開けるだけでモコモコと泡が立つ「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」。その泡の秘密が、ビールではなく缶の内側の塗料にあることをご存じでしょうか。2026年11月8日放送の「がっちりマンデー!!」では、塗料を開発したトーヨーケムが登場し、開発のきっかけが“失敗作”だったことが明かされました。この記事では、泡の仕組みから開発秘話までをわかりやすく解説します。次に生ジョッキ缶を開けるときの楽しみが一つ増えるはずです。
がっちりマンデーで判明!生ジョッキ缶の泡の秘密は「缶の内側の塗料」
2026年11月8日放送の「がっちりマンデー!!」は、「ヒット商品の儲かり素材」特集でした。2つ目に取り上げられたのが、アサヒビールの「スーパードライ 生ジョッキ缶」です。
フタを開けると、きめ細かい泡がシュワシュワと湧き出てきて、お店のジョッキで出てくる生ビールのような状態になります。スタジオの野々村友紀子さんも「めっちゃ買いました」と話していたほどの人気商品です。
では、この泡はどうやって生まれているのでしょうか。取材班が「ビールに何かすごい素材を入れているのか」と尋ねると、アサヒビールの村尾さんの答えは「中は一緒なんです」というものでした。
ビールという液体自体は、普通のスーパードライと同じです。重要なのは、缶に使われている素材だといいます。泡を立たせる秘密はビールではなく、缶の内側に塗られた塗料にありました。
「おいしいビールを作る技術」ではなく「缶の内側を工夫する技術」で大ヒットが生まれたという点が、この話の一番おもしろいところだと私は感じます。中身を変えずに体験を変える、という発想の転換です。
発売2日で約100万ケース完売!アサヒ「生ジョッキ缶」の大ヒット
生ジョッキ缶は、2021年4月にコンビニでの先行販売から始まりました。番組によれば、発売からわずか2日で約100万ケースが完売し、一時は販売を休むことになったそうです。
村尾さんは「迷惑かけましたけど、一時休売になりました売れ筋です。慌てました」と振り返っていました。スタッフが「泡だけに」と振ると「アワアワしました」と返すあたり、和やかな取材の雰囲気が伝わってきます。
生ジョッキ缶は泡だけでなく、フタを全開にできる構造も特長です。開けた後のフタと飲み口には、手や口を切りにくい「ダブルセーフティー構造」が飲料缶で初めて採用されました。
ただ、これだけ売れた理由はやはり「開けたら泡が出る」という分かりやすい驚きにあったのだと思います。缶ビールの見た目を「家でお店の生ジョッキ」に変えたことが、多くの人の心をつかんだのではないでしょうか。
塗料を作ったトーヨーケムとは?artienceグループの化学素材メーカー
泡を生み出す塗料を作っているのが、artienceグループのトーヨーケムです。artienceは、2024年1月に東洋インキSCホールディングスから社名を変更したグループで、番組では埼玉県川越市にあるトーヨーケムの川越製造所が取材されました。
トーヨーケムは、プラスチック製品の着色剤や接着剤、機械のモニター用フィルターなどを作っている化学素材メーカーです。番組によれば、年商は510億円にのぼります。経済誌の報道では、缶ビールの内面塗料で古くから国内トップシェアの実績を持つ企業とも紹介されています。
アサヒビール側からすると、普段は缶を製缶メーカーから購入しています。そのさらに上流にある塗料メーカーと直接組んで開発するのは、業界でも例がなかったのではないかと、アサヒビールの担当者が経済誌の取材で語っています。
一般の消費者が「トーヨーケム」という社名を目にすることは、ほとんどないはずです。それでも、生ジョッキ缶を開けるたびに、その技術に触れていることになります。まさに「儲かり素材」という特集にふさわしい、縁の下の力持ちの企業です。
生ジョッキ缶用の塗料「フィニッシェスAW1000」とは?AWは“泡”の意味
研究開発の現場で、トーヨーケムの夏本徹哉さんが「ズバリ塗料なんですけど」と教えてくれたのが、缶の内側に塗られた塗料です。
ところが、生ジョッキ缶の内側をよく見ても、普通の缶との違いはわかりません。進藤晶子さんも「見ても全然分かんない」と驚いていました。
違いがわかるのは手触りです。普通のスーパードライの缶の内側はすべすべしています。一方、生ジョッキ缶の内側は、ザラザラとまではいかないものの、すべすべではないほどよい手触りになっていました。
この塗料の名前は、生ジョッキ缶用塗料「フィニッシェスAW1000」です。金属用のコーティング材で、「フィニッシェス」は仕上げを意味します。
スタッフが「AWって何ですか?」と聞くと、夏本さんは笑いながら「泡の、AW」と答えました。まさに名前のとおり「泡の塗料」というわけです。研究者らしからぬ遊び心のあるネーミングに、思わず親しみがわいてしまいます。
生ジョッキ缶の泡の仕組み|缶の内側の凸凹が炭酸を泡に変える
番組では、AW1000の効果を確かめる実験も行われました。普通の缶の材料と、AW1000を塗ったアルミ板を一緒にビールに入れて比べたのです。
すると、AW1000を塗ったアルミ板の表面には、泡がびっしりとこびりつくように出続けていました。違いは一目瞭然です。
夏本さんによれば、AW1000には表面を凸凹させる特別な仕組みが入っています。生ジョッキ缶の泡の仕組みを整理すると、次のようになります。
- 缶の中のビールには、炭酸が溶け込んでいる
- フタを開けると、缶の中の圧力が下がる
- ビールに溶けていた炭酸が、塗料でできた小さな凸凹に刺激されて泡になる
- その泡が湧き出て、お店の生ジョッキのような状態になる
もともと缶の内側の塗料は、ビールと缶を守るためにツルツルに塗るのが常識でした。生ジョッキ缶は、その常識をあえて逆にしたことになります。「泡を立てないための塗料」から「泡を立てるための塗料」への転換は、とても大胆な発想です。
失敗作から生まれた塗料!懇親会での一言と100回の改良
画期的なAW1000ですが、開発の突破口になったのは、なんと開発部の大失敗でした。
トーヨーケムは以前から、缶ビールでもお店の生ビールのようなおいしい泡が出るようにしたい、とアサヒビールに相談されていました。ところが、それを実際に形にするのは相当難しいことでした。
そんな中、新しい塗料を研究していたとき、うっかり粒々したものを入れてしまい、表面がザラザラになってビールが泡立ってしまったのです。夏本さんは「泡を立てるつもりがなかったのに泡立っちゃった」と振り返っていました。
この失敗談を懇親会の席でアサヒビールの担当者に話したところ、「その失敗した塗料、うまく使えば泡の立つ缶ビールが作れるんじゃない?」と猛プッシュされたそうです。
とはいえ、開発は順調ではありませんでした。泡は出るものの、おいしく飲めるきめ細かい泡がなかなか出ません。塗料を少しずつ調整してはアルミ板に塗って焼き付け、泡立ちを確かめる、という地味な作業を、およそ100回も繰り返しました。
アサヒビールの評価について、夏本さんは「辛口でした」と笑い、村尾さんも「かなり辛口でした」と認めていました。スーパードライだけに、というオチまでついたやり取りです。失敗を雑談で共有できる関係があったからこそ生まれた商品だと思うと、懇親会の一言の重みを感じます。
きめ細かい泡を生む「へこんだ凸凹」とアサヒへの専売
100回の改良の末に生まれたのが、出っ張った山のてっぺんがちょうどへこんでいる、不思議な形の凸凹でした。
顕微鏡で見ると、山の先端がポコッとへこんでいるのがわかります。このへこみの部分が、口当たりのやさしいきめ細かい泡をちょうどよく出してくれるのです。こうしてAW1000が完成し、生ジョッキ缶が誕生しました。
村尾さんは「これがなかったら、その商品はこの世にいませんから」と話し、夏本さんは「嬉しいです」と顔をほころばせていました。
スタジオでは坂口孝則さんが、粘着力の弱い失敗作から生まれたポストイットを例に挙げ、「失敗から始まった、いいサクセスストーリー」と評価していました。
加藤浩次さんが他のビール会社にも売れるのかと尋ねると、AW1000はアサヒビールへの専売だといいます。野々村さんが「すごいお金を積まれても?」と食い下がると、夏本さんは言葉に詰まってしまいました。ほかの会社から声がかかっても、お断りしているそうです。
一緒に苦労して作り上げた相手との信頼関係を大切にする姿勢は、取引先として理想的だと思います。
まとめ
2026年11月8日放送の「がっちりマンデー!!」で紹介された、生ジョッキ缶の泡を生むトーヨーケムの塗料のポイントを振り返ります。
- 生ジョッキ缶のビールは普通のスーパードライと同じで、泡の秘密は缶の内側の塗料にある
- 番組によれば、発売2日で約100万ケースが完売し、一時休売になった
- 塗料はartienceグループのトーヨーケムが開発した「フィニッシェスAW1000」で、AWは「泡」の意味
- 開けたときに、炭酸が塗料の小さな凸凹に刺激されて泡になる
- 開発のきっかけは、うっかり泡立ってしまった失敗作の塗料
- およそ100回の改良で、山のてっぺんがへこんだ凸凹にたどり着いた
- AW1000はアサヒビールへの専売
次に生ジョッキ缶を開けるときは、泡の向こうにある「失敗から生まれた塗料」の物語を思い出してみてください。
※ 本記事は、2026年11月8日放送の「がっちりマンデー!!」を参照しています。
※ トーヨーケムの公式サイトはこちら。





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