「ふえるわかめちゃん」でおなじみの理研ビタミンが、なぜ近年ヒットを連発できるのか気になりませんか。本記事では、2026年5月28日放送のカンブリア宮殿をもとに、山木一彦会長の改革と「隣の土俵」戦略をわかりやすく解説します。読み終えるころには、何気なく口にしている食品の裏側まで見えてくるはずです。
理研ビタミンとは?カンブリア宮殿が描いた「おいしさを科学する技術者集団」の正体
2026年5月28日に放送されたカンブリア宮殿では、「ふえるわかめちゃん」や「ノンオイルドレッシング」でおなじみの理研ビタミンが特集されました。多くの方は「わかめの会社」というイメージをお持ちかもしれませんが、番組が描いたその正体は、まったく違うものでした。理研ビタミンは、おいしさを科学で解析する技術者集団なのです。
そのルーツは、1917年に設立された日本初の民間研究所「理化学研究所」にさかのぼります。当時は捨てられていた魚の内臓からビタミンAを抽出することに成功し、その抽出技術を受け継いで1949年に「理研ビタミン油(現・理研ビタミン)」がスタートしました。つまりこの会社は、創業以来100年以上にわたって、ひたすら「何かを抽出し、おいしさを突き詰める」ことを続けてきた集団なのです。
私が興味深いと感じるのは、「わかめの会社」という親しみやすい看板の裏に、これほど硬派な研究開発の歴史が隠れている点です。家庭の食卓に最も近い場所にいながら、その実態は徹底した技術企業。このギャップこそが、理研ビタミンの面白さだと思います。
山木一彦会長とはどんな人物?連敗続きを連戦連勝に導いた改革者の素顔
番組にゲストとして登場したのが、理研ビタミンの会長・山木一彦(やまき かずひこ)さんです。物腰はとても穏やかですが、その内側には「変わらなければ生き残れない」という強い危機感を持った改革者の顔がありました。
山木さんが社長だった時代、理研ビタミンは大きな試練に直面します。新型コロナの影響でBtoB事業が不調に陥り、さらに中国の子会社で不適切会計が発覚。その結果、創業以来初となる赤字を経験することになりました。番組のなかで山木さんが「創業以来、初の赤字だったと思います」と振り返る姿は、決して順風満帆ではなかった歩みを物語っています。
連敗続きだった商品開発を、連戦連勝へと導いたのが山木さんです。MCを務めたのは、『蛇にピアス』で芥川賞を受賞した作家・金原ひとみさんと、京都大学卒のクリエイター・ヒャダインさん。番組では、この穏やかな改革者がどのように会社を立て直したのかが、ていねいに掘り下げられていきました。経営者というと声高にビジョンを語る人物像を思い浮かべがちですが、山木さんはむしろ寡黙に「仕組み」を変えた人。ここに、後述する改革の本質が表れているように感じます。
ふえるわかめちゃん誕生秘話|日本の食卓に革命を起こしたロングセラーの技術
理研ビタミンの看板商品といえば、やはり「ふえるわかめちゃん」です。1976年に発売されて以来、誰もが知るロングセラーとなり、水に入れるだけでどんどん増えるその手軽さは、まさに日本の食卓に革命を起こしました。番組ではスタッフが大さじ一杯のわかめで実験し、なんと約17倍にまで増える様子が映し出されていました。ヒャダインさんが「適量がわからなくて増えすぎる」と笑う場面は、多くの愛用者が思わずうなずいたのではないでしょうか。
実は、この商品化は簡単ではありませんでした。きっかけは、即席味噌汁用の乾燥わかめを作ってほしいというメーカーからの依頼。ところが従来の乾燥方法では、わかめ同士がくっついてしまいます。解決のヒントになったのが、なんと急須の中の茶葉でした。お湯を入れると茶葉が開いて元の形に戻ることに気づき、同じ方法でわかめを乾燥させたところ、問題が大幅に改善したのだそうです。
わかめは塩漬けが当たり前だった時代に、「使いたいときにすぐ使える」という新しい価値を生み出した。身近な茶葉の動きから革新が生まれたというエピソードは、理研ビタミンが「観察し、科学する集団」であることを象徴していると私は思います。
ノンオイルドレッシング(青じそ)の隠し味はホタテ!分子蒸留法という技術力
ふえるわかめちゃんに続いて世間を驚かせたのが、「青じそドレッシング」に代表されるノンオイルドレッシングです。油を使っていないのに、しっかりとしたコクと深みがある——その秘密は、隠し味にありました。番組で明かされたのは、オホーツクで獲れるホタテの貝柱を煮た煮汁を独自製法で濃縮した「ホタテエキス」です。これが青じそドレッシングに、奥行きのある旨味を与えていたのです。
そしてこの旨味を支えているのが、理研ビタミン最大の強みである「分子蒸留法」という抽出技術です。熱に弱い旨味成分を、真空状態にすることで低温のまま壊さずに取り出すことができます。もともとはアメリカの技術ですが、食品向けに日本で初めて工業化したのが理研ビタミンなのだそうです。
興味深いのは、この青じそドレッシングが、もともと「海藻サラダ」に付属する調味料にすぎなかったという事実です。「美味しいからこれだけ売ってほしい」という声に応えて商品化されたという経緯は、後発でも勝てる商品づくりのヒントが、すでにこの時代から芽生えていたことを感じさせます。
売上の8割はBtoB|「加工食品の半導体」改良剤と理研ビタミンの“裏の顔”
ここからが、番組でも最も驚きをもって紹介された理研ビタミンの“裏の顔”です。実は、ふえるわかめちゃんや青じそドレッシングは「表の顔」にすぎず、同社の売上のおよそ8割は、BtoB(企業向け)ビジネスが占めています。
その主役が「改良剤」と呼ばれる存在です。アブラヤシなどの植物の油から抽出した成分でつくられ、スーパーやコンビニで売られているパンやケーキ、春巻き、レジ横のチキンなど、私たちが日常的に口にする数多くの食品に使われています。生地に混ぜると焼きたての食感が長持ちし、ケーキはふわふわに、春巻きはパリパリに。揚げてから1時間経った春巻きが、まるで揚げたてのような食感を保つ様子は、見ていて思わず驚かされます。
山木さんはこの改良剤を、「加工食品の半導体だ」と表現しました。表立っては見えないけれど、あらゆる食品を陰で動かしている——言い得て妙な比喩だと思います。理研ビタミンは、まさに食を陰で支える「黒子企業」なのです。番組では売上高963億円と紹介され、会社はいよいよ売上高1,000億円という大台を視野に入れる規模にまで成長しています。私たちが普段「おいしい」と感じている食感の多くが、この会社の技術に支えられていたという事実は、知れば知るほど食卓の見え方を変えてくれます。
ザクザクわかめ・謎ドレッシングを生んだ山木一彦の組織改革と「隣の土俵」戦略
長年、理研ビタミンには「ふえるわかめちゃん」「青じそドレッシング」以来のヒット商品がありませんでした。収益はBtoBに支えられ、家庭用商品では技術ばかりが先行し、お客さまの心をつかめていなかったのです。番組では、技術者が「技術は凄い」と胸を張る一方、営業が「あまり売れそうにない」と返す、すれ違いの会議が再現されていました。
そこで山木さんが仕掛けたのが、組織改革です。商品企画部のトップを営業出身者に変え、さらに組織を「企画部」と「技術部」に分割。まず企画部が消費者のニーズを徹底的に探り、それを技術部が形にする体制へと作り替えました。この改革から生まれたのが、発売から3年半で1200万袋を売り上げた「ザクザクわかめ」です。当時ヒットしていた韓国のりフレークから着想を得て、入れる調味料を分子レベルまで考え抜き、100回以上の試作を重ねて、商品化までに2年半をかけたといいます。
ほかにも、冷凍のまま焼いてもジューシーに仕上がる「パッとジュッっと」は1年ほどで70万袋、「インドカレー屋さんの謎ドレッシング」は500万本という異例のヒットを記録しました。これらを貫くのが、山木さんの「隣の土俵をつくる」という考え方です。後発として同じ土俵で戦っても勝てないなら、「ノンオイル」のように新しい土俵を自分で作ってしまえばいい——この発想こそ、理研ビタミンの強さの核心だと私は感じます。技術を“正解”にするのではなく、お客さま目線を“正解”にする。優れた技術ほど陳腐化するという山木さんの言葉は、どんな業界にも通じる本質を突いています。
温暖化でわかめが4分の1に…理研ビタミンが挑む「わかめ危機」と強い苗づくり
最後に番組が取り上げたのは、わかめそのものの危機です。温暖化の影響で海水温が上昇し、冷たい水を好むわかめは育ちにくくなり、枯れてしまうことも増えました。その結果、生産量はピーク時の4分の1にまで落ち込んでいるといいます。
この危機に立ち上がったのが、ほかでもない理研ビタミンでした。宮城県名取市にある「ゆりあげファクトリー」(2017年開設)などで、わかめの種となる胞子を科学的に分析し、環境の変化に耐えられるものを選別して育てています。水槽のなかで約40日かけて、いわば「強いわかめの苗」をつくっているのです。三陸で養殖を営む漁師の佐々木晶生さんは、理研から苗を買って育てたことで、生産量が2倍近くに増え、大きさも通常の約1.5倍、身も肉厚になったと語っていました。
看板商品の原料を守るために、川上である生産現場まで支える。ここにも「黒子」として食を底から支える理研ビタミンの姿勢が一貫して表れています。おいしさを科学する力は、商品だけでなく、その源である自然や生産者にまで向けられているのだと感じました。
理研ビタミン回(カンブリア宮殿)へのSNS・Xの反応は?視聴者の感想・疑問を考察
放送をめぐる反応を見ていくと、まず多いのが「ザクザクわかめ」への共感です。通販サイトのレビューでも「クセになる」「ご飯にも冷奴にも合う」「食感が素晴らしい」といった声が目立ち、番組で紹介された“中毒性のある食感”が、視聴者の実感とぴたりと重なっていることがうかがえます。健康的だけれど地味になりがちなわかめを“主役”に押し上げた点に、改めて驚いた方も多いのではないでしょうか。
一方で、番組で最も反響を呼びそうなのが「売上の8割がBtoB」「身近な食品の食感は改良剤に支えられていた」という事実です。「ふえるわかめちゃんの会社が、まさか加工食品の裏側を握っていたとは」という意外性は、SNSでも語りたくなるトピックでしょう。改良剤という言葉に少し身構える方もいるかもしれませんが、番組では味にほぼ影響しない範囲で使われ、原料も植物由来であると説明されていました。漠然と不安に思うより、まず仕組みを知ること。それが、こうした番組の一番の価値だと私は思います。「隣の土俵」という言葉に、自分の仕事のヒントを見いだしたという声も出てきそうな、示唆に富む回でした。
まとめ
2026年5月28日放送のカンブリア宮殿は、理研ビタミンという企業の二つの顔を鮮やかに描き出しました。「ふえるわかめちゃん」や「ノンオイルドレッシング」という親しみやすい表の顔と、売上の8割を占める改良剤という“黒子”の裏の顔。その両方を支えているのが、創業100年以上にわたって磨かれてきた抽出技術であり、山木一彦会長による「企画と技術を分ける」改革でした。
技術に溺れず、お客さま目線で「隣の土俵」をつくる——この発想は、食品業界に限らず、後発から勝ち筋を探すすべての人にとって学びになるはずです。金原ひとみさんが編集後記で記した「粛々と、盤石に」という言葉のとおり、理研ビタミンは静かに、しかし確実に、私たちの食生活を底上げし続けています。次にわかめや食パンを口にするとき、その背後にある技術と改革の物語を、少し思い出していただけたらうれしいです。
※ 本記事は、2026年5月28日放送(テレビ東京系)の人気番組「カンブリア宮殿」を参照しています。
※ 理研ビタミン株式会社の公式サイトはこちら。





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