毎年の猛暑で、夏の電気代が家計をじわじわ圧迫していませんか。テレビ東京『ブレイクスルー』で紹介された新素材は、エアコンの電気代を下げるかもしれない注目の技術です。この記事では、服部淳一さんが開発した新素材の正体と、電気代が下がる仕組みをわかりやすく解説します。読み終えるころには、身近な家電の裏側にある技術の面白さがきっと見えてきます。
新素材でエアコンの電気代が下がる理由とは?(ブレイクスルーで話題)
まず気になるのは、「素材が変わるだけで、どうして電気代が下がるの?」という点ですよね。カギを握るのは、エアコンの室外機の中にある部品です。
番組によると、エアコンは夏の家庭の消費電力のおよそ3分の1を占めるといわれています。その室外機の内部では、渦巻き状の部品が1秒間に60回という猛スピードで回転し、冷たい空気を送り出しています。そして服部さんによれば、エアコンの電気代の約8割は、この部品を回すために使われているというのです。
ここで効いてくるのが「重さ」です。従来この部品は鉄製で、重さはおよそ4.6キロ。重いものを高速で回し続けるには、それだけ大きな力、つまり多くの電力が必要になります。ところが服部さんが開発した新素材で作ると、同じ役割を果たしながら重さはおよそ1.6キロ。なんと約3分の1まで軽くなります。
回す相手が軽くなれば、モーターにかかる負担も小さくて済みます。その分だけ消費電力が抑えられ、電気代の削減につながるというわけです。私たちはつい「省エネ家電=制御技術の進化」と考えがちですが、実は部品そのものの重さという、とても物理的な部分に大きな伸びしろが隠れていた。ここに今回の面白さがあると感じます。
服部淳一が開発した新素材の正体|アルミ×セラミックの複合材
では、その軽い新素材の正体は何なのでしょうか。答えは、アルミニウムとセラミックスを組み合わせた「複合材」です。金属基複合材料(MMC)と呼ばれる分野の素材で、製品名は「アルボロン(AC-Albolon)」といいます。
ポイントは、アルミの「軽さ」とセラミックの「硬さ」をひとつの素材で両立させたところにあります。エアコンの部品には、高速回転に耐える強度や、熱による変形のしにくさ(熱膨張への強さ)が求められます。これまではその条件を満たせるのが鉄しかなく、メーカー各社は何十年も「鉄を軽くしたいが、代わりになる材料がない」という壁に突き当たっていたそうです。
新素材はその壁を越え、鉄と同じ耐久性を保ちながら重さは約3分の1を実現しました。番組では、鉄製の部品が激しく振動しながら回るのに対し、新素材の部品はほとんど止まって見えるほどブレずに回る様子が紹介され、その差は一目瞭然でした。軽いだけでなく、動きの安定性まで高いというのは、地味に見えて相当なアドバンテージだと思います。
新素材を生む独自技術「溶湯鍛造法」とは
これほど優れた素材が、なぜ他社に簡単に真似できないのでしょうか。その秘密が、アドバンスコンポジットのコア技術である「溶湯鍛造法(ようとうたんぞうほう)」です。
そもそもアルミとセラミックは、水と油のように本来は混ざり合わない素材どうしです。そこで同社は、まず独自に加工したセラミックを金型にセットし、約700度で溶かしたアルミを流し込みます。そして1500トンという途方もない圧力をかけ、10分ほどかけて2つの素材を染み込ませて一体化させるのです。
溶かした金属に強い圧力を加えるこの製法自体に、独自の特許技術が組み合わされており、核心部分は企業秘密とされています。番組では、この技術が「何千回もの試行錯誤の末に見つけ出したもの」だと語られていました。派手さはありませんが、こうした地道な擦り合わせの積み重ねこそが、簡単には越えられない参入障壁になっている。ここが新素材ビジネスの本当の強みなのだと感じます。
熱を吸収する新素材とGPU・データセンター放熱への応用
服部さんが手がける新素材は、エアコン向けだけではありません。番組では、もうひとつの驚きの素材も登場しました。アルミニウムとグラファイト(カーボン)を組み合わせた複合材です。
この素材は熱を伝える力がとても高く、熱いものも冷たいものも一気に吸い込む性質を持っています。番組では、板の上に置いた氷が見る見るうちに溶けていく実演が行われ、その吸熱っぷりに出演者から驚きの声が上がっていました。
活躍が期待されるのは、スマホやパソコン、モーターなど熱を持つ機器の放熱です。とりわけ注目されているのが、AIの普及で需要が急増しているGPUやデータセンターの分野。コンピューターは高性能になるほど膨大な熱を出し、熱がこもると性能が頭打ちになってしまいます。だからこそ効率よく熱を逃がす新素材が求められ、世界中の企業が探し回った末に、静岡県富士市の会社にたどり着いたというのです。実際、番組では日本・アメリカ・台湾など100社以上から引き合いがあると紹介されていました。エアコンの電気代という身近な話から、一気に最先端のAIインフラへと世界が広がっていくのが、今回いちばんの見どころだと思います。
アドバンスコンポジット社長・服部淳一の意外な経歴とは
ここまで読むと、服部さんはさぞかし素材の専門家なのだろうと思いますよね。ところが、その経歴は意外なものでした。服部さんは成蹊大学法学部の出身で、素材づくりとはまったく畑違いの世界から、この道に飛び込んだ人物なのです。
番組では、「世の中のためになることをしたい」という思いから、埋もれかけていた溶湯鍛造法という技術に可能性を感じ、2015年にアドバンスコンポジットを立ち上げたと語られていました。現在は同社の代表取締役社長を務めています。印象的だったのは、「素人でもわかるものこそが真実だ」という服部さんの信条です。社員には「失敗こそ成功への道だ」と伝え、開発を先行させる姿勢を貫いてきたといいます。
専門知識がなかったからこそ、業界の「常識」にとらわれず、可能性をまっすぐ信じられたのかもしれません。同社はダイキン工業などから出資を受け、2024年11月には総額15億円の資金調達を実施。2025年のスタートアップの祭典「IVS2025 LAUNCHPAD」では優勝し、賞金1,000万円を獲得するなど、その技術は各方面から高く評価されています。
まとめ
今回のテレビ東京『ブレイクスルー』では、アドバンスコンポジットの服部淳一さんが開発した2つの新素材が紹介されました。
アルミとセラミックの複合材は、エアコン室外機の部品を約3分の1まで軽くし、電気代の削減につながる可能性を秘めています。さらにアルミとグラファイトの複合材は、熱を一気に吸収する力で、AI時代に欠かせないGPUやデータセンターの放熱を支えようとしています。どちらも独自の「溶湯鍛造法」から生まれた、世界でも唯一無二の素材です。
法学部出身という異色の経歴から素材の世界に飛び込み、常識を次々と塗り替えてきた服部さん。身近な電気代から地球規模の省エネまでを変えるかもしれないその挑戦は、これからも目が離せません。番組は2026年7月4日にテレビ東京系で放送され、作家・相場英雄さんがMC、佐々木明子アナウンサーが進行を務めました。
※ 本記事は、2026年7月4日放送(テレビ東京系)の人気番組『ブレイクスルー』を参照しています。
※ アドバンスコンポジットの公式サイトはこちら。




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