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【カンブリア宮殿】味の素・中村茂雄「永久改良」ABF9割の秘密

【カンブリア宮殿】味の素・中村茂雄「永久改良」ABF9割の秘密 cambria-ajinomoto-abf-gyoza
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2026年8月20日放送のカンブリア宮殿は、味の素の中村茂雄社長が登場しました。冷凍ギョーザの油が跳ねない理由から、高性能半導体を支えるABFまで、話題は食卓から最先端技術へと一気に広がります。この記事では、番組で語られた「永久改良」の中身と、食品会社がなぜ半導体で世界シェアを握れたのかというカラクリを整理してお伝えします。読み終えるころには、味の素という会社の見え方がきっと変わるはずです。

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味の素の冷凍ギョーザはなぜ油が跳ねない?「永久改良」が生んだ進化

番組の入口は、多くの家庭の冷凍庫に眠っているあのギョーザでした。水も油も使わず、並べて焼くだけで羽根ができる。かつては専門店の職人技だったものが、家庭のフライパンで再現できてしまいます。番組によれば、累計売り上げは20億袋を超え、29年連続でトップの座を守っているとのことでした。

そして最近の進化が「フタをしなくても油が跳ねない」という点です。番組の実験では、フライパンのすぐ上に被せた紙に付いた油はわずか10滴ほど。研究・開発センターの担当者は、乳化剤と水と油の比率が少しずれるだけで油は一気に跳ねやすくなると語り、そこを調整して製品化したと説明していました。

筆者が驚いたのは、この改良の起点がSNSだったことです。開発拠点のミーティングでは、消費者の投稿を一つひとつ検討していました。「いつも通り焼いたのに初めて失敗した」といった声まで拾い上げ、移動中も日々目を通しているといいます。

その姿勢を象徴するのが、メンバーのストラップに記された「永久改良」の四文字。ギョーザの発売は1972年ですから、半世紀以上にわたって改良が続いている計算になります。できないとは言わない——その決意が四文字に凝縮されています。

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名店の味を再現する「おいしさ設計技術」|ヒットを連発する仕組み

味の素の強さはギョーザだけではありません。番組ではコンソメがシェア8割、クックドゥシリーズが46年間トップ、クノールの累計売り上げが1兆円を突破していることが紹介されました。ここまで各カテゴリーで勝ち続けられる理由はどこにあるのでしょうか。

その答えが「おいしさ設計技術」です。食品研究所の担当者は、美味しさとは何かを徹底的に解析し、製品に落とし込む技術だと表現していました。

番組で取り上げられたのは、行列ができる名店の麻婆豆腐です。開発チームはその独特の甘い香りに着目し、人がどの成分に甘みを感じるのかを特殊な機器で特定しました。そこから導き出されたのが、シナモンや八角で香り付けした独自のラー油です。試食した中村社長も、高級中華店の味わいだと絶賛していました。

回鍋肉ではキャベツからタレが流れ出さないようにし、青椒肉絲ではピーマンの苦味を抑え込む。感覚に頼らず数値で美味しさを設計するからこそ、ヒットが偶然ではなく再現可能になっているのだと感じます。

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3A主義とブラジル|中村茂雄社長が冷凍ギョーザを世界に広げた戦略

番組で示されたグラフによれば、味の素は世界130以上の国と地域に展開し、売り上げ・利益ともに海外が6割を超えています。その海外攻略の指針が「3A主義」です。

Affordableは手頃な価格を意味し、国ごとに分量と値段を変える徹底ぶり。Applicableは現地のどんな料理にも使えること。そしてAvailableはどこででも買えること。この3つを揃えて初めて根付くという考え方は、海外展開に悩む企業にとって普遍的なヒントではないでしょうか。

象徴的なのがブラジルでの挑戦です。冷凍物流が整っていないブラジルで、冷凍食品を普及させるのは簡単ではありませんでした。それでも参入からわずか2年で、サンパウロのレストランや居酒屋でギョーザが人気を集めています。

この立役者こそ、赴任中だった中村社長でした。売り上げは伸びていたものの利益が横ばいになりつつある状況に危機感を持ち、思いついたのが冷凍ギョーザだったといいます。着眼点はブラジル人の食習慣。前菜が揚げ物であることに気づき、揚げに近い焼きギョーザなら前菜として通用すると読んだのです。商品を持ち込むのではなく、現地の食卓の隙間を探し当てた発想だと言えます。

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中村茂雄社長とは?発酵研究者が電子材料部門で特許512件を取った理由

中村茂雄

味の素の中村茂雄社長                                            (引用:「カンブリア宮殿」より)

中村社長はもともと研究者です。東京工業大学(現・東京科学大学)の大学院で学び、指導教官の勧めもあって1992年に味の素へ入社しました。発酵の力で新しい価値を生み出したい、自分が作ったものを家族に見せたい——そんな思いを抱いていた青年が最初に配属されたのは、食品とは無縁の電子材料部門でした。

戸惑いはあったものの、何でもやりますと言って入った以上しっかりやろうと切り替えたそうです。この素直さと胆力が、後の展開につながっていきます。

そんな中村社長の自負が、特許512件という数字。番組では味の素歴代で最多だと語られていました。なぜここまで特許にこだわったのか。理由は極めて現実的です。半導体は2年ごとに性能が上がり、そのたびに材料は他社との競争にさらされる。いわば「材料オリンピック」が2年おきに開かれる世界です。

好調なうちに事業を売却するという判断もあり得る中で、仮に売られたとしても「中村がついてこなければ半額だ」と言われる研究者でありたい。そう考えて、自分の名前で特許を書き続けたのです。組織ではなく個人の名前で価値を証明しようとする姿勢に、この人の芯が見えた気がします。

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ABF(味の素ビルドアップフィルム)とは|高性能半導体9割超を握る絶縁材

その中村社長が生み出したのがABF、味の素ビルドアップフィルムです。番組によれば、現在の高性能半導体の9割以上に使われているといいます。

ABFは電子基板の内側に重ね合わせて使う極薄の絶縁材です。ポイントは、何層重ねても凹凸が出ないこと。平坦だからこそ微細な配線が切れるようになり、10層、20層と積み上げても機能します。この平坦性がなければ、そもそも高性能な半導体は作れません。

開発が始まったのは1990年代。味の素の副産物から絶縁材の樹脂が作れると分かったことがきっかけでした。大手電気メーカーからインクを塗って作る絶縁膜をフィルムにできないかと相談があった際、周囲がフィルムなど無理だと口を揃える中で、他ができないことこそやってみようと手を挙げたのが入社4年目の中村社長でした。

夜10時から翌朝まで、リヤカーで樹脂と溶剤を運んでは配合を試す日々。結果が出たのは3年後のことでした。番組では、ABFを含む電子材料部門の売り上げが1000億円を超えていると紹介されています。AI向け半導体は基板自体が大型化し層数も増えているため、需要はさらに旺盛になっているそうです。

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冷凍食品会社だから勝てた|ABFと「Think Outside the Box」の正体

ここが今回の放送で最も膝を打った部分です。なぜ食品会社がこれほどの半導体材料を作れたのか。中村社長がよく聞かれるというこの問いへの答えは、意外にも物流にありました。

当時の業界の常識では、層間絶縁材は直射日光の当たらない倉庫に室温で保管するものでした。ところが中村社長が開発した材料は、室温では3日しか持たず、冷凍保管が必須だったのです。普通のメーカーなら、そこで諦めるか性能を落とすかの二択でしょう。

しかし味の素には冷凍食品事業があります。物流面でも倉庫面でも、冷凍というものへのハードルがほとんどなかった。だから性能を落とさず、冷凍前提という選択ができたのです。

中村社長は絶縁材の性能が飛躍的に伸びると訴え、冷凍保管を提案しました。結果、基板メーカー側も冷凍庫や冷蔵庫を導入し、室温で2日で使い切るプロセスを構築。今ではそれが業界の常識になっています。常識に囚われていては、これだけ性能のいいものは作れなかった——その言葉の背景にあるのが「Think Outside the Box」という発想です。

ギョーザで培った冷凍のインフラが、半導体材料の可能性を広げた。この一本の線こそ、味の素という会社の面白さの核心だと思います。

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半導体の次は医療へ|アミノサイエンスが挑む遺伝子治療と2030年の目標

味の素の進化はまだ続きます。アミノ酸技術を軸にした「アミノサイエンス」を掲げ、医療分野へと踏み込んでいるのです。

番組では、利益額で見た食品と非食品の比率が現在は2対1であり、2030年にはこれを1対1にしたいという方針が語られました。食品会社という呼び方が、いよいよ実態に合わなくなってきています。

成長が著しいのは、高度な医薬品の製造を受託するサービスです。極めて小さな抗体の特定の位置に薬剤を付けられる独自技術は、開発期間を短縮しながら高品質なものを安定して得られるとして、医薬品業界で引っ張りだこになっているといいます。

さらに味の素は、米オハイオ州で遺伝子治療薬の開発製造受託を手がけるフォージバイオロジクス社を、2023年に約828億円で買収しました。番組では世界最大級の遺伝子治療薬の培養装置が紹介され、中村社長は早老症と呼ばれる難病にも使えるとして、業界に大きなインパクトを与えたと語っています。早老症は治療法の確立が難しい希少疾患とされており、この分野の研究開発が進むこと自体に大きな意味があるのだろうと感じました。

体を構成するタンパク質は20種類のアミノ酸から成り、そこには美味しさ、生理機能、栄養、反応性という4つの働きがある。うま味調味料も半導体材料も医薬品も、すべて同じ一本の技術から伸びた枝なのだと分かると、この多角化が奇をてらったものではないことが腑に落ちます。

なお、本業の技術を医療分野へ広げているという点では、前回放送の東洋製罐も同じ道を歩んでいます。容器メーカーが細胞培養バッグにたどり着いた経緯も、あわせて読むと面白いはずです。

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まとめ|カンブリア宮殿・味の素回が示した「うま味」の広がり

今回のカンブリア宮殿は、味の素と中村茂雄社長を通じて、一つの技術がどこまで広がり得るかを見せてくれる回でした。

  • 冷凍ギョーザの油はねを抑えたのは、乳化剤と水と油の比率の調整と、SNSの声を拾い続ける「永久改良」の姿勢
  • 名店の味を数値化する「おいしさ設計技術」が、ヒットを再現可能にしている
  • 3A主義とブラジルでの成功が、海外売上6割超を支えている
  • ABFは味の素の副産物から生まれ、冷凍食品会社だったからこそ冷凍保管という常識破りに踏み切れた
  • アミノサイエンスは医療へと広がり、2030年には食品と非食品の利益比率1対1を目指す

昆布のうま味の発見から始まった会社が、いまやAI時代の半導体と難病治療を支えている。その道筋には、常識の外側で考え続けた一人の研究者の存在がありました。ちなみに中村社長の一押しは、醤油と味の素を振った卵かけご飯にごま昆布を乗せる食べ方だそうです。今夜あたり、試してみてはいかがでしょうか。

※ 本記事は、2026年8月20日放送(テレビ東京系)の人気番組「カンブリア宮殿」を参照しています。
※ 味の素株式会社の公式サイトはこちら

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