最近、クマのニュースを聞く回数が急に増えたと感じていませんか。2026年6月24日放送のクローズアップ現代では、「人を狙う」クマという新たな脅威と、科学が挑む対策の最前線が紹介されました。この記事を読めば、なぜ一部のクマが危険になるのか、そして私たちが今日から備えられることが具体的に分かります。漠然とした不安を、確かな知識へと変えていきましょう。
クローズアップ現代が報じたクマの「新たな脅威」とは|なぜ今“フェーズが変わった”のか
2026年6月24日に放送されたクローズアップ現代「クマ 見えてきた新たな脅威 ~科学調査で迫る対策最前線~」は、これまでの常識が通用しなくなりつつある現状に正面から切り込んだ回でした。番組によれば、この春の全国のクマの出没件数は去年の2倍以上に達し、死亡被害者数も去年を上回るペースで推移しているといいます。
数字の重みを補足しておきます。環境省の速報値では、2025年度(令和7年度)の人身被害は238人、うち死亡13人。これまで最悪だった2023年度(被害219人、死亡6人)を大きく上回り、いずれも統計開始以降で過去最悪となりました。さらに2026年度に入っても、4月の岩手県紫波町、5月の山形県酒田市や岩手県八幡平市で死亡事例が確認されています。被害が「一過性の異常」ではなく、年々深刻化する流れの中にあることが分かります。
そして今年特筆すべきは、出没の「場所」です。今年4月には仙台市の中心部、しかも県庁のすぐ近くでクマが捕獲され、宇都宮市の中心繁華街や東京・八王子市の住宅のすぐ脇にまで姿を見せました。番組でゲストを務めた東京農工大学大学院の小池伸介教授は、クマの脅威は「フェーズが変わった」と表現しています。私はこの言葉こそ今回の核心だと感じました。問題はもはや「数が増えた」という量の話ではなく、クマと人の距離感そのものが質的に変わってしまった、という点にあるのです。
「人を狙う」クマの衝撃|捕食目的の襲撃とDNA分析でわかった同一個体の真実
番組が最も衝撃的に伝えたのが、クマが「捕食目的」で人を襲った可能性です。本来、クマによる人への攻撃は、驚いたり子グマを守ったりする「防御」で説明できるものでした。ところが昨年から今年にかけて、明らかに人を狙ったかのような事例が複数起きているのです。
その象徴が北海道福島町のケースです。去年、新聞配達中の男性が民家の敷地内でヒグマに襲われ、亡くなりました。北海道立総合研究機構の釣賀一二三さんは、被害者の衣服に付着していたものを含め、現場周辺の合計4か所から採取した体毛などのDNAを照合。すべてが一致し、同一個体の仕業だと突き止めました。男性の襲撃からおよそ1週間後に捕獲された1頭のクマも、解析の結果まさにその個体だと判明しています。
さらにこの調査は、思いもよらぬ事実をあぶり出しました。このクマは、5年前にも同じ福島町で人を襲っていたのです。当時のクマは捕獲されないままでしたが、DNAが今回の個体と一致しました。NHKの情報公開請求によれば、5年前の事故には人を捕食した「食害」の痕跡があり、今回も男性を連れ去って草をかけ、遺体を確保していたといいます。
DNA分析と聞くと事件捜査を連想しますが、まさに同じ精度で「加害個体の特定」ができる時代になったのだと実感します。誰が起こしたか分からないまま不安だけが地域に残るのではなく、確実に元凶を見つけて取り除ける。これは住民の安心に直結する、非常に意味の大きい進歩だと思います。
クマが危険化する3段階|小池伸介教授が解説する「青・黄・赤」の行動変化
ではなぜ、一部のクマだけがここまで危険になるのでしょうか。小池伸介教授は、その過程を「青・黄・赤」の3段階で説明しました。
まず青の段階は、山の中で暮らし、人への警戒心を保っているクマです。できれば人に会いたくない、本来の姿です。それが黄色の段階になると、何かのきっかけで人間の食べ物を口にし、「おいしい」と覚えてしまう。すると人への警戒心が少しずつ下がっていきます。そして赤の段階では、警戒心が下がった状態で人と遭遇して攻撃し、「人は大したことない」と学習してしまう。こうしてクマの“性格”そのものが変わっていくというのです。
ここで強調しておきたいのは、小池教授が「山の中のクマ全部がこうなるわけではない」とはっきり述べている点です。問題を起こすのはあくまで特定の個体。だからこそ、危険な個体を科学的に見極めて確実に対処することが重要になります。「クマは怖い、だから全部排除すべきだ」という極端な議論にも、「かわいそうだから手を出すな」という感情論にも偏らない。個体差という事実に立った冷静な視点こそ、今いちばん必要なものだと感じます。
体毛が語るクマの食性|なぜ人間の食べ物に執着するのか【科学調査の最前線】
危険化の入り口は「人間の食べ物」です。森林総合研究所の中下留美子さんは、各地で捕獲されたクマの体毛から、その個体が何を食べていたかを読み解いています。体毛には食べたものに含まれる元素の特徴が残り、木の実などの自然のものか、人間由来のものかを判別できるのです。
クマの体毛は6月から10月にかけて成長します。等間隔で切断して分析すれば、いつの時期に何を食べていたか、いわば“食事の履歴書”を再現できます。中下さんが注目したのは、6年前に長野県のキャンプ場で捕獲されたクマ。体毛を調べると、2019年は山の中で穏やかに暮らしていたのに、2020年7月下旬から急激に人由来の食べ物への依存を強めていたことが分かりました。一度味を覚えると、もう山のクマには戻れないというのです。
なぜそこまで執着するのか。小池教授によれば、クマは植物中心の雑食でありながら、実は植物の消化が得意ではありません。人間が調理したものや肉・魚のほうが消化しやすく、食べ物としての魅力が桁違いに高い。しかもゴミ捨て場のように食べても食べても補充される場所は、クマにとって「夢のような場所」で、毎晩通うようになってしまうといいます。だからこそ、駆除して終わりではなく、誘引物という“発生源”を断たなければ次のクマが現れ続ける。この指摘は、対策の本質を突いていると思います。
都市部・関東にクマが出没する現状|河川敷と緑地が生む“侵入ルート”の正体
今年もう一つ広がっている懸念が、人口の多い都市部への出没です。1970年代には山間部にいたクマは、2000年代以降、都市部に向けて分布を広げてきました。民間企業で野生動物調査を行う大西勝博さんは、関東の山に入る中で、糞や痕跡を確認する機会が増え、実際に個体数が増えている実感があると語ります。
問題は、関東一都県を取り囲む山々に何頭のクマがいるのか、その全体像がまだ把握できていないことです。県境をまたいで広く調べなければ正確な数は分かりません。国も今年度から、被害の深刻な東北地方を起点に、県境を越えた広域の個体数調査を始めています。環境省関東地方環境事務所の小林喬子さんは、各都道府県の数を単純に足すだけでは精度の高い個体数は出せないと指摘しています。
クマの“侵入ルート”として小池教授が注目したのが、緑地のつながりと河川敷です。八王子市の現場では、住宅街の点在する緑が西側の山々まで森でつながっていました。さらに、山間部から東京23区へ流れる多摩川の河川敷には、カロリーの高いクルミの実が落ち、身を隠せる藪も茂っていて、野生動物が暮らしやすい条件がそろっていました。実際、多摩川ではイノシシやシカの出没も確認されており、小池教授は「何も対策をしなければ、その後にクマも現れる」と警告します。
ここで見逃せないのが、藪が発達した理由です。かつては洪水のたびに河川敷の藪が流されていましたが、治水が進んだことで洪水が減り、結果として藪が育ってしまった。安全のための治水が、皮肉にもクマの通り道を生んでいるわけです。私たちの暮らしの「成功」が新たなリスクを呼び込むという構図は、防災と生態系の両方を考えなければ解けない難しさを物語っています。
クマから身を守る7つのポイント|誘引物の管理と個人でできる対策の最前線
では、私たちは何ができるのでしょうか。番組では「クマから身を守る7つのポイント」が紹介され、小池教授が個人レベルでできる基本を解説しました。
最も大切なのが誘引物の管理です。生ゴミはもちろん、収穫しない庭の柿の木があるなら思い切って切ってしまう。誘引物があるからこそクマは森から出てくる、という発想が出発点です。次に、多くの自治体がウェブで発信している目撃情報にこまめにアクセスすること。自分の生活圏にクマが現れていると分かれば、散歩の時間帯やルートを変えられます。警戒心のあるクマは夜に集落へ近づくため、朝夕の薄暗い時間帯を避けるのは特に有効です。普段より念入りな戸締まりも、家屋侵入への備えになります。
一方で、行政側の課題も番組は鋭く突いていました。小池教授によれば、各都道府県で鳥獣行政を担う職員のうち、専門知識を持つ人は6%にも満たないといいます。専門性がなければ後手に回りがちで、被害が出てから動くことになりかねません。クマを学ぶ教育体制は大学で整いつつあるので、あとは行政が専門人材のポストを用意できるかどうか。個人の自衛と行政の体制づくり、この両輪がそろって初めて対策は前に進むのだと思います。
【Xの反応】都市部のクマ出没・緊急銃猟に視聴者の声は?
放送前後のX(旧ツイッター)や出没情報サイトのコメント欄を見ると、視聴者や住民の関心がどこにあるのかがよく分かります。とりわけ多かったのが、宇都宮市のオリオン通りや八王子の住宅地といった「まさかこんな街なかに」という驚きと恐怖の声でした。学校の体育祭が延期になった、休校になるのではと心配する保護者の投稿も目立ち、クマ問題がすでに日常生活を揺さぶっていることがうかがえます。
もう一つ議論を呼んでいるのが、市街地での駆除をめぐる制度です。2025年9月には、市町村長の判断で住宅街などに出没したクマを銃で駆除できる「緊急銃猟」の制度が始まりました。早く確実に対処してほしいという声と、市街地での発砲の安全性を不安視する声が交錯しています。また仙台市が広瀬川沿いにクマを自動識別するAIカメラを9台設置するなど、技術で侵入を監視する動きも進んでいます。
こうした反応を見て私が感じるのは、過度な恐怖でも過度な楽観でもない「正しく知る」姿勢の大切さです。番組の最後で小池教授も、知らないからこそ過度に恐れたり過度にかわいがったりするのだと語っていました。クマは、ただ怖いだけでも、ただかわいいだけでもない。付き合い方を間違えれば命を奪う存在だからこそ、まず実態を知ることがすべての出発点になるのだと思います。
まとめ|クローズアップ現代が示したクマ対策の最前線と私たちにできること
今回のクローズアップ現代は、科学調査がクマ対策にもたらす3つの意義を整理してくれました。第一に、生息状況を推定して適正な個体数管理につなげること。第二に、体毛分析などで生態を解明し、対策を緻密にすること。第三に、加害個体を特定して事態の収束を判断できるようにすることです。
そして根底に流れていたのは、「クマを正しく知る」という小池伸介教授のメッセージでした。フェーズが変わったクマの脅威に対して、私たちにできるのは、誘引物を管理し、自治体の情報をこまめに確認し、行動を少し変えること。そして何より、感情論に流されずに事実と科学に基づいて向き合うことです。クマ対策の最前線で得られた知見を、一人ひとりが暮らしの中に取り入れていくことが、被害を食い止める確かな一歩になるはずです。
※ 本記事は、2026年6月24日放送のNHK「クローズアップ現代」を参照しています。




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