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社会・暮らしの問題

【クローズアップ現代】空き家連続放火と火災保険「保険金詐欺」の手口

夜闇に燃える地方の古びた空き家と、その手前に浮かび上がる火災保険の契約書、そして怪しい人影。番組のテーマである「放火」と「保険詐欺」のミステリアスな雰囲気。
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クローズアップ現代」で取り上げられた、空き家連続放火事件。全国4か所で建物が燃やされ、被害総額は1億円を超えるとされます。狙われたのは、私たちの暮らしを支える火災保険でした。その裏には、巧妙な保険金詐欺の手口があります。この記事では、なぜ地方の空き家が標的になったのか、知らぬ間に一般の人まで巻き込む不正請求の実態、そして私たちにできる備えまでを、わかりやすく整理します。

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クローズアップ現代が追った「空き家連続放火事件」の全貌 ― 全国4か所・被害1億円超

2026年7月21日放送の「クローズアップ現代」は、全国で相次いだ空き家連続放火事件を追いました。発端は、北海道・紋別市の住宅街にあった空きビルの火災です。2022年に4階建てのビルが焼け、消防の調査では当初、原因不明とされていました。

ところがその後の捜査で、これが保険金をだまし取るための放火だった可能性が浮上します。放火と詐欺の罪で起訴されたのが、稲葉寛被告と深町優将被告です。2人はこのビルに火をつけ、5000万円の保険金をだまし取ったとされています。同じ手口の事件は青森・岐阜・岡山でも確認され、被害総額は1億円を超えるとみられています。

不可解なのは、2人が建物の所有者ではなかった点です。他人の建物に、なぜ保険をかけられたのか。ここに、空き家と火災保険をめぐる巧妙な仕掛けが隠されていました。

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なぜ空き家が狙われた? 火災保険「再調達価額」という保険金詐欺の温床

地方の空き家は、買い手がつきにくく、安く手に入るものが数多くあります。にもかかわらず高額な保険金の対象になり得るのは、火災保険の「再調達価額」という計算方式が関わっているためです。

古びた木の平屋建て空き家の隣に、新築の住宅が並んでいる。空き家には「購入額30万円」のラベル、新築住宅には「再調達価額(新築建て直し費用)8000万円」のラベルが付いており、巨大な保険金の袋(¥5000万〜)が空き家から伸びて、その差額が詐欺の動機になることを視覚化している。

なぜ安価な空き家が高額な保険金を生むのか?「再調達価額」のカラクリ

再調達価額とは、建物が全焼した場合に、同じ規模の建物を新しく建て直すのに必要な金額のこと。建物の古さや購入額とは関係なく設定されるため、建物が大きいほど保険金額も高くなります。番組で紹介された島根県の物件は、購入額がわずか30万〜40万円ほどだったにもかかわらず、全焼時には最大8000万円の保険金が支払われる見積もりになっていました。延べ床面積400平方メートル超という「大きさ」が、そのまま金額に跳ね返っていたのです。

本来これは、被災した加入者が生活を再建するための、いわば善意の仕組みです。その善意の隙を突かれたところに、この事件の根深さがあると私は感じます。

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元保険調査員が関与 ― 「火災のプロ」による巧妙な手口

今回の事件が衝撃的なのは、起訴された1人が保険の仕組みを知り尽くしたプロだった点です。深町被告は、かつて保険調査会社で、事故や火災の損害状況を調べる調査員として働いていました。

元上司によれば、調査員は全国におよそ800〜1000人。そのうち、調査が難しいとされる火災の専門部署に所属していたのは、わずか6〜10人ほどだったといいます。深町被告は毎月ほぼ指名で仕事が入る「エース」だったと証言されています。損害を査定し、不正を見抜くはずの立場の人物が、その知識を悪用した疑いがあるのです。

保険業界に詳しい福岡大学の植村信保教授は、保険のプロが絡んでいた点を「衝撃的」と語ります。保険は、加入者が広く出し合った保険料を、いざという時に困った人へ払う「信頼」で成り立つ仕組み。その内側にいた人物が疑われている事実こそ、制度の根幹を揺るがしかねない問題だといえます。

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名義偽装から放火まで ― 保険金詐欺の具体的な流れ

事件では、赤の他人が「知らぬ間に所有者」にされていました。番組に登場した、ある会社の元社長は、経営難のさなかに経営コンサルタントを名乗る稲葉被告と出会い、たびたび運転資金を借りていました。信用してしまい会社の印鑑を預けたところ、その名義で建物を購入されていたのです。火災後、言われるまま保険金を手渡してしまい、「受け子みたいなもの」と振り返っていました。

さらに巧妙なのが、空き家に人を住まわせて「居住偽装」をしていたとみられる点です。通常、空き家は火災保険の契約が制限されるケースが少なくありません。リフォームしたり知人を住まわせたりして人が住んでいるように見せる手口は、業界に精通していたことをうかがわせます。弱みにつけ込み、名義を借り、居住を偽装する。段取りの一つひとつが、制度の穴を知る者の仕事だったといえます。

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他人事ではない ― 一般人が巻き込まれる火災保険の不正請求

不正請求を行うのは、専門知識を持つプロだけではありません。台風や大雨のあと、修理業者が被災地域の家を一軒ずつ訪ね歩くケースがあります。有罪判決を受けたある男性は、屋根などの損傷を調べると称し、災害と無関係な経年劣化まで被害に計上し、見積もりを水増ししていたと明かしました。本来20万〜30万円ほどの工事を、70万〜100万円規模に膨らませていたといいます。

請求するのは、あくまで加入者本人。保険金が下りたあと、サポートの対価として数十パーセントを受け取る仕組みです。こうしたやり方は口コミで広がり、多くの人が不正だと十分に認識しないまま当事者になっていきました。保険会社顧問として1000件以上の不正請求を見てきた弁護士は、当初は「知らずに加担した」人が多かったが、最近は問題を認識しつつ許容する人が目立ち、局面が変わってきたと指摘します。善意の隣人からの紹介が、いつのまにか自分を犯罪の側へ運んでしまう。ここが最も怖いところです。

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加入者はどんな責任を問われる? ― 詐欺罪リスクと制度の落とし穴

不正請求には主に、経年劣化による損害を自然災害と偽るケースと、故意の損害を自然災害と偽るケースがあります。いずれも保険会社が不正と判断すれば、支払われた保険金の返還を求められます。その時点で契約を解除され、以降は無保険状態になることも。本当に困った時に保険が使えないという、本末転倒の事態になりかねません。悪質と判断されれば、詐欺罪に問われる可能性もあります。

なぜ多くの人が関わってしまうのか。植村教授は、この不正には特定の被害者がいないため罪の意識が軽くなりやすいこと、「払うばかりで受け取れないのは損」という誤解があることを挙げます。しかし保険料は、万が一に備えるためのコストです。損得で語るものではない、という当たり前の理解が、実は最大の防御なのだと気づかされます。

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保険会社のAI対策と韓国の実態 ― 制度を守るために私たちができること

対策も進んでいます。年間およそ2兆円規模の保険を扱う三井住友海上(MS&AD)では、数百万件もの請求データをAIが分析し、過去の不正事例との類似度を点数化。疑わしい案件を洗い出しています。請求者や修理業者、申請サポート会社の関係性を可視化し、不正業者を1社特定すれば、つながる請求者もたどれる仕組みです。

大画面のモニターが並ぶ現代的な保険会社のオペレーションセンター。モニターには「AI不正請求検知システム」とあり、赤い線が「怪しい修理業者」から「請求者」へ繋がっている様子や、グラフが表示されている。手前のデスクには、「保険は儲けの手段ではない」と書かれたメモが置かれ、制度を守るための人間の意識の重要性を示している。

AIによる不正検知システムの可視化と加入者の心得

一方で、不正をする側もAIを使い始めています。韓国では生成AIを悪用した不正請求が問題化し、年間の摘発者は10万人以上、被害額は1200億円超。1世帯あたり年間およそ2万8000円もの保険料が余計に取られているとの推計もあります。厳罰化や審査強化はジレンマを伴い、行きすぎれば本当の災害時に保険が使いにくくなります。だからこそ、私たち加入者が「保険は万が一への備えであり、儲けの手段ではない」というシンプルな理解を持つことが、制度を守る第一歩になります。

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まとめ

「クローズアップ現代」が追った空き家連続放火事件は、火災保険の再調達価額という仕組みと、プロの知識、そして一般人の善意までもが悪用された、保険金詐欺の縮図でした。ポイントを整理します。

  • 全国4か所で空き家が放火され、被害総額は1億円超。起訴された1人は元保険調査員
  • 安い空き家でも「再調達価額」で高額保険金が設定される点が狙われた
  • 修理業者による水増し請求など、一般人が知らぬ間に加担する不正も拡大
  • 不正が判明すれば保険金返還・契約解除・詐欺罪のリスクがある

不正請求のツケは、めぐりめぐって加入者全員の保険料に跳ね返ります。うまい話や「無料で直せる」という勧誘には、まず一歩引いて向き合う。それが、自分と制度の両方を守ることにつながります。

※ 本記事は、2026年7月21日放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。

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