「応援したい会社に投資したら、分配金がもらえる」——2026年7月11日放送のテレビ東京系「ブレイクスルー」で紹介されたのは、そんな推し活投資の仕組みでした。仕掛けるのはミュージックセキュリティーズ。この記事では、番組で語られた分配金の実態・元本割れリスク・熊本地震との意外な関係まで、要点をまるごと整理します。読み終える頃には、株でもNISAでもない「第三のお金の置き場所」が見えてくるはずです。
推し活投資とは?ミュージックセキュリティーズの事業投資型クラウドファンディングを解説
まず結論からお伝えします。今回の推し活投資とは、ミュージックセキュリティーズが運営する「事業投資型クラウドファンディング」のことです。
私たちが「クラファン」と聞いて思い浮かべるのは、お金を出すとモノやサービスが届く購入型でしょう。番組で中園浩輝社長は、自社の仕組みはそれとはまったく違うと語りました。出資したお金は事業に使われ、事業がうまくいけばお金が増えて返ってくる。つまり、完全な投資商品だというのです。
中園社長の言葉を借りれば、寄付は一方通行、購入型は1万円出して1万円分のモノが返ってくるだけ。対して事業投資型は、そのお金が新しいビジネスを生み、成功すれば増えて戻ってくる。「一方通行のお金から、循環できるお金へ」——これが番組を貫くキーワードでした。
象徴的なのが、2026年3月27日に公開された映画『えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』です。制作費の一部、およそ4億8000万円をこの仕組みで調達したといいます。推し活で映画がつくられる時代が、もう現実に来ているわけですね。
分配金はどう決まる?エマリコくにたち960万円ファンドで見る仕組みと元本割れリスク
では、分配金は実際どれくらいなのか。番組が密着したのは、東京・国立で農産物の直売所などを営む「エマリコくにたち」(代表・菱沼勇介さん)です。
新店舗の建設費などのために募った金額は960万円。銀行から全額の融資を受けるのは難しかったと、菱沼さんは率直に明かしていました。このファンドの条件が非常に具体的です。
- 一口5万4000円(うち4000円はミュージックセキュリティーズへの手数料)
- 5年間で目標の売上を達成すれば、お金が2割ほど増えて返ってくる想定
ここで見逃してはいけないのが、番組がきちんと伝えたリスクです。売上が目標に届かなければ元本割れもある。中園社長自身が「本当にあります」と認めていました。
私はこの点こそ、この仕組みの誠実さだと感じます。「応援」という温かい言葉で包みながらも、あくまで投資であることを隠さない。推し活は免罪符ではない——ここを理解したうえで参加するかどうかが、分かれ道になりそうです。
なお、エマリコくにたちのファンドは100人以上の支援で、約3か月で目標の960万円を達成しています。
出資者はまさかの農家?「作り手も投資ができる」地域内でお金を循環させるモデル
番組で最も驚いたのが、出資者の顔ぶれでした。取材班が向かったのは、住宅街にある小さな農園。出資していたのは、エマリコくにたちに農産物を卸している農家さん本人だったのです。
糸満園の本多聡さんは、6か所の農園でおよそ50品目の野菜や果物を育てる生産者。東京都が開発したキウイの品種「東京ゴールド」なども栽培しています。この地域の農業は小規模で流通させにくく、市場の価格競争で利益を出すのは至難の業。相場より高値で買い取りしてくれるエマリコくにたちは、農家にとってありがたい存在なのだといいます。
だからこそ、本多さんは「私たちも応援しなきゃいけない」と出資を決めました。売り先が伸びれば自分の売上も伸びる。作り手が投資家になるという、株式市場ではまず起こらない循環がここにあります。
そして本多さんの一言が忘れられません。大きなリターンを期待しているわけではなく、むしろ絆が深まることの方が重要だ、と。投資のリターンを「金額」だけで測らない。この価値観こそ、推し活投資の本質なのかもしれません。
熊本地震と肥後銀行──ミュージックセキュリティーズが地銀グループ入りした理由
実は中園社長、熊本の地方銀行肥後銀行から送り込まれた経営者です。ミュージックセキュリティーズは2年前、経営の安定化を図って肥後銀行グループの傘下に入りました。
きっかけは2016年の熊本地震でした。肥後銀行はできる限りの支援をしたものの、一般の預金者から預かったお金を貸す立場上、事業者が求める金額を全額融資するのは難しかった。復興後に客足がどこまで戻るか読めない以上、銀行本体では出せない——中園社長はそう振り返ります。
その銀行が担いきれない領域に寄り添ったのが、ミュージックセキュリティーズでした。
番組に登場したのは、明治創業の米卸業者・御船共栄の4代目社長、赤星和彦さん。地震の被害はおよそ1億8000万円。銀行融資は設備の補修で精一杯で、未来へ進む資金は残らなかったといいます。
そこで熊本県と共同で立ち上げられた復興支援ファンドで約560万円を調達。ホームページをリニューアルし、全国の消費者向けに米のネット販売(BtoC)を始めました。「幅広い人への売り方を持たなくちゃいかん、体質改善をしなくちゃいかん」という赤星さんの言葉が印象的です。この復興ファンドは温泉や酒蔵など地元16社が利用しました。
災害からの復興を「借金」ではなく「共感」で支える。地銀がこの仕組みに惚れ込んだ理由が、よく分かります。
ファンド成立は応募の2〜3割──セキュリテの厳しい審査が投資家を守る
「応援」と聞くと、誰でも通るゆるい仕組みに思えるかもしれません。ところが実態は真逆でした。
同社が運営するプラットフォーム「セキュリテ」では、弁護士・公認会計士・銀行員といったプロフェッショナルが審査を担当。事業計画を精査し、資金繰りが回るのか、償還が可能かを重点的に見ているといいます。債務超過や税金の滞納の確認も当然のチェック項目です。
驚くのはその通過率。相場英雄さんが「どのくらいファンドとして成立するのか」と尋ねると、中園社長の答えは「大体2、3割」。応募の7〜8割は、ファンドにすらならないのです。
「この産業は淘汰されても仕方ないのでは」という厳しい問いにも、中園社長はシビアに見ていると即答しました。温情は挟まない。集めた資金を元本以上で返す計画が描けなければ、そもそも組成しない——金融商品として扱う以上、当然の姿勢です。
ちなみに番組では、伝統工芸の京扇子の事業承継を支えた例も紹介されました。金融機関との連携は86にのぼり、これまで1000件以上のファンドを成立させています。この目利きの厚みこそ、投資家を守る最後の砦なのでしょう。
中園浩輝が語る「金融の民主化」──推し活投資が日本経済に問いかけるもの
番組の最後、相場さんの「あなたにとってブレイクスルーとは」という問いに、中園社長はこう答えました。
「金融を民主化する」
日本には約400万社の企業があり、その99%以上が中小企業。しかもほとんどが非上場です。にもかかわらず、そこに投資性のお金がまったく回っていない。この歪みこそが、中園社長の出発点でした。
対照的なデータも紹介されました。新NISA(成長投資枠)で買われている商品のランキング上位は、全世界株式やS&P500といった海外に投資する投資信託が占めています。つまり、私たちが積み立てているお金の多くは、海を渡っているわけです。
もちろん海外分散は合理的な選択で、否定されるべきものではありません。ただ、それだけでいいのか。顔が見える経営者に、自分のお金を届ける選択肢があってもいいのではないか——番組はそう静かに問いかけていたように思います。
地域にお金が落ちれば、雇用が生まれ、日本が元気になる。壮大にも聞こえますが、その第一歩が「一口5万円の推し活」だとしたら、案外現実的な話なのかもしれません。
まとめ
2026年7月11日放送の「ブレイクスルー」で紹介された、推し活投資のポイントを整理します。
- 推し活投資=事業投資型クラウドファンディング。購入型と違い、事業の売上に応じて分配金が返ってくる
- エマリコくにたちのファンドは一口5万4000円、5年で約2割増の想定。ただし元本割れリスクあり
- 出資者には農家の本多さんも。地域内でお金を循環させる独自モデル
- 熊本地震を機に肥後銀行グループ入り。銀行が貸せない領域を支えてきた
- セキュリテのファンド成立は応募の2〜3割。プロによる厳しい審査が投資家を守る
- 中園浩輝社長のブレイクスルーは**「金融を民主化する」**
推し活投資は、確実に儲かる魔法ではありません。元本割れもある、れっきとした投資です。それでも、自分のお金が誰の、どんな挑戦を支えているのかが見えるという点で、株や投資信託にはない手触りがあります。
「増やす」だけでなく「誰に託すか」。お金の使い方をもう一段深く考えてみたい方は、まず気になる事業者を眺めてみるところから始めてみてはいかがでしょうか。
※ 本記事は、2026年7月11日放送(テレビ東京系)の人気番組「ブレイクスルー」を参照しています。
※ ミュージックセキュリティーズの公式サイトはこちら。



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