国には簡単に真似できない“見えないインフラ”なのだと喝破しました。最先端の技術そのものではなく、国民の生活文化が競争優位になる。だからこそ、他国では燃やすしかない難しいゴミを受け入れ、資源に変えて輸出するという構想にも現実味があります。技術より文化が堀(モート)になる――ここにこの事業の最大の面白さがあると感じます。
X(旧Twitter)の反応は?ブレイクスルー「JEPLAN・髙尾正樹」回への声と考察
放送が本日午前のため、X(旧Twitter)上の個別の感想はこれから集まっていく段階です。そこで、ケミカルリサイクルやJEPLANというテーマがSNSで取り上げられる際に、繰り返し論点になりやすいポイントを整理し、考察を加えてみます。
第一に多いのが「価格が2倍では、結局消費者が負担できないのでは」という声です。これに対し、前述のとおりナフサ高騰で将来の価格が逆転し得るという視点は、番組がきちんと提示していました。第二に「分解や精製にもエネルギーを使う以上、本当にエコなのか」という疑問です。これにはCO2を約47%削減できるというLCAの数字が一つの答えになります。第三が「“半永久”は本当に可能なのか」という関心で、分子レベルで不純物を除去するという仕組みが、従来の“溶かすだけ”との決定的な違いを説明しています。
私見として付け加えるなら、視聴者の関心の重心は、いま「環境のため」から「家計と供給の安心のため」へと静かに移りつつあるように思います。エコだから応援する、ではなく、資源が手に入らない時代に備える――そんな空気の変化こそ、この回が放送された2026年6月という時期の象徴ではないでしょうか。
まとめ
2026年6月20日放送のテレビ東京「ブレイクスルー」は、JEPLANの髙尾正樹さんが開発したケミカルリサイクルを通じて、プラスチックを“新品同様”に何度でも蘇らせる技術の可能性を描き出しました。
ナフサ不足という時事的な危機を背景に、約130億円の巨大プラントで分子レベルまで分解・精製する仕組み、メカニカルリサイクルとの決定的な違い、デロリアンや繊維リサイクルから始まった髙尾さんの歩み、アサヒ飲料をはじめとする実績と価格の壁、そしてフランス連携による世界展望まで――この技術が単なる環境ビジネスではないことが伝わってきます。
「ゴミは資源」「ゴミ処理の延長ではなく、ちゃんとしたモノづくりをやりたい」。髙尾さんの言葉には、循環型社会の本質が凝縮されています。石油に頼らない未来を、日本発の技術と国民の分別文化で切り拓く。そのブレイクスルーは、私たちの暮らしのすぐそばで、確かに始まっています。
※ 本記事は、2026年6月20日放送(テレビ東京系)の人気番組「ブレイクスルー」を参照しています。
※ 株式会社JEPLANの公式サイトはこちら



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